(論考 「<在特街宣>に対する大阪高裁判決が意味するも」2014年7月15日)
<論考>
大阪高等裁判所は、‘在特街宣’が民族教育を受ける権利を侵害した事実も断罪した
柴野貞夫時事問題研究会
《人種差別をあおり、 民族教育権を妨害する‘在特街宣’を違法とした高裁判決は、「高校無償化から朝鮮学校を除外する」安倍政権を、人種差別=民族差別による違法行為として糾弾していく法的根拠を示した》
《‘在特街宣’を始めとする、人種=民族差別的示威・街宣・ヘイトクライムを、法的規制する事が、早急に求められている。国連人種差別撤廃委員会は、日本政府に対し、○人種差別禁止法の制定、○人権委員会の設立などを勧告している》
▲ 写真 4月再開した、「奈良朝鮮学園 幼稚班」の子供達(写真出処 柴野貞夫時事研)
@ 第二審、大阪高裁・森宏司裁判長 は、“<在特街宣>は、国連人種差別撤廃条約に違反し、在日朝鮮人の民族教育を受ける権利を妨害した”と断罪
7月8日、大阪高等裁判所・森宏司裁判長は、<在特会>と、8名の特定されたメンバーに対し、<街宣>が、国連人種差別撤廃条約の責務に基づく「人種差別行為」と断罪するだけでなく、“朝鮮学園には、民族教育を行う利益がある。在日朝鮮人の民族教育に重大な支障をきたした”とし、「在特街宣」が、在日朝鮮人子弟の民族教育を受ける権利を侵害した事実も、同時に断罪した。
<判決要旨>
@ “「在特会」の ‘街宣活動’は、在日朝鮮人とその子供、朝鮮学校への社会的な差別意識を助長させ、増幅させる悪質な行為であり、在日朝鮮人を嫌悪・蔑視する発言は、下品かつ低俗で、人種差別にあたり、公益目的はない。法の保護に値しない強い違法性が認められる。
(朝鮮学校襲撃の)映像を、インターネット上に公開したことで、今後も、被害が拡散、再生産される可能性がある
A 朝鮮学園(運営主体)には、在日朝鮮人の、民族教育を行う利益がある。日本での在日朝鮮人の民族教育に重大な支障をきたし、社会的評価を低下させ、人種差別と言う不条理な行為によって、何の落ち度も無い朝鮮学校の児童が被った精神的苦痛も多大だった。
B 国連人権差別撤廃条約の趣旨と、個人の孝福追求権を定めた憲法13条等に照らし、この街宣を、違法な人種差別と判断し、在特会と8名に対し、 計約1220万円の損害賠償の支払いと、新たに移転した朝鮮学校に対する街 宣の差し止めを命じた第一審判決を支持、<在特>側の控訴を棄却する。
第二審で、大阪高裁・森宏司裁判長は、日本が加盟する「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の責務に基づき、「在特会」の
‘街宣活動’を人種差別行為と断罪し、人種差別行為が「無形損害」を生み出し、民法709条に基づき被告を罰した第一審を支持した。
更に第一審では触れられなかった、在日朝鮮人の民族教育を受ける権利に初めて言及し、<在特>街宣が、在日朝鮮人の民族教育を貶め、妨害して来た事実もまた、憲法13条、国連人権差別撤廃条約に照らして違法と断定した。
A 2009年12月、在日朝鮮人の民族教育権を、白昼暴力で破壊しようとした<在特>暴力集団と、それを傍観した日本警察
「2009年12月4日、午後1時10分ごろ、「京都朝鮮第一初級学校」(京都市南区)校門前に集結した<民族差別・排外主義者集団−「在特会」>のメンバー11名が、授業中にも拘らず、日の丸を押したて、道路を隔てた公園から、学校が使用しているサッカーゴールポストや、朝礼台などを破壊・撤去し、一部朝礼台や、引きちぎった放送施設を校門にぶっつけ、閉じられた校門の鉄扉をゆすりながら、はしごに登り、校門に取り付いて、学校に向かって大音量の拡声器で罵声を浴びせ、構内へなだれ込もうとした。彼らは、“市有地である公園を、朝鮮学校が、学校の運動場として‘不法に占拠している’。公園内の備品施設を撤去しないなら我々がする。こんな不法行為をする朝鮮学校は北朝鮮に帰れ、北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮人学校を日本から叩き出せ、など、民族差別どころか、人道に外れた暴言を煽り、事実無根のデマを浴びせながら門扉をよじ登り、児童園児を威嚇し、暴力行為を予感させる行動を繰り返した。それも、警察官が見守る中で、白昼公然たる暴力と威力をともなった強迫行為がなされた」
