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(特別寄稿「朝鮮半島の統一は、言葉ではなく行動にある」−キム・スファン 2014212日) 


          朝鮮半島の統一は、言葉ではなく行動にある  
〜チーム・スピリットの後継である韓米合同軍事演習の本質と、張成澤一派粛清との因果関係とは〜


                                            在日活動家 キム・スファン(金秀煥)



●離散家族問題と言う民族史的悲劇の根源は、南北分断と当時米国が朝鮮戦線での原爆使用を公言した事による核避難民の大量発生にある

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日、南北高位級会談が7年ぶりに開催された。合意文は発表されず、互いの主張を確認した模様で、焦点は“離散家族の面会事業再開”と“韓米合同軍事演習”であった。
(※尚、この論考を脱稿した後の214日に開催された高位級接触において、合意がなされたとの共同報道文が出された。但し、論考にして言及しようとした内容の骨格と趣旨は、現在も同じであると判断出来ますので、上記合意については文末にて追加して言及します:筆者)
南北は25日の実務会談で、20日から25日にかけて離散家族面会事業を行うと合意したにも関わらず、韓米連合司令部は10日、離散家族面会事業が行われる24日より、韓米合同軍事演習「キーリゾルフ」を実施すると明らかにした。
「軍事演習が行われている中で離散家族面会は出来ない」とするのが、朝鮮の原則的立場であり、一方韓国は軍事演習と離散家族面会は関連させるべきではないと主張する。

離散家族問題の根源は南北分断と朝鮮戦争であるが、しかしほとんどの場合は家族単位で避難していた。しかし5011月に、米国・トルーマン大統領が朝鮮戦線での原爆使用を公言、核避難民が大量発生するのだが、生まれ育った地を離れられない人々が、家門を継ぐ夫や息子だけでも南に避難するようにした。そして今日何百万もの離散家族が南北に分かれて、会うこともできない民族史的悲劇が生まれた。

●米国は昨年の韓米合同軍事演習「キーリゾルフ」で核爆撃機による原爆模擬投下訓練を繰り返した

しかしこのような事を一切気にもとめない米国は、昨年3月の韓米合同軍事演習においてB-2,B-52核爆撃機で原爆模擬投下訓練を行い、原子力潜水艦シャイアンを動員、延期されたが、大陸間弾道ミサイル発射訓練も予定されていた。陸海空の三大核攻撃手段を想定した軍事演習であった。また米韓軍事演習の内容も危険極まりないものである。この軍事演習は米韓聯合司令部が策定した「作戦計画5027」に則って展開される。作戦計画50275段階で構成されている。

●米韓合同軍事訓練での、作戦計画<5027>及び<5029>は、先制核攻撃を軸として、武力上陸と内部撹乱を含む、主権国家の転覆を狙った国家テロ計画である

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2段階は“北の武力侵攻”が前提とされているが、3段階-北進及び大規模上陸作戦、4段階-占領地での軍事統制確立、そして最終段階は“南政府による統一”までが描かれている。
そして数回の修正の過程で“(‘挑発’の兆候があれば)米韓軍による先制打撃”が可能となり、“韓国軍への通告無しに米国単独で展開”できるようになっている。
他方で概念計画(Concept Plan5029があり、あまりにも侵略性が強いということから作戦計画(operation Plan)に格上げされないままであるが、20124月の韓国紙朝鮮日報によれば“5029計画は既に韓米軍事訓練キーリゾルフなどで繰り返し訓練”されていると報じている。
5029
計画の概要は、▼朝鮮の大量破壊兵器奪取脅威▼朝鮮政権の交代▼朝鮮の内戦状況▼朝鮮住民の大量脱北▼大規模な自然災害に対する人道主義的支援作戦▽朝鮮内の韓国人人質事態−−の6つのケースに備えたシナリオだ。
今、米韓で騒がれている北の“急変事態”を念頭においているが、CIANGOを通じて反政権勢力を育成支援し、内乱を引き起こし軍事介入する、いわゆるリビア方式の反米国家転覆戦略と言える。
最近、朝鮮では米韓のスパイ事件などが頻繁に発覚し、米韓情報当局が様々な人間を朝鮮に浸透させて問題になっているのも、5029計画の脈略とは無関係ではない。

