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(韓国・統一ニュースコム−世界ニュース 2012320日付
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=97894


                光明星3号の政治経済的効果


                                           クァク・ドンギ(私たちの社会研究所)


北の人工衛星発射、どう見るのか

今まさに(韓国は)人工衛星政局である。北韓の朝鮮宇宙空間技術委員会は316日、代弁人談話を通して、キム・イルソン主席誕生100周年を迎え、自らの力と技術で制作した実用衛星を打ち上げる事となると発表した。発射時期は412日から16日間の時点であり、発射場所はピョンアンブクト(平安北道)チョルサングン(鉄山郡)の西海衛星発射場だとした。
北韓が人工衛星発射を発表した瞬間、北韓の衛星発射は全世界の焦眉の関心事となった。第3次高位級会談で、平和協定論議と信頼回復措置を取る事で合意したオバマ行政府の立場が窮地に置かれている。
韓国日報の報道によれば、北韓が衛星発射計画の発表に先立って、発表計画を米国務省に告げたと言う。ビクトリア・ヌーロンド国務省代弁人も、16日、定例ブリーフィングで“15日遅く、ニューヨークチャンネルが稼働されたのであり、米国は衛星発射が持つ意味を明らかに伝達した。とし、北米間の事前接触を是認した。
北韓側は、人工衛星発射が北米合意に背馳(はいち)しないと言う立場だ。在日言論<朝鮮新報>は、朝鮮の構想に依れば、2009年に発射された試験通信衛星の次の段階、即ち、国の経済発展に貢献する実用衛星の一つである地球観測衛星を、2012年の太陽節に際して打ち上げる事は、必然的な流れであるのだ。とし、衛星発射が、既に以前から推進されて来た課題であり、米国の承認を受けなければならない対象ではない事を明らかにした。長距離ミサイル発射の臨時(一時)中止措置と人工衛星の発射は、別個の問題だと言うのが、北韓当局の立場だ。
北韓の人工衛星発射が、東北アジアに及ぼして来る波長は、この上もなく大きい。今まさに、人工衛星政局が始まったと言う事が出来る。

●商用衛星は北韓経済に切実な設備

北韓当局は、すでに1998831日と200945日に人工衛星光明星1号と光明星2号をそれぞれ成功裏に発射したと主張する。当時の技術蓄積に踏まえて、今回には商用衛星を発射すると言うのが北韓の主張だ。北韓が商用衛星だと主張する光明星3号は、発射に成功しさえすれば、実時間(リアルタイム)で観測資料を送信してもらいながら人工衛星として機能するものであれば、韓米当局が主張する安保脅威の主張は、時間が経つほど、名分を失う可能性が大きい。
統一学研究所のハン・ホソク所長は、光明星3号は、透明な(透明性のある)人工衛星だと言う文(訳注http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=97885)で、2009224日、朝鮮宇宙空間技術委員会代弁人が、談話で国家宇宙開発展望計画により、我々は1段階として、近い数年の間に、国の経済発展に必須的な通信、資源探査、気象予報などの為の実用衛星を打ち上げ、その運用を正常化する事を予見していると言ったと、記述した。2012316日在日の<朝鮮新報>は、北韓が発射する光明星3号は極軌道によって回る地球観測衛星だと明らかにした。
極軌道衛星は、地球の北極と南極上空を通過する軌道を、南北方向に飛行する衛星だ。北極と南極を行き来する軌道衛星は、地球が自転をする為に結果的に地球の全表面を観察することが出来る。従って極軌道衛星は、気象衛星と海洋観測衛星などに活用される。地球観測衛星とは、地球軌道を回りながら地球を観測する人工衛星として、地球表面と大気観察写真を撮影する衛星を意味する。
政府傘下の国家気象衛星センターによれば、極軌道気象衛星は1960年に米国で第1号機TIROS1が発射されて以来、世界であまねく利用されていると言う。軌道の高さが約1200kmに達する極軌道衛星は、約36000kmの高い高度を保つ停止(静止)衛星に比べ、軌道の高さが1/301/40と低い為に、遙かに仔細に気象を観測することが出来る。
ただ、地球を1周回るのに、概略100分が必要とされ、一つの場所を1日に2度しか見る事が出来ず、甚だしい気象変化の追跡、連続観測による雲の動きから、風向きと風速の算出、資料(データ)また放送通信などは難しいと言う。韓国気象庁は、1970年代から米国の極軌道気象衛星NOAAから、気象データの送信を受けて来たと言う。201010月現在、韓国は実時間(リアルタイム)で、静止軌道衛星MTSAT―2と、中国のFY2Dの衛星データを受信しているのであり、極軌道気象衛星としては米国のNOAA15171819号と中国の極軌道衛星であるFYIDのデータ、極軌道地球観測衛星である米国のterraaquaの衛星データを受信し、活用していると言う。
次は、米国の極軌道衛星であるNOAAから受けた韓半島の気象状況の写真だ。
この様に気象衛星は、夏の季節、台風の接近をありまま把握し、地域別降水量と集中豪雨に備える為、切実に必要な装備だと言う事が出来る。とりわけ近接撮影による気象情報は、農業生産量の増大を国家の主要課題として提示している北韓当局に絶対的に必要な情報だと言う事が出来る。
最近、韓半島地域は夏の季節、集中豪雨による洪水被害が頻繁となっている。北韓も毎年、所謂大水被害と呼ぶ洪水被害を経験しているのであり、この様な洪水被害が農業生産量を落とし、北韓経済の各部門に莫大な支障を与えることが事実の様だ。しかし、北韓は気象衛星がない為に、天気予報をする時毎に中国が提供する衛星写真のデータに基づく他はなかった。北韓は中国の極軌道衛星であるFYD衛星などから、気象データを送ってもらい、天気予報に活用する事と推定される。この場合、FYDは当然に中国大陸の気象データに集中為に、北韓は韓半島周辺の気象情報を綜合的に予測し備える事に従うしかない。北韓当局としては、韓半島周辺の気象映像を豊富に分析し、気象予測の正確性を高めようとするはずだ。(写真 NOAA―19号の赤外映像(2010102.午前0240)国家気象衛星センター公開資料)