ここで<民族差別・排外主義者集団−「在特会」>が、朝鮮学園襲撃の口実とした<不法占拠>とは何か。第一審の京都地裁・橋詰均裁判長は判決文の中で、“公園のサッカーゴールは、あと2ヶ月で撤去が決まっていたものであるが、そのことを、街宣を行っていた西村ひとし等が知っていたにも拘わらず、朝鮮人を糾弾する、かっこうのネタを見つけたと考え、自分達の考えを世間に拡散させる目的で活動した”と指摘した様に、公園(市有地)の使用は、50年前から市当局と地元自治会の合意の下で、グランドを持たない朝鮮学校の施設として、共用することを承認されて来たものである。もちろん<不法占拠>に当たるものではなかった。むしろ、日帝の朝鮮侵略の被害者である朝鮮民族の子弟等の教育権を支える上で、日本国家がグランド一つ解決して来なかった事にこそ、責任を問われるべき事案であった。
「在特」ファシスト集団は、その後も、公然と2度にわたり(2009年〜2010年)、計3回も、彼等のネットで襲撃を予告し、白昼の襲撃街宣を繰り返した。しかし当時、彼等の蛮行の現場にいた警察官達(私服を含む)は、彼らの暴力行為をただ傍観するだけで、制止すらしなかった。その事実は、朝鮮学校父兄らのビデオ撮影に、はっきりと記録されている。
このように、予告された暴力的襲撃を、3度に亘って黙認した日本国家と警察の行動は、1923年9月1日、根拠のない流言飛語を浴びせられ、日本民衆のムラ組織「自警団」と、陸軍・警察の連携によって6500名余(中国人と朝鮮人に間違えられた日本人を含む)が襲撃殺戮された、あの関東大震災時の朝鮮人大虐殺事件を髣髴とさせる。(2009年12月26日付柴野貞夫時事研―民衆闘争報道から)
B 第一審で、京都地裁・橋詰均裁判長は、“(在特街宣は)明白な人種差別行為であり、人種差別撤廃条約に基づき違法行為として処罰する”と判決
2013年10月7日、京都朝鮮第一初級学校」(京都市南区) の運営主体である京都朝鮮学園は、「在日特権を許さない会(在特会)」の関係者9人を特定し告発、3年間19回にわたる公判のあと、結審となり、京都朝鮮学園並びに朝鮮学校父兄たち原告団の全面勝利となった。
京都地裁・橋詰均裁判長は、在特の襲撃街宣を、“我が国は、人種撤廃条約の責務に基づき、被告を罰する”と高額賠償金を科した。判決は、「在特会の一連の行動は、在日朝鮮人に対する差別意識を訴える意図があり、人種差別を扇動するものであって、人種差別撤廃条約に基づき処罰する。人種差別行為に対する保護及び救済措置となるよう、賠償金額は高額とした。被告に1226万円の支払を命じ、同時に、朝鮮学校の新たな移転先での街宣行為の<差し止め>を決定した。
判決は、襲撃に加わったと、特定されたもの以外にも、この蛮行を広く拡散し、人種差別を煽る目的で、ビデオ撮影した者、更に在特を、<組織としての当事者能力>を認定し、処罰した。
この京都地裁判決は、従来、国家や警察によって、“差別的発言があったとしても、表現の自由を取り締まる事は出来ない”と野放しにされてきた<在特会>の人種差別的街宣行動を、「在日朝鮮人に対する差別意識を訴える意図があり、人種差別を扇動するものであって、人種差別撤廃条約に基づく違法行為と弾劾した事実は、画期的であった。
判決で、<在特会>の人種差別的発言を詳しく列挙し、「その様な発言は、いずれも、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図の下、在日朝鮮人に対する差別的発言を折り混ぜて成されたものであり、在日朝鮮人と言う民族的出身に基づく排除であって在日朝鮮人の平等の立場での人権、及び基本的自由の享有を妨げる目的を有するものと言える。従って「条約(人種差別撤廃条約)
1号1項所定の人種差別に該当する違法性をあびている」と判決し、人種差別法が無い日本にあって、人種差別発言を法的規制する有力な根拠を示してくれた。
