(民衆闘争報道 柴野貞夫時事問題研究会―連続論考Aの2 2017年2月6日)
サード韓国配備と「日韓秘密軍事情報保護協定」締結は、朝鮮・中国・ロシアを狙う日・米の核戦争準備である
柴野貞夫時事問題研究会
[連続論考]
@ アジア版NATOとしての日韓米三角軍事同盟と東北アジア(前回)
A 日本の社会・経済の軍事化と、在日米軍の基地機能の強化(今回−その2)
B 中国の対・南朝鮮政策の軌道修正と、対・朝鮮政策の破綻
C ピョンヤン宣言と、ストックホルム合意を踏みにじってきた日本政府を糾弾する(いわゆる‘拉致問題’の真実)
連続論考A
日本の社会・経済の軍事化と、在日米軍の基地機能の強化(その2)
韓国民衆の戦いとソンジュ(星州)の<サード>配備阻止闘争
先に述べたように、南朝鮮における地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル・サード<THAAD>配備決定(2016年7月9日)と、「日韓秘密軍事情報保護協定、物品・役務相互提供」(2016年11月)の締結は、朝鮮と中国を敵対視し、潜在的にはロシアを見据え、東北アジアと南中国海(南シナ海)に日・米両帝国主義による軍事的(暴力的)覇権を通して、東北アジアの政治的支配(侵略的強奪)を目的とした「三国軍事同盟」の確立に向けた、あらゆる条件を整備した事を意味する。「軍事情報の共有と武器弾薬の相互提供」は、戦争のための資産の共有そのものである。「戦時統帥権」を米軍によって奪われている南朝鮮は、その下位同盟者としての役割を、地制的条件からも担わせられている。
しかも、「戦時統帥権」を、米国が持っていると言う事は、集団的自衛権行使の違憲立法を強行突破した安倍政権は、必要な時に、米軍と共に朝鮮半島に上陸する可能性を持っていると言う事になる。
後述する、日本の2016年以降に予定されている防衛予算には、海外侵略の為の米国製と自国開発の新鋭兵器の購入が目白押しであるのはその為の準備である。もし、日本が他国へ侵略をしないのであれば、何故、航続距離のある空中空輸機が必要なのか。米海兵隊に倣った「水陸起動団」が必要なのか。また、他国の国土に乗り込むオスプレイが必要なのか。考えるまでもなく、明らかだ。「三国軍事同盟」の締結は、南朝鮮自ら、日本帝国主義の朝鮮半島再侵略の道を切り開いたことになる。
しかし、パク・クネの代行者―ファン・キョアン(黄教安)が、大統領ずらをして、国防相・ハン・ミング(韓民求)と共に、正統性を失った朴槿恵政権の影の指示の下で締結した三国軍事同盟は、無効であるとする韓国民衆の戦いと、ソンジュ(星州)の<サード>配備阻止闘争は、まだまだ継続中である事は、今後の日本民衆の戦いに勇気をあたえてくれている。
オバマのアジア回帰路線を継承し、その軍事的決着を企むトランプ
トランプは、<米国の労働者のため>と言う、欺瞞的口号を叫んで、米国資本家階級のための一国的利害が、やがて、そのオコボレが労働者階級にも行き渡るとする‘トリクルダウン’の主張で、米国下層民衆を誑(たぶら)かしている。
トランプは、排外主義と宗教的差別を利用しながら、米国の未曽有の大衆的貧困に絶望した米国下層階級を糾合している点で、大ドイツ主義を国民統合の「理念」としたアドルフ・ヒトラーの手法を真似ている。
この<アメリカ的ファシズム>は、絶望した民衆をおとなしくさせてくれるものならば、<民主主義>を蹂躙されて自分の頭を踏みつけられても、それをある程度我慢すれば、絶望した民衆をおとなしくさせてくれれば良いと考える、米国資本家階級によって、陰ながら大きな支持を受けているのだ。
しかし、米国の労働者階級は、やがてトランプが、オバマよりもっと、あからさまな軍産共同体の代弁者であることを思い知るだろう。
次第に明らかになって来た、トランプの東北アジアにおける動きは、オバマのアジア回帰路線の継承と、その軍事的決着を明示している。戦争は、まず自国の労働者・働く民衆への一方的犠牲の転嫁を必要とする。民衆の幸福と、戦争が両立するはずが無いからだ。やがて、トランプは、米国の労働者階級に対する、無慈悲な暴力的支配に向かうはずである。