●既に、各種の観測衛星を保有した韓国

北韓が、今回、最初の商用衛星を発射するのと異なり、韓国は以前から人工衛星を制作し、委託発射して来た。気象衛星だけではなく、一般的な地球観測衛星も経済的活用度は極めて高い。韓国の場合、代表的地球観測衛星としては、20067月に発射したアリラン2号がある。アリラン2号は、韓国航空宇宙研究院(KARI)が発射した多目的実用衛星(KOMPSATU)だ。アリラン2号は、地球の上685km上空で、100分ほどで地球を1周づつ周り、一日に2回、韓半島上空を通り過ぎる。韓半島は、2分程度なら、撮影が可能だと言う。
アリラン2号は、黒白1m級の軍事用偵察衛星に該当する高性能レンズを搭載し、北韓上空全域を含んだ地球全地域を撮影している。現在、米国の軍事用偵察衛星の解像度は、横15cm水準(レベル)の精密度だと言う。アリラン2号が撮影する映像は、どの様に活用されるのか?ハンギョレ新聞は、2006年現在の1m級解像度で、横15kmの地域を撮った衛星映像の国際価格は、1枚に約10,000ドルに達すると報道した。
韓国航空宇宙研究院は、アリラン2号が撮る国内と米国・中東の一部地域の撮影映像は韓国航空宇宙産業と、残り国外地域の撮影映像はフランスのスポットイメージと販売代行契約を結んだ状態だと言う。
これによって、韓国航空宇宙研究院は、多目的実用衛星2号が、設計寿命である3年間に、5400万ドルの映像販売収入を上げてくれるだろうと期待している。アリラン2号の開発予算が600億ウォンだったから、開発費を回収して越える金額だ。
韓国は、20107月、停止(静止)気象衛星である<千里眼>を発射した。千里眼衛星は、通信・海洋・気象の三つの機能を一つの衛星に搭載した停止(静止)軌道複合衛星として、今後7年間、124時間常に、通信サービスを提供し韓半島周辺の気象と海洋を観測すると言う。
千里眼衛星を確保することで、韓国はその間、外国の気象衛星から受ける情報で30分間隔で提供した気象予報レベルが、今は15分間隔、危険気象である時には8分間隔で予報が可能で、台風、黄砂、集中豪雨、旱魃など危険気象の発生時、韓半島領域の中心で、独自的な観測領域また観測時刻の調整が可能となったと明らかにしている。
特に韓国は、千里眼衛星の保有で、米国、ヨーロッパ、日本、中国、インド、ロシアに次いで世界7番目の独自気象衛星保有国になったと言う。
ひいては、韓国は近付く5月中旬、アリラン2号より機動性が更に向上されたアリラン3号を発射準備している。教育科学技術部と韓国航空宇宙研究院は、アリラン衛星3号が315日、日本の種子島発射場に到着し、発射準備に着手したと明らかにした。
アリラン3号は、衛星体の状態点検と、燃料注入、発射体との結合などの過程を経て518日頃発射され、以後3か月間軌道上の試験運営をして、9月から本格的な映像サービスを始める予定だと言う。
この様に衛星発射は、国家経済に大きな寄与をする。韓国電子通信研究院の先任研究員であるキム・スヒョンと、ヨ・ジェヒョンは、国内衛星産業の経済的波及効果と言う論文で、衛星産業の世界市場規模は、2005633400億ウォンであり、この中で通信と放送を除外したその他のサービスの領域だけ見ても、200510兆ウォン規模だと言う。これ等は国内衛星産業の生産誘発効果が、75000億ウォン、付加価値誘発効果が36000億ウォン、就業誘発効果が46000名と分析されたと明らかにしている。