ただ、在特の目的が、民族排外主義・ヘイトクライムを利用しながら、在日朝鮮人の民族教育権を攻撃する点にあるのが明白であれば、判決が、民族教育権に言及しなかったのは不十分だとの指摘があったものの、差別街宣を法的に規制する差別禁止法が無い日本で、有力な法的根拠を持つこととなった。
しかし、この第一審判決は第二審に引き継がれ、在日朝鮮人の民族教育権を法的に確認し、またそれへの攻撃を不当と認めたことは、安倍政権の、<朝鮮学校の無償化除外>の差別的不法行為を、より鮮明にしたと言えるだろう。
日本政府による、この10年間の、朝鮮と朝鮮民族に対する人種差別的諸政策の流れを見て見よう。
C 日本政府による、アジア侵略の歴史の否定と、朝鮮への独自制裁は、日本の民衆に排外主義を煽るものである。
2002年拉致問題が浮上し、また、2006年、あからさまな朝鮮侵略を想定した米韓合同演習の継続と、米国による核の脅しに対する、朝鮮側の自衛的手段としての弾道ミサイル発射実験と核実験以降、急激に増えた日本国家による<独自制裁>が引き金となって、過去日本の朝鮮民族支配と侵略を正当化する為に、日本民衆に国策的に植えつけてきた‘朝鮮人蔑視’の思想に、再び国家が、火を炊(た)き付けた。
日本政府は、2006年、祖国を往復する朝鮮人の、唯一の足としての人道船舶、万景号の入港禁止。また万景号乗船者が、持病のために携帯した目薬や治療薬を、‘麻薬’だとデッチ上げ‘薬事法違反’と言う、あからさまな捏造を行ない、大掛かりに‘関係先’への家宅捜査を展開した。同じ2006年、朝鮮籍者の再入国制限や朝鮮総連本部と各県支部へ機動隊を動員するなどの<恣意的な強制捜査>の数々は、日本の民衆の目に、朝鮮民族を‘ならず者’の集団かの様に描いて見せ、その反民族感情を煽り立てる導火線となった。
一部日本民衆による、民族衣装チマ・チョゴリを着た朝鮮人学生に対するカミソリ襲撃事件や、通学途中での暴行と差別的罵声。それと呼応して2008年を前後して登場したネット右翼<在特会>は、街宣で「朝鮮人を殺せ」「朝鮮人を保健所で処分せよ」などと言う、口にするにもおぞましい叫びをあげた。これら暴力を予告する街宣デモと、ネット上で拡散される<朝鮮人への襲撃予告>は、公然たる犯罪行為以外の何者でもない。しかし国家は、彼等を野放しにし、如何なる取締りもしてこなかった。この様な、思想的頽廃と精神的腐敗に取り付かれた反人倫的民衆を作り上げたものこそ、侵略の歴史を否定し、従軍慰安婦の存在を否定する国家によって、民衆が扇動された結果によるところが大きい。
D 国連人種差別撤廃委員会人種差別の撤廃に関する国際条約に違反する日本政府に、法規制を強く勧告
国連は1965年、ドイツを中心とするネオ・ナチズムの台頭に対し、<あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約>を採択、日本も1995年12月に条約加入国となった。2001年、日本に対する第一回検討会は、石原東京都知事の‘第三国人発言−差別発言’に対する是正勧告であったが、2010年2月24日〜25日、9年ぶりに日本での人種差別の実態検証が、ジュネーブの国連人種差別撤廃委員会で行われ、京都朝鮮初級学校に対する<在特会>の白昼襲撃が18名の委員の前でその映像とともに報告された。
委員からは、日本政府が、この様に、民族学校への襲撃を容認する事はあり得ない事だと驚きをもって迎えられた。また、当時の民主党政府・中井国家公安委員長(拉致問題担当相)が、同2月18日、拉致問題を理由に、「高校教育費無償化から、朝鮮学校を対象としない様に努めている」との発言も伝わり、マイノリティーが民族教育を受ける権利を蹂躙する日本政府の大臣発言に対し、日本国家の責任はもっと大きいと指摘、国連機関において日本政府による人種差別の実態が明らかとなった。
それに対し、日本側政府委員は、“これまでも日本には人種差別は存在しない”とし、石原発言に対しても“差別があっても、表現の自由を取り締まる事は出来ない”と主張した。
しかし、日本の人種差別の具体例を前に、<国連人種差別撤廃委員会>は、日本政府に対し、35項目の是正勧告を行った。「<在特会>が犯罪者集団であること、高校無償化から朝鮮学校を除外することが、人種差別であり、マイノリティーの学習権を蹂躙するものであること、これ等は、国際的常識である。」日本で繰り返される人権蹂躙と人種差別に対し、「●人種差別禁止法の制定、●人権委員会の設立」などを通して、強く法規制を行う事を日本政府に勧告した。
