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右翼国家主義者・渡部昇一(上智大名誉教授)は、米国大使館になにを抗議したか?

 
安倍に代わって「慰安婦謝罪要求」に抗議する、恥ずべき右翼文化

 713日、在京米国大使館に対してある団体の抗議が行われたと、少数の新聞が伝えた(読売他)。先月26日、米国下院外交小委による、「旧日本軍従軍慰安婦〔性奴隷〕強制動員の謝罪要求」決議採択に対する、「慰安婦問題の歴史的真実を求める会」(代表・水島総「日本文化チャンネル桜」社長)の抗議行動であると言う。 彼らは、その抗議書簡で「決議案は歴史的事実ではない完全に誤った情報にもとずくものだ。性奴隷は存在しない。”慰安婦”だったと主張する女性たちは、実際には金を稼ぐために売春行為をしていた。」と、主張したと報じている。去る614日に、米国下院外交小委決議直前、ワシントンポストに、ほぼ彼らと同一のグループによって載せられた意見広告「THE FACT」と同様の内容の主張を、ここでも繰り返した。 

水島を代表とするこの団体は、自民・民主国会議員13人と、学者・ジャーナリストら2百余名で構成されている。714日付『朝鮮日報』も、そのグループの中に、「日本の極右学者・上智大の渡部昇一名誉教授がいる。彼は、<米国は、この問題を“人権問題”と主張し続けるが、であれば、(太平洋戦争で)東京などに対して行った無差別爆撃は、何だと言うのか、原爆投下は何だと言うのか、あれこそ一般市民を計画的に殺害する大量虐殺に他ならない。これに対して戦場での“売春行為”〔渡部は、従軍慰安婦をこのように言う〕は、単なる商行為にすぎない>と言う主張を展開した。」と伝えている。
726日、米国下院外交小委員会が、この日本の極右集団の意に沿わず、日本への非難決議を採択したことに対して、また再び、日本軍国主義の戦争犯罪を正当化するために執拗に歴史的事実を捻じ曲げ、〈金稼ぎの為に自発的に行った売春行為。>と罵倒し、彼らは再び、従軍慰安婦たちの人間としての尊厳を踏み躙る挙に出たのだ。
『従軍慰安婦強制連行正式謝罪要求決議』への抗議行動を、米国の日本に対する原爆投下と言う『人権問題』に結びつけ正当化しようとする渡部昇一らの論拠には、日本と世界の民衆を愚弄する、幾つもの許しがたい欺瞞と偽善が込められている。
まず彼らは、米国議会による『謝罪要求決議』が、門前払いを食わし正式謝罪を拒否してきた日本政府によって、閉ざされて来た従軍慰安婦達の訴えの場を、彼女たちが、米国議会を借りて、全世界に明らかにしようとした事実を無視しているのだ。日本政府は、誰によってその責任を問われているのか?アメリカの議会と言うよりは、日本軍国主義の犠牲者である慰安婦によって問われているのではないのか? それを日米両国間の問題かのように矮小化し、すり替えようとしている事である。訪米を控えた43日、安部がブッシュに電話をかけ、「慰安婦に心から同情を表し謝罪する。(だから正式謝罪要求決議を阻止してくれ。)」と懇願した時、南北朝鮮の民衆はこぞって「安部は、謝罪する相手を間違っている。東に向かって卑屈に腰をかがめる魂胆は明らかだ」と、憤激した事を思い出す。安倍晋二も渡部昇一も、手段は異なるが目的は一つだ。 

 

