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<論考> 日米防衛協力指針の改定と、11件の戦争法規は、日・米両帝国主義の、アジアと世界に対する新たな戦争準備である」 (2015年6月6日)


<論考>
日米防衛協力指針の改定と、11件の戦争法規は、日・米両帝国主義の、アジアと世界に対する新たな戦争準備である(その5


<目次>
@「(現)武力攻撃事態法」の一部改正案 (前回)
A「(現)自衛隊法」の一部改正案    (前回)
B「(現)周辺事態法」の一部改正案   (今回)


(現)「周辺事態法の一部改正案」は「重要影響事態安全確保法」と名称を変え、米軍と外国軍への制約なき‘後方支援’を約束した。―それは、「武力行使との一体化」そのものである―

(現)周辺事態法は、@軍事協力の範囲を、「日本周辺地域における事態」とし、A後方支援の枠を、「日本の領域と日本周辺の非戦闘地域 と規定している

1997年、日米ガイドライン改訂に基づき、それを実効化するため、<周辺事態法>が、1999年法制化されたが、我々は「論考2」で、次の様に指摘した。
“軍事協力の範囲を、「極東」から「日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」へと拡大し、その‘周辺事態’の概念を次のように規定した。「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである」と。そして、‘日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力’として、3分野40項目に分類した。日米の軍事協力の範囲を、‘地理的なものではなく、事態の性質’だとすれば、日米の軍事協力が、日本周辺(アジア太平洋地域)へと拡大するのみならず、世界中至る処に拡大する事になる”と。
(現)周辺事態法は、自衛隊の軍事行動は、自国の領域で脅威が発生した場合だけだが、“それを放置した場合、日本に脅威をもたらす場合にも軍事行動が可能と枠を広げた。この<周辺事態法>のあと、事態は現実となって 2001年の テロ特措法、自衛隊法改正2003年の 武力攻撃事態法、イラク特措法へと繋がって行った。また、(現)周辺事態法は、後方地域を、「日本の領域と日本周辺の非戦闘地域と規定した。現)周辺事態法で、米軍の「武力行使と一体化しない事を法制上担保するもの」としての、「非戦闘地域」と言う制限でさえ、米軍との「一体化」の危険が常にあった。イラク特措法が違憲判決を受けたのも、この「後方地域と支援の内容」を踏み越えたからだ。
「重要影響事態安全確保法」は、(現)周辺事態法に規定された「周辺」と言う概念と、「非戦闘地域」という概念を削除し、それらを「重要影響事態」即ち“日本の安全確保”の概念に置き換えた。

●「周辺事態法の一部改正案」は、@ 軍事協力の範囲の制約である「日本周辺地域に於ける事態」を削除し、A 新たに<重要影響事態>と言う概念を導入し、(現)周辺事態法から<非戦闘地域>の概念を取り払った。

政権が恣意的に<重要影響事態>と認定すれば、戦闘地域に関わりなく「水も弾薬も」後方支援を可能とした。
新たな<重要影響事態>なる概念は、“そのまま放置すれば我が国に対する武力攻撃に至る恐れのある事態など、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態”と規定するだけで、これを軍事協力の“範囲”に代用している。もはや如何なる制約もない事を意味している。<重要影響事態法>は、米軍と外国軍への制約なき‘後方支援’を約束した。それは、世界規模で、米軍との「共同の武力行使」そのものとなる。

63日、「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」は、<重要影響事態安全確保法案>の項で、次の様に指摘する。

“他国軍隊に対する自衛隊の支援活動は、共同の武力行使そのものである”
“重要影響事態安全確保法案における「後方支援活動」と国際支援法案における「協力支援活動」は、いずれも他国軍隊に対する自衛隊の支援活動であり、これらは活動領域について地理的な限定がなく、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも行われ、従来の周辺事態法やテロ特措法、イラク特措法、などでは禁じられていた「弾薬の提供」も可能にするなど、自衛隊が戦闘現場近くで外国の軍隊に緊密に協力して支援活動を行う事が想定されている。これはもはや、「外国の武力行使とは一体化しない」と言う、いわゆる「一体化」論がおよそ成立しないことを意味するものであり、そこでの自衛隊による支援活動は、「武力の行使」に該当し、憲法91項に違反する。
この様な違憲かつ危険な活動に自衛隊を送り出すことは、政治の責任の放棄の謗りを免れない“
“また、重要影響事態安全確保法案は、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と言う極めて曖昧な要件で、国連決議等の有無に関わりなく米軍等への支援活動が可能となることから、国際法上違法な武力行使に加担する危険性をはらみ、且つ国会による事後承認も許されるという点で大きな問題がある。”
続く


