(民衆闘争報道/正義連(挺対協)問題で、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動が声明 2020年5月13日)
声明/日本政府、日本社会こそが責任を問われている
2020年5月13日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
(共同代表:梁 澄子、 柴 洋子)
▲李容洙(イ・ヨンス)ハルモニからの告発を受け、記者会見を開いた「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」のイ・ナヨン理事長(2020年5月11日)
被害者を追い詰めたのは誰か
「30年間家族のように過ごしてきたハルモニが示された残念な思い、尹美香(ユン・ミヒャン)前代表が去った時に感じたであろう不安、何よりもこの問題が解決されていないことへの怒りを謙虚に受け止め、李容洙(イ・ヨンス)ハルモニを不本意ながらも傷つけてしまったことに対し心からお詫びいたします。」
日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)の李娜榮(イ・ナヨン)理事長は5月11日、李容洙ハルモニへの謝罪の言葉で記者会見を開始した。これに先立つ5月7日、日本軍「慰安婦」被害者である李容洙ハルモニが会見を開き、「もう水曜デモには出ない」「尹美香はこの問題を解決してから(国会に)行くべきだ」等と発言したことに対して、正義連が謝罪の言葉を述べたのである。
しかし、真に謝罪すべきは誰なのだろうか。李容洙ハルモニの苛立ちと不満は誰に向けられたものなのだろうか。30年間、被害事実の認定と心からの謝罪、それに基づく賠償、たゆまぬ真相究明と教育等の再発防止策が求められてきたにもかかわらず、未だその声に応えることが出来ていない日本政府にこそ、被害者をこのような状況にまで追い詰めた責任がある。そして、日本政府に責任を取らせることが出来ていない私たちは、日本の市民として、その責任の重さを痛切に感じ深く恥じ入る他ない心情だ。
一部韓国メディアは悪質なでっち上げ報道を直ちにやめよ
ところが、この李容洙ハルモニの哀切な訴えを利用して、尹美香前代表や正義連が明確な説明を繰り返しても「疑惑」があり続けるかのように印象づけようとする一部韓国メディアの報道が日増しに度を超している。中でも、2015年の日韓合意をめぐる「疑惑」なるものは、当時の運動過程を共に歩んだ私たち日本軍「慰安婦」問題解決全国行動にとっても聞き捨てならないものだ。それは、尹美香前代表が日韓合意の内容を事前に知っていながら被害者たちには伏せていたという「疑惑」だ。これは、当時の韓国外交省関係者らが「尹美香代表は事前に知っていたのに、発表されると豹変して合意に反対した」「外交省は事前に被害者たちとの協議を15回にわたって行った」等と、これまで吹聴してきたものが再燃した形だ。これについては、5月10日に発表された<共に民主党>の論評が簡潔に事実を語っている。
「朴槿恵政府当時、外交部(外交省)は被害者と関係団体とは何らの事前の協議もなく、12月27日午後に開かれた日韓局長級協議で全ての事項を決定し、当日(27日)の夜に尹美香・当時の挺対協常任代表に1.責任を痛感、2.謝罪反省、3.日本政府の国庫からの拠出という合意内容の一部を、機密保持を前提に一方的に通告した。不可逆的解決、国際社会で言及しない、少女像の撤去等の内容は外されていた。事前協議というのも外交部の旧正月等の挨拶訪問のみだった」(注:カッコ内は訳者補足)。
被害者と協議することが既に不可能な発表前日の夜遅くになって、当然反対されるであろう内容を伏せて一部の内容だけを尹美香前代表に告げたのが、外交省の言う「事前協議」の全てであることは、当時の状況をつぶさに共有していた私たちも明確に記憶する事実だ。この事実については現在、韓国外交省も「2017年の日韓合意検証で述べたとおり」という形で、尹前代表側の主張が正しいことを追認している。
他にも、李容洙ハルモニの発言からは遠く離れて、個人のプライバシーにまで土足で踏み込む報道合戦まで繰り広げられている状況に対して私たちは断固抗議し、即刻このような非人権的な報道、根拠なき歪曲報道をやめるよう訴える。一部韓国メディアの歪曲報道は、日本政府が、そして日本社会が歴史を直視して未来の平和へと繋げるための道を邪魔するものになりかねないことを付言しておく。