●<国家転覆陰謀行為>を認めたチャン・ソンテク(張成沢)と、韓国の情報当局と<接触した事実>を明らかにした韓国誌

その象徴的な事例が昨年の張成沢事件で明らかになった。特別軍事裁判の判決文では「敵らと思想的に同調し、わが共和国の人民主権を転覆する目的で敢行した国家転覆陰謀行為」を認めたと指摘した。
張成沢事件にもっとも過敏に反応したのは米国であった。中国は“朝鮮の内政問題”であるとし、日韓も“情勢を注視する”という立場であったが、米国は“北朝鮮の極端な残忍性が明らかになった”と不快感をあらわにした。その後、報道は朝鮮の残忍性を誇張する情報が乱舞し、機関銃や火炎放射器、犬に食べさせたとする根拠の無い怪奇な報道がなされた。
カート・キャンベル元米国務省次官補は事件後に“最も洗練された交渉相手であり、最も国際的な人物”として張成沢を賞賛した。敵国である米国に歓迎されていた事を、垣間見ることが出来る。
そして今年1月、韓国誌月刊朝鮮は97年に亡命した黄長Y氏と共に、96年から張成沢と韓国の情報当局が接触していたことを明らかにした。この記事は20136月に準備されていたが、当時は掲載が中止された。2013年に入り張成沢の権力からの排除が進むにつれ張を見限り掲載が進んでいたが、存命しているので公表を中止したのではないかという見方が強い。
このように、米韓当局は様々な手法を用いて朝鮮の国家転覆を虎視眈々と狙っている。これらに過敏にならざるを得ない朝鮮が、今年に入り南北関係改善に乗り出していることには驚きを隠せない。
米韓軍事演習を2日後に変更する決断ができるか、それとも朝鮮が米韓軍事演習後に離散家族面会を行いように求めるか、予断を許さない状況だ。統一は言葉ですむものではなく、行動で示すべきである。

(追記)

●朝鮮が、「軍事演習が行われている中で、離散家族面会は出来ない」とする、その原則的立にも拘らず、離散家族再会事業に応じた理由はどこにあるのか

上記したように、これを脱稿した後、12日の協議を継いで214日に開催された北南高位級会談を通して合意が実現したことが、共同報道文によって周知された。

先ずは、今回の合意を2つの面から大変悦ばしいこととして受けとめている。

先ず、この合意について、朝鮮中央通信日本語版に掲載された共同報道文を引用するなら、

≪北南高位級接触が12、14の両日、板門店で行われた。接触には、北側から朝鮮労働党中央委員会副部長のウォン・ドンヨン氏を団長とする共和国国防委員会の代表団が、南側から青瓦台「国家安保室」第1次長兼「国家安全保障会議」事務処長のキム・ギュヒョン氏を首席代表とする代表団のメンバーが参加した。

接触で双方は、北南関係を改善して民族の団結と平和・繁栄、自主統一の新しい転機を開いていこうとする意志を確め、北南間に提起される諸問題について真しに協議し、共同報道文を発表した。

北と南は2014年2月12、14の両日、板門店で高位級接触を行って、次のように意見をまとめた。

. 北と南は離散家族・親せきの面会を予定通り行うことにした。

. 北と南は相互の理解と信頼を増進させるために相手に対する誹謗と中傷をしないことにした。

. 北と南は互いに関心を寄せる問題を引き続き協議し、北南関係を発展させるために積極的に努力することにした北と南は相互に便利な日に高位級接触を行うことにした
2014年2月14日≫という簡単明瞭なものである。

さて次に、この合意の2つの悦ばしい側面を指摘するならば、1つは、合意の中味そのものと言う側面であり、もう1つは、今後の展開を展望させる側面と指摘出来る。

●北―南側相互の最高指導者の指示と決断を直接仰ぐことの出来る人物が会談の団長となった今回の高位級接触は、<間接的な首脳会談>とも言い得る状況だと認識する朝鮮

中味の側面では、220日〜25日予定の離散家族面会が確定したこと、そして誹謗中傷を相互に中止すること、しかも日程は明らかにはしなかったが、高位級接触の持続性を担保する様に相互に努力することを確認した事と言う、具体的な内容があげられる。

しかし、それ以上に悦ばしい側面は、北−南側相互の最高指導者の指示と決断を直接仰ぐことの出来る人物が会談の団長となり、しかも間を置いた事によって、直接の指示と決断を受けたであろう上で、合意に至った、つまり間接的な首脳会談とも言い得る状況の中で進行されたと言う点があげられる。

12日の協議が延べ10時間以上であったのに比べて、14日の協議は正味4時間程度であったのを見ると、この点は明瞭であろう。

今後も山あり谷ありではあろうが、今回の経験は今後の北南関係改善と進展の展望に、非常に意味あるものとなった側面をして、具体的な中味もそのもの以上に悦ばしいとした由縁である。

特に、前記したように、離散家族再会実現の日程を合同軍事演習の実施期間と被せること、つまりこの間の南側の姿勢として象徴的に表現されている、「対話のある対決」は受け入れないとの主張を堅持して来た朝鮮側の姿勢ではあった。しかし結果、南側の多くの報道機関でさえ、「北側が称する“度量が大きく勇気ある譲歩”によって、高位級接触が維持されて合意に至ったと表現せざるを得ない」とする決断によって、今回の合意が成り立ったのである。

但し、南側関係者は勿論のことだが、決して誤解してならないのは、朝鮮側による“度量が大きく勇気ある”決断が、何かしらの弱気に基づくようなものにはよっていないと言うことである。

●<持続する朝鮮の対話提案という宥和攻勢>の基礎は、5日の会談当日に、南側軍当局でさえ把握出来なかった米軍の爆撃訓練実施の事実を、報道を通して非難した朝鮮の軍事的“実力”にある