 原爆投下と従軍慰安婦問題を、結びつける欺瞞

彼らは、この問題が日米二国間の戦争犯罪の問題でないことが分かっているからこそ、問題のすり替えを行っているのだ。渡部昇一は、米国議会を借りて行った慰安婦ハルモニたちの日本軍国主義の蛮行糾弾と正式謝罪要求を、『慰安婦問題』と、何ら関係の無い米国の原爆投下と言う、「より大きな人権問題」に理不尽にも結びつけ、「同罪のアメリカ」が『慰安婦問題』非難する資格など無いと主張することによって、日本帝国主義の戦時犯罪行為をより小さく見せようと国民を欺いているだけではない。 日本軍による「慰安婦強制連行は、歴史的事実ではない。取るに足らない売春問題」だと歴史を捻じ曲げ、声高に主張しているのだ。 かれは、過去日本の、帝国主義的侵略戦争の歴史を正当化することを梃子にしたイデオロギーと、教育の国家管理によって民衆を取り込み、国民の国家への総動員を計ろうと企む安倍右翼政権を、民衆に敵対して『理論的』に支えようと、残り少ない人生を無駄に過ごしている老いぼれ右翼である。
第二次世界大戦でのアメリカ帝国主義者どもによる、広島、長崎への、原爆投下による人類史上類を見ない大量殺戮や、東京、名古屋、大阪、神戸、福井等、数え上げればきりが無いほどの日本の主要都市に対する無差別爆撃が、ナチスのホロコーストと何ら変わらぬ非人道的行為である事は,渡部昇一からわざわざ指摘されるまでも無いことだ.しかし、彼の口から「慰安婦問題」にかこつけて、いまさらの如く人道主義者づらをして指摘するのを聞くのは、吐き気を催すぐらい憤怒が込み上げる。

「アメリカの人権問題」を語るこの老いぼれ右翼は、今までに一度でも、核廃絶に向けての国際的な原水爆禁止運動や被爆者の国家賠償運動に対して、思いを寄せ、心からの同情を傾けたことはつめの垢ほども無い。そして勿論のことであるが、それを生み出した原因が、世界の民衆を犠牲にした「国家」同士の戦争にある事への批判を口にしたことも無い。彼が持ち出したアメリカの「原爆投下という人権問題」とは、単に軍国主義日本の正当化のために言葉の道具として用いたものに過ぎない。  彼らはいまや、安倍とともに「国家の名誉」や「国家の利益」を他国のそれと対立させ「大東亜戦争」は、「日本国家の正当な戦争』だと主張するにいたった。しかし、世界と日本の民衆にとって戦争とは、アメリカであろうが、日本であろうが、どう取り繕ろうと、「国家と国益」の名で覆い隠された資本家階級どもの私的利益を巡る暴力的衝突にすぎない。その結果としての第二次世界大戦におけるアメリカの戦争犯罪も日本の戦争犯罪も、民衆にとっては、民衆の利益と権利の犠牲によって生まれたどちらも同じ資本家階級の戦争犯罪なのだ。この老いぼれ右翼は、犯罪を実行した側の立場から他方の戦争犯罪人を「批判」しているに過ぎない。自国の支配階級の立場から、民衆の犠牲の上に成り立つ「国益やら国家の名誉」のために、アメリカの戦争犯罪を非難する連中を、我々は「反米右翼」と規定するが、彼らは、アメリカが自国の戦争行為の正当性を貶める場合に於いてのみ〈反米〉であるのであって、戦争犯罪を生み出した根源である日米の資本主義体制そのものが持つ非人間性を批判する事は、決してしないのだ。このてんで〈反米右翼〉は、何時でも「親米右翼」に転換できるのだ。渡部は他の「反米右翼」や「親米右翼」と同様「親権力、反民衆」の立脚点にたち、安倍極右政権を叱咤激励する国粋的国家主義者の一翼をなしている。

  権力の視点と民衆の立場

話は若干ずれるが、今回の参議院選挙において、「九条ネット」から立候補した天木直人氏がいる。天木氏は、レバノン特命全権大使のとき、日本と小泉政権が、アメリカのイラク侵略戦争に加担する事に反対する意見具申をして、辞任に追い込まれた気骨の人である。日本外交の基本は、武力ではなく憲法9条を堅持し憲法の理念の中にあるとの信念から立候補した。しかし726日、米国下院外交小委員会で〈慰安婦強制連行謝罪要求決議案〉が採択されたことに対して、そのホームペイジで、「米国が、自らの戦争犯罪を省みることなく、日本政府への謝罪要求を行ったのは、日本を貶める(おとしめる)ものだ。」と述べ、米紙への抗議意見広告1000万募金を提唱したが、天木氏を支える人達の反対で思い留まったようである。それは賢明な判断であるが、恐らくそれが載っていたら、渡部昇一などの国粋的右翼文化人と何も代わらない、空虚な「反米」意見広告に終わっていただろう。何故なら、氏と「反米右翼」との間に、ある一つの大きな共通点が存在するからだ。氏の「日本を貶める」と言う言葉は、いかなる角度から捉えても権力の側に立つ視点だ。氏の言う〈日本〉とは、日本の国家権力をさしている。日本の民衆にとって日本『国家』の歴史の罪状が暴かれることは、これからの、国家の民衆支配と戦う為にも、必要な事なのだ。日本の支配階級のための国家利害なぞ民衆にとって何のかかわりも無い。国家とは、いつも民衆を支配しようとするものなのだ。憲法は、その様な国家から民衆を守ろうとする権力との協定書のようなものだ。改憲反対闘争において9条を守ろうとすれば必ず「国家と国益」にぶつからざるを得ないであろう。氏が最後まで民衆の側で戦うのであれば、権力者と民衆を仕切る万里の長城を是非とも乗り越える事を期待したい。

