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 (韓国ネットニュース PRESSIAN 国際ニュース  20118月18日付)
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=30110817181600&section=03


      福島の悪夢は現在進行形/原発マフィアを(引き続き)警戒せよ


                                         チャン・ジョンウク(張貞旭)松山大教授


福島原発事故から5ヶ月が過ぎた。日本政府は、依然として原発政策を放棄していないようにみえる。
17日、現地(日本の)マスコミによれば、北海道の高橋はるみ知事は、16日道議会特別委員会に出席し、「北海道電力の泊(とまり)原子力発電所3号機の営業運転再開を容認する」と語った。泊原発は定期点検のために停止していた。再稼働すれば、事故以後初めて、定期点検中の原発が動くことになる。
しかし、いまだ福島原発事故が残した傷は癒えていない。日本政府の情報隠蔽を一貫して警告してきたチャン・ジョンウク(張貞旭)松山大学経済学部教授は、「今後もっと被害が広がるだろう」と述べた。同じ大学の大学院で原子力政策を講義する張教授は、最近国内外で問題になっている高速増殖炉などの再処理分野で権威のある学者だ。
チャン教授は、PRESSIANが去る16日開催した福島原発事故と原子力の未来講演会で、「現在も福島原発による被害は増えており、相当期間続くだろう。同時に、今回の事態を生んだ根本原因は、原子力に利害関係を持つ‘原子力マフィア’にある。彼等が存在する限り、原発に依存しない日本の未来を描くことはできない。」と語った。また、韓国も次第に真似ていく様だとの憂慮も仄めかした。
一方、チャン教授は、原発の危険性を強調し、「人類が(核の)危険を克服できる唯一の道は、原子力に依存しない生き方への転換だ」と主張した。
以下、チャン教授の講演を整理した。(編集者)

増え続ける被害の証拠

チャン教授は、今回の事故によって、事故近隣に住んでいる住民は、二度と以前の生活を取り戻す事ができなくなった点を強調した。言葉通り取り返しのつかないという意味だ。(△チャン・ジョンウク(張貞旭)松山大教授。写真、PRESSIAN チェ・ヒョンラク)
チャン教授によれば、相変わらず、原発半径30kmに住んでいる住民12万名が避難生活を続けている。半径20km内は、警戒区域に指定されており、当局の許可がなければ出入りはできない。
事故5カ月を経ても、災害地域が減る気配は見られない。放射能が移動した西北に沿って、部分的に放射能数値が高い危険地域(hot spot)がでている。原発半径30kmの外でも増えているのだ。
結局、日常を破壊された避難民に被害が集中されていく。先月初めには、30km近隣に住んでいた93歳の女性が、墓に避難します。ごめんなさい」と遺書を残して自殺した。チャン教授は過去のチェルノブイリ原発事故を振り還えってみると、避難民が住んでいる地域は、ほぼ半永久的に居住は不可能だ」と推測した
一方、福島県は、青少年の健康に神経を使っている。近隣学校の運動場の土を入れ替え、施設の高圧水洗浄を実施している。また、36万名に達する18歳以下の青少年の甲状腺癌の調査を、生涯にわたり長期的に実施する計画だ。これらの費用だけでも相当な額になるだろう。
何よりも、食べ物の被害が深刻だ。原発から200kmぐらい離れた東京都内でも、放射能の高い地域がみつかっているが、東京の南側の静岡県の茶も出荷禁止になった。
これだけではない。放射能に汚染された麦藁を食べた牛から、暫定規制値を越える放射能が検出され、日本国民に大きな衝撃をあたえた。この牛肉は広く流通していたのだ。また、日本政府は、福島だけではなく、宮城・岩手・栃木県の牛肉にも出荷禁止の措置を下した。

特に、コメが最大の問題だ。やがて収穫期を迎える米栽培地域は、日本本土面積の半分に達する。日本政府は今年中に航空機測定をおこない、放射能汚染地図を作成する計画だ。すでに原発事故直後、蔬菜の出荷禁止が決定されている事に加え、穀物、肉類さえ安心して食べる事が出来なくなつたのだ。
鮮魚も同じだ。日本政府は、「鮮魚からは放射能が検出されなかった」と発表している。だが、日本原子力安全委員会は文部科学省に検出器感度を高める様に提言している。チャン教授は、鮮魚の食物連鎖を考慮すれば、事故後6カ月が過ぎてやっと影響が出てくる。鮮魚も安心する事はできない」と強調した。
日本政府は、事故収拾で発生した汚染水を海に大量廃棄した事がある。


