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(韓国・労働解放実践連帯、2010・11・25、西海事態に対する声明書)

http://www.hbyd.org/10976

 

 

以下の声明書は、資本主義に代わる韓国労働者階級の真の代案である社会主義を目指そうとする、韓国の諸党派のなかにあって、党建設と、その綱領を創出する過程で、マルクス・レーニン・トロツキー主義を踏まえ、理論的にも実践的にもリーダーシップを取っている「労働解放実践連帯(準)」による、西海事件への見解である。

                                      

 

「労働解放実践連帯」は、声明で次の様に指摘している。   

 

○チョナン艦沈没の原因を隠ぺいしたまま、北韓の責任となすりつけ、北韓のたびたびの警告にも拘わらず、西海で北に対し、実射撃を繰り返した行為が、北韓の海岸砲攻撃の導火線となった、

 

○軍事的衝突の根源には、米帝国主義イ・ミョンパク政権の、対北敵対政策と、根拠なき北崩壊政策がある。これは即時廃棄しなければならない。

 

○北・米間の対話を通して、平和協定の締結など、韓半島平和体制の構築を一刻も早く達成しなければならない。

 

 

<訳者解題>

 

イ・ミョンパクは執権以後、国内危機(教育・医療の民営化、米国産輸入肉の無差別輸入に対する巨大な抗議デモ、自動車産業労働者の工場占拠闘争など、)韓国資本主義の危機を突破する政治的梃子として、対北強硬策による軍事的緊張によって、民衆の国家への統合を画策してきた。北と、キム・デジュン、ノ・ムヒョン両大統領との間で取り交わされた、2000年の6・15共同宣言、2007年の10・4宣言に基づく北韓・南韓の連合・連邦の道筋や、経済・人的交流の展望に向けた協力関係を無視し、公然と北韓の崩壊政策さえ口にしてきた。チョナン艦事件は、その最たるフレームアップであるが、この綻びだらけのでっち上げは、逆に、国連外交と国内世論操作において、リ・ミョンパク軍政与党の大きな失点となった。

 

その後も、それまでも、絶えず北韓との軍事的火種を生み出す西海の「北方限界線」は、イ・ミョンパクにとっての政治的カードであり続けた。声明が指摘するように、南韓のこの地域での北への軍事的挑発は絶えた事がない。今回の事件はこの様な経緯のなかで、ヨンピョン島の南韓沿岸砲基地からの、北へ向けられた砲撃に、北が反撃した事から生まれた初めての民間人の死傷と言う事実をイ・ミョンパクは最大限に利用した。

 

北による「非人道的行為」「韓国戦争以来の陸上攻撃」の国民扇動が功を奏し、韓国国民のなかに、「戦時状況での国民統合」が一定の効果を生み出しているといえる。

国家が他国に「戦争」を仕掛けるとき、国家によって「愛国者、国家主義者」が生み出されるだけでなく、民衆の中からも「自然発生的に」生まれるものである。それは、民衆が国家の利害を、自分たちの利害と勘違いさせられてきたことからに他ならない。資本主義国家の国益とは、資本家階級の私的利害に過ぎない。この事実は、政治体制に国民がいかに参加しているかと言うこととは関係なしに、日常の資本主義的生産関係の中に、資本と労働の隷属関係が既に規定されていると言う過程に、資本家階級の独裁体制が実現されているからである。しかし、このことは民衆にとって、十分理解されにくいのであり、支配階級の欺瞞が功を奏する理由でもある。

 

民衆だけではない、今まで、韓国の進歩言論と称したハンギョレ、オーマイニュースや、左翼を標榜する諸党派の一部まで、イ・ミョンパクの国民統合に組み込まれ、非難する相手を間違って、北韓非難の大合唱を行っている始末である。

この事は、日本の多数の国民や、言論媒体、そして日本共産党を含む諸党派の西海事件をめぐる対応が、大東亜戦争前夜を思い起こす体制翼賛的統合の姿に見てとれる。かれらに共通するのは、本当に非難すべき相手を糾弾し、生み出された事件の真の原因を把握せず、「国家への統合」と言う資本家階級の不当な画策に組み込まれて行っている事だ。

 

いま彼らがすべきことは、北韓を非難する事でなく、韓半島の平和体制構築に一貫して反対し、絶えることなく、北韓を挑発し続けて来たイ・ミョンパク軍政与党政権と、それを支えてきた米帝国主義の北韓侵略策動と軍事的脅迫行為を即刻糾弾することである。さらに、西海事件を利用し、憲法改悪のための憲法調査会の始動を画策し、武器三原則の撤廃をねらい、米帝国主義との軍事同盟の強化を通して、日本帝国主義としての独自的な軍事大国化へ駆け上がろうとする菅資本家政府を、糾弾することである。

 

西海事件を理由に、北韓への政治的圧力として、また、国内の国家主義的団体の攻撃に迎合して、一旦決定した「朝鮮学校授業料無償化」を、無期延期した菅政府の不当極まりない行為に、断固として抗議することである。

