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 民衆闘争報道− 朝鮮民主主義人民共和国外務省との会見記録201261日)



      朝鮮外務省(軍縮及び平和研究所副所長)との会見記録(その3)


柴野貞夫時事問題研究会


今回、ピョンヤンを訪問した「日朝友好京都ネット訪朝団」の構成グループのひとつである、「新聞−報道学グループ」の4名(・浅野健一同志社大学教授、・立命館大学コリア研究センター専任研究員、・同志社大学大学院学生、・柴野貞夫時事問題研究会代表)は、52日 朝鮮民主主義人民共和国外務省/「軍縮及び平和研究所」のキム・ヨングク副所長と会見した。これはその会見記録である。同じくこの席に、軍縮及び平和研究所のファン・イクファン研究士、チョン・ナムヒョク(丁南革)補助研究士が同席した。
この会見で、キム・ヨングク副所長は、主として
@朝鮮半島の平和問題、A北南関係,B統一問題について、新たな極東情勢を踏まえた上で、示唆に富む多くの指摘をされた。それは全て、我々日本人の、自らの責任に繋がる問題意識として、受け止めなければならない指摘であると痛感させられた。

[朝鮮民主主義人民共和国外務省−軍縮及び平和研究所/キム・ヨングク副所長]談:"浅野先生を始め、日朝友好京都ネットの皆さん方とお目にかかれて嬉しく思います。これまで諸先生方が文筆活動などを通して、朝鮮の姿を紹介されて来た事に対して、評価するとともに謝意を表します。時間はあまりないかも知れませんが、私たちを取り巻く近況とか国内環境などについて、意見を交換したいと思います。
このあいだ、朝鮮労働党第4回代表者会議が行われ、また最高人民会議125回会議が行われました。この会議ではキム・ジョンイル総書記を、朝鮮労働党の永遠の総書記として、また共和国の永遠の国防委員長として推戴する事を決定しました。また、キム・ジョンウン同志を朝鮮労働党第一書記、国防委員会第一委員長として推戴しました。
我が人民は、もう一人の人民の偉大な指導者を戴いたと言う誇りを持って、強盛国家建設に邁進しております。315日には、キム・イルソン(金日成)主席の生誕100周年を、人類史的な大慶事として盛大に迎えました。世界はこの行事を通じて、指導者と党と人民大衆が一体を成している我が国の様子を、しっかりと見届けたと思います。
朝鮮半島の平和問題について簡単に申し上げます。
現在、朝鮮半島には、恒久的な平和と安定を保障する為の強固な制度的装置が欠如していると言う事です。「停戦状態」は、ほぼ破壊された状態です。
戦争を防止する為の制度的方式が壊れているが故に、任意の偶発的な挑発行為が、直ぐ戦争になりかねない、そう言う緊張状態が展開しています。また、アメリカと南朝鮮軍は、キーリゾブルとかイーグルなどと言った各種の戦争演習を、所謂(いわゆる)防衛の名目の下に、年々ひき続き、朝鮮共和国を狙うかたちで挑発策動を続けています。
この様な膨大な規模の演習は、その性格からして、これは共和国を狙った侵略的性格を帯びた戦争演習であり、それによって朝鮮半島の緊張状態がますます高められているのです。
また、アメリカと日本、南朝鮮は、我々の平和的人工衛星の打ち上げを長距離ミサイルの発射だと言っています。そして、もう直ぐにでも、朝鮮共和国で核実験を行うのが決まっているかの様に言って、彼等による自作の「北朝鮮核脅威シナリオ」を作って、これに対抗しなければならないかの様に演じています。
また、アメリカの太平洋アジア軍事重視戦略の下に、アメリカ、日本、南朝鮮の軍事協力が、新たな様相を帯びて発展してきています。
この様なアメリカ、日本、南朝鮮の三角軍事同盟の働きとその動きは、我が国をはじめとする周辺諸国家で、大きな脅威となっています。こう言ったすべての事が、朝鮮半島の平和と安定を脅かす主要な要因となっています。
