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民衆闘争報道 柴野貞夫時事問題研究会―連続論考@ 2017123日)


サード韓国配備と「日韓秘密軍事情報保護協定」締結は、朝鮮・中国・ロシアを狙う日・米の核戦争準備である


                                         柴野貞夫時事問題研究会
[連続論考]

@ アジア版NATOとしての日韓米三角軍事同盟と東北アジア(今回)
A 日本の社会・経済の軍事化と、在日米軍の基地機能の強化
B 中国の対・南朝鮮政策の軌道修正と、対・朝鮮政策の破綻
C ピョンヤン宣言と、ストックホルム合意を踏みにじってきた日本政府を糾弾する(いわゆる‘拉致問題’の真実)


         連続論考@
      アジア版NATOとしての日韓米三角軍事同盟と東北アジア


東北アジアの政治情勢は、一気に日米両国が仕掛ける戦争準備に拍車をかけている

オバマは、20144月、日本、韓国を巡り、東北アジアにおけるMD(迎撃ミサイル体系)の構築と、韓国でのサード配備を主張した。
その政治的目的は、朝鮮半島の平和体制への転換を求める朝鮮の体制崩壊を狙い、アジアの経済と政治的主導権を、確固として掌握しつつある中国を、軍事的に威嚇し、その経済的主導権の前進を阻止することにある。
サードミサイルを韓国に配備する事は、米国が明示的に敵対視する朝鮮と、潜在的敵国である中国、ロシアに最も近い韓国が、相手のミサイル発射を、すばやく検出・追跡する上で、地理的軍事的に最も効果的だからだ。
その為には、日本に対して「集団的自衛権の行使」が可能な自衛隊と、それを法的に担保する「安保法制」の整備を早急に実現する事。また、韓国に対しては、日・韓―2国間の、軍事機密情報を共有するための、「日・韓秘密軍事情報保護協定」、「物品・役務相互提供協定」の早期実現を求めた。
米国の意向に沿い、又、安倍政権の目論見通り、201471日の「集団的自衛権行使」容認の「閣議決定」と、20159月 19日の安保法制(一つの新法、10件の関連改定法)の強行採決が行われ、以降、日本と東北アジアの政治情勢は、一気に、米日両国が仕掛ける、戦争準備に拍車をかけている。
南朝鮮における、地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイ(THAAD)」 配備決定(201679日)と、「日韓秘密軍事情報保護協定と物品・役務相互提供協定」(201611月)の締結は、朝鮮の自衛的な核武装を口実にして、朝鮮・中国・ロシアを敵対視する、日韓米−軍事同盟結成の条件を整え、これら敵対する諸国に対する、米国主導の地球的規模のミサイル包囲網、‘MD体制’構築の一角に、日本が組み込まれる事を意味する。トランプが次期大統領になろうと、この米帝国主義の政策に、何ら代わりがないことは明確だ。

