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(韓国・チャムセサン 200961日付)

http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&id=46542&page=1&category1=38

 

< ソマリアの海賊を取り巻く真実と嘘>

漁船に乗って、海賊となった漁夫たち
 

ソマリア海賊問題が、連日国際ニュースを飾っている。21世紀に米国や欧州、また韓国の軍隊が海賊との戦争を宣布することは、20世紀には想像することは出来なかった。21世紀になると飛び回る自動車に乗り、出かける事が出来るのに、海賊との戦争だなんて!我々の記憶の中の海賊は、幼い頃読んだ童話本や冒険小説に登場し、主人公達を苦しめた海の無法者達だった。ピーターパンの友達、ウェンディを甲板に縛っておいて、海に切り落とすと脅迫をしたフック船長、また、映画カリブの海賊に登場して、善良でも悪でもない妙な魅力を漂わし、映画の歴史上最も魅力的な海賊として極めた、ジャック・スペロウ船長が最も有名な海賊達だ。

 

外勢の干渉を受けなければならなかったアフリカの角

 

ソマリヤ海域で、各国の軍隊がミサイルを装着した軍艦と武装ヘリを動員し、彼らと戦争を繰り広げているが、その絵がよく想像できない。しかし、インターネットポータルサイトでソマリア海賊の写真を検索して見ると、21世紀の海賊のみすぼらしい身なりに、更にいぶかしくなる。小さな木船に、不揃いに向かい合って乗った彼等は、どれだけ仔細に覗いてみても海賊であると言うよりは、貧しい漁夫の様に見えるだけだ。せいぜいやっと、在来式の武器でも手にすれば幸運な人びとの様に見えるのに、どうして各国の政府らは、超大型の軍艦をソマリアに送り込んで大騒ぎなのか?

 

真ん中の黄色で表示された場所がソマリア

 

アフリカの角と呼ばれるソマリアは、アフリカ大陸の東側中間の地点に位置している。アフリカの地図で東側中間に角のように突き出ている部分が即ちソマリアだ。それ故、ソマリアは紅海とインド洋を結ぶ港口として、中央アジアと東南アジアに向って開かれている。そして、世界石油生産量の4分の一が通過する主要要所に位置している。

即ち、こんな理由によってソマリアは,昔から絶えることなく外部勢力の干渉を受けなければならなかったし、冷戦時代には、米国とソ連の代理戦を経験しなければならなかった。こんな過程でソマリア内には、派閥と部族間の葛藤が生まれ、その結果ソマリアはむごたらしい内戦に巻き込まれ死と飢餓の恐怖を経験した。

ソマリアは、内戦で1991年に政府が崩壊したあと、今まで事実上政府がない状態が継続されて来たので、ソマリア海域に海賊が現れ始めた事は、即ちこの時点からだ。いや、ソマリア人達に公平にして正当に表現しようとすれば、この時からソマリアの人々は、自身を守ってくれる海洋防犯隊が必要になった。

1991年当時、世界は、栄養失調で死んでいくソマリアの子供達の写真を廻し見ながら、悲惨な人間の姿に驚愕を禁じ得なかった。国連を始めとする救護団体等は、ソマリアに食料を送らなければ為らないと声を高めた。1988年ソウルオリンピックを迎えて、今まさに、世界舞台にデビュウした韓国でも、ソマリアの子供達に食料を送ろうと言うキャンペーンを繰り広げるほどだった。

 

ソマリア海域に現れたのは、核のごみ

 

しかし、ソマリア海域に現れたのは食料をいっぱいにした船ではなく、化学物質と核廃棄物で溢れた船だった。ヨーロッパから来た疑わしい船は、核廃棄物が入っているごみの堆積を、ソマリア海域に捨てて帰って行き、こんな事が数え切れず繰り返えされた。ヨーロッパの企業らは、無政府状態のソマリアから何らの制裁を受ける事無く、思う存分廃棄物を捨てる事が出来る機会の土地となったのだ。

彼ら企業はヨーロッパでは、1トン当たり1千ドルの処理費用が掛かる廃棄物を、1トン当たり3ドルを支払って海に捨てた。廃棄物処理費用は、内戦を繰り広げた軍閥達の財布に入っていった。

