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(韓国週刊誌 ハンギョレ21 2008年9月1日 第726号)

http://www.hani.co.kr/section-021046000/2008/09/021046000200809010726052.html

 

 

[人権OTL] 社会主義者を捕まえろ、逆行する歴史

 

 

 

社労連(社会主義労働者連合)会員達を緊急逮捕した政府、国家保安法の逆走行に抑圧される思想の自由

 

シン・ユントンウク記者

 

[人権OTL-30個の視線19]

 

 

すんでのところで、歴史の時計が10余年うしろに帰る所だった。

 

北韓と連係されたと公安当局が主張する、所謂(いわゆる)‘主思派(主体思想派)’組織事件を取って、‘社会主義’或いは‘労働解放’を主張する団体に、国家保安法上‘利敵団体’の殻を付けた最後の判決は、1992年に出た。

 

ソウル高等法院は、1992年11月、国際社会主義者グループ(IS)に対し“国家の存立・安全や自由民主的基本秩序を危機にさらすと言う定立を知りながら、国家変乱を宣伝・扇動する行為を目的とする利敵団体”と言う判決を下した。その様にして国際社会主義者達を、1992年から2001年まで10回に亘って、155名が拘束される長い苦難を経験した。

 

 

仏教界時局集会 緊迫して起こった事件など

 

 

その後にも、長い間国家保安法の刃は、主に‘統一運動’勢力に向かった。無論、利敵表現物所持・流布嫌疑で市民と軍人を逮捕する事が時たま起こったが、裁判で嫌疑がそのまま認定される事はなかった。

 

しかし、2,008年8月、ついに北韓に‘反対’する彼等で構成された‘組織事件’が起こった。警察は8月26日、オ・セチョル、ヨンセ〈延世〉大名誉教授など、社会主義労働者連合〈社労連〉会員7名を逮捕した。

 

△人権社会団体会員などが8月27日、社労連連行者らが調査を受けている玉仁洞保安捜査隊の前で、糾弾集会を開いている。

 

 

しかし、公安当局の意図は、一旦法院で制止された。ソウル中央地方法院の令状専担判事3名は、28日“社労連が国家変乱を宣伝・扇動する行為を目的に構成された団体と言う点、また、その活動が国家存立の安全や自由民主的基本秩序に実質的害悪を掛ける危険性を持つ点に対する弁明が不足する”と、彼等の令状を棄却した。

 

令状は棄却されたが裁判は残っている。

 

社労連は革命的社会主義労働者党の建設を目標にしてきたが、北韓など、現実社会主義の体制に極めて批判的な組織だ。社労連運営委員長である、オ・セチョル教授の‘信念’も、長い間変化しなかった。彼はノ・テウ(盧泰愚)政権時代に民衆会の準備委員長、キム・ヨンサム〈金泳三〉政権時代に民衆政治連合代表、ノ・ムヨン(盧武鉉)政権時代には、‘労働者の力’代表を歴任した。彼が属した組織等は一貫されるように資本主義を批判した。

 

‘左派’として、彼の政体性(正体、実態ー訳注)も変化しなかった。その様に、ノ・ムヒョン、キム・デジュン(金大中)政権は無論、キム・ヨンサム、ノ・テウ政権も連行しなかったオ・セチョル教授を、イ・ミョンパク(李明博)政府の警察が国家保安法違反嫌疑で逮捕したのだ。

 

この様に公安当局としては、‘失われた10年’(ハンナラ党と李明博が、金大中・盧武鉉民主化政権の10年を攻撃した言葉―訳注)は、‘忘れてしまった10年’だ。10余年の間、韓国社会が積み重ねた民主主義の進展と人権の改善の成果を、公安当局は忘れたい様に見える。

 

さらに、時点が変だった。仏教界の大規模時局集会が開かれる一日前、社労連の組織員が逮捕され、集会当日には女間諜(スパイ)事件が発表された。警察の発表を見ると、スパイ事件は2年ほど前から調査して来たし、社労連事件はすでに7月30日、逮捕令状を受けておいた状態だった。