2017年2月3日、ジェームズ・マティスは、初の外遊先に日韓を選んだ。マティスは、2004年4月、イラク郊外ファルージャでの戦闘で、米国第一海兵遠征軍(1万人から2万人規模)の師団長として指揮をとり、900〜1000の住民を虐殺した殺人鬼である。未だ国際法廷の訴追から逃げている戦争犯罪人だ。‘イスラム教徒を、的にして打つ時ほど気持ちが良いものはない。’と言った人非人だ。
マティスは、トランプの意を受けて、東北アジアを<火薬庫>にする為の相談をする為、ひとまず<経済摩擦>は留保して、共通の敵である中国に対し最も好戦的で、敵対的対応に力を注いでいる日本と、下位同盟者の韓国に向かった。(英国の首相は、人種主義者・トランプの入国を拒否すべきと言う議会の圧力を受けている。)東北アジアを<火薬庫>にする為に、オバマの後を引き継ぎ、「三国軍事同盟」を継続堅持するためだ。
マティスは東北アジアを<火薬庫>にする為にサードの年内配備を主張
マティスは2日午後0時半ごろ、専用機で在韓米軍の烏山空軍基地に到着し、その後ソウルで、大統領代行の黄教安(ファン・ギョアン)、韓民求(ハン・ミング)国防長官と会談し、@最新鋭地上配備型迎撃システム・サードの年内配備、A3月に予定の米韓合同軍事演習の強化を確認し、「合同軍事演習を契機に、朝鮮が挑発する可能性に留意しなければならない。」として、自分たちの挑発行為を覆い隠す、見え透いた欺瞞を主張した。
安倍はマティスに何を約束したのか
その後、米トランプ政権の閣僚として初来日したマティスは、4日午前、稲田朋美防衛相と会談し、安倍晋三、菅義偉、岸田文雄とも会談。4日は就任後初の日米防衛相会談に臨んだ。(これまで、この様に国賓並みに歓迎された米国防長官はない)。
稲田は、マティスが日本とともに南朝鮮を訪問したことに言及。「韓国は日本にとって重要な隣国。日本と米国と韓国、3カ国の防衛協力のさらなる深化につなげたい」と述べ、米・日・韓の三国軍事同盟が、トランプ政権の下で、米国主導の地球的規模の「高高度ミサイル防衛体制―MD体制に組み込まれる事に支持を表明した。
安倍との会談では、@米国は、尖閣諸島は日米安保・第5条の適用範囲と言明A安倍は、日米軍事協力の推進。日本の防衛力の更なる強化と役割拡大。辺野古基地の推進。B両国は、朝鮮の核・ミサイル開発を認めないことで一致―したと言う。マテイスは、普天間返還に関し、“二つの道がある。一に辺野古、二に辺野古”と主張した。傲慢不遜にも程がある。
思い起こさなければならない。日本国憲法は、軍隊も交戦権も否定しており、世界中で侵略戦争を繰り返す米国との軍事同盟も、中東からアフリカ、ウクライナまで、暴力と侵略のために動員される「海兵遠征軍」や「傭兵部隊」、更には、核航空母艦の海外唯一の母港を提供するなどと言うことは、厳に禁止しているのだ。日本国憲法の上に立つ違憲立法<戦争法>を根拠に、安倍・自公民政権と言う<非合法政権>が、白昼堂々とのさばっていることを片時も許してはならない。
ファシスト稲田と、ファルージャの戦争犯罪人マティス
2014年9月10日3日、安倍晋三・日本総理の改閣人事で、女性閣僚として入閣した高市早苗総務相と、稲田朋美自民党政調会長(現防衛相)、日本国会議員3名が、極右団体代表と国会議員会館で会い、撮った写真がこの団体のHPに公開された。
“民族浄化、人種優越主義”を主張するこの極右団体は、この二人を、自らのHPに”愛国保守議員“と会談した”と、はっきり記述している・・・安倍の<女性の登用>を隠れ蓑にして、アジア侵略に国民を動員する魂胆が露骨な安倍は、この二人の極右議員を、ことの他溺愛している。
イラクに対する侵略戦争と住民虐殺の下手人(マティス)と、アジア2000万人民大衆の死に、一顧だの反省もなく、日本のアジアに対する戦争は、「侵略戦争でなかった」と主張する安倍内閣の女防衛大臣(稲田)は、過去の植民地支配者としての共通利害を、新しいアジアでの核侵略戦争準備で確認し合ったはずである。以下の、極右団体・<国家社会主義日本労働者党>の山田和也代表とのツウショットは、稲田と安倍の本質を象徴している。
▲2017年2月4日、稲田と握手する、イラク・ファルージャでの住民虐殺の下手人―マティスと、日本の<防衛大臣>稲田朋美が、満面の笑みで握手をしている。虐殺者マティスと、ナチズムの信奉者−稲田は、アジアを、再び火薬庫にするために手を握り合っている。
