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 韓国ネット新聞・PRESSIAN世界ニュース 2012216日付)
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=40120216112532&Section=05




       「祭りより、供えた飯」 / ソウル核セキュリティ首脳会議

 

核セキュリティは二の次、真の狙いは原子力ルネッサンス


キム・チャンス (統一を迎える執行委員) 

 

核安全保障首脳会議開催の目的

来る326日から2日間、核セキュリティ(核安全保障)首脳会議が、ソウルで開かれる。55カ国の首脳、国連、国際原子力機構(IAEA)などの4つの国際機構が参加する。

これは李明博政権の発足以後で最大規模の首脳会議だが、国民はいたって無関心だ。ソウルで開催された歴代の多国間首脳会議の中で、国民的関心度は最も低い。
その理由は、核セキュリティ首脳会議で討議する核セキュリティnuclear security)という概念が、国民には疎遠だからだ。核セキュリティは我々には切迫した問題ではないのだ。

セキュリティとは、ウラニウムやプルトニウムなど、核物質がテロ集団などに奪取されるのを防ぐ概念だ。9.11以後、対テロ戦争を遂行してきた米国にとって、核物質や放射能物質がテロの手段として利用される事を防ぐ必要があった。
しかし、対テロ戦争自体は、米国の(利己的独善的)単独主義に基づくものであり、国際社会の反発をよんて゜きた。。むしろ、米国の単独主義に立脚した対テロ戦争は、安保の脅威を増大させ、米国に核テロという新たな心配の種を植えつけている。テロとの戦争を遂行すれば、むしろ強力な核テロの脅威が発生する。米国は一種の対テロ戦争ジレンマに落ちいっているのだ。
2008年、オバマ政権は金融危機のなかで成立し、予算不足という国家的危機につきあたった。そこで、オバマ政権は対テロ戦争をいったん中断したうえで、対テロ戦争を派生させている核テロの脅威を国際社会と共同で対処するという接近法を選んだ。これがセキュリティ首脳会議
去る12月開かれた、2012ソウル核セキュリティ首脳会議支援要員発起式。キム・ソンファン外交通商部長官を始めとして、歌手JYJ、子役ワン・ソクヒョン、ジン・ジヒが記念撮影している。(ヨンハップ)

米国の単独主義と核安保

オバマ米大統領は、20094月プラハ演説で核兵器のない世界ビジョンを提示し、このビジョンを実現する為の三つの軸(核軍縮、核不拡散、核安保)の一つとしてセキュリティを提案した。核物質の安全保障のための新しい国際的努力を宣言し、2010年に核セキュリティ首脳会議(Nuclear Security Summit)を開催する事を提案した。
核不拡散は核兵器を処分したり、核の輸出を防ごうとする事だ。20年近く我々の安保問題のホット・イシューは、北韓の核開発と韓半島の非核化だった。
しかし、北韓・非核化のための六者会談は、3年以上開かれていない。
イ・ミョンパク政府が六者会談や北韓の非核化のために努力した痕跡はみられない。「北韓が核を廃棄すれば助けてやる」という空念仏を繰り返しているだけだ。こんな状態で開かれる核安保首脳会議は、ただの宴会に終わってしまう可能性がきわめて大きい。

国民的関心事は原発問題

昨年311日の福島原発事故により、原子力発電所の事故に関連した核の安全問題は、地球的に大きな関心事となった。福島原発事故以後、核の安全は現実的な問題となったのだ。
例えば、福島原発事故の5か月後、米国東部で規模5.8の地震が発生した。米国東部では地震は発生しないとされていた為に、米国東部地域の4つの原発は地震規模6.2に耐えられる設計だった。米国東部で5.8の地震が発生した。第二の福島は何時でも発生する可能性がある事を立証したのだ。
2011年現在、中国は14基の原発を運転している。2030年までにはさらに75基を建設する予定だ。中国で原発事故が起きれば、放射能は偏西風にのって飛んでくるから、核の安全は我々に致命的な懸案となるだろう。
また、(韓国の)コリ、ウォルソンの老朽化した原発は頻繁に事故をおこすが、頻繁なガスを意味する事はないのか、真剣に調査してみなければならない。
言い換えれば、核の安全は、核の安保よりも緊急な懸案事ではないのか。
福島以後、核エネルギーに対する憂慮が世界的にひろがっている。核エネルギーは低炭素エネルギーとして脚光を浴びる事はなくなった。韓国の市民社会団体も、核安保でなく原発廃棄を主張している。
原子力発電所の危険性に対する解決策を模索する、これが国民的な関心事だ。原子力発電の経済性に対する検討、原子力発電の安全、事故に対する対策などは、核セキュリティに優先する韓国の社会的議題とならなければならないのだ。
市民団体は核セキュリティ首脳会議を前にして原発廃棄を主張しているのに対し、政府は「原発廃棄は核安保首脳会議の範囲外の問題だ」と答えている。核セキュリティ首脳会議がどれほど我々の問題とかけ離れた会議であるかを物語っている。