その後からソマリアの人々は、原因を知る事が出来ない皮膚病と吐き気などの症状に苦しめ始められたし、奇形児出産率が急激に高くなった。

こんな症状は、2005年に津波がインド洋を襲った時、爆発的に増加した。放射能症(放射能に露出された時、現れる症状)に見える人々が増えたし、これによって300名以上が死亡した。国連環境プログラムの報告によれば、ヨーロッパ企業らが捨てて行った廃棄物には、ウラニューム、放射能廃棄物、カドニューム、水銀等の化学廃棄物が含まれていた。

他の国々の船が、ソマリアの人々に持って来てくれたものは、疾病と環境汚染だけではなかった。彼等は、小規模漁業で生計を立てて来たソマリア漁夫達の生存基盤自体を揺り動かした。ヨーロッパとアジアから来た外国の漁船らは、毎年約3億ドル程度のブリと海老、ロブスターなど、魚類と海産物を大量にかき集めていった。アジア出身の漁船の中には、当然にも韓国漁船も含まれていた。

 

外国漁船らは、漁夫達の網を取り除いて行く

 

甚だしいのは、外国漁船らはソマリア漁夫達が打って置いた網を取り除くことまでした。大規模の漁船と装備を備えた外国漁船らの不法漁獲に、ソマリア漁夫達は為すすべがなかった。外国漁船らが荒らして通り過ぎた後、ソマリア近隣海域で小さい漁船で漁業をするソマリア漁夫達が取る事が出来るものは、何もなかった。外国漁船の不法漁獲は、ソマリア漁夫達の生計手段を強奪したし、ソマリア海域の生態系を破壊させた。

それで、ソマリアの人々には、彼らを保護してくれる政府と同じものの存在がなかった。万一他の国でこれと同じ事が広がれば、すぐさま海軍が出動し外交的な摩擦が現れたかも知れないが、ソマリア人らは、自らの手で外国船舶の不法漁獲と廃棄物投棄に対し、自身の海と生命を守らなければならなかった。漁夫達は船に乗って出て、外国船舶の不法行為を妨害した。そして、外国船舶が犯した不法行為に対して一種の罰金も受け取った。無論、こんな過程で、本当に海賊だと呼ばれるほどの人々が登場した事も事実だ。

数十年に亘る長い戦争内戦に包まれた強大国の代理戦で、ソマリア民衆の人生は完全に壊され、200612月米国の支援を受けたエチオピアとソマリア過渡政府が、ソマリアを侵攻し首都モガディシュを中心に勢力を拡大、事実上政府と同じ機能をしていたイスラム法廷連帯を倒したので、ソマリアは再び内戦に巻き込まれる事となった。反復される戦争の中で、世界で最も貧しい国の席を蹴飛ばされ、立ち上がる事が出来ないソマリアの民衆たちは、暮らしの問題にあって、特別な選択権を持つ事は出来なかった。漁夫達が、外国船舶から金を受けたと言う話が拡がるや、金を儲ける為の目的で船に乗る人々が生まれたのだ。

 

世界平和を危険にする厄介者となった漁夫

 

しかし、今までソマリアの海賊に攻撃を受けたと知られる外国船舶の中で、不法漁獲や廃棄物投棄のような事に、関与しなかったと、自信あるように言う事が出来る船舶は幾らも無いだろう!

こんな事実を、該当国家の政府が判らなかった訳が無い!

しかし、各国の政府らは、自国の船舶がソマリアでどんな事をしていたかを隠したまま、無条件に海賊の攻撃を受けたと主張し、自国の船舶を保護するためにソマリアの軍隊を派遣しなければ為らないと主張した。これ等国家の軽率な行為で、いつの間にかソマリアの漁夫たちは、世界平和を危険にする厄介者になってしまった。

インドとロシアがソマリア海域に軍隊派遣を決定し、間もなく200810月に国連安保理でソマリア海賊問題解決のために、軍隊を派遣すると言う内容の決議案―1838号を通過させた。各国の政府らは、待っていました、と言う様にソマリアへ向い始めた。現在、ソマリア海域で軍事作戦を遂行中である国家は23カ国だ。彼らが押し立てる名分は自国の船舶を保護するためだ。しかし、正しく保護が必要な側は、果たして誰であるのか?