 キリスト教ヒュウマニズムと相容れない渡部昇一は、「名誉教授」を返上せよ

国家と国益のため」と、安部と彼ら右翼同伴者が叫ぶとき、それは、日本の労働者階級と働く民衆の権利と自由と利益に対する、資本家階級の攻撃の合図であると肝に銘じなければならない。
渡部は、桜井よしこ、小林よしのり、上坂冬子、西岡力、中嶋嶺雄、勝谷誠彦と言った右翼「文化人」が、その仲間内だけしか通用しない「常識」を前提に、心置きなく書いたり座談したりしている[WILL]と言う雑誌の最近号『8月号』の中で(『日本の名誉を守る為に安倍首相は戦え』)次のように言う。
もともと「従軍慰安婦や強制連行は存在しなかった。それが捏造であると言うことが国内では証明されつくしている。これが外国に伝わっていなかったのが(米下院小委決議の)問題の核心だ。」と勝手に決め付けた上で、「なぜ慰安所の設置が必要だったか、これは、被占領地国の女性への思いやりだ。この視点が抜けてはならない。」と、他国の土地を暴力で踏みにじった日本軍隊の存在をしごくあたりまえかのような前提で、日本国家の植民地支配国の女性に対する”思いやり”を説くのだ。さらに、日本軍によって管理された〈慰安所〉を正当化して「売春宿で兵隊が寝るときにはゲリラなどに攻められないように守る必要があった。そういう意味では軍が管理したケースがあった。・・・・だから占領地においての具体的な問題を避ける為には、“慰安婦”はある意味では人道的な考え方だ。」と、日本軍が他民族の土地に居座り従軍慰安婦を管理する事実を、彼は人間としていかなる痛みも感じることなく「人道的」だと語るのだ。
キリスト教ヒューマニズムを、建学の精神を掲げる上智大学としては、渡部昇一が生きている限り「名誉教授」の肩書きを剥奪できないとすれば、この、右翼老人性パラノイア患者の言動と行動は、大学に、学問の自由以前の問題を投げかけている。
渡部昇一は、その最後の章「日本を貶めた政治家を尋問せよ」で日本軍従軍慰安婦強制連行謝罪要求決議が米国下院本会議で採択されることは、日本の国益と名誉を貶めるものだとして、国家権力を手に入れたフアシストの振る舞いのように、この「国益」を損失させた〈反日分子〉を「国家侮辱罪」で尋問し訴追せよとまで叫ぶにいたっては、我々は黙っているわけには行かないのだ。

自らの歴史歪曲と日本軍国主義の正当化にとって邪魔な存在だと、加藤紘一、河野洋平、吉見吉明教授を名指しし、裁判に掛けろとは、尋常な「学者」の発言ではない。安倍右翼政権の登場とともに日本軍国主義によるアジアと日本の民衆に対する非人間的な支配と抑圧の歴史を正当化する集団と個人が大手を振って町を歩き始めた。我々研究会は決して彼らを野放しにしないであろう。
自分の意の沿わぬ人物を名指し、「国家侮辱罪」だと右翼用語を用いている彼の言動は、行動右翼の盲目的な直接行動に根拠を与える危険すらある。

渡部は、自分の専門分野外の歴史と政治に、学問的アプローチと言うよりは、生来の感情的国粋主義者としての気質で入り込んだ為に、あまりにも粗野な勉強と理解力しか持ち合わせない。しかも右翼老人性パラノイアが進行している為、愚の塊の作文が多いので、我が研究会は、今後、相手にしないかもしれない