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(韓国 時事週刊誌‘ハンギョレ21’2009・04・03 第754号)

http://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/24665.html

 

 

ハンギョレ21・〔創刊15周年企画〕(世界の進歩メディアを行く)


 

 

“死に追い立てられない社会作り”

 

日本版‘ハンギョレ’<週刊金曜日>

 

編集長“広告なき独立言論として生存する事”





△北村肇(57)<週刊金曜日>編集長

 

 

<週間金曜日>は、‘日本市民社会の同伴者’と呼ばれるに値する。広告を載せない代わり、企業の過大広告を分析・批判する読み物<買うのはいけない>を年毎、単行本として発行し、その印税を財政的基盤としている。<ハンギョレ21>は、3月25日、北村肇(57)<週刊金曜日>編集長に会い、進歩的独立言論が生きて行く方法に対して問うた。1974年<毎日新聞>に入社して、言論界に足を踏み出した北村編集長は、新聞労連委員長と<サンデー毎日>編集長を経験した日本の代表的中堅言論人だ。

 

 

―<週間金曜日>について、紹介してください。

 

 

=昨年12月に創刊15周年を迎えた総合時事週刊誌だ。日刊全国紙が圧倒的部数でメディアの中心になりながらも、容易くは、事実と真実を伝えてくれない事に対する市民の不満が契機となった。<朝日新聞>の著名なジャーナリスト、本多勝一が中心となって、日本版<ハンギョレ>を作ろうとしたが、相当な資金が必要で無理だった。週刊誌であれば可能だろうとみて、全国各地を回り3万5千名の定期読者を集めた。今は、定期読者1万7千名、書店販売が1万部程度だ。編集委員制度を通して、各界専門家と前・現職、言論人、市民運動家が集まり、紙面を飾る。

 

 

―定期購読が、最初より半分に減った。維持が可能なのか?

 

 

=‘潰れないで、よくも持ちこたえる’と言う声を良く聴く。(笑い)

負債なく、広告を受けないと言う‘所信’を守って、ここまで来る事が出来たのは、‘買っては駄目だ’と言う単行本(週刊金曜発行)の(売上げの)役割が大きい。1999年から出版して、200万部以上売れた。広告に依存しない事で企業批判が可能だった。過ぐる15年間、持続的に具体的な商品を見せて、‘この商品は駄目だ’とキャンペーンを連載し、それを本にまとめ10億円程度の収益を出した。これが一つの社会現象となり<‘買っては駄目だ’を、買っては駄目だ>と言う本が、ベストセラーに為ったほどだ。

 

 

―<週刊金曜日>の主要取材・報道領域は?

 

 

=我々は、他のように、その週に起こった事件を書くのではない。その背景を取材し載せる。他の雑誌より一週遅く報道する代わり、その背景を冷静に整理し書く。新聞とTVは、何か事件が広がれば、深くなく一応書いてみるが、我々は、こんな事は止めようとした。政府が発表した内容を、そのまま書く事も問題だ。

 

 

―米国発金融危機が、全世界を強打している。日本も例外ではないのでは?

 

 

=皆が100年に一度くる危機だと言うが、私は千年に一度くるほどの危機だと見る。金融危機が目に最も良く見えて、見抜く事も容易いが、今の危機は、人間・環境・文化などあらゆる分野に露呈された危機だ。それをどんなに処理しなければならないかも問題だが、いまは、何処に根本的問題があるのか把握さえ難しい状況だ。金融だけに特化された危機ではないと言う認識が必要だ。世界がパニック状態におち込まない様に、‘根本的な問題’が何処にあるのか分析して探し出さなければならない。政治家と知識人、言論人たちがこれを深刻に考えて行かなければ、人類が共倒れすると言う危機意識を持たなければならない。

 

 

―永遠に執権する様だった自民党独走体制が、終着駅にたどり着く姿だが・・

 

 

=個人的に、自民党と民主党は、政策的に大きい差異が無いと見る。今では、執権党が変わる可能性は、ほとんど100%だ。しかし、圧勝は難しく見える。次の選挙で民主党が勝利するとしても、どの程度に勝つのかが核心だ。日本の政治指向が変えられると予測する人もいるが、自民、民主二つの党が政策的に明白な差異が無いと言う点で、どれだけ大きい変化が来る事ができるか、疑問だ。

 

 

―危機が深くなると同時に、最近‘経済大国’である日本でも、‘反貧困運動’が真っ盛りであると思うが・・

 

 

=戦後60年近い日本社会には、如何なる変化もなかった。何故か?皆は、暮らすに値したからだ。しかし状況が変わった。今後は、皆が暮らしに値しない事もあるとなった。社会的に、公平分配を考えねばならない時点になったと言うことだ。野党グループを形成した左派や革新勢力が、与党(自民党)と綱引きを続けてきた事は事実だが、どうなったのか、その間はすべて暮らしに値するから、形式的に争えば良いと考えたのではないかと思う。そんな役に立たない喧嘩を見守ってきた若い世代たちが、今、反貧困運動の中心となった。彼等は

野党である共産党と社民党は無論、執権自民党の中でも、考えが通じる人々とは一緒にやる事ができると言う柔軟性まで、見せている。彼らが、どうかすれば、日本を変える事が出来るかも知れない。

 

 

―媒体(メディア)の環境が急激に変化している。時事週刊誌、特に進歩的独立メディアとして生存戦略があれば・・

 

 

=広告に依存するメディアは、広告収入が減れば難しさを経験しているが、広告を載せない我々は、そうではない。定期読者を含んで5万部程度発行する事が目標だ。希望はある。他のメディアが書く事が出来ない事がポイントだ。巨大メディアが腐敗するほど、我々のような媒体に集まる事を信じる。ただし、考えが同じ者だけ読む‘同人誌’となっては難儀だ。同時に分り易い雑誌と為らなければならない。かちかちでしい表現、これが、‘進歩的知識人’らが犯し易い誤謬だ。立法・司法・行政府、そして企業まで、4大権力を批判できなければならない。

 

 

―進歩的媒体の役割は、何だと見る?

 

 

=社会が、構成員を死に追いやっては駄目だ。1人の人間も死んでは駄目だ。戦争で、金がなくて、死ぬのは駄目だ。どんな国、どんな社会でも、人が死に追い遣られない様にすること、こんな社会を作るための社会運動が、進歩メディアの役割であると同時に義務であると考える。

 

権力は、人が何人死ぬ事を、なんとも思わない習性がある。こんな権力を監視・批判し、‘生存確率’を高める政府を発信しなければならない。同時にそのまま書くことで終らずに、それを運動の次元に引っ張り出すメディアでなければならない。

 

(訳 柴野貞夫 2009年4月25日)