今後も性暴力の根絶と平和を求める道を共に歩み続ける
正義連の運動は、正義連だけのものではない。自らの痛みを吐露することで二度と同じようなことが起きないよう世界に警鐘を鳴らし、戦時下で、あるいは日常の中で性暴力の被害に遭った女性たちに勇気と希望を与え、記憶し継承することが再発防止の道であることを示してくれた日本軍「慰安婦」被害者たちの思いと運動に連なってきた世界の市民たちが共に築きあげてきた運動だ。その運動を今後は韓国国会で実現していくという尹美香前代表の新たな挑戦、「今後も揺らぐことなく進んで行く」という正義連の決意に、私たちは絶大なる信頼と支持を送り、今後も連帯を強めていく。
最後に、日本政府の責任履行という被害者たちの切実な願いを未だ実現させることができていない日本の市民として、李容洙ハルモニをはじめとする各国の被害者、亡くなった被害者たちに心からのお詫びを申し上げる。今後も、私たちは李容洙ハルモニの同志として、共にあることを伝えたい。
<資料> 李容洙ハルモニの記者会見にたいする正義連の見解
2020年5月11日
日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)
5月7日、日本軍「慰安婦」被害者で人権運動活動家として30年を活動してきた李容洙(イ・ヨンス)ハルモニの記者会見を残念な気持ちで見守りました。それに関連して、次の通り「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の見解をお伝えします。
まず過去、30年間一途に日本軍「慰安婦」被害者の人権と名誉回復を望んで正義連(挺対協)の運動を支持、連帯してこられた方たちに、思いがけない驚きと心痛を与えたことをお詫びします。
正義連(挺対協)は、日本軍「慰安婦」問題の正義ある解決を通じて、被害ハルモニたちの人権と名誉を回復し、さらには依然として戦争中に性暴力被害のために苦痛を受けている戦時性暴力被害者たちの正義実現のために努力してきました。このすべての活動は、その誰も被害者たちの声に耳を傾けなかった時、勇気ある証言を始めて問題解決の運動の中心に立っていらっしゃった金学順(キム・ハクスン)、李容洙(イ・ヨンス)ハルモニら日本軍「慰安婦」被害当事者たちの存在が可能にしたことを良く理解しています。だから30年間、日本軍「慰安婦」被害者と無数の国内外の市民とともに築いて来た運動の歴史が、毀損されてはならないと言う心情で、誤って伝えられたり、誤解の素地がある部分に関して見解を明らかにしたいと思います。
1) まず、市民たちが集めてくれた大切な後援金は、正義連(挺対協)が2003年に開所した被害者支援「シュイムト(休みの家)」を始め、全国に居住している被害ハルモニたちを支援するために使用しています。1990年に結成された正義連(挺対協)は、1991年金学順ハルモニの初証言以降、被害者申告電話を開設し、当時経済的に困難な状況で生活していた日本軍「慰安婦」被害者の生活安定のために1992年「挺身隊ハルモニ生活基金募金国民運動本部」を設立して募金活動を展開、当時、被害者62名へ250万ウォンずつを支給しました。さらに、被害者へ財政的・医療的支援などを可能にする支援法の制定運動を展開し、1993年に国内立法を導き出しました。
金学順ハルモニら被害者の反対にも拘らず、1995年日本政府が公式的賠償ではない民間協力基金の「アジア女性基金」を通じて問題を繕おうとした時も、全国民基金募金運動を展開して、国内外に住む日本軍「慰安婦」被害者156名に政府支援と市民募金を合わせてそれぞれ4,412万5,000ウォンを渡しました。
2015年韓日政府の日本軍「慰安婦」合意(2015韓日合意)が発表され、慰労金10億円で問題を「解決」しようとした時も、最後まで日本政府の慰労金受領に反対して闘われた李容洙ハルモニら被害者8名へ2017年後半期に百万市民募金を行なって造成された基金で、一人当り1億ウォンを女性人権賞金としてお渡ししました。