戦争経済と大衆的貧困で埋まった米国は、軍事的威圧で「アジア回帰」を夢見ている

米国の、資本主義世界市場における衰退を、軍事的手段で回復しようとした無謀な試みは、中東において、惨めな敗北に見舞われた。
米国は、2011年のリビア侵略戦争で、悪名高い<トマホーク巡航ミサイル>を、最初の三日間で少なくとも161発を発射した。一発・24800万円で、計400億円である。米国がイラク、シリア、イスラム国に爆撃を開始したとき5社の巨大武器メーカーの株価は、一挙に上昇した。しかし、崩れてしまった橋、穴ぼこだらけの道路、老朽化した大陸横断鉄道、貧窮した市民の水道代の未納で破産した地方公共団体、大衆的貧困で埋まった米国に72120兆円の軍事費はあっても、国民のための社会的プログラムに使う金はないと言う。
国家予算の20%強の軍事費6100億ドル(72兆円―2014年度)は、(核兵器更新基金、戦争費用の利子支払い、退役軍人支援などを加えると、年次総額は120兆円になるという。72兆円でさえ、全世界で使われる軍事費の35%だ。例えば、その戦争経済の空虚な姿を示すものとして、米国には民生と何のかかわりもない、15000億円の費用と、天文学的な維持費を必要とする原子力空母が10隻ある。実態経済がなく戦争と金融しか残らない米国は、中東での敗北を軍事的・経済的にアジアで取り戻そうと考えた。
201110月、ヒラリー・クリントン国務長官が、イラク戦争終結後、ある雑誌−ForegnPolicy(外交政策)に発表した文章「米国の太平洋世紀」で、今後10年、米国の外交政策の最も重要な使命は、アジア・太平洋地域に外交・経済・戦略のの介入を大幅に増やす事だ。」は、2015年アジア太平洋経済協力機構(APEC)首脳会談で、オバマが米国の「アジア回帰(Pivot to Asia)」戦略として公式化した。
しかし、ベトナム戦争の敗北の後、次に飛びついたイラクとアフガニスタンに対する侵略戦争で、石油に絡む帝国主義的利害を追い求めた米国は、泥沼の中で窒息した。今更、世界経済の中心軸となった<アジアに回帰>したところで、かっての覇権を謳歌することはもはや出来ない相談である。

アジア・インフラ投資銀行( A I I B )発足の歴史的重要性

中国人民銀行(中央銀行)が201612月7日発表した11月末の外貨準備高は3兆516億ドル(約348兆円)である。トランプ旋風の影響で大きく減少したが、それでも米国に対する世界最大の債権国だ。
中国は、アジア・アフリカの新興国家に対して、膨大な外貨準備を利用して、、新自由主義的な制約を科した米国主導の<世界銀行>や<IMF>に代わって金を貸付け、2008年の米国発世界経済危機の時も、危機克服の対外支援を行ってきた。アジア6カ国と<通貨スワップ>協定を取り交わし、パキスタン、カザフスタンに危機克服の支援を行い、アンゴラ、モンゴル、エクワドルに借款を提供している。アンゴラは、2007年、<IMF>との交渉を中断して、より良い条件の中国に乗り換えた。
世界経済構造の中で、最も躍動的なアジア経済における中国の躍進は、アセアン各国の対中国依存度が、1993年の1.4%が、2006年に13%になり、中国はアセアン第一位の交易国となった事を見ても分かる。日本の対中国貿易依存度年も、2000年の9.95%から2010年には21.02%に増加、それに反して、日本の対米依存度は2000年の24.99%から、2010年、12.92%に落ち込んでいる。
20151225日に、、アジア向けの国際開発金融機関−アジアインフラ投資銀行(AIIB)発足の歴史的重要性は、中国が、米国主導の‘新自由主義的’国際金融機関である、<世界銀行>や<IMF>に取って代わり、アジア経済の中心軸であるのみならず、世界経済の牽引車になったと言うことを示し、かって、アジアに覇権を謳歌した米国や日本に対する経済的、政治的水位を大きく高めた点にある。
NATOと米国によって、MD〈ミサイル迎撃システム)の潜在的敵対対象)と目されているロシアと、中国の関係もまた、極めて良好である。20126月の<上海協力機構>首脳会議は、初めて包括的計画を打ち出し、同盟の強化を誇示、合同軍事演習を行っている。この機構は、キルギスとウズベクの米軍基地を撤収させ、米国の中央アジア進出を牽制している。