2009年8月発足した民主党・鳩山政権は、その政権公約の柱に、「‘すべての子供の平等な学習権の保障’と言う教育理念を実行する為、国籍に関わりなく、国公立・私立学校に通う高校生を持つ家庭に、授業料を全額或いは一部支援する「高校授業料の無償化」を掲げた。それは、民主党政権の国際公約でもあった。2010年3月、「高校無償化法」(略称)は、成立したが、朝鮮学校だけは排除された。
2010年2月のジュネーブにおける、人種差別の実態検証のあと、国連人権委員会の日本に対する勧告が出された。マイノリティーの学習権に政治的主張を持ち込む日本政府に対し、内外の批判が高まる中、中断されていた<公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号のハ項>に基づく審査を再開した。朝鮮学校は、この法律によって、ハ項が規定する「各種学校としての教育施設の体制を整えているのか」を唯一の審査基準として、無償化対象の有無を決定されることとなっていた。授業年数、授業時間数、教員数と専門性、敷地・校舎面積など審査を受ければ「無償化の指定」は、ほぼ確実と言われていた。
E 省令一部削除と言う恣意的手段で、高校無償化法から朝鮮学校を不指定処分にした第二次安倍政権
しかし、民主党政権の崩壊と、2012年12月の極右安倍政権の登場は、<国連人種差別撤廃委員会>の日本政府への勧告も、その実現のために戦って来た人々の努力も、完全に踏みにじるものであった。「朝鮮学校の無償化」問題に対し、安倍内閣は、その「適用除外」の方針を、記者会見で下村文科相に明言させた。
下村文科相は2012年12月28日の記者会見で、「朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること等から、現時点での指定には国民の理解が得られず、不指定の方向で手続を進めたい旨を提案したところ、総理からも、その方向でしっかり進めていただきたい旨の御指示がございました。野党時代に自民党の議員立法として国会に提出した朝鮮学校の指定の根拠を削除する改正法案と同趣旨の改正を、省令改正により、行うこととし、今後、朝鮮学校が都道府県知事の認可を受け、学校教育法第1条に定める日本の高校となるか、又は北朝鮮との国交が回復すれば現行制度で対象と成り得ると考えているところでございます。」(記者会見記録・原文記録のまま)と明らかにした。
この、安倍の意を受けた下村の発言(方針)とは、以下の様なものだ。
第一に、民族教育を等しく受ける権利(国連の市民的・政治的権利に関する国際規約第27条)と、学習権の平等な保障(人種差別撤廃条約第5条)を根本的に否定、国際諸法を蹂躙するものであり、
第二に、日本国憲法が保障する人権の尊重、国籍民族の違いなく教育を受ける権利、特に日本に永住する民族の子弟が、母国語とその文化を自由に学ぶ権利と機会の保障(日本国憲法題4条1項)を否定し、
第三に、「高校無償化法」(略称)は、『国籍に関係なく、国公立・私立学校に通う高校生』を対象としたもので、そこに政治的予断が入り込む余地はない。安部政権の、省令の根拠項目の削除は、この法の履行を、時の執権政府が、恣意的判断で扱かおうとする違法行為であること。
第四に、一旦、立法化された法律について、「国民の理解を得る」必要など、あるはずが無い。
第五に、「無償化に関する文部省令」(公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則)とは、「高校無償化法」(略称)を実施する為に、その意図を具体的に指示した規則だ。つまり、「高校無償化法」と分かち難く一体となった規則である。その中から朝鮮学校だけを適用除外するために、その根拠となる省令の条項だけを削除する事は、国会で立法化された「高校無償化法」そのものを、時の政府が恣意的変えて仕舞うと言うことだ。
集団的自衛権を閣議決定で決め、憲法9条を‘勝手に放棄’して仕舞うのと同じクーデター的手法だ。こんな事が許されるはずが無い。
