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「ミサイル防衛(MD)システム」を軸に軍拡に走る日本政府と日本の軍需産業

 


朝鮮労働党機関紙労働新聞、12月10日付
「先制攻撃を狙った無謀なミサイル防衛体系樹立の策動」の解説にかえて
            

 

 

○ 日本の軍事衛星と、大陸間弾道ミサイルに転用可能な、日本のロケット

 

 

<労働新聞>(別掲)がここで指摘する、2004年12月、小泉政権が閣議決定した日本の「防衛大綱」は、国家予算の20l以上を軍事予算が占め、社会と経済と政治が、軍産共同体の利害を軸に動いている、名実共に戦争国家である米国の、(イラク、アフガン侵略戦争で実証された)「軍事力に依る世界の一極支配戦略」を支える「日米軍事同盟再編」と一体化したものである。それを、当面自らの利益に繋がる安保戦略であると考えた、多国籍企業が中心を占める日本資本主義階級(日経連)の政治的要求であった。

 

 

それは、憲法と日米安保条約の制約による「専守防衛の原則」の枠を突き破り、「脅威の防止」と「国際的な安全保障環境の改善の為」(防衛大綱)には、自衛隊の海外派兵を本来任務に格上げし、その「防衛力」を強化し、世界的規模で、米国の先制攻撃戦略と同調することを意図したものである。

米国の先制攻撃戦略である「ミサイル防衛(MD)システム」の導入のみならず、その「共同研究開発」を通して、日本の独自的軍事技術の売り込む為の「武器輸出三原則の緩和」も、同時に実行段階に移そうと意図している。

 

 

宇宙開発事業団によって打ち上げられ、「内閣衛星情報センター」と「防衛省」によって管理統制されている4つの衛星は、宇宙の軍事利用を禁止した国会決議(1969年衆議院)を踏みにじった、れっきとした軍事衛星であり、その打ち上げロケット/H2は、いつでも「大陸間弾道ロケットに転用可能」(江畑謙介、<日本の軍事システム>講談社・現代新書)と言われている代物だ。日本国家は、2007年2月24日に種子島で打ち上げに成功した「情報収集衛星」が、北韓を狙った軍事衛星であることをぬけぬけと認める始末である。

 

 


○ 国会審議中の「宇宙基本法案」は、軍事機密を梃子に、軍産共同体を準備する

 

 

 

安倍在職時、国会に提案され、現在継続審議されている「宇宙基本法案」は、<労働新聞>が指摘するように「軍事列強としての日本の、宇宙の軍事覇権のための策動」である。「日本の安全保障としての国家宇宙基本政策」に沿って、宇宙開発の軍事化を、日本国家の軍事強化の戦略と位置付ける福田内閣と軍需産業の開発拡大を叫ぶ日本資本家階級の利益追求のための、宇宙軍拡法に他ならない。

11月19日、「世界平和アピール七人委員会」は、この法律が言うところの、「宇宙開発で、非軍事をやめて安全保障に資するように行うべきであり、宇宙開発に関する情報の適切な管理の為の必要な施策」(宇宙基本法案)という動きを認めれば、「公開の原則を否定し、軍事機密を梃子として軍産複合体の成立を促すこととなる。」(アピール)と、全国民に法案への反対を呼びかけた。

 

 

1999年以降、すでに日米は、弾道ミサイル防衛(BMD)の共同技術研究をすすめており、日本の技術による担当部品が、その生産時点で厖大な利益を生むことを見越した日本の軍需産業と資本家階級(日経連)は、それを容易にする法体系の整備と既存の法的規制を蹂躙することに躍起になっている。

 

 

 

○ 「軍事予算を正当化するために、敵を求める」米・日の帝国主義者

 

 

 

2001年9・11直前にAlter NetのBen Cohenは、「米国の政治家は3440億j(当時)の軍事予算を正当化するため敵を求めている」(2006年度予算に於ける広義<実質>の軍事予算は、9400億jになると、‘アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局’は試算している。)と、言っているが、軍需産業の復活を追求する日本の資本家階級とその自民執権政府も、軍事予算の更なる拡大と軍事産業の育成強化のために、世論操作を行いながら、「北朝鮮」という「軍事的脅威」と「敵」を求めているのである。

 

 

日経連の2003年元日の「奥田ビジョン」や、2007年元日の「御手洗ビジョン」でも重点的に取り組むべき課題として、憲法改正と共に「ミサイル防衛能力の向上」という「軍事的目標」を露骨にかかげている。偽装請負労働で、働く民衆を虫けらのように扱ってきた御手洗日経連会長は、今度は戦争という人殺しで、金儲けを企み、福田と自民執権政府の尻をたたいているのだ。

 

 

 

○ 「敵基地攻撃能力の保持」を公言する日本政府

 

 

 

小泉政権時に導入を決定した「ミサイル防衛(MD)システム」は、アメリカによって開発された相手国の弾道ミサイルを迎撃するシステムである。すでに2005年の自衛隊法改正の中に「弾道ミサイル迎撃規定」をもうけ、「我が国に飛来する恐れがある」と判断するだけで、平時においても自衛隊がミサイルを迎撃発射できるとした。

 

 

それを受けて2007年5月18日、安倍は、「安全保障の法的基盤構築に関する懇談会」の第一回会合で、「米国を狙った弾道ミサイルを撃墜する」ことを含む4通りのケースを示し、現行憲法を突き破って「集団的自衛権」をなし崩し行使をする道がないか、と国家主義者や資本の代弁的学者共に問いかけた。その論議は、このシステムに組み込まれた日本が、自衛の名のもとに、他国の戦争に必然的に加担し巻き込まれることをいとわぬ所か、ミサイルからの「自衛のため」には、『敵基地攻撃能力』を保持し先制攻撃の可能性も論議されている。