国際司法裁判所の判決を無視してきた張本人は、中国ではなく日本と米国

米国は、アジアの各国に対し、アメリカ株式会社の独占権を守るように意図された排他的協定であるTPPを押し付け、日本はと言えば、米国との間で、自動車産業の輸出を第一に、多数の国民生活の犠牲を伴う日米協調で、中国の躍進を妨害し阻止する事でしか対抗できないのである。(注―トランプの登場で、TPPの締結はないが、アメリカの利害第一の、排他的協定は、姿は変えても同じである。)
もはや、世界経済の中心軸ではなくなった米国と、アジアの経済的覇権を失いつつある日本は、アジアにおいて、中国を妨害し牽制する、各種の政治的プロパガンダを展開する他はないのである。それは、アジア周辺国と自国民に対し、「中国の領土的野心」「国際司法裁判所の判決を遵守しない中国」「軍拡を進める中国」といった類(たぐい)だ。
一つ、安倍と米国が、「国際法を遵守しない中国」に対し、「国際法の秩序を要求する」と偉そうに言うなら、1986627日に国際司法裁判所が、ニカラグアに対するアメリカの軍事行動に対し、その違法性を認定したが、米国はその判決に一切〈賠償も含め〉従わなかった。更に、安保理に提訴しても米国は拒否権を行使した事を、安倍と米国はどの様に言い訳するのだ。
二つ、日本は、国際司法裁判所(ICJ)が20143月、南極海での調査捕鯨は“調査目的ではない。違法な操業だ”と判決。国際捕鯨委員会の決定も度々無視して来たのは、周知の事実だが、安倍は、これをどう言い訳するのか。尖閣問題は、「無主の地」の概念や、日清戦争、日中国交交渉時の暗黙の約束などあり、石原や、野田が「国有化」するなどと言う次元の問題ではない。すべて中国に対する言いがかりだ。国民を反中国に動員するための欺瞞だ。
しかし、日本と米国のこのプロパガンダは、朝鮮に対して行ってきたものと同様の、捏造と欺瞞に基づくものであるが、それが集団的軍事同盟による軍事行動を公然と伴うことを隠していない、韓国を組み入れ、中国と朝鮮、ロシアを標的とする、MD(地上型ミサイル防衛システム)の一環である「サードミサイル・]バンドレーダー」の配備と日米韓三角軍事同盟の結成は、朝・中・ロを挑発し、三国との果てしない軍拡競争を呼び起こし、東アジアを戦争を引きずり込む雰囲気を高めるものである。
資本主義世界市場における衰退を、軍事的手段で回復しようとした無謀な試みは、中東において惨めな敗北に見舞われたが、米国と日本は、アジアと中国に対して、同じ事を繰り返そうとしているのだ。

社会の生産財を大量に浪費するのは武器であり、その大量の消費先は戦争である

米国資本主義は、今や全体的に、資源や機械や労働力の投下による生産的な経済循環によって、産業的発展を志向する経済と言うよりも、世界的寄生虫のボスとして、銀行とヘッジファンドや、個人・機関を問わない投資家が、実態経済と関係のない、マネーゲームを盛大に展開するカジノと化し、戦争によってしか消費されない兵器の生産に邁進する。後で述べるが、日本の資本家階級も、似たり寄ったりだ。〈安倍は、国債を銀行に買い取らせ、日銀が高値で買取り、年金積み立て金を、国民の相談なく、ガラクタ債権―ジャンク債に注ぎ込み、日経連は、「防衛産業政策の提言」で、“武器輸出を国家戦略にせよ”といっている。)
又、そうであるからこそ、米国の国家予算の2030%とも言われる膨大な軍事費は、その「経済活動」を、いびつな物にする。それは巡航ミサイルやドローンに基礎を置き、侵略と嘘で固めた政体変革作戦を展開して、意に沿わぬ主権国家の崩壊を次から次へ引き起こし、世界至る所で戦争を引き起こして来た米国の外交政策から来る物だ。米国は、五つの巨大な軍事会社が生産する兵器を消費し、売りさばく商社のようなものだ。
経済学では、「贅沢品」の事を「奢侈品(しゃしひん)」と呼んでいる。「奢侈品」の最たるものが兵器などの「軍需品」である。
「奢侈品」は、それを生産する為には生産財を必要とするが、それを消費したからといって、経済的には何も生産しない。経済循環において「生産的に消費」されるのではなく、「非生産的に消費」される商品だ。これは普通の「消費財」と呼ばれるものではない。即ち、人間は、それがなくても生きて行けるからだ。無駄なものを作るのだから、作る事自体が、資源、機械設備などの<浪費>になる。武器の生産は、生産財の浪費である。
しかし、資本主義社会では、武器の生産は、「浪費」であるが故に、買い手がつけば資源や機械、労働力の浪費であっても、それが利益を生む限り、その生産に狂奔する。また、「浪費」は、資本主義に付き纏う<恐慌(暴力的価値破壊)>を一時和らげるクッションの役割をする。
この<奢侈品>の「浪費」を、一手に引き受けてくれるのが他でもなく「戦争」である。日本の資本家階級が、米国に倣い、防衛費を増やし、“武器産業を国家戦略とせよ”“防衛産業を育成せよ”と叫ぶのは、一つは“アジアで戦争の準備に取り掛かれ”そうすれば、“デフレも脱却できるのだ”と言ってる事と同じだ。

