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      論考/原子力の軍事転用を図る原子力基本法の改悪を糾弾する
                                   (2012623日)


                                                 [柴野貞夫時事問題研究会]


T、「原子力規制委員会」の設置を悪用し、原子力の軍事転用(核武装)に「法的根拠」を与える「原子力基本法」の改悪を断固として糾弾する

U、宇宙開発の軍事利用を推進し、日本の核運搬ミサイル開発を狙う「宇宙機構法」の「平和目的」条項削除を糾弾する

○世界で最初の被爆国日本の全民衆は、これら核兵器の開発・製造と、それにつながる原発の再稼働に対し、徹底的に戦わなければならない


●衆議院通過まで、法案改正内容を国民に開示しなかった野田政権


国会は620日、民主党と自民・公明党の野合によって、日本国憲法を土足で踏みにじり、日本の支配者階級の、飽くなき軍事大国化への夢の第一歩を踏み出そうとする狙いをもった二つの法案を、公開的かつ十分な審議を無視したまま通過させた。
その一つ「原子力基本法の改正」(原子力の平和的目的を否定する、「国家の安全保障」項目の追加)に対して、野田政府は、615日の衆議院通過後まで、その内容を国民に明らかにしなかった。
今回の「原子力基本法の改正」は、「原子力規制委員会設置法」に「国家の安全保障」項目を追加することによって、原子力事業の憲法とも言うべき「原子力基本法」の基本方針(第2条)を改定する必要にもとづいているが、野田政府は、この内容を、衆議院通過まで、政府のホームペイジに掲載する事をせず、国民に対する法案内容の開示の義務を無視した。
野田内閣の、当初の閣議決定では、「原発の安全を確保する為の独立的機関」としての「原子力安全規制委員会」の設置法には、
「国家の安全保障に資する」とする項目は存在しなかった。しかし、野田内閣が、いま日本資本家階級の利益に立脚し、推し進めようとしている「税と社会保障の一体改革」と称する反国民的増税路線を、自民・公明を呼び込んで実現する為に、この期間、彼らと密室談合を重ねてきたが、その見返りとして、主として自民党の提案を受け入れたものだと言う破廉恥な経過を、中日新聞の報道から窺える。
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21日、中日新聞は、安倍内閣の官房長官であった塩崎恭久議員が、民主の法原案の修正論議で、「国家の安全保障から理解すべき」と主張し、民主党がそれを受け入れ公明も賛同したと言うのだ。かくて民主党は、野党(共産・社民)の反対にもかかわらず、参議院での三日間の論議で、日本の宇宙の軍事利用に道を開く「宇宙機構法」(宇宙航空研究開発機構設置法)など13件の法律とともに、ドサクサに紛れて国会を通過させたのである。

●「国家の安全保障に貢献する原子力」

日本は、米国の後押しによって原発を導入したが、しかし原子力の軍事的利用には明確に一線を引いて、1955年に「原子力基本法」を制定した。それは原子力事業の「憲法」と称されてきた。
日本が、平和憲法によって、世界に対し、「戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権を否認する」と確約し、「核をもたず、つくらず、持ち込まず」と言う「非核三原則」の堅持を建前であれ主張して来た事によって、核兵器を保有していない国では唯一、使用済み核燃料の再処理工場を持つ事を、核保有国から容認されて来たのである。しかし今日まで、使用済み核燃料の再処理によって生み出されている膨大な量のプルトニュームは、世界から疑惑の対象でもあった。
今日まで、「原子力基本法」の「基本方針 」は、「第2条  原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。 」と、明確に「平和利用」に厳格に限定規定されてきた。
しかし、自民党の提案により、これに「原子力利用の安全確保は、国民の生命と健康及び財産の保護、環境保全と国家の安全保障に貢献する事を目的とする」と付け加えたのである。
誰がどう否定しようと、「安全保障への貢献」とは、疑いもなく軍事的対処を指す単語であり、原子力の軍事利用を容認する法的裏付けを狙ったものである。
これを密室談合で民主党に飲ませたのが、(親の遺産)3億脱税問題で、首相の座を投げ出し、病院に駆け込んだ極右政治家、安倍晋二が政権に就いていた時の官房長官・塩崎恭久である。彼はその親分ともども、公然非公然に「日本の核武装」を主張して来た許し難い民衆の敵である。
彼等は、民主党が政権の座に就く前から、自民党長期政権を通して、電力業界、経団連と一体となり、虚偽と捏造で原発の安全性を振りまき、今日の福島惨事を生み出してきた犯罪の張本人たちだ。