<参考資料>

安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明

 安倍晋三内閣は、2015年5月14日、多くの人々の反対の声を押し切って、自衛隊法など既存10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」を閣議決定し、15日に国会に提出した。
 この二つの法案は、これまで政府が憲法9条の下では違憲としてきた集団的自衛権の行使を可能とし、米国などの軍隊による様々な場合での武力行使に、自衛隊が地理的限定なく緊密に協力するなど、憲法9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の体制を根底からくつがえすものである。巷間でこれが「戦争法案」と呼ばれていることには、十分な根拠がある。
 私たち憲法研究者は、以下の理由から、現在、国会で審議が進められているこの法案に反対し、そのすみやかな廃案を求めるものである。

1.法案策定までの手続が立憲主義、国民主権、議会制民主主義に反すること

 昨年7月1日の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法違反」という60年以上にわたって積み重ねられてきた政府解釈を、国会での審議にもかけずに、また国民的議論にも付さずに、一内閣の判断でくつがえしてしまう暴挙であった。日米両政府は、本年4月27日に、現行安保条約の枠組みさえも超える「グローバルな日米同盟」をうたうものへと「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を改定し、さらに4月29日には、安倍首相が、米国上下両院議員の前での演説の中で、法案の「この夏までの成立」に言及した。こうした一連の政治手法は、国民主権を踏みにじり、「国権の最高機関」たる国会の審議をないがしろにするものであり、憲法に基づく政治、立憲主義の意義をわきまえないものと言わざるを得ない。

2.法案の内容が憲法9条その他に反すること 

以下では、法案における憲法9条違反の疑いがとりわけ強い主要な3点について示す。

(1)歯止めのない「存立危機事態」における集団的自衛権行使
 自衛隊法と武力攻撃事態法の改正は、「存立危機事態」において自衛隊による武力の行使を規定するが、そのなかでの「我が国と密接な関係にある他国」、「存立危機武力攻撃」、この攻撃を「排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」などの概念は極めて漠然としておりその範囲は不明確である。この点は、従来の「自衛権発動の3要件」と比較すると明白である。法案における「存立危機事態」対処は、歯止めのない集団的自衛権行使につながりかねず、憲法9条に反するものである。
その際の対処措置を、国だけでなく地方公共団体や指定公共機関にも行わせることも重大な問題をはらんでいる。

(2)地球のどこででも米軍等に対し「後方支援」で一体的に戦争協力
 重要影響事態法案における「後方支援活動」と国際平和支援法案における「協力支援活動」は、いずれも他国軍隊に対する自衛隊の支援活動であるが、これらは、活動領域について地理的な限定がなく、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも行われ、従来の周辺事態法やテロ特措法、イラク特措法などでは禁じられていた「弾薬の提供」も可能にするなど、自衛隊が戦闘現場近くで外国の軍隊に緊密に協力して支援活動を行うことが想定されている。これは、もはや「外国の武力行使とは一体化しない」といういわゆる「一体化」論がおよそ成立しないことを意味するものであり、そこでの自衛隊の支援活動は「武力の行使」に該当し憲法9条1項に違反する。このような違憲かつ危険な活動に自衛隊を送り出すことは、政治の責任の放棄のそしりを免れない。
国際平和支援法案の支援活動は、与党協議の結果、「例外なき国会事前承認」が求められることとなったが、その歯止めとしての実効性は、国会での審議期間の短さなどから大いに疑問である。また、重要影響事態法案は、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というきわめてあいまいな要件で国連決議等の有無に関わりなく米軍等への支援活動が可能となることから国際法上違法な武力行使に加担する危険性をはらみ、かつ国会による事後承認も許されるという点で大きな問題がある。

(3)「武器等防護」で平時から米軍等と「同盟軍」的関係を構築
 自衛隊法改正案は、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している」米軍等の武器等防護のために自衛隊に武器の使用を認める規定を盛り込んでいるが、こうした規定は、自衛隊が米軍等と警戒監視活動や軍事演習などで平時から事実上の「同盟軍」的な行動をとることを想定していると言わざるを得ない。このような活動は、周辺諸国との軍事的緊張を高め、偶発的な武力紛争を誘発しかねず、武力の行使にまでエスカレートする危険をはらむものである。そこでの武器の使用を現場の判断に任せることもまた、政治の責任の放棄といわざるをえない。
領域をめぐる紛争や海洋の安全の確保は、本来平和的な外交交渉や警察的活動で対応すべきものである。それこそが、憲法9条の平和主義の志向と合致するものである。

 以上のような憲法上多くの問題点をはらむ安保関連法案を、国会はすみやかに廃案にするべきである。政府は、この法案の前提となっている昨年7月1日の閣議決定と、日米ガイドラインをただちに撤回すべきである。そして、憲法に基づく政治を担う国家機関としての最低限の責務として、国会にはこのような重大な問題をはらむ法案の拙速な審議と採決を断じて行わぬよう求める。
(2015年6月3日)