日本軍国主義体制の下、国家予算に占める軍事費は7086%にも達していた

国家予算に占める軍事費の割合は、日清戦争の時期(1894年)に692%。日露戦争の時期(1905年)に823%。太平洋戦争の末期( 44年)には85・5%に跳ね上がった。
大蔵省編編纂の『昭和財政史4巻 臨時軍事費』(1955年)の記録によれば、国家予算に占める軍事費の割合は、日清戦争の時期(1894年)に692%。日露戦争の時期(1905年)に823%。太平洋戦争の末期(44年)には855%に拡大した。しかも、兵器生産を主として担ったのは民間工場で、戦費のうち民間企業に支払われた割合は、「どんなに少なく見積もっても七割以下になることはない」と推計している。軍需会社への大口支払いは、日本銀行本店を通じて行われ、三菱重工業や日立製作所など機械工業会社への支払額が6割にのぼり、残りは三井物産、三菱商事などの商事会社や運輸会社である。「財閥系の大企業が軒なみ、巨額な戦費支払先になっていた」と記録している。
日本の資本家階級は、戦時好況の幻想に耽り、国家予算の70から85%を食いつぶしていたのである。太平洋戦争の末期、配給所で<芋のぞう水>で飢えをしのいでいた時、そして300万人の徴兵された民衆が、資本家と天皇によって、鉄砲玉となって死んでいった時、そして何よりも、アジアの2000万とも言われる民衆の殺戮が行われていた時、日本の資本家は、巨額の戦費支払を受けていたのだ。
歴史が教える様に、日本の支配階級による戦争は、日本国民の、あらゆる生活の糧、医療、教育、社会的セーフテイネットを削減破壊しなければ出来るはずがない。安部は今、同じことをしようとしている。
帝国主義システムの深刻な矛盾は、核による第三次大戦の大破滅をもたらす危険を、現実的なものにしている
米国内の社会的矛盾も危険なまでに激しさを増している。働く国民の大多数は、資本主義経済危機の矢面に立たされている。ウオールストリートが2008年の破綻による損失から回復し、更に豊かになっていると言うのに。アメリカに於ける、かって例を見ない不平等と悲惨の責任が、超富裕層にあることを指摘する民衆の怒りが高まっている。
米国におけるトランプの勝利は、絶望した勤労者の不満を、大ドイツ主義に統合した「国家社会主義」(ナチス)の勝利に、何処か似通っている。
過去にしばしばそうであった様に、戦争は国内の社会的圧力や国情不安と言った、危機の、外部への捌け口を提供してきた。
最も危険なことは、戦争の脅威を見くびることである。例え、それが一時的に当面回避されたり、先延ばしにされたとしても、帝国主義システムの深刻な矛盾は、核による第三次大戦の大破滅をもたらす危険を現実的なものにしている。朝鮮半島における、米国と韓国による常時的な軍事演習と戦争挑発がそれを示している。
我々は以下に述べる、「日・韓秘密軍事情報保護協定」締結と、韓国へのサードミサイル配備の動きを、アジアにおける日・米帝国主義者の核戦争準備として警戒し、戦いを準備しなければならない。