 

 

 

(声明本文)

 


西海上の南北の軍事的衝突は、韓半島の平和体制構築が、労働者民衆の切迫した課題である事を示している

 

 

 

 

 

1)

11月23日午後2時34分ごろ、ヨンピョン島では北韓の砲撃4人の軍将兵と民間人が死亡し、十数名が負傷にあう深刻な事態が発生した。これにより、また韓半島の軍事的緊張が高潮している。ヨンピョン島付近での軍事的衝突は,南韓の‘護国’訓練の一環として実施された実射撃訓練が直接的な契機となったが、過去数ヶ月間の韓半島の軍事的緊張が継続して高潮していた為、この日の事態は、すでに予見されたものだった。

 

米帝国主義と南韓は、チョナン(天安)艦沈没以後、チョナン艦沈没の正確な原因を隠ぺいしたまま、北韓の責任としてなすりつけ、以後、西海上で一連の軍事訓練を敢行しながら、軍事的緊張水位を継続して高めていった。護国訓練に関連しても、すでに何回も、北韓の警告と抗議があったにも拘わらず北方限界線の付近で実射撃訓練を進めていたし、これが北韓の海岸砲攻撃の導火線となった。

以後、南韓側もまた、海岸砲に対する砲射撃をする事で韓国戦争(朝鮮戦争)以後最大の局地戦が発生する状況に至った。

 

 

2)

ヨンピョン島付近での軍事的衝突は、米帝国主義と南韓の対北敵対政策が、北韓との問題解決に助けとならず、むしろ更に大きい軍事的緊張を惹起したし、結局には局地戦が発生する状況になった事を明らかに見せる。

執権まえ、北韓との対話を標榜したオバマは、執権後、はっきりした対北政策を提示しないまま、いわゆる“戦略的忍耐”を云々しながら‘北韓が行動を変えなければ、過去の様に容易く手を差し出さない。’とする態度を取った。イ・ミョンパク政権もまた北韓に対し、強硬な敵対政策で一貫した。

 

こんな立場とともに、北韓が早晩(遅かれ早かれ)崩壊するであろうから、北韓が崩壊する時を待とうと言う根拠なき崩壊論に立脚したものだった。

しかしながらこんな政策は、北韓との関係を全く解決する事が出来ず、むしろ韓半島の状況を悪化させるものであり、今回のヨンピョン島付近での軍事的衝突の様な深刻な状況を生み出しただけである。

 

3)

韓半島は、1945年以後、分断状態が今まで持続されているのであり、さらに進んで、1953年以後停戦体制が今まで持続されているところだ。こんな分断状況は、第2次世界大戦以後、米帝国主義の世界戦略の結果として発生したものであり、自身の世界戦略を貫徹させようと言う米帝国主義と、分断状況を通して既得権を維持する保守勢力は、こんな分断状況を固着させ、これを自身の支配に活用させてきた。

 

こんな軍事的緊張の高まりによる苦痛は、もっぱら韓半島で暮らして行くあらゆる民衆たちに転嫁されるだけだ。

 

すでに、2名の若い将兵が死亡したし、軍事的衝突の隙間でヨンピョン島で働いていた2名の建設労働者が被撃死亡した。また、この様な軍事的緊張は、労働者の闘争を弾圧し抑圧するのに利用された。

そうであるからこそ、この様な軍事的緊張に反対し、韓半島の平和を確保することは韓半島の労働者階級と民衆の重大な課題である。

 

4)

罪なき民衆達を死に追いやる、これ以上の追加的軍事的衝突を許す事は出来ない。

核母艦を動員し、韓米西海合同訓練など、米帝国主義と南韓のイ・ミョンパク政権が依然として敢行し様とする軍事的緊張の高まりは、絶対許す事は出来ない。北韓もまた、これ以上の軍事的行動を中断しなければならないだろう。

 

そして、この様な軍事的衝突の根源にある、米帝国主義とイ・ミョンパク政権の対北敵対政策、崩壊政策は、即時放棄されなければならない。

 

5)

韓半島で、非正常的な停戦体制が継続維持されている限り、いつどこに火が付いて、23日の軍事的衝突の様な深刻な状況が繰り返されることは、労働者階級と民衆には、これによる苦痛を絶えることなく経験する事を意味する。

 

この様な状況を克服する為には、北・米対決構図が終息され、北・米間の対話を通して問題を解決して行かなければならない。そして平和協定の締結など、韓半島平和体制の構築が一刻でも早く達成されるようにしなければならないのだ!!

 

 

○無辜な民衆を殺す西海上の軍事的衝突を即刻中断せよ!

 

○米帝国主義とイ・ミョンパク政権は、対北敵対、崩壊政策を放棄せよ!

 

○労働者階級と民衆に苦痛を与える、韓半島の軍事的緊張の高潮に反対し、韓半島平和体制の構築の為に闘争しよう!

 

 

2010年11月24日

 

労働解放実践連帯(準)

 

 

 

(訳 柴野貞夫       2010年11月30日)