▲(上写真) 左・高市早苗(現総務相)、右・稲田朋美〈現防衛大臣〉(撮影当時、自民党政調会長。この時、眼鏡を外している)、日本の極右ファシスト団体・<国家社会主義日本労働者党>の山田和也代表と国会議員会館で撮った写真が、この極右団体のサイトにアップされた。(出処―英国・ガーデイアン紙)
「防衛産業政策の実行に向けた提言」で、軍需産業の育成・強化を要求した日経連
日本資本家階級の執行部−経団連は、違憲立法である「戦争法」(一つの新法、10件の関連改定法)を強行採決(2015年9月19日)をする直前の9月15日に、「防衛産業政策の実行に向けた提言」で、軍需産業の育成・強化を目指す事を安倍政権に要求している。この、日経連の「提言」は、4日後に控えた戦争法の強行採決を鼓舞激励し、10月に控えた「防衛装備庁」発足に向け、安倍に彼らの要求を実行せよと指示したものである。
日経連は、ここで、「武器輸出は、国家戦略として推進すべきもの」と強調し、「武器輸出の為の政府の全面的支援」を指示している。武器を買った国への見返り。武器の運用、教育、訓練の提供。同時に、軍事生産の技術基盤の強化、研究開発の推進、国家の関連予算の拡充の実現を迫っている。また軍事技術の研究開発を、大学との連携で推進し、軍事技術開発の基礎研究分野で、「軍学共同」を追求すべきと、要求はエスカレートしている。違憲立法=戦争法の強行で、日本の資本家階級は色めき立っている。「武器三原則」を、大手を振って破る事にした資本家階級は、戦争経済に活路を見出そうとしているのである。
働く民衆が積み上げた社会の生産財を大量に浪費し、経済循環において「生産的に消費」されるのではなく、「非生産的に消費」されるだけの軍事生産に飛びつき、死の商人として、日本資本主義の危機を乗り切ろうとする低劣極まりない日本の資本家階級どもの、このなり振り構わぬ蛮行は、民衆の大いなる犠牲なくしては、絶対になしえない事実を忘れてはならない。
後述するように、日本経済の軍事化は、米国の様に、経済の空洞化を生み出すであろう。そのことに、資本家どもは、目をつぶっている。同時に、働く民衆の生活と命は、今危機に見舞われている。
この5年間で、社会保障費は3兆4000万円削減
日米安保条約の地位協定の条項にも、如何なる取り決めも無いにも拘らず、米軍「思いやり予算」が2016年度には、ほぼ1兆円→9464億円に増額される一方で、この5年間に社会保障費は3兆4000万円が削減されている。
安倍政権は、2015年9月19日の「戦争法」強行突破の直ぐ後である30日、「常用雇用の代替え防止」と言う、従来の「労働者派遣法」の原則をやぶり、「派遣の恒常化」に道を開く、派遣法改悪案を強行採決した。
雇用条件で、「正規」の6割の賃金を押し付けられ、社会保険からもしばしば締め出され、首切り自由な、劣悪な立場にある「非正規雇用労働者」は、全雇用者数(16年度―5381万人)の37.5%、即ち2016万人に増加した。実にほとんど10人に4人だ。このまま資本家階級の攻勢を許せば、「非正規雇用労働者」は一層増え続けるだろう。
“余命僅かな高齢者は、さっさと死ね”(2013年)と言った麻生の発言
“余命僅かな高齢者に、終末期の高額医療費を、政府の金でやっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねる様にしてもらうなど、いろいろ考えなければならない”と、2013年、「社会保障制度改革国民会議」で麻生財務相がほざいた。
長生きする国民を、金喰い虫と嘲笑したのだ。「政府の金」とは、ちゃんちゃらおかしい。国民から搾り取った税金ではないか。金喰い虫は、国民の汗の結晶を、戦争を準備するために、せっせと兵器を買い込んでいる安倍と麻生ではないのか。
安倍政権は、この麻生の考え通り、本年度から、「金喰い虫」退治の為に、全国の病院のベッドと、老健施設から追い出すあらゆる分野での政策を実行しようとしている。年金減額、高齢者医療費の負担増、病院窓口負担増など、防衛費の増額の尻ぬぐいを、弱者である老人、病人、低所得者の身ぐるみを剥いで実行しようとしているのだ。年収200万以下の「ワーキングプア―」は、2014年統計で、1140万人に上っている。一方、大企業の内部留保(労働者階級から搾取した金だ)は、2014年度まででも、299.5兆円に上ると言うのに。今、列島は、米軍の在日基地強化と自衛隊と米軍の一体化によって、米国の軍事要塞と化している。
