(民衆闘争報道) 「日本軍従軍慰安婦の人権を踏みにじり、日本軍国主義と侵略戦争を正当化する、橋下大阪市長を糾弾する」 (2012年10月26日)
すぐばれるトリックを駆使し民衆をたぶらかす橋下を政治的ギロチン台に送れ!
柴野貞夫時事問題研究会
●吉見義明中央大教授が撤回と謝罪を要求。「橋下・大阪市長の発言は、私の人格を否定し、名誉を毀損するものだ」
橋下徹大阪市長は、10月10日、退庁時の囲み取材で、「吉見さんが強制連行の事実までは、認められないと言った」との、虚偽と捏造の作り話に基づき、日本軍従軍「慰安婦」問題の権威者を貶(おとし)めて、自己の持論を合理化する、許し難い談話を行った。
8月24日、同じ囲み記者会見の場で、「慰安婦」に関する『2007年安倍内閣時の閣議決定』の事実内容を歪曲し、“河野談話より閣議決定が優先し、強制連行は否定されている”と、河野談話を貶め否定した発言した。
ともに、朝鮮とアジアの女性の人権を蹂躙し、人種差別と偏見で貫かれた度し難い犯罪的言論である。橋下市長の発言は全く事実を歪めるものである。
吉見(中央大学)教授は、23日、その謝罪と撤回を求め、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークを中心とする市民数十人とともに、市長への面会を要求した。これに対し、橋本は一切の面会を拒否し、市政策企画室秘書部係長の陰に隠れ、逃げ回った。
吉見教授は係長との面会の席で、根拠に基づいて次のように指摘した。“日本軍「慰安婦」問題は、軍(国家)が作った制度であり、橋下氏は‘軍や官憲が脅迫・暴行によって女性を連行する以外は強制連行でない’とするが、官憲・軍が女性を集める為に業者を使い、実行者が業者であっても、略取・勧誘・誘拐したのであれば、明らかな強制連行・強制使役である。”
市長抗議のあと、6時30分より「エルおおさか」で、日本軍「慰安婦」問題ネットワ−ク関西の主催による「慰安婦」問題学習会が開催された。
ここで吉見教授は、自らが手に入れた軍の公文書に基づいて、「慰安所の設置・管理運営・維持したのは軍である」こと、橋下が言う(慰安所が)「風俗営業を公安委員会が管理する事と同じ」とするのは、国家と軍の犯罪行為と責任を否定するものである事。橋本が言う「強制連行はなかった」とするのは、朝鮮・台湾で、業者を選定したのは軍と総督府であり、女性連行の実態は、誘拐、甘言、人身売買、だけでなく、軍・官憲による直接的暴行脅迫もあったと資料に基づいて指摘し、「慰安婦」問題の本質は、強制連行・強制使役だと明らかにした。
●橋下は“閣議決定で河野談話は否定されており、「慰安婦」の強制連行は存在しない”という。しかし、これは根拠のない出鱈目だ。
橋下の8月24日の囲み記者会見での、「慰安婦」に関する「2007年安倍内閣時の閣議決定」の事実内容の歪曲談話は以下の内容だ。
“安倍内閣時、「2007年の閣議」では、強制連行を裏付ける直接の記述・証拠はないということが決定されている。それは河野談話を「見直す」か、閣議決定が「間違って」いるか、二者択一の関係に立つものである”と言い、その上で、新聞記者に,“「閣議決定」と「談話」と、どっちが上なのか?”と得意そうに凄んで見せた。彼はそこで、“閣議の「決定」は「談話」より上に立つものだ。2007年の閣議決定そのものが、「慰安婦」問題についての日本政府の決定だ”と得意そうに自慢したのだ。
しかし、「河野談話」には、もともと「強制連行」という記述は存在しない。「河野談話」は、もともと「強制連行」と言う文言を根拠に判断し、作られたのではない。「強制連行」の記述や、文言はなくとも、「慰安婦」に対する強制連行の実態が詳細に調査された結果として、判断されたものなのだ。
また、平成19年3月16日の閣議決定とは、首相官邸HP(2007・3・16付)−<閣議案件>の中の「国会提出案件―衆議院議員辻元清美(当時・社民)提出安倍首相の慰安婦問題への認識に関する質問に対する答弁書について」を指すが、その内容は、辻元清美議員への政府答弁書によって示されたものであって、「閣議決定」の文書はHPにも存在しない。