前記5日の会談当日に、会談雰囲気を邪魔するかの如く行われたB-52戦略核爆撃機による突然の演習、特に緊張して鋭意注視している朝鮮西海域内の島での、日程外での爆撃訓練を行った駐韓米軍に対して、南側軍当局でさえ把握の無かった爆撃訓練実施の事実を、朝鮮側が報道を通して非難したという軍事的“実力”を示すと共に、この訓練に対して10日訪朝予定のアメリカ側特使受入れを直前に撤回するという言わばアメリカに“懲罰”を与えた朝鮮の何処に、弱気があるというのか。
況して、アメリカ中西部の戦略司令部を初めとした軍事基地に対してICBMによる打撃を通告した昨年3月の宣言、つまり“宣戦布告”にも近い決断を示した朝鮮において、今更弱気があるなどと認識すること自体、嘲笑ものと言えよう。
将に、このことは南朝鮮の自主民報が報道したように、「持続する北の対話提案という宥和攻勢の基礎は、核・ミサイル能力にある」(2014.1.27)のであって、移動式ICBMが朝鮮国内の各地に実践配置されたとの衛星情報の解析結果を見ても、明らかである。
又、米上院情報委員会(2014.1.29、現地時間)そして同院軍事委員会に提出されたアメリカ国家情報局(DNI)及び同軍事情報局(DIA)の各局長が書面報告を通して、「張成沢事件を経て、金正恩朝鮮国防委員会第一委員長の権力基盤は、更に確固としたものとなったと判断する」との議会報告を見ても、弱気になる要素など何処にも無いのである。

●「国の自主統一と平和・繁栄を願う全同胞の志向と要求に鑑みて、これ以上の国土分断と民族分裂の歴史にピリオドを打とうとする断固たる決心を固めた(南への“公開書簡”)」我が最高首脳部

2014
年の新年の辞で明示され、それを具体的化した116日の「南朝鮮当局に送る“重大提案”」、そして同24日の「南朝鮮当局と諸政党、社会団体、各界各層の人民に対する“公開書簡”」、更に26日の政策局代弁人声明を通して認識出来ることは、朝鮮が従来のように祖国平和統一委員会に所管させるのではなく、これら全てが「朝鮮国防委員会」が発したものであると言うことである。
特に、“公開書簡”は、「朝鮮労働党第一書記、朝鮮国防委員会第一委員長、朝鮮人民軍最高司令官の特命に従って」と明記されており、朝鮮の党・政府機関・軍の最高権威の特命よって内外にアピールされているのである、しかも朝鮮国防委員会を直接統括しているのが金正恩第一委員長であることは、誰もが知るところである。
つまり、一連の「対話提案と言う宥和攻勢」は、将に、朝鮮の最高指導者と首脳集団による決意と決断によって推進されているのである。
“公開書簡”には次のような趣旨の一節がある。「国土分裂の歴史が、わが民族に計り知れない災難と苦痛をもたらしている現実、そして国の自主統一と平和・繁栄を願う全同胞の志向と要求に鑑みて、これ以上の国土分断と民族分裂の歴史にピリオドを打とうとする断固たる決心を固めたわが最高首脳部」、と。
今年2014年は故金日成主席逝去から20年目の年であるが、逝去の直前まで主席が最も意を使われながらも実現に至らなかった政策の1つが、祖国の分断克服と民族の統一であった。そして、故金正日総書記は、「主席の祖国統一遺訓は、何を持ってしても成し遂げられなければならない」として、2000年の6.15共同宣言と2007年の10.4宣言と言う、統一の為の里程標を固められた。
そして現在、朝鮮の最高指導者である金正恩第一委員長は、新年の辞や“重大提案”、“公開書簡”などを通して、分断克服と統一実現の為の力強い姿勢を、内外に示された。
将に、朝鮮の統一への道筋は、耳ざわり良い構想を吹聴する美麗字句の言葉によってではなく、度量と勇気があって本質を掴んだ具体的な、そして揺るがない一貫した行動によって、示されているのである。


<関連参考記事、及び論考>

 
☆ 世界を見る−世界の新聞/<プエブロ>号事件の真実と米国に与えた教訓(その3)(朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2014年1月22日付)

 世界を見る−世界の新聞/<プエブロ>号事件の真実と米国に与えた教訓(その2) (朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2014年1月22日付) 

 世界を見る−世界の新聞/<プエブロ>号事件の真実と米国に与えた教訓(その1) (朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2014年1月22日付)

 世界を見る−世界の新聞/核先制攻撃を狙った重大な挑発 (朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2014年1月25日付)


論考/チャン・ソンテク(張成沢)は社会主義朝鮮のエリツインだった (2014年1月12日)


主張/米韓合同軍事演習<キー・リゾブル>は第2次朝鮮戦争の導火線(2013年3月11日)

論考/米国と追随国家の核攻撃から社会主義朝鮮を防衛せよ(2)(2013年3月2日)

論考/米国と追隋国家の核攻撃戦争から社会主義朝鮮を防衛せよ(1)(2013年2月23日)