海賊と紹介されたソマリア人、スクレアッリは、ニューヨークタイムズとのインタビューで我々は、我々が海賊だと考えない。海賊は即ちソマリアの海で不法的な漁獲に従事し、廃棄物を投棄し武器を運搬する者達だ。我々は、我々の海を守ろうとするだけだ。我々は、海岸警備隊と同じだと考える。と語った。

 

本当の海賊は誰なのか

 

ソマリアのニュースサイトである<ワドゥホニュース>によれば、ソマリア人の70%がソマリアの領海を守る軍隊の形態として、海賊達を強く支持することを調査した。(列強の)巨大な軍艦は、まるで自分達が、悪党に対決して世界平和を守る守護者であるかのように振舞っているが、ソマリア人達の目に、彼等は他でもない略奪者であると同時に、破廉恥な海賊に過ぎないだけだ。

さらに、ソマリアに外国軍艦が駐屯する問題にあって、一つ指摘し、乗り越えなければならない問題は、やはり、彼ら(列強が)ただ単に、自国の船舶を保護するためにその多くの軍隊を派遣したのかと言うことだ。23カ国から派遣された巨大な海軍の艦艇が敵として指名した彼等は、せいぜい10名も収容できない木船に乗り在来式武器を持った人々だ。どれだけ彼等の数字が多いとしても、ひとたび規模面で、あまりにも大きい差がでる。


写真説明軍艦の近辺に近付いた海賊の写真を見ると、軍艦に比べ大きさがあまりに小さい海賊船を、直ぐ探し出すのが難しいほどだ。


軍艦の近辺に近付いた海賊の写真を見ると、軍艦に比べ大きさがあまりに小さい海賊船を、直ぐ探し出すのは難しいほどだ。軍隊を派遣した国家たちの意図が、単純に船舶を保護する為である事に終らないと言うのは、韓国の例だけ見てもよく知る事が出来る。20093月に「青海部隊」がソマリア海域に派遣された後、国防部は、青海部隊がどれだけ勇猛に業績を立てているかを宣伝する事に熱を上げている。言論は、国防部の宣伝をそのまま受けて書き、海賊キラーと言う修飾語まで使用している。青海部隊に対する彼らの修辞は、船舶保護の次元を越えて、世界の中の韓国軍を、轟かすことに焦点を合わせている。

韓国政府は、イラクとアフガニスタンに軍隊を派兵した後、その経験を基礎として積極的に海外派兵政策を推進している。また再び米国の要請によって、アフガニスタンに軍隊を再派兵することを考慮しているのであり、海外派兵のための常時部隊を創設し、海外派兵時、国会の同意手続きを最小化すると言う内容の、「平和維持軍派遣法」を制定しようと努力中だ。2007年に国連平和維持軍としてレバノンに同盟部隊を派遣した事や、ソマリアに青海部隊を派遣した事は、こんな次元での積極的な海外派兵のための足がかりを積むためだ。さらには、初めて海軍を海外に派兵したことは、初めての経験として大きい意味をもつ。

しかし、イラク、アフガニスタン、レバノン、そのどの場合を見ても、「平和維持」や「再建」等の様な海外派兵の名分はただ包装に過ぎない。派兵の実際目的と結果は、その地域の平和と安全とは距離が遠かった。海賊の掃蕩を掲げるソマリア派兵も、やはり同じだ。韓国政府が積極的な海外派兵を受けようとする窮極的な目標は、米国とヨーロッパが主導する、軍事力を通した世界秩序再編に参加する事だ。「世界平和」を掲げて、小さな国々を侵略し占領して、彼等の人生と生活の拠り所を破壊することに一つの役割を持とうとするのだ。

前に言及したように、ソマリアはアフリカ大陸とアジアを繋ぐ橋頭堡として、そして天然資源輸送の主要通路として、強大国等に地政学的に重要な位置に置かれている。やはり、ソマリアが抱かえている問題が一群れの海賊達だけだったら、米国と英国、ロシア、韓国など23の国家が巨大な艦艇と最新式武器を動員し、ソマリアに駆けつけるだろうか?2006年、エチオピアとソマリアの過渡政府が首都モガディシュあに向った時、彼らが持った情報と武器が米国の支援から出た事を知っている彼等は、ソマリアを、敢えて第二のイラクと呼んだ。

今、戦争と貧窮で苦痛を受けるソマリアの民衆達に切実に必要な事は、海賊の掃蕩ではなく、過去侵略者達の反省と謝罪、そして他の国の民衆達との真実の連帯である。そして、ソマリア民衆は、彼等の土地に手を出す者たちに対して叫んでいる。海賊に変身した漁夫達がそうだった様に、ソマリア民衆は、自分の未来を自ら守っていく力があると。                (訳 柴野貞夫 200966日)