沖縄・辺野古裁判に対する最高裁判決は、日本の司法が、国家権力の手先となった象徴的事件であり、違憲立法である「安保法制」を全面的に追認した政治的・不当判決である。我々時事研は、働く民衆の命と生活を犠牲にして、軍事大国化に盲進する安倍政権の、政策と実態を具体的に見たみたいと考える。
海外での侵略戦争に動員する体制を想定し、「新防衛大綱」は戦後最大の軍事予算
安倍は、「新防衛大綱」(‘平成26年度〜30年以降に係る、防衛計画の大綱について’)を通して、「安保法制」以降の、‘戦争をする’日本帝国主義の新軍体系を次の様に明らかにしている。これらは、日本の「防衛」とは何の関わりもない他国侵略の為の装備と体制である。「新防衛大綱」は、自衛隊を海外での侵略戦争に動員する体制を想定している。
@ 陸海空自衛隊が、海外に敏速且つ持続的に、展開できる能力を構築する。
A 前線との間で、兵士や武器を敏速に輸送する為のオスプレイ、水陸両用戦斗車両、無人偵察機、新型空中給油機などを新たに導入する。
B 米海兵隊同様の<水陸起動団>を創設する。佐世保・相浦陸自駐屯地に、水陸起動団本部及び、連帯を置き、2100人体制で出発。最終、3000人の「日本版海兵隊(殴り込み部隊)」をつくる。
C ミサイル防衛体制に伴う研究開発
D 航空作戦能力を持つ大型強襲揚陸艦の導入(殆ど、小型の航空母艦であ る。下記掲載の写真より、更に大型)平成28年度(2016)予算に計上し同31年度(2019)に1号艦就役を目指す。大型強襲揚陸艦が導入されれば海上自衛隊の航空作戦能力は飛躍的に強化される。就役は、これまで2020年初めとされていたが、尖閣諸島をめぐる中国、竹島を巡る韓国との緊張を受けて、1年前倒しの2019年3月と改められた。このための調査費が防衛省の平成27(2015)年度概算要求予算案に計上している。
E 米軍「思いやり予算」 9464億
●以下の購入各兵器は、対朝鮮、対中国に対する、侵略の為に備えている。
@ 水陸両用車AAV7 11両 86億
A オスプレイ 4機 400億+諸経費400億 800億
B 航続距離の大きな輸送機 ?2輸送機3機 553億
C ステルス戦闘機 F35a 150億×6 880億
D 16式機動戦闘車 33両 7億6000×33 223億
E 航空作戦能力を持つ大型強襲揚陸艦の導入。(殆ど、小型の航空母艦である。下記掲載の写真より、更に大型のものを予定)平成28年度(2016)予算に計上し同31年度(2019)に1号艦就役を目指す。大型強襲揚陸艦が導入されれば海上自衛隊の航空作戦能力は飛躍的に強化される。就役は、これまで2020年初めとされていたが、尖閣諸島をめぐる中国、竹島を巡る韓国との緊張を受けて、1年前倒しの2019年3月と改められた。平成28年度(2016)予算に計上し同31年度(2019)に1号艦就役を目指す。建造費は1200億である。
▲(写真上)これは、まったく航空母艦だ。既に日本に配備されている揚陸艦「おおすみ」 基準排水量8,900d、満載排水量14,000d、全長178m、速力22 kt。揚陸艦としては小型だが、一通りの能力は備えている。エアクッション艇LCAC(基準排水量100d)を2隻搭載する。輸送能力は戦車十数輛と兵員330名。同型艦に「しもきた」4002、「くにさき」4003、がある。CH-47大型ヘリ2機の同時運用ができる。全く、他国に侵略上陸するための戦艦だ)
(注)米国が佐世保に配備している強襲揚陸艦は、海兵隊員・1800名以上が乗り込む一つの完結した侵略強襲部隊を構成する。エアクッション型揚陸艇、上陸用舟艇を運用する事が出来るウェルドッグを装備、戦車、離着陸機〈S/VTOL〉も運用できる。
色めき立つ日本の軍需産業
日本の軍需産業関連会社は、既に数千社に上る。その中でも2000億以上を売り上げる主要な4社の実績を見てみよう。
日本の主要軍需会社(2000〜2004実績)
●三菱重工業(戦車、支援戦闘機、潜水艦、地対空誘導弾) 1兆4833億
●川崎重工(輸送ヘリコプター対戦車誘導弾、中等練習機など) 6319億
●三菱電機(地対空誘導弾改善用装備品、中距離地対空誘導弾など) 4934億
●石川島播磨重工業−IHI(練習機エンジン、戦闘機エンジンなど)2647億
(次回に続く)
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