第六に、朝鮮学校が“学校教育法第1条に定める高等学校(一条校)になるなら、「無償化」を適用しよう”と言うのは、朝鮮学校(民族学校)を行政の統制下に置けと言うことだ。即ち、「朝鮮学校を日本の学校にせよ」と言う事と同じだ。もはや安倍政権は、在日朝鮮人の民族教育を全面否定し、「高校無償化法」そのものを否定したと言う事だ。
「無償化」を望むなら“学校教育法第1条に定める日本の高校となれ”という下村の発言は、所謂「一条校」として、行政の監督下で学校運営をせよと言う事であるが、それは、問題のすり替えであると同時に、在日朝鮮人の民族教育に制限を加え否定する主張でもある。朝鮮民族に対する「民族同化」を図り、皇民化政策を推し進めた日帝の植民地政策を正当化するものでもある。「朝鮮学校無償化」問題に止まらない、安倍の身に染み付いた、アジア蔑視と植民地支配者気取りの醜い姿が目に浮かび上がる。
2013年2月20日、自民党政権は、朝鮮学校も無償化対象になる根拠条項である、「無償化法施行規則第1条第1項第2号の‘ハ’規定を削除」し、同法第13条に朝鮮学校が適合すると判断されないと言うなどの理由で、朝鮮学校の不指定処分と言う暴挙を決定した。
F 民族排外主義・人種優越主義(人種差別主義)を、国民統合の力と考える、日本資本家階級とその代弁人−安倍自民政権
安倍が就任早々手を付けた、この朝鮮学校の不指定処分こそ、朝鮮人を標的にしなが、日本のアジア侵略の過去史を貫いた、国粋主義・民族排外主義・人種差別主義を、国民統合への力と考える、日本帝国主義侵略思想の象徴的事案だ。
安部は、2007年3月、第1次安倍内閣時に慰安婦強制連行を否認する内閣決議を採択し、国際社会の非難を招いた。2012年12月、第2次安倍政権出奔早々でも、侵略の過去史を否定し、河野・村山談話の見直しを明言、4月23日、参院予算委会で、“侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う” と、アジア周辺諸国家に対する侵略戦争の正当化を狙う、露骨極まる歴史認識をぶち上げ、朝鮮・韓国・中国との葛藤も辞さずとの意志を鮮明に、靖国神社参拝を強行した。
上は、国家中枢に陣取るファシスト顔負けの安部自民党と、自民若手の好戦的右翼、下は、橋下を初めとする「維新」を名乗る地方首長や地方議員達、そしてネット右翼<在特>などが、朝鮮/韓国人を標的に、安倍のアジア民族排外主義・人種優越主義に呼応して、国民を、排外主義・人種差別主義者へと追い立てようとしている。
G 3度にわたって、国連人種差別撤廃委員会の<勧告>を無視、朝鮮人に対する人種差別=民族差別を繰り返す日本政府
朝鮮民族の人権と、その子弟達の民族教育権を擁護するのは、我々日本人の責任と義務
13年5月21日<国連社会権規約委員会>は、この様な安倍政権の底を流れる、露骨な人種差別的行動と、それに触発された一部日本社会の、排外的人種差別的傾向に対し、国連の人権保障条約である‘経済・社会・文化的権利に関する国際規約’の締結国を対象に、次の様な報告書を発表した。
“日本政府は、旧日本軍に強制動員された慰安婦を蔑視し冒涜する発言が出ている事に対し、公衆を教育し、憎悪的表現や人を蔑視する発言を防げる責任がある。特に、旧日本軍慰安婦に対する憎悪が混ざる発言に対し、“経済・社会・文化的権利を行使したり、賠償を受けるのに悪影響を及ぼす事を懸念する。日本政府は、必要なあらゆる措置を取らなければならない。”
また、“日本政府が、日本の学校と殆どすべての外国人学校に適用している高校無償化を、朝鮮学校に対してだけ、在日本朝鮮人総連合会(総連)、また北韓と関連があると言う理由で適用を排除している事に対し、‘差別に該当する’とし、改善を要求した。<報告書>は、安倍内閣や、橋下徹・日本維新の会代表などを間接的に批判した。さらに一部排外主義団体が、慰安婦を売春婦と非難している事。また 日本政府が、日本の学校と殆どすべての外国人学校に適用している高校無償化を、朝鮮学校に対してだけ、在日本朝鮮人総連合会(総連)、また北韓と関連があると言う理由で適用を排除している事に対し、‘差別に該当する’とし、改善を要求した。日本社会で“朝鮮人殺せ”の異様な口号が、排外主義団体の