我々は、朝鮮半島の平和と安定を生む最良の方法は、「停戦協定」を「平和協定」に代える事だと見なしています。その為には、アメリカがまず、対朝鮮敵視政策を取り止め、1日も早く、朝鮮との関係改善の道に乗り出すべきだと考えています。日本も参加する六者会議がスムーズにはかどっていないのは、互いの信頼関係が培われていないからであります。
次に北南関係について、短く申し上げます。
2000
6月の6.15南北共同宣言、200710月の10.4南北共同平和宣言が発表され、北南関係は大きな発展を遂げました。各界、各部門の対話が行われ、以前には考えられなかったケソン経済工業団地の設立など、いろんな発展が遂げられました。これは、(朝日)ピョンヤン宣言とも切り離す事が出来ないものです。
この様な「6.15統一時代」を切り開き、先軍政治によって強力な戦争抑止力を作られたのは、偉大なキム・ジョンイル総書記であり、東北アジアと世界の安定のための特質した貢献によるものであります。
しかし、残念ながら、イ・ミョンパク(李明博)政権が2008年に登場して以来、北南関係は悪化の一途を辿っています。イ・ミョンパク(李明博)は、政権の座についた初日から、これまでの国内合意を全てひっくりかえし、「北核放棄」を対北政策の前提としてきました。
李明博の悪辣極まる行動は、観光事業の様な協力活動も遮断してしまいました。李明博は、天安艦事件をでっち上げるなど我が国との対決を煽り立て、挙句の果てには、ヨンピョン島事件を誘発させるなど、国内関係は非常にきびしいものとなりました。
我々の方からは、昨年年頭から、この北南関係の緊張状態を和らげる為の、各レベルにわたる各種提案を行って来ました。ところが、李明博一味は、この問題に対する透明性とかヨンピョン、天安艦事件へのお詫びなどの、とんでもない条件をつけて、我々の提案を拒否してきました。そればかりか、昨年12月の突然の我が民族の国葬に際して、同族の対決としてこれ以上考えられないひどい対決行動を取りました。そればかりか、今年に入って、我が国の最高尊厳を冒涜するなど、北南関係がこれ以上、収しゅできない所まで来ました。
最近も、我々の平和的人工衛星の打ち上げまで引掛けて、米日と結託し、国連の舞台で、我々に対する圧力の雰囲気を作る先頭に立っています。
我々は今後、イ・ミョンパクとは付き合うつもりはないと明確に述べてきました。今後、朝鮮半島で何か事件が起きるならば、それは全て、対決に躍起になっているイ・ミョンパクの責任となります。
統一の問題について述べます。
北南対立の一番の原因は、結局統一の方式に原因があると思います。リ・ミョンパク政権は、当初から対北対決を続けて来ましたが、その統一方式の中身は、吸収統一と言う、即ち我々を飲み込んでから統一を謀ると言う、野望があります。
2000
年の6.15共同宣言では、「.南と北は国の統一のため、南の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。」と明記し、朝鮮の統一を「連邦制」で計っていくと言う事をはっきりと謳っています。
ところが、リ・ミョンパクは、この合意を無視して、公然と「自由民主主義体制の下での統一」(朝鮮共和国の資本主義化)を唱えています。その為の三段階の統一方式と言うものを打ち出し、しまいには「統一税」を徴収するなどと言う事も言っています。
半世紀を越える間には、北と南で、互いに相異なる自分たちの思想と制度を譲れないと言うのが、朝鮮半島の現実であります。
相方が自分の制度を守ると言う状況で、どちらかの制度統一と言うものは、どちらかが、どちらかを吸収して、戦争によってこれを実現させると言う「戦争への道」であります。このリ・ミョンパクの考える(どちらかの)「制度統一論」と言うものは、戦争も辞さないと言う、不純な「戦争統一論」であります。