被害隠蔽に汲々とする日本政府

福島原発は、相変わらず事故収拾にいたっていない。チャン教授は、次のように語った。
原発の建物内に12tに達する高濃度汚染水がたまっている。また、依然として近隣の放射能値が極めて高い。今月初めには、1号機の排気搭下で1時間当たり10シーベルト(Sv)の大変高い放射線量が検出されている。
人が瞬間6(Sv)以上被曝される場合、致死率は100%だ。」
「依然として、福島原発の安全に大口を叩く事ができない状況だ。核燃料の崩壊熱を効果的に冷却させられなければ、水素爆発はまた起こり得る。」
「原子炉から放射性物質が水蒸気とともに放出されている。また、高濃度汚染水によって、海洋や地下水の汚染が続いている。こういう状況なのに、東京電力は相変わらず関連データを公開していない。」
「この隠蔽によって、日本国民が直接的な被害を負った事例も発生している。放射性物質の放出量が最も多かった事故直後、日本政府は[放射性物質の拡散予測システム](SPEEDI)の資料を公開しなかった。この為に、原発半径20km南側に住んて゜いた住民は、高汚染している北西側に避難する事態が発生した。53日公開されたSPEEDIの資料に依れば、日本政府は315日には北西側の汚染が深刻である事をすでに予測出来ていたのに、国民の混乱事態を憂慮し、資料公開を隠蔽していたからだ。」

原子力マフィア−韓国は安全か

チャン教授は、チェルノブイリ事態を超える事故が起こった根本原因として、原子力で利益を得る原子力マフィアの存在を指摘する。原子力は安全だという神話をたれながしてきた科学者、直接的な利害関係に置かれた政治家や企業関係者によって安全不感症が生み出され、今回の事態でお手上げ状態になった。福島原発事故は、21世紀に入って人類が直面した最悪の惨事中の一つだ。韓国の隣の国で起こった。(写真・ニューシス)
チャン教授は、まず日本の電力料金制度自体が原子力開発に有利になっている事を指摘した。チャン教授に依れば、1964年に作られた電力料金単価は、総費用×(1+補修率)」で決められる。従って、総費用が大きくなるほど利益が大きくなる。補修率が一定の場合、初期投資費用が高い原子力は、他のエネルギー源に比べて大きな利益を生むのだ。
しかも、日本の電力産業は、一地域で一社以外は電気を販売することができない様になっている。九つの地域で地域独占体制が作り上げられ、再生可能エネルギーなどの普及は進んでいない。
特に、チャン教授は原子力マフィアに言及し、
○(企業の)研究費と企業寄付講座などに期待する原子力学者
在職中の接待、退職後の再就業を期待する官僚
設備投資の受注にぶら下がる、建設業等の企業
電力業界の莫大な広告費を期待するマスコミ
政治献金と選挙支援を期待する政治家
地域独占体制を願う電力産業
確実な融資利益を受ける金融業界
などが、原子力マフィアを構成している。「彼らが原発反対派を排除し、相互の利益を維持する形態を強化している」と強調した。チャン教授は続けて、日本ほどではないが、韓国も日本の手順を真似ているようで心配だ。安全が確認されない高速増殖炉の建設等、韓国の原子力利害関係者の最近の歩みは危険だ」と批判した。

原子力はそれ自体が危険だ

チャン教授には、今回の事態にも拘らず、アジアで原発開発ブームが鎮まらない様に見えた。
中国とインドが積極的に原発開発に出るだけではなく、ベトナムとトルコ、モンゴルなども積極的に原発投入に出ている。これらの国の相当数は、今回の事故を体験しても、依然として日本の技術支援を受けようとしている。この現状が原発依存を端的に現わしている。(夕刻7時に始められたこの日の講演は、予定時間を越えて、夜10時を越えるまで続いた。写真はPRESSIAN チェ・ヒョンラク
原発は費用と安全性の面で危険な発電であると言う点を、チャン教授は力を込めて語った。「1970年代末、国際原子力機構(IAEA)が、放射性物質廃棄費用として、原発建設費の1520%を推定していたが、実際には遥かに大きくなる。使用後核燃料の再処理の場合、日本が以前に、廃棄物32,000tの再処理だけで、188,000億円かかるであろうと予測した。韓国の金で200兆ウォンに達する。」
チャン教授は、‘原発が無ければ、電気がなくなる’という憂慮に対し、ドイツも再生エネルギーに転換しようとする頃には、そんな憂慮が多かった。過度な電力消費を勘案すれば、今すぐエネルギー節約だけでも、エネルギー消費の20%は減らす事ができる。消費エネルギーを少なくし、再生可能エネルギーの開発をしていかなければならない」と強調した。