オバマの野望

201041213日に、ワシントンで47カ国の首脳と国連、IAEA、ヨーロッパ連合(EU)など3つの国際機構が参加し、第1回セキュリティ首脳会議が開催された。
この第1回核セキュリティ首脳会議で、北韓の核問題は議題にならなかった。米国は北韓の核問題を軽く考えていたからではない。北韓・核問題は、‘国家の行為者による核拡散’問題である為だ。核セキュリティは、テロ集団のような国家でない行為者’による核テロを防止するのが狙いだ。この為に、米国は北の核問題を議題にしなかったのだ。従って、ワシントン会議では、北韓・核問題を核セキュリティ首脳会議の議題ではなく核拡散禁止条約(NPT)体制に従属する問題としてあつかった。
また、ワシントン核セキュリティ首脳会議では、北韓に存在する核物質は核セキュリティを憂慮する国よりも安全に防護できていると判断した。
また、北韓の核兵器開発は体制の安全保障の次元で図られるものなので、北韓の核兵器がテロリストに流出する可能性は低いと判断した。ワシントン核セキュリティ首脳会談で、北韓・核問題を議題にしなかったのは、このような理由があったからだ。

李大統領のもくろみ

ソウル核セキュリティ首脳会議のなかでは、北韓・核問題が継続的に提起されるようだ。核セキュリティ首脳会議の性格を見るとき、北韓に対する政治的メッセージを与えようとするのがイ・ミョンパク政府の立場だ。韓国政府当局は、「55カ国の首脳では北韓核問題の深刻性を認識させる」「北韓の核廃棄に対する強力な政治的メッセージを伝える」と強調してきた。この発言は、核セキュリティが切迫した懸案ではない事を逆に立証している。
米国は、ワシントン核セキュリティ首脳会議では核セキュリティの焦点を鮮明にする為に、あえて北韓・核問題の言及を避けた。それぐらい(米国の言う)核セキュリティは、米国にとって切迫した問題だったのだ。
しかし、韓国政府はオバマ大統領の提案をうけて、核安保首脳会議の開催を受け入れた。イ・ミョンパク政権は、セキュリティ首脳会議を成功さすことが韓米関係を強化すると考えたからだ。韓国は、核セキュリティに対して米国の様な利害関係を持っていない。だから、セキュリティに含まれもしない北核問題を言及したい誘惑にかられるのだ
韓国政府のこんな意図は、北韓・核廃棄の援助にならないことは自明だ。空虚な叫びに過ぎない。むしろ、これは六者会談を遅らせ、北韓が核能力を強化させる口実と時間を与える行為となる。政権変換期にある北韓は、韓国政府が送る強力な政治的メッセージに対し、それに劣らない強力な反応を見せるであろう。これは、容易に予測することができることだ。

「核安保首脳会議」の狙いは、原子力ルネッサンスだ

ソウル核セキュリティ首脳会議の問題点の一つは、この会議を福島の災難に対する<忘却の祭り>にしようとしている事だ。政府は、この核安保首脳会議を契機に、原子力の安全に対する不安をなくし、原子力ルネッサンスを追及している。このため、今回の核セキュリティ首脳会議直前に、原子力産業界の会議や原子力学会の会談などの日程をいれている。
政府関係者は、この会議は原子力ルネッサンスを追及するものではない。原電業界のCEOが、福島原発事故以後の原子力安全問題に対して論議をする為の会議だ」と言っている。しかし、政府は「核安保首脳会議の目的の一つに原子力、原発産業に対する国内外の信頼の回復を設定している。その信頼回復が目標としているのは、産業的利益だ。もし原子力安全問題に関心が高いのであれば、政府は市民団体と討論する機会を作らなければならないはずだ。
福島事故は、日本の原子力産業界と学会、そして官僚の原子力三角同盟の嘘がもたらした惨事である。ソウル核安保首脳会議を前にして、原子力産業界会議と学会会議が相次ぎ開かれるのは、原子力三角同盟の‘義兄弟たちの桃園の誓い’に他ならない。それも露骨にあけすけな誓いだ。

(訳 柴野貞夫 2012219日)

 

 

<参考サイト
313 戦争の道具となった国際原子力機関(IAEA) 
(韓国・チャムセサン 2011
年11月13日付)

304 日本の核武装の欲望と原発 (韓国・ハンギョレ 2011年9月22日付)


279 <レベル7>福島は警告する。コリ(古里)1号基から閉鎖せよ。 
(韓国・ハンギョレ 2011
年4月12日付)