我々の立場は、この様な危険千万な方法でなく、「連邦制による統一論」であります。我々の統一方案と言うのは、お互いの思想と制度を認め合った上で、お互いに競走し様と言う、最も現実的な統一方案だと思います。また連邦制と言うものは、戦争を許さない最善の平和統一方案であります。またこれは、中立を前提にしているが故に、周辺国家に対しても、一番最善の統一方案であります。ですから、「連邦制統一」を支持するかしないか、認めるか認めないかは、朝鮮半島の平和と安定を認めるのか、本当の意味での朝鮮民族の未来を大事にして考えるか、考えないかに関わる、原則的問題であると言えます。
今日、祖国統一の為のこの戦いの陣頭には、我々の優れた指導者であるキム・ジョンウン同志が立っておられます。敬愛するキム・ジョンウン同志は、この間の閲兵式の演説で、「民族の独立と平和を望む者ならば、どんな人とも手を携えて進むであろうし、祖国統一の歴史的任務を遂行する為、忍耐深い努力を傾けて行くであろう」と言う、我が党と共和国の闡明な意思を明らかにしました。敬愛するキム・ジョンウン同志がおられる限り、偉大なキム・イルソン主席とキム・ジョンイル総書記の祖国統一の偉業はそのまま、継承されるでしょう。我々はキム・ジョンウン同志の周りにしっかり団結して、必ず祖国統一を成し遂げていくと言う、決意に満ちています。
最後に人工衛星の打ち上げに関して、簡単な説明をします。
我々は、人工衛星を打ち上げる事を発表した当初から、我々の透明性を見せる為の前例のない措置を講じて来ました。我々は、関連する国際機関に対して、全てのデータや資料を通報しました。また、他の国ではする事のない、専門家、記者たちを招待して人工衛星を見せました。
しかし米国は、当初から我々の人工衛星の打ち上げを長距離弾道ミサイルの発射と決めつけました。アメリカは悪辣にも、我々の人工衛星打ち上げを批判するばかりか、416には、我々の人工衛星の打ち上げを糾弾すると言う、国連安保議長声明を発表しました。我々が衛星を打ち上げてから、インドが公開的に長距離弾道ミサイル打ち上げを発表しました。
我々の平和的人工衛星の打ち上げを、あれほど悪辣に批判したにも拘わらず、インドの長距離弾道ミサイル打ち上げの件に関しては一切口を切っていません。これは何を意味するのでしょう。
まさしく米国は、自分たちと仲が悪い国であれば、経済発展のための平和的人工衛星の打ち上げも許さないと言うことであり、自分らと仲良しであれば、長距離弾道ミサイルを、持っても良いのであり、核兵器も持って良いと言うダブルスタンダードが、世界に満ち溢れていると言う事を、見事に見せています。
宇宙と言うものは、或る特定された国々にだけの所有物ではなく、地球上の全ての国々の共同の所有物であります。そして国際法には、宇宙には如何なる差別もなく、自由に開発・利用されるべきと言う事が明記されています。我々は国際法に担保されている我々の自主権を行使していく所存です。
朝鮮民族は、日本帝国主義によって植民地支配された苦い経験を持っている国であります。我々には、経済発展の為の平和的環境が重要なのです。又朝鮮半島で起こった1950年の朝鮮戦争の惨禍が起きる事を望みません。
しかし、何よりも貴いのは、我々の自主権であります。国を奪われ、国権を取り上げられた身の上がどんなに悲しい事か、どんなにひどいものか、我々が身をもって経験しています。
(私からの説明は以上です)
(ご質問にあった)朝鮮半島における米軍の駐留について、お話します。
朝鮮半島から米軍が出て行かなければならないのは、はっきりした事であります。アメリカは、国際法を云々するが、停戦協定では米軍は撤退しなければならない事となっています。我が国側は、停戦協定が締結された後、停戦協定に明記された通りに、数年間の内に中国軍は全て撤収させました。