 

そこで警察が、事件を準備して、時点を待った上起こしたと言う推測が説得力を得た。バク・レグン、人権運動サランバン常任活動家は、“仏教界の行事に乗じて蝋燭集会に水を差そうとする意図が明らかだ。”と指摘した。社労連事件の捜査主体でも、事件の性格が覗き見える。この事件の弁護を担当した‘民主社会のため弁護士の集まり’(民弁)キム・ドヒョン弁護士は、“国家保安法組織事件は、慣例上、ソウル警察庁保安課で捜査する”とし、“今回の事件の捜査主体は、南大門警察署で、極めて異例的”だと言った。彼は、“南大門警察署はチョンノ(鐘路)警察署とともに、蝋燭集会を主として管轄する警察署ではないか”と付け加えた。蝋燭集会を狙った事件と言うのだ。

 

警察は、社労連が蝋燭集会に参加して、印刷物を配布し街路行進に参加した点を問題にしたりもした。

 

社労連逮捕が、突出事件ではない。不吉な予感は今年始めから感知された。全北警察庁保安捜査隊は、1月29日‘南方統一愛国烈士追慕祭’に中学生180名を引率して行った嫌疑で、教師キム・アグメ〈49〉氏を拘束した。2006年12月に開かれた追慕祭参加を、1年余あとには問題視したのだ。韓総連議長時代から、10年が過ぎるように手配生活を持続してきたユン・ギジン、汎青学連南側本部議長も‘こともあろうに’イ・ミョンパク(李明博)就任2日後である2月27日、逮捕された。蝋燭集会が熱くなった後には、公安政局(治安取締りの政情の意ー訳注)の影も濃く為って行った。

 

国軍機務司令部(機密部門の司令部ー訳注)が6月2日、個人プログにレーニンの<帝国主義論>などで引用した文を挙げて、<マルクスの革命的思想>冊子を所持した嫌疑(国家保安法上、利敵表現物所持等)で、陸軍六軍団所属のチョン何某下士官を逮捕した。機務司(司令部)は、同じ時期に学生運動経歴がある海兵隊の権・何某少尉、特戦司令部イ・何某中尉を利敵表現物所持嫌疑などで逮捕した。しかし、軍検察はチョン下士官に対して不起訴処分を下した。当時、権少尉などを接見したキム・ジョンウン弁護士は、“機務司が、組織論理に従って彼等を逮捕したが、軍検察は気に掛けない雰囲気だった。”と伝えた。この様に、公安警察、機務司などが自身の存在を証明しようと言う企図は継続され、時折挫折した。

△オ・セチョル教授は長い間、左派として過ごしてきた。

 

 

逮捕令状では、蝋燭集会の道路交通法違反だけ

 

 

この様に、公安当局の雰囲気は、年初めから水底で形成されていた。組織事件に対する訴文もあった。ハン・ジィヨン民主化実践家族運動協議会(民家協)幹事は、“大学路(ソウル大そばの学生街を貫く街路ー訳注)などの社会科学の書店で、警察と見える人達が、社労連の刊行物<社会主義か? 野蛮なのか?>などを、買っていったと言う話が前からあった。”と伝えた。続いて彼は、“去る年末から組織事件20件が準備されていると言う話も出回っている。”と付け加えた。パク・レグン活動家は“中秋(陰暦8月15日)を前後して、組織事件が引き続いて起こる可能性が濃厚だ。”とし、“公安警察が、国会で来年の政府予算審議が始まる前に、自身らの存在を証明し予算を確保しようとする事の為”だと言った。ひょっとすると、社労連事件が公安政局の終わりではなく始まりなのだ。

 