相手のミサイルを無力化するシステムとは、先制攻撃のことである

韓国のサード配備に対し、朝鮮は無論のこと、中国、ロシアが強く非難する理由は、<MD体制(地上型ミサイル迎撃システム)>が、朝鮮を明示的な攻撃対象としながら、同時に、「朝鮮の脅威」を口実として中国やロシアのミサイルの無力化を狙うものだからである。
即ち、「相手を完璧に制圧する絶対戦略」として考案された兵器体系であるサードミサイルは「中国、ロシアの安保を犠牲にすることで、米国の安保を強化する事であり、許されるものではない」と言う点である。
サードミサイルは、潜在的敵国の弾道ミサイルの発射を、5000kmの範囲を探知する強力な]バンドレーダーで事前に捕捉し、サードミサイルで迎撃し、無力化すると言われている。サードを韓国に配備した場合、5000kmが捕捉する範囲は、中国の華北、華東、ロシアの沿海州をすっぽり覆うことになる。軍事的に完璧な防御は、完璧な攻撃と同じであり、先制攻撃を有効化する極めて脅威的な概念である。即ち、MD体制構築は、<相手のミサイルを無力化し、任意に先制攻撃をかける事が出来る戦略>である。
米国は、他国の資産(配備国の国家予算)を動員して、地球的規模で、ロシアと中国・朝鮮を制圧する目的をもった<MD体制>の構築を急いでいる。
それは、既存の<安保バランス>を一方的に崩壊させ、世界の核戦争の危険を一段と醸成させるものとして、朝鮮、中国、ロシアの猛反発を招くのは当然の事だ。


アメリカ国防総省は“核兵器の使用を明確に想定する、破滅的な核戦争も辞さない”と明言した

米国は、今日まで一貫して、核の先制攻撃の意思を明確にしてきたし、実際に核兵器を、人類の頭上に、1度ならず、2度までも使用した唯一無二の国家である。、核攻撃を含む軍事的手段によって世界支配の地位を維持しようとして来た米国は、201671日、アメリカ国防総省による、将来の軍事作戦に向けたペンタゴンの展望を概説した24ページ分の公文書、<2015年・国家軍事戦略>を公開した。そこで、「核兵器の使用を明確に想定する破滅的な核戦争も辞さない」とまで、主張している。

201671日、アメリカ国防総省は、将来の軍事作戦に向けたペンタゴンの展望を概説した24ページ分の公文書、<2015年・国家軍事戦略>を公開した。核戦争を招くMD体系を、世界的に構築する米国の動きを、放置する訳には行かない。
韓国パククネ政権は、(MD体系の一環をなす)サードミサイルの配備を受け入れ、キョンサンプクトのソンジュ(星州)に配備を決定したが、地元住民の決死的な反対運動で、諦めざるをえなかった。同じソンジュの<ロッテ・ゴルフ場>に変更し、交渉を継続している。韓国ソンジュ民衆は、サードミサイルは、ソンジュにも、何処にも必要がないと、戦いを継続している。
日本は既に、2004年から、PAC3,SM3など,MD体系の一角をなすミサイルの実践配備を完了し、米国のサードミサイル配備の核心をなす、]バンドレーダー基地を、青森県・車力と京丹後の経が岬に受け入れ、安倍政権は、引き続いて、サードミサイルの配備の意思も明らかにした。
韓国における「サードミサイル配備決定」(201679日)と平行して、「日・韓秘密軍事情報保護協定」、「物品・役務相互提供協定」(201611月)が締結されたが、韓国の民衆は、パククネ打倒の戦いの中で、「日・韓秘密軍事情報保護協定締結」と「サード配置を容認」したパククネ政権の法的手続きの不法性と、政権の正当性を問題にして、即時廃棄の戦いを継続している。
「韓国・民主社会のための弁護士会」は、20161115日、声明を発表し、「国政壟断で、国民に対して正当性を失った大統領に、協定を承認する資格はない。」と主張し、サードの配備についても、「大きな予算を伴うサード配備は、国会の承認事案だ」として、すべての無効を主張している。
「日・韓秘密軍事情報保護協定」は、従来の<韓・米>と<日・米>と言う、二国間に切り離された、それぞれの軍事同盟を、<日米韓三国>の統一的な軍事同盟に発展させ、軍事秘密と役務・物品を、三国が共有する体制を作り上げるものである。<日米韓三国軍事同盟>は、東アジアにおける、初めての、集団的軍事ブロックの登場であり、アジア版NATOとして、米国主導のミサイル迎撃体制・MD体制構築に、韓国と日本が組み込まれることとなる。
朝鮮の自衛的な核武装を口実に、朝鮮、中国、ロシアを敵対視し、敵対する諸国に対する地球規模の、米国主導によるミサイル包囲網―MD体制構築の一角に、韓国と日本が組み入れられると言う事実を、直視しなければならない。
その米国が、他国の資産を動員して、地球的規模で、ロシアと中国・朝鮮を制圧する目的をもった<MD体制>を構築する事は、既存の<安保バランス>を一方的に崩壊させ、世界の核戦争の危険を一段と醸成させるものでる。