 

                                              (訳 柴野貞夫 2011年8月24日)


<参考サイト>

原発事故に関する国内の記事と論評
☆福島第一原発事故は、原発をめぐる国家と電力会社の御用学者の詭弁を断罪した

☆「国と東京電力の責任は到底許されるものではない2011年4月7日、全国漁業協同組合連合会)


飯館村のセシウム137のレベルは、チェルノブイリ事故の強制退避レベルの6倍以上/3月24日、既に今中氏は警告していた


☆放射性廃液の意図的な海洋投棄に抗議する。 直ちに海洋投棄をやめろ


☆東電のカネに汚染した東大にだまされるな 


☆周辺住民と原発従事労働者の命と引き換えに、福島事故原発の延命と,原発政策に固執する、菅政府と日本資本家階級に対して抗議の行動を起こそう


☆民衆の命と生活を破壊する菅政府と日経連の反民衆的核政策と、東北大震災への対応を糾弾する


東電・福島原発の炉心溶融(メルトダウン)と、核爆発の危険性を隠ぺいしてきた東電と菅政府の責任を追及する


原発事故に関する世界の記事と論評
☆ 283 福島原発事故/最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(3) (韓国・PRESSIAN 2011年4月20日付)

☆ 282 福島原発事故/最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(2) (韓国・PRESSIAN 2011年4月20日付)

☆ 281 福島原発事故/最悪の場合、東京都は‘無人地帯’となる(1) (韓国・PRESSIAN 2011年4月20日付)

☆ 280 福島原発、日本政府の統制水準を越えた (韓国・PRESSIAN 2011年4月15日付)

☆ 279 <レベル7>の福島は警告する。コリ(古里)1号機から閉鎖せよ (韓国・ハンギョレ紙 2011年4月12日付)

☆ 278 東京の近く<連鎖地震>・・日本原発は<チェルノブイリ級>へ (韓国・PRESSIAN 2011年4月12日付)

☆ 277 日本−原発ヤクザ(マフィア)が招いた大災難 (韓国・ハンギョレ21 2011年4月1日付)

☆ 276 16名の原子力専門家の「国民への陳謝」と「4・3政府への緊急提言」(日本・日本共産党機関紙 赤旗 2011年4月3日付)

☆ 275 福島は時間の闘いいで敗北した。<メルトダウン>が進んでいる (韓国・PRESSIAN 2011年3月30日付)

☆ 274 福島原発事故 ‘最悪の局面’へ/ソウルも放射性物質を検出 (韓国・PRISSIAN 2011年3月29日付)

☆ 273 核のない世の中の為の緊急行動 「核のない世の中は可能だ」 (韓国・レフト21 2011年3月27日付)

☆ 272 「核」を「原子力」と呼ぶのは間違い (韓国・レフト21 2011年3月26日付)

☆ 271 無理な復旧作業に投入された福島原発復旧要員の3名が被ばくした (韓国・PRISSIAN 2011年3月24日)

☆ 270 福島原発は当局の暗黙了承のもと使用延長した (韓国・PRISSIAN 2011年3月23日)

☆ 269 “50人の決死隊”の日当は10万ウオン(7000円) (彼らに)死を強要する権利はあるのか (韓国・PRESSIAN 2011年3月19日)

☆ 268 核エネルギーは、高価で、反環境的で、危険な軍事的兵器である (韓国・タハムケ「レフト21」26号)

☆ 267 日本は‘事故確率90%’と分かっていながら、福島原発を建設した (韓国・PRESSIAN 2011年3月15日付)

☆ 266 爆発した日本の原発3号機には、<死の灰>プルトニウムがある (韓国・PRESSIAN 2011年3月14日付)