デモで流れ出るなど、(日本社会で)極めて人種・民族的差別表現が放置されている状況を批判し、旧日本軍慰安婦問題に対し、日本社会の認識 を憂慮し、日本政府の責任に言及した。 委員会は、日本に対し、包括的な差別禁止法を作れと要求した。
これは、2001年、<国連社会権規約委員会>が日本に対する第一回検討会で、石原東京都知事の‘第三国人発言−差別発言’に対する是正勧告が行われ、2010年2月24日〜25日、日本での人種差別の実態検証が、ジュネーブの国連人種差別撤廃委員会で行われ、●人種差別禁止法の制定、●人権委員会の設立」などを通して、強く法規制を行う事を日本政府に勧告したのに続く、日本社会の人種差別に対する国連組織による三回目の勧告である。
国際的に、民族教育の権利を蹂躙することは、国連の市民的・政治的権利に関する国際規約27条が保障する、マイノリティーの学習権および、人種差別撤廃協約5条が規定する学習権の平等な保障に違反する。ここに、政府・国家の政治的予断が入る余地はない。如何なる国家にも、マイノリティーの民族教育を支援する義務があるのだ。
日本国家は、朝鮮民族を、自らのアジア侵略戦争の為の、<道具>として使おうと、国家主導による<強制労働>、<従軍慰安婦>と言う性奴隷労働を推進して来たが、日本資本家階級とその代弁人である安倍政権は、アジア再侵略にとって、そんな歴史を否定する事が必要だと考えている。
<誇りある民族として>‘美しい国日本’が、過去にそんな事をするはずが無いと言う訳だ。従って、当然のように、中国人に対するジェノサイトである‘南京虐殺も無かった’のであり、‘平頂山事件もなかった’し、‘中国人捕虜に対する生体実験も無かった’のだ。
排外主義暴力集団<在特>は、安倍と一体となって、日本国憲法が保障する人権の尊重、国籍民族の違いなく教育を受ける権利、特にアジアに対する植民地支配と言う歴史的経緯から日本に永住する事となった朝鮮民族の子弟が、母国語とその文化を自由に学ぶ権利と機会の保障を否定し、そして何よりも、人間としての尊厳を土足で踏みにじる罵詈雑言を、日の丸で包まれたその薄汚い口から、学校と児童生徒に浴びせた。
昨年(2013年)一審判決後、弁護団は、この裁判において二つの重要な目的と視点を持って戦って来たと総括した。
“一つは、朝鮮学校における民族教育権を守り、その侵害を糾弾する事であり、もう一つが、民族排外主義とレイシズムを弾劾する事である。
この二つは、コインの表と裏の様に一体的なものだ。<在特>の攻撃は、学校一般の攻撃ではなく、朝鮮学校と言う民族教育の場を狙い、民族排外主義を利用して、その教育権を攻撃しているのである。我々はこの裁判において、その事を訴えてきた“
在日朝鮮人子弟の人権を守り、その民族教育権を擁護推進する戦いの中で、第2審の大阪高裁判決は、第2段階目の前進である。
しかし、政府自民党と、民族排外主義に煽られた一部日本民衆の動きを阻止し、彼等を力でねじ伏せ、我々の大衆的戦いで、民族排外主義者の蛮行に対する法的規制を実現するのは、我々日本人の責任と義務だと言わなければならない。
<関連サイト>
☆398 朝鮮学校問題は・・・日本が作った、日本が解決する問題(元 百合子・大阪女子学院大学教員) (韓国・PRESSIAN 2013年7月31日付)
☆397 朝鮮学校は依然として日帝時代、同化と差別の歴史(藤永壮・大阪産業大学教授) (韓国・PRESSIAN 2013年7月23日付)
☆394 国連社会権規約委員会が朝鮮学校支援排の除是正を要求(韓国・ハンギョレ 2013年5月23日付)
☆384 対北朝鮮敵視策動が日本にもたらすものは破滅だけだ(労働新聞 2013年4月10日付)
☆373 在日朝鮮人の人権を無視した安倍新政権韓国・PRESSIAN 2013年1月9日付)
☆369 朝鮮学校差別は国際社会の笑い草(韓国・統一ニュース 2012年12月30日付)
☆139 日本は、在日朝鮮人問題の責任から、絶対に免れることは出来ない (労働新聞 2009年1月24日付)
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