ロシアは、何故に米国とNATOのMDミサイルによって包囲されているのか

米国のABM条約の一方的破棄、ワルシャワ条約機構の解体とNATOの東方拡大
東アジアにおいても、中国とともに、米国主導のMD体系の潜在的敵国対象であるロシアは、欧州では、既にNATO(北大西洋条約機構)の敵対的対象としてMDによって包囲されている。それは、どうしてなのか?
欧州の集団的軍事ブロックであるNATO(北大西洋条約機構)は、欧州と中東で、ロシアに対する<MD(ミサイル迎撃体系)>包囲網を完成しつつある。そして今、韓国のサード配備と、日本の2箇所の米軍―<Xバンドレーダー基地>は、米国主導の欧州におけるミサイル迎撃体系と、東アジアのミサイル迎撃体系を結ぶ、地球的規模でのMD体系である事が明らかになっている。
冷戦時期である19725月、モスクワで、米ソ両国は、無限の軍拡と核戦争の先制攻撃につながる<大陸弾道弾迎撃ミサイル>を、互いに制限する条約(ABM条約)を締結した。
しかし、アメリカは、この条約を不法に蹂躙し、ミサイル防衛を推進することを決定した。1990年ソ連崩壊直後のロシアは、米国を批判したが、米国は、2002613日、ソ連崩壊直後の混乱を見越した米帝国主義の覇権主義的好戦的態度によって、この条約から一方的に脱退した。この事が、今日のMD体制構築と言う米国の歯止めなき軍拡を招いている。
欧州における<MD>構築は、NATOを東欧に拡大し、ロシアを圧迫する米国と欧州資本家階級の「東進政策」の軍事的手段だ。
ロシア国境地方で、NATOを拡張させようとする米/欧の動きは、当時ソ連のミハイル・ゴルバチョフ、米国務長官ジェイムス・ベイカーと、ドイツのヘルムート・コールの間に取り決めた。「NATOは、1ミリたりとも、東方を犯さない」と言う、19902月協約の精神に、明らかに違反する行動だった。
ロシアは、東欧と、旧ソ連諸国家のNATO編入は、この協定精神を侵害するものとの不満を表明したが、社会主義崩壊直後のロシアが、これに対し、何かをすることが出来る状態ではなかった。
1997年、ポーランド、ハンガリーとチェコはNATOに合流し、続いて2004年にはラトビア、リトアニア、エストニアなど7つのソビエトブロック諸国家がNATOに加入した。更に、旧ソビエト共和国のウクライナ、グルジア、モルドバ、カザフスタン、アルメニアとアゼルバイジャンを対象に拡大した。‘冷戦の終結’後の、NATOと欧米資本主義国家の、旧ソ連に対する仕打ちは、あまりにも不当なものであった。
特に、旧ソビエト共和国であったウクライナに対する、米国のCIAと傭兵による<カラー革命>は、選挙で選ばれた正当な政権を、市民を装うファシストの暴力によって崩壊させたものだ。
ウラジミール・プーチンは、今日、米国と欧州資本家階級(NATO)が、サダム・フセインとムアンマール・カダフィに対して加えた根拠のない攻撃と同様の<悪魔化>と、同じ種類の攻撃を、欧・米から受けている。(米国が、自己の侵略意図を隠蔽する手段として、朝鮮を悪魔化する手法と同じだ。)
米国は、プーチンによる国家安全保障局の‘裏切り者’、エドワード・スノーデンの保護は言うに及ばず、シリア、イラン両国に対する米国の戦争計画を妨害したモスクワの役割に、身勝手な怒りを増大させていた。
米帝国主義が、ウクライナ、中東地域、もっと広くはユーラシア大陸に於ける自らの主導権に対する障害物として、ロシア排斥の戦略を開始した事を示している。