●政治的に有利な、北韓の商用衛星発射

北韓が今から、商用衛星を発射し始める事に伴って、今はロケットだけでなく人工衛星の効果まで、一緒に考慮しなければならない時代となった。事実北韓の立場では、宇宙発射体は2009年にお目見えしたもの。今回発射の注目点は商用衛星だとも見る事が出来る。
北韓が発射する<光明星>3号が、極軌道気象衛星であれば、<光明星>3号は平和的目的の衛星となる。
台風と集中豪雨、旱魃から農業と基幹産業を保護する為に体系的な気象情報を獲得する為に努力するのは、北韓住民生活を向上させる為の平和的目的であるから、東北アジアの安全を損なう結果ではなく、むしろ東北アジアの平和と繁栄に寄与する事も出来る。
もちろん、親米保守陣営は、北韓が地球観測衛星を口実にしたまま、事実上の軍事用諜報衛星を発射する可能性を憂慮する事も出来るであろう。
しかし、軍事用諜報衛星は、解像度が1m以下に達する超精密カメラを搭載しなければならない。北韓の初段階商用衛星は、米軍と韓国軍の基地を探る軍事衛星であるよりは、韓半島の気象条件を撮影する気象衛星である可能性が遙かに高い。
韓国では住民生活の安定の為に必ず必要な気象衛星が、北韓では必要がないと言う主張は、如何なる説得力も無い。
韓米日がそうである様に、北韓の人々も農作業をしなければならず、海に出て魚を採らなければならないし、天候の条件に敏感に反応する以外にない。
一部では、北韓の商用衛星発射をめぐって、北韓住民を無視したロケット発射だと糾弾しているが、もし<光明星>3号が、北韓当局の2009年の言及通り気象衛星であれば、北韓住民達は<光明星>3号によって洪水被害から抜け出ることが出来るのであり、降水量に対する体系的情報を受け、農業生産量も増やす事が出来るのである。
住民生活向上の為、商用衛星を発射すると言う北韓を妨げる韓米当局の政治的名分は、相当に、根拠に窮する他はない。韓米当局は、北韓の人工衛星発射に反対する瞬間、平和的目的の商用衛星発射まで妨げると言う国際的非難に落ち込む他はない。この場合北韓の反発は不可避だ。

●出口が閉ざされた韓米当局

北韓は、<光明星>3号発射を通して、国際社会に向かって主権尊重と平等待遇を要求している。今の国際社会では,あらゆる種類の観測衛星、軍事衛星と、大陸間弾道ミサイル、水素爆弾など、色んな種類の戦略武器が隙間なく並ぶ米国は、(まるで)被害者かの様になりすまし、今まさに、商用化された気象衛星を発射し様とする北韓を、(逆に)加害者に規定する、出鱈目極まる論理が無責任に通用されている。北韓が如何なる制裁も受けず人工衛星を発射すれば、これは北韓が米国と同等な国際的地位を確保したと言う事を、立証する格好となる。
東北アジアの覇権を独占しようとする米国は、決して容認することが出来ないマジノ線(訳注−第1次世界大戦後、フランスがドイツ軍の攻撃を阻止するために、両国の国境を中心に、ドイツの防衛線として構築した大規模な近代的要塞線)だと言う事が出来る。関係正常化と戦争の危機が同時に、オバマ行政府のテーブルの上に上がっている。露骨的な対北対決政策にしがみ付く、イ・ミョンパク(李明博)政府の立場も、根拠に窮するのは同じだ。
北韓当局は<光明星>3号を南側に発射し、一段ロケットがチョンラブクド(全羅北道)ピョンサン(辺山)半島の西側140km海上に落ち、二段ロケットはフィリピン東側190km地点に落ちるだろうと公知した。
極端な対北対決政策を固守して来たイ・ミョンパク政府は、4.11総選挙で保守勢力を結集させる為には、<光明星>3号に対して、何か措置を取るふりを示さなければならない。今イ・ミョンパク政府は北韓の人工衛星発射を、黙っておいて見ることが出来ないだろう。政府は、北韓の<光明星>3号を重大な挑発と、規定した。
既に韓半島は、軍事的緊張が膨張し、戦争前夜の状況に差し掛かった。イ・ミョンパク政府は、連日、対北軍事訓練に余念がなく、西海は静かな日がない。220日、南側の西海対潜訓練の場合、北韓はただ一つの水柱であっても、わが側領海に捕捉されれば、対応すると言う立場を表明した。しかし南側は326日をチョナン艦よう懲(こらしめ)の日と規定したまま、西海上の軍事訓練をまた再び公知している。月と4月を過ぎて韓半島の危機は激化されるだろう。経済活性化の為に商用衛星を打つと言う北韓と、それも事実はミサイルも同じだとし、商用衛星発射まで反対する韓米。人工衛星を一つ上げようとしても、力の対決を避けられない事が、停戦体制の問題点だ。
                                         (訳・柴野貞夫 2012/3/23
参考サイト
☆ 188 宇宙の平和的利用なのか、軍事化なのか (朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2009年9月23日付)