そうであれば、なぜ社労連が最初の標的となったか?ハン・ジヨン幹事は、“社労連の様に小さい組織を相手に、予め利敵団体の判決を受けた次に、もう少し大衆性のある組織を狙う可能性がある。”と分析した。しかも、オ・セチョル教授は、社会主義を公然と主張して来たありさまだから、‘事件’を作るのに良いと判断した可能性があると言うのだ。彼は、“その様に先例を作れば、色が社労連よりわずかな組織も引っかかる可能性が大きくなる。”と付け加えた。

 

社労連は、今年2月23日出帆した組織だ。大衆行動綱領で、△ 非正規職撤廃、 △ 労働時間―雇用連動性、 △ 完全な罷業権争取、△ 労働者の生産統制、等を掲げる。(사노련 누리집swl.jinbo.ne 参考)。

 

社労連は、革命的社会主義労働者党建設を目標に、労働解放連帯、ウルサン(蔚山)労働者新聞など四つの組織が結合して作られたが、拘束された7名の中で、全国非正規職労組連帯会議執行委員長を務めた労働運動家、オ・ミンキュウ氏などが含まれている。

 

民主労総(全国民主労働組合総連合)の中に‘現場派’として分類される彼等は、非正規職闘争で先頭に立ってきた。

 

ハン・サンヒ建国大法学部教授は、“利敵団体と言う言葉は、敵を利するようにすると言う言葉だが、社労連は、労働者のためと言うのだから利敵の敵は労働者と言う意味だ。そうであれば、全国の労働組合が利敵団体ではないのか?”と指摘した。

 

さらに、社会主義はそれ以上に禁忌(タブー)ではない。今韓国では社会主義を志向する運動組織が珍しくはない。社会主義者のカミングアウトは、1989年インチョン(仁川)地域民主労働者連盟(仁民労連)事件にさかのぼる。ユン・チョルホ氏など、仁民労連事件で拘束された彼等が、法廷で自身が社会主義者だと公開宣言したのだ。彼等の社会主義者宣言は、1990年発刊された<そうだ、われわれは社会主義者です!>に盛られた。

2002年ソウル市長選挙当時、ウォン・ヨンス社会党候補がテレビジョン討論会で、“私は社会主義者です。社会主義者の候補が出馬したことを、どの様に思いますか?”と尋ねたし、イ・ミョンパク、ハンナラ党候補は“良いことですよ、一緒に討論もして、どれくらい好きですか?”と答えた。

 

この様に87年以後韓国で、社会主義は‘市民権’を獲得してきた。しかも社労連は、‘公開’組織として彼等の主張と活動は、社労連のホームペイジ‘ヌリチブ’を通しても幾らでも確認される。社労連事件の弁護を担当するキム・ドヒョン弁護士は、“主張が公開されていて証拠隠滅の憂慮がなく、オ・セチョル教授のように、身分が確実な人達なのだから不拘束捜査が当然だ。”と指摘した。

 

警察は、社労連の、常備軍廃止と民兵隊創設の主張を問題視する。

 

キム・ドヒョン弁護士は、“国家保安法に対する合憲判決当時にも、世上の自由は認めるが‘現存する危険’に対してだけ保安法を厳格に適用されねばならない”のであり、“かれらの行動は、逮捕令状で警察が指摘するように、蝋燭行進に参加して道路交通法を違反した事実だけではない。”と指摘した。

 

行動はしなかったが主張だけで処罰するのは、過度の法適用だと言うものだ。ハン・サンヒ教授は、“明白で現存する危険と言う概念まで動員する必要もない。”し、“蝋燭集会に参加することが暴力行動だとすれば集会に座って、新自由主義反対を叫んだ人達は全て捕まえなければ為らないと言う話ではないか?”と語った。

 

更に、警察が推定する社労連の会員は、70名を超えないことで知られている。果たして、70名が結成した団体が、‘自由民主主義の基本秩序を危険に陥れるようにして、国家変乱を宣伝・扇動する目的’の利敵団体として威力を持つだろうか?