201678日、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会談がワルシャワで行われた。NATO事務総長であるノルウェーのイェンス・ストルテンベルグは、記者会見で、来年から米国、英国、カナダ、ドイツが、別途に統率する多国籍軍隊を、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアに駐留させる事を決定したと言明した。
そもそも、旧ソビエト主動のワルシャワ条約機構が解体したにも拘わらず、欧州資本主義国家の集団的軍事同盟であるNATOが存続すること自体、ソ連を受け継ぐロシアとの軍事バランスは、極めて不均等と言わざるを得ない。
NATOは、ロシアに対する軍事的圧力を日増しに加えている
ついでに付け加えれば、NATO事務総長であるイェンス・ストルテンベルグは、米国のイラク侵略を支持し、「イラクにおける大量破壊兵器の存在」と言う捏造と欺瞞を、ブッシュとともに主張した人物だ。
米国は、既にトルコに、2011年、イランから640kmのマルラッチアに、MDミサイル基地を配備・運用している。2016512日には、ルーマニア南部―デベザルで、地上配備型迎撃ミサイルの運用を開始した。13日にはポーランド北部(ロシアの飛び地―カリーニングラード)でも、同タイプの迎撃ミサイル施設の建設に着手した。
これに対し、ロシアのプーチン大統領は2016513日、「(米露間の)戦略的バランスを保持するため、あらゆる手段を取る」と述べるなど、強く反発している。 ロシアが反対する東欧へのMDシステム配備が始まったことで、ウクライナ危機以降続く、米露の対立がさらに激化している。
MD(ミサイル迎撃システム)は、ロシアと中国、朝鮮を、莫大な軍事的投資を必要とする軍拡競争に引きずり込み、その体制の発展を拒もうとする、米国の新たな<スターウオーズ・プログラム>だ。
欧州から東北アジアに跨る広大なロシアと、中国・朝鮮に対する、日韓米三国軍事協力に基づくサードの配備は、欧州のNATOと一体化した、地球的規模の、米帝国主義の軍事的戦略であると言うことが出来る。
ロシアは、NATOと米国によるMD体制構築に対抗して、「新型大陸間弾道ミサイル」と、「極超音速巡航ミサイル」を配備した。東北アジアにおいても、サード韓国配備に対し対抗手段を取ると言明した。米国とNATO帝国主義(欧州資本主義階級)は、世界に、止まる事のない軍拡競争に火をつけたのだ。
冷戦時代(1991年のソ連崩壊の時期)、米国のレーガン政権は、ソ連を、莫大な軍事投資を必要とする軍備競争に誘引する<スターウオーズ・プログラム>を構想した。
1988年度で見てみると、当時帝国主義列強の<国民総生産>=GNP(いまは、GDPをよく使うが、あまり変わらない)は、米国5兆ドル、EC5兆ドル、日本3兆ドルに対して、ソ連は、1.5兆ドルに過ぎなかった。社会主義経済にとって、<軍事費>は、正真正銘の<浪費>である。
これだけの格差がありながら、帝国主義列強の脅威に対抗するだけの軍事力を築き、第3世界の民族解放闘争を支援して来たことが、その国民経済を如何に圧迫してきたかは、想像に余りある。米国の狙いも、核戦争のリスクをなるべく回避して、敵対する国家のを無限の軍備競争に引きずり込み、その国民経済を圧迫する事で、体制崩壊を狙ったのだ。
米国のサードミサイルによる世界的なMD体制の構築―ロシア・中国・朝鮮包囲網は、新たな<スターウオーズ・プログラム>と言うことが出来る。
                                                    (続く)