米軍はそのまま残っています。停戦協定では、核兵器を含む新型兵器と重装備は持ち込まない事と明記されていますが、米軍は当初から停戦協定に違反して、朝鮮半島に初めて核兵器を配備し、今も引き続き核兵器を持ち込み、2010年には、天安艦事件を口実として西海海域に、史上初めて、核空母まで引き入れました。
朝鮮半島が統一されると周辺諸国に脅威となると言う意見もあるようですが、我々の「連邦制」は、徹頭徹尾中立を意味します。スイスやスエーデンの様に、ある意味では「非同盟中立」と比較されてもよいでしょう。
朝鮮半島と周辺諸国にとって脅威となっている今日の問題は、日本と南朝鮮が米国の核の傘の下にあると言うことです。
オバマは、新たにアジア重視の極東戦略を明らかにしました。分り易く言えば、中国を牽制する為に極東に兵力を集中し、他から引き上げると言うことです。この戦略に対し、日本と南朝鮮が積極的に追従しています。
この様に東北アジア地域から、今再び冷戦構造が作られつつある事に、注意を向けなければなりません。その口実として使われているのが、「北脅威論」です。日本の良識ある皆さん方が、この問題の本質をしっかり見極めてほしいと思います。
(ご質問にあった)民間レベルを通した交流から、統一へ接近出来ないかと言う点に関してお話します。南朝鮮から民間レベルでの交流を図り、民間からの統一への接近も、これは良い考えだと思います。ただこれが、現実的に可能かと言うことです。共和国の方では20111月に軍事的な問題も含めて、各界各分野の交流を提案した事もありました。南朝鮮のイ・ミョンパクは、これを完全に拒否しました。李は、南の友好団体、人道団体、市民レベルとの交流を一切遮断しています。
キム・ジョンイル総書記が逝去されたあと、南朝鮮では弔問に行きたいと言う申し出がたくさんあったと言うのに、日本も朝鮮も一緒ですが、人が亡くなった時に、そこへ行って弔問するのは、道義的問題です。李ネズミ政権はこれもみんな切ってしまいました。そう言う意味で、発想はいいのですが、民間ベースで先に立てて、統一を目指すと言うのは、現実的には無理があるかも知れません。
●(
ご質問にあった)朝鮮共和国の軍縮に対する考えについて述べます。
軍縮には、いろんな問題があります。アメリカを頭とする、我々に対する敵対勢力からの核脅威が一掃されるならば、我々には一個の核兵器も必要ではありません。軍縮は、我々が強く望んでいるものです。しかし、我々は、地球上で最も大きな軍事大国から軍事的脅威を受けています。我々としては、やむを得ず、多大なお金を軍事に力を回さなければならない状況に置かれています。はっきり申し上げれば、民間にそのお金を回せば、今よりかなり裕福な生活が出来ると思います。
キム・ジョンウン同志は、先日の演説で、我々には平和も大切だが、国の自主権がもっと大切であるとおっしゃっています。世界の軍縮を進めるためには、世界で一番軍事力を持つ国が、まず軍縮をする必要があります。今日はどうも有難う御座いました。"

(終わり)

<参考サイト>

☆303 対決政策で得るものは、孤立と破滅だけだ 
(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2011年9月26日付)

☆293 朝鮮民主主義人民共和国外務省代弁人談話 
(朝鮮民主主義人民共和国・朝鮮中央通信 2011年8月18日付)

287 日本は、米帝の朝鮮侵略戦争に積極加担した、特等の参戦国だ 
(朝鮮民主主義人民共和国・ウリミンジョクキリ 2011年6月25日付)

4 連邦制方式の統一は、わが民族の最善の選択 
(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2010年10月13日付)

☆188 宇宙の平和的利用なのか 軍事化なのか 
(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2009年9月23日付)