(英国・社会主義労働者党ウェブサイト2011・2・17付)
http://www.socialistworker.co.uk/art.php?id=23943
労働者の罷業が革命を強化している
○エジプト労働者のストライキは、エジプト革命を深化させ、資本主義自体を威嚇している。
○エジプト革命は、圧政者達を単純に追い出す事を乗り越え、体制そのものを突き崩す事が出来る。
○エジプト労働者の蜂起は、ムバラクに投資した米国と他の世界経済強国の利益や、スメート・パイプラインで天然ガスの供給を受けるイスラエルにとって、脅威となるであろう。
サイモン・アサブ
今、エジプトを、急に覆った労働者罷業の波は、エジプト革命の過程を深化させている。
途方もない多くの労働者が、全国の事務室、工場、繊維工場、港、病院、学校、大学を蹴飛ばして出て来た。警察さえ示威を起こした。
労働者は、罷業、占拠、示威を中止せよと言う軍の要求をそのまま無視した。
労働者達には、エジプト社会を変え、同時に資本主義自体を威嚇する潜在力がある。
ホスニ・ムバラクは、エジプト経済を“ナイル川の虎経済”に変えようとする夢を見た。ムバラク政府は、エジプトを国際的に有力な投資地域にしようと、国有企業を私有化し、賃金を下げ、取るに足りない社会保障規定も無くしてしまった。
国内外企業は、低賃金、残酷な労働条件、労組弾圧のお陰で大儲けした。
△写真 罷業に立った、大衆交通労働者達がスローガンを叫んでいる。 写真提供・Hassam el-Hamalawy
ほとんど,あらゆる世界経済強国が、ムバラクのエジプトに投資した。
今、彼等の利益が脅威を受けている。
エジプト労働者達の潜在力は、計り知れない。世界の総海上貿易で大略8%が、スエズ運河を通過する。
核心水路であるスエズ運河の両側先端の二つの都市、スエズとポートサイドが、今回の蜂起の中心だった。
米国の利益もまた、直接的な脅威を受ける。米国のエジプト投資で最も重要な部門が石油科学産業だ。そのうち、スエズ運河の堤に沿って繋がったスメート・パイプラインは、特に重要だ。
このパイプラインに拠って、毎日250万バーレルの石油が輸送される。
スメート・パイプラインは、紅海に位置したサウディアラビアの新石油ターミナルと連結されるので、これは不安定なペルシャ湾を迂回し様と造られたものだ。
この運動(エジプト労働者の蜂起)は、イスラエルに直接的な衝撃を与える潜在力を持つ。イスラエルは、自身が使う天然ガスの内、4分の1をエジプトに依存する。
このガスは、ガザ地区に隣接した地域で最も大きい都市であるエルアシリと、北部シナイ沿岸地域を横切るパイプラインによってイスラエルに供給される。エルアシリは、ムバラクの辞任前夜に、エジプト保安軍を追い出した武装反乱が生まれた場所だ。
組織労働者達が重要な役割をしながら、罷業の波に更に推進力が付け加わった。
いわゆる、“平凡な日”と呼ばれた1月30日の示威の時から、爆発して出た大規模罷業は、タフリル・広場の革命をぶち壊そうとする政権のごろつき共の意図に対する正面対応だった。
“タフリルの若者”たちと連帯しようと、職場を蹴って出て来た労働者達は、経済的諸要求も同時に押し立てた。その中で多いものは、長い間争ってきた賃金、労働条件、ボーナスに関するものだ。
今労働者達は、労働者を苦しめた職場班長と腐敗した管理者と、ムバラク執権党と関連した社長たちを、解雇せよと要求している。
現エジプト労働者運動は、エジプト社会で最も重要な部門で繰り広げられている。財産税徴収院、バス労働者、鉄道労働者、教師、空港技術者、乗務員、繊維労働者、通り美化員、ホテル労働者など、多様な分野で誕生した新生労働者組織などは、エジプト社会の関係を変える力だ。
彼等は、女性の役割も変える力がある。
△写真 闘争に立ったエジプト女性労働者 写真提供 Hossam el-Hamalawy
ナイル川流域の巨大繊維工場では,女性労働者数十万名が働く。彼等は、超低賃金を受けて暮らす。米国の社長から極めて良い評価を受ける高級綿を生産する最新繊維紡織機械を作動するところでもある。
この女性労働者達は、2007年発生した、相次いだ罷業と(工場)占拠でも重要な役割をした。いま彼等は、公正な賃金を要求する。
相次ぐ罷業で、革命広場が強化されている。大衆の反乱は、国家の物理的統制を崩した。
今、資本の支配自体が挑戦を受けている。
この罷業がどの様に発展するかは、まだ分らないが、今までのエジプト革命は驚きでいっぱいだった。エジプト革命は、圧政者達を単純に追い出す事を乗り越え、圧政的な体制それ自体を突き崩す事も出来るのだ。
(訳 柴野貞夫 2011・2・24)
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