●「平和目的」を「軍事目的」に置き換えた「原子力基本法の改正」

この犯罪者集団が、事もあろうに、原発の規制行政において本来その安全を規制する機関が、それを推進する側と一体であった事実が、深刻な事故を増幅させた事から、原子力安全・保安院を解体し「原子力規制庁」を作るとした
「原子力規制委員会設置法」の制定を逆手に取り、この機会に「原子力基本法」の「平和目的」を、「軍事目的」に置き換えようとしたのが、今回の原子力基本法改悪の目的である。
究極の目的に於いて共通する民主党が、この自民党の提案を「税と社会保障の一体改革」への賛同と引き換えに、受け入れたのである。
今、民主・自民・公明は、日本資本家階級の私的利益の為に、命を破壊する原発(核兵器)と、生活を破壊する増税(一体改革)と言う苛酷な鞭を、一緒になって握りしめながら、日本の民衆の頭上に振り下ろそうとしているのだ。
福島惨事が未だ進行中であり、そのまともな原因追究すら行われず、16万以上の福島住民が、人間としての尊厳を奪われ、流民となって放浪している。
惨事を引き起こした張本人である日本資本家階級(東電を始めとする電力業界、経団連、野田政権)は、未だその責任を取らないばかりか、大飯原発の再稼働と、全国の原発に火を付ける事を執拗に目論んでいる。その理由が、単に、原発利権の擁護にだけあるのではない事が明らかになってきた。

●核武装を狙う「潜在的核保有大国」日本

日本の歴代首相のなかで、過去に麻生と安倍は、公然と核兵器の必要性を語ったことがある。今も多くの民主党と自民党国会議員の中に同様の主張をする輩がいる。しかしその事実より、日本の核武装の準備を示す歴然たる証拠の方が問題なのだ。
原発製造に最も効率の良いプルトニュームは、核保有国と比較してもダントツに多い。使用済み核燃料から生成されるプルトニュームは1パーセントであるが、青森六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場で毎年生産されるプルトニュームは、2011年には年間11トンに上った。保有総量は上下するも40t前後である。核保有大国米国に対してさえ、このままでは抜くと言われてきたのだ。
しかも、核兵器の開発は、原発54基を有する日本においては、数ヶ月あれば十分だと言われている。
日本はIREAの監視下にある、れっきとした潜在的核保有大国である。
「原子力基本法」の改悪は、この間の、日本の民衆の途切れることのない原発再稼働反対のうねりにも拘らず、大飯原発34号基の再稼働に固執する野田政権と自民党の本当の目的が、日本帝国主義の極東アジアを中心とする世界市場への軍事的プレゼンスとして、核武装の実現を狙っている事を示している。
我々は、原発の再稼働反対と、全原発の廃炉を要求するとともに、日本の核武装に断固反対する、新たな戦いのスローガンを全民衆のものにしなければならないと考える。

●宇宙の軍事転用を狙った「宇宙機構法」の改悪

「原子力基本法」の軍事目的への転換とともに、同じ20日、国会は「宇宙機構法」(宇宙航空研究開発機構設置法)の改訂を議決した。
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年国会は、「宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」によって、宇宙開発を非軍事的目的に限定する事」を取り決めていたが、2008年の「宇宙基本法」は、宇宙開発の軍事利用に道を開き、その附則に、関係組織の見直しを取り決めていた。今回の「宇宙機構法」の改訂は、それによったものである。
「宇宙機構法」の「平和目的に限定」する文言を「宇宙基本法の平和的利用に関する基本理念に準ずる」に置き換え、所管省庁である文科省・総務省に、内閣府・経産省が加わり、防衛省の介入にも道を開いた。これは、日本の宇宙産業の全面的な軍事化への転換である。
これは、内閣情報調査室(日本のCIA)の管理下にある情報収集衛星(スパイ衛星)や、早期警戒衛星の開発、さらには、日本の人工衛星の、核運搬弾道ミサイルへの転換など、宇宙の急速な軍事化を狙う動きに他ならない。
原子力の軍事化への転用と連動した、この宇宙機構法の改悪は、日本資本家階級とその代理人である野田政権による、日本国憲法の実質的な否定と、日本の軍事大国化を意図したものである。我々は、これらの動きに対し総力を挙げて戦わなければならない。

<関係サイト>
154 危険な核 野望の発露 (日本の核武装化) 
(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 200948日付)

188 宇宙の平和的利用なのか、軍事化なのか 
(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2009923日付)