 

 

すでに、2006年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射訓練(朝鮮沖東海での)に対し、当時の額賀防衛庁長官は、「限定的な攻撃(敵基地攻撃)能力を持つことは当然」と発言し、安倍官房長官(当時)も、「検討研究が必要」と主張、「やられるまえにやる」という、もはや、米帝国主義者の先制的攻撃主義による侵略戦争を、自ら実行することを公言していた。「敵基地攻撃」のためには、長距離巡航ミサイルを初めとする攻撃兵器による武装を必要とすることは言をまたない。

 

 

 

○ 「ミサイル防衛(MD)システム」は、5年間に1兆円を浪費する

 

 

 

「MDシステム」は、他でもなく米国の先制的攻撃戦略を前提とし、また攻撃的ミサイルを併用しなければいまだ技術的に十分機能しない代物ともいわれている。しかしその費用は、2006年から2011年までの「当面の期間」(5年間)でさえ1兆円を浪費するのである。(一方で同じ5年間に、働く民衆の命の支えとしての社会保障費が、毎年2200億円ずつ削減され、総額1兆1千億円が奪われ、医療制度の荒廃、生活保護受給申請者の窓口排除、母子・低所得者への増税という、民衆の生きる権利への国家と資本家階級(日経連)による非人間的行為が実行されている理不尽を糾弾しなければならない。)現在、迎撃パターンによる2種類のミサイル、PAC3(パトリオットミサイル3)と、SM3(スタンダードミサイル3)の実戦配備およびそれに伴うレーダー基地の設置が、全国に亘っておこなわれている。さらに、日本が保有する4隻のイージス艦がSM3を搭載し、実戦配備されている。(このイージス艦は一隻1365億円もする)、日本は、「何時でも大陸間弾道ミサイルに転用できる」H2ロケットをはじめ、有数のミサイル保有国家である。北韓のミサイルの「脅威」を国民に煽り立てる政府自民党の非道を許してはならない。

 

 

 

○ 北の脅威を煽り立て軍拡に向かう日本国家と資本家階級

 

 

 

2006年7月5日日本政府は、「内閣官房長官声明」で、北朝鮮の東海上でのミサイル訓練に対し、次のように主張した「今回の弾道ミサイルまたは飛翔体の発射は、極めて憂慮すべきものだ。・・・我が国の安全保障や国際社会の平和と安定、更には大量破壊兵器の不拡散という観点からも重大な問題だ。(これに対し)我が国として、厳しい措置を持って臨む。今後速やかに、法に則った措置を決定し、改めて発表する」と。

しかし、日本政府は、北韓がミサイル演習を実施したその前月の6月、日本と米国がハワイ沖で、「北朝鮮の脅威を念頭にシステムを配備している」(米国ミサイル防衛局オベリング局長)という、日米合同海上配備型ミサイル実験を展開し、また米軍は、同6月、グアム周辺で空母3隻、艦船28、航空機280機、兵員22000人を動員する大掛かりな演習「バリアントシールド」を実施、その後6月末から7月後半までハワイ沖で、日米他8カ国の「リムパック2006」演習が行われていたことを、日本政府は、一言も触れていない。自国の侵略的ミサイル演習には目を閉じて、北韓の防御的な公海上でのミサイル演習を騒ぎ立て、軍拡の正当化に国民を動員し、北韓の「制裁」に『国民的合意』を作り上げた自民執権政府に、日本の国民はこれからも騙されつずけてはならない。

 

 

北への先制攻撃を「ならず者国家」として合理化し、核で威嚇をする米国と、

それを支援する国家による度重なる「軍事演習」を前にして、防御的防衛演習を取った北韓を非難する、どんな正当性が在るというのだろうか?

 

 

 

○ 真に極東の平和を求めているのは誰か

 

 

 

「侵略」や「戦争」は、その国の持続的な経済的基盤をぬきになりたつものではない。北韓が、大陸間弾道ミサイルを保有するといっても、それを先制的に使用することはありえない。北の一つのミサイル発射は、100倍のミサイルによって報復されるであろうし、「他国への侵略」には、厖大な輸送艦や補給艦が必要である。北には、その全てがない。そしてなによりも北韓は、日本や米国のように戦争と軍事産業がその国の経済を支える仕組みの一つとなる得る資本主義国家ではなく、戦争を必要としない平和な経済活動の中でしか維持できないまがりなりにも「社会主義を指向する国家」である。

 

 

<労働新聞>は、『アジアの国々は・・平和的環境を準備する為に努力している。ところが、日本の軍国主義勢力の狂乱的武力増強と再侵策動の強化によって、それが莫大な支障を受けている。・・・(それに対処して)多くの資金を国防力強化にまわしている。』と。北韓が日本帝国主義と重武装国家アメリカの威嚇のなかで、軍事費を負担しなければならない極貧国家の悲鳴が聞こえてくる。北韓が非核化に向かう努力をするのは、彼らが、真に朝鮮半島と極東の平和を要求せざるを得ないからである。

 

 

いまだ、35年間に亘る朝鮮植民地支配の清算をせず、逆に「北の脅威」なるものをでっちあげ、国民世論を、ミサイル武装という最も軍需産業を潤す軍拡政策の受容に動員する日本国家の、憲法を蹂躙し民衆を愚弄する行為を許すことはできない。年間5兆円に達する軍事費と、その軍事利権に群がる日本の資本家階級(日経連)と三菱重工を中心とする軍需産業、自民党と前原を初めとする民主党の「防衛族」、守屋に代表される防衛官僚たちの姿こそ、戦争と言う人殺しが、国民経済の主要部分を占める資本主義体制そのものが、歴史的・道徳的に破綻し、人間的に腐敗している体制であることを示している。