従って、橋下が言う“「閣議決定」で、強制連行が否定されている”は、根拠が全くない作り話だ。では、辻元清美の、「強制連行」と「河野談話」に関する、(ここでは)二点に限定した質問への政府答弁書、即ち橋下が言う「閣議決定」の内容とはどんなものなのか。
辻元清美の「慰安婦」に関する質問(平成19年3月16日から11月9日まで8項目に及んでいる)への、「強制性」については、「安倍内閣の基本的立場は、河野談話の通りである」と明確に回答している。(安倍の個人的主張にも拘らず国内外の批判の中でそうせざるを得なかったのだ)
辻元清美の「河野談話」と「閣議決定」との関連性に関する質問への政府答弁は、「官房長官談話は、閣議決定はされていないが、歴代の内閣が継承しているものであり、政府の基本的立場は、官房長官談話を継承するものであるから、その内容を閣議決定する事は考えていない」と明言したのである。
橋下が言うような、「閣議決定が、河野談話を否定」するような事実は、どこにもないのである。
2007年6月26日、米国下院外交委員会で日本の「従軍慰安婦問題に関し、日本政府に謝罪を求める決議」を採択したが、その直前の4月に訪米し、ブッシュに会って、「日本政府は河野談話を継承する」と言明した安倍が、政府答弁―閣議決定で、「河野談話」を否定することなど出来なかったはずである。
橋下が、「閣議決定は、強制性を否定している」と主張するのは、恐らくこれら辻元議員への政府回答の中で、政府側が2007年(平成19年)3月16日、次のように答弁した事を捉えて、その意味を歪曲して言っているのであろうと推察される。
(辻元議員の)「お尋ねは、『強制性』の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)の通りとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」と言う答弁を歪曲しているのである。
この文言は、この時点で「政府が発見した資料の中には、軍や官憲による、いわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」ことが、仮に事実であったとしても、河野談話が示す諸事実は、軍や官憲の関与と女性連行の強制性を実証する証拠を明らかにしたものであって、「河野談話」の内容を否定したり、強制性を覆すものではない。従って安倍内閣は、(本心はどうであれ、)当時の国内外の世論の前に、河野談話を継承すると言わざるを得なかったのだ。
橋下は、安倍と肝胆相照らして、強制連行と言う非人倫的な戦争犯罪を合理化し、女性と民衆の人権を、国家権力と一握りの資本家階級の私的利益に従属させる社会をめざして、すぐばれるトリックを駆使しながら、民衆をたぶらかそうとしているのだ。
「慰安婦の募集については、軍当局の要請を受けた経営者の依頼により斡旋業者らがこれに当たることが多かったが、その場合も戦争の拡大とともにその人員の確保の必要性が高まり、そのような状況の下で、業者らが或いは甘言を弄し、或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多く、更に、官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた」(河野談話)政府諸機関の文書資料、元軍人等関係者、元従軍慰安婦の人たちからの聞き取り、米国公文書の調査、沖縄の現地調査などでの「総合的」な判断によって、政府見解として発表された「河野談話」を貶め、日本帝国主義の戦争犯罪を合理化し、日本軍国主義のデマゴグーを狙う橋下は、民衆の手によって政治的ギロチンの露としなければならない。
<参考サイト>
☆「従軍慰安婦強制動員」の強制否定は、安倍政権の確信犯的行為である(2007年4月15日)
☆外務省 「いわゆる慰安婦問題について」 (平成5年8月4日)
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