2) 国連などの国際社会への認識向上、国際連帯などを通じた歴史的真実と被害者の人権回復のための活動に使用されました。1992年黄錦周(ファン・クムジュ)ハルモニの国連人権賞委員会での初めての日本軍「慰安婦」被害事実証言を始発に、1993年金福童(キム・ボットン)ハルモニのビエンナ人権大会証言、2007年米国議会決議案121号採択のための李容洙ハルモニら証言活動、2019年李容洙ハルモニが参席されたフィリピン開催の「アジア太平洋平和と繁栄のための国際大会」活動などを支援しました。1992年から被害国と加害国の女性が被害者たちとともに毎年行なっているアジア連帯会議、日本の戦争犯罪と「慰安婦」問題の加害責任を明確にするための2000年女性国際法廷開催など、当事者たちの力で国際社会の世論を喚起するために使用してきました。
3) 1992年1月8日開始から今年で29年目を迎えている水曜デモ、日本政府の犯罪事実認定と法的賠償履行のために被害者たちが起こした訴訟支援活動、被害者の人権と名誉を毀損している歴史歪曲を正す対応とコンテンツ製作・広報事業、2011年第1000回水曜デモ記念の平和碑建立を始めとする海外平和碑建立を含んだ各種記念事業、世界戦時性暴力被害者を支援・連帯するための「ナビ基金」事業、記憶と記録のための証言集と関連出版事業、未来世代の教育と奨学事業のために使用しています。
日本軍「慰安婦」問題の歴史的事実を保存し、次世代が勇気を持って証言し闘った日本軍「慰安婦」被害者の生涯と歴史を記憶するため、2012年「戦争と女性人権博物館」建設を通じて、日本軍「慰安婦」問題を始めとした戦時性暴力問題に対する国内外の認識を高める活動にも使用しています。以上の募金使用の内訳に関して、定期的に会計監査の検証を受け、公示手続きを経て公開しています。
4) 記者会見で言及なさった尹美香(ユン・ミヒャン)前代表に関連して、1992年李容洙ハルモニの被害者申告電話から29年間、時には同志として、娘として共にしてきた尹美香前代表がさる3月20日に代表職を辞任して国会議員比例代表として出馬することになった時、長い時間活動してきた被害者ハルモニたちが一人ずつ亡くなられることに心痛めた李容洙ハルモニが、尹美香前代表に対して祝賀する気持ちとともに、当然、家族を送る哀しみと寂しさを感じられるでしょう。十分に理解し、深く心に刻むべきことと思います。しかし正義連(挺対協)活動家たちは何時も、ハルモニたちに対する尊敬と感謝の心をただの一瞬間も忘れたことはないと強調します。
李容洙ハルモニら被害者たちと正義連(挺対協)が過去30年間運動の歴史の中で結んできた関係は、血縁家族を越えた心と心、活動と活動で繋いできたものと、敢えて申し上げることができます。日本軍「慰安婦」被害者たちの証言を認定どころか加害事実を否定し、被害者を非難して問題解決に顔を背ける日本政府の業態の中で、共に泣き共に励まし、時には共に笑って希望を分かち合い、これまでの歳月を耐えてきました。
5) 私どもは、遠く大邱から90代になる高齢にも拘らず水曜デモに参席くださり、「運動するには全く良い歳」と言い、「200歳まで生きて問題解決のために最後まで闘う」とおっしゃった李容洙ハルモニの堂々とした姿を記憶しています。
韓国政府がイラク派兵を決定した時、「この地上のすべての戦争に反対する」と言ったハルモニたちが直接主管なさった水曜デモで、愉快な司会して下さった李容洙ハルモニを思い出します。2019年11月、二人のフィリピン日本軍「慰安婦」被害者が訪問された時、一緒に水曜デモの舞台に上がって満面の笑みで希望のメッセージをくださった李容洙ハルモニを憶えています。2015年韓日合意当時、尹炳世(ユン・ビョンセ)外務部長官をひどく怒鳴りつけた李容洙ハルモニの勇気を憶えています。金学順ハルモニが開いた正義の門を、李容洙人権活動家がもっと開いてくれることと期待します。
だからハルモニの心とは別に、ハルモニの言葉が日本軍「慰安婦」問題解決のために誰よりも献身的に活動してきた被害者たちの名誉と運動の歴史を傷つけるために、悪用されないことを衷心から望みます。
6) 最後に今回のことは、出口が見えない30年間の辛い闘争の中で、孤独でない家族のように、同志のように共にするために必死に努力してきた正義連(挺対協)活動に不十分な点がないかを見直す機会にし、日本軍「慰安婦」問題の正義ある解決がなされ、被害者の人権と名誉が回復されるようにもっと努力することを確認します。今後も多くの叱責と批判を謙虚に受け止め、新しい未来を開拓する正義連(挺対協)になって行きます。
(翻訳:権龍夫)
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