 

最近、判決で国家保安法上、利敵団体規定は比較的厳格に適用されてきた。大法廷は、去年12月、一心会関連者3名に対し国家保安法上、会合、潜入、脱出罪を認定して最高7年刑を宣告した。しかし北韓の機関員と会った嫌疑で起訴された一心会さえ、利敵団体として‘団体性’は1・2・3審で一度も認定されなかった。

△ 1990年民衆党創党大会にオ・セチョル教授〈向かって右側〉が、チャン・ギピョ氏〈中央〉、などと一緒に参席した。オ教授は、当時に民衆党教授委員会委員長を担当した。

 

今年1月には、軍事施設などを撮影し国家保安法違反嫌疑で起訴された写真作家、イ・シウ氏が無罪判決を受けた。先の年末には、非転向長期囚の墓域に‘不屈の統一愛国闘士’の文句を刻んで、国家保安法違反嫌疑で不拘束起訴された、クオン・ナクギ統一広場共同代表が、控訴審でも無罪判決を受けた。例え、国家保安法は存置したとしても、国家保安法の適用は‘忘れられた10年’の間に、減少してきた。

 

 国家保安法違反嫌疑で立件された人は、1998年785名から2007年64名に、十分の一に減った。

 

しかし、公安当局は〈李明博へのー訳注〉政権交代を契機に再び国家保安法の華やかな復活を企て、社労連に、利敵団体の規定まで適用する無理数をおいている。

 

 

“社労連事件は、人権悪化の信号灯”

 

 

公安当局の‘突きつけ’は、終わりがない。検察・警察は、女間諜ウォン・ジョンフア氏事件で拘束された黄何某大尉に対し、不告示罪を適用した。パク・レグン活動家は、“中部地域党事件以来、非告知罪が初めて適用された”と指摘した。先の7月12日、警察は、ユン・ギジン汎青学連南方本部議長に隠れ場所など便宜を提供した嫌疑で、ユク何某(32)、キム何某(30)氏を不拘束立件した。

 

国家保安法の中でも、人格を破壊する条項として指摘され事実上死文化された、非告示罪と便宜提供嫌疑が、歴史を逆らって蘇ったのだ。

 

ますます後退する韓国の人権状況は、国際的関心事として浮かんでいる。

 

国際アムネスティ韓国支部キム・ヒジン事務局長は、“韓国と言えば、国家保安法を思い浮かぶ程に、国家保安法は国際社会の長い間の関心事”とし、“社労連事件を国際社会が、韓国の人権状況が悪化される信号灯として受け入れる可能性が大きい。”と語った。彼はまた“韓国は、アジアの人権国家としてイメージを重ねて来た。”のであり、“これを崩すことは国益にも決して助けになることはない。”と付け加えた。

 

警察は〈市民がデモをする〉街路で、空色の染料で‘不可触’市民を区分し、国家保安法で赤色を上塗りしている。

 

この様に、蝋燭集会の強行鎮圧で、集会・示威の自由が危険に直面し、国家保安法の適用で世の中の自由が危機に置かれた。

 

社労連の活動家の様に、出し抜けに押しかけた警察に捕まって行く‘連行の追憶’が悪夢の様に生き返った。

 

連行の現実の前に、むしろ、“私から捕まえて連れて行け”と言う抗議の声が爆発する。利敵団体の利敵は、李敵(利敵と李敵は、ハングルでは同じ発音であるー訳注)、即ち、‘イ・ミョンパク(李明博)を敵対視する行為’と言う皮肉も聞こえる。

 

人権なのか! 野蛮なのか!今、韓国は岐路に立っている。 

 

〈訳 柴野貞夫〉






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http://freeuse.or.kr/license/2.0/yg/index.htm





<参考>当サイト 世界の新聞から

 

☆ 40 国家保安法を、廃止しない韓半島の平和は、矛盾である、分断の冷戦と国家保安法廃止の熱情の差異!!(韓国・チャムセサン 民衆言論 1018日付け)

 

 
☆ 16 一心会宣告公判、一心会は無かった。利敵団体構成など重要嫌疑、無罪判決(韓国・民主労働党ニュース 20074.17