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(民衆闘争報道/ ウクライナで今、何が起こっているのか <連載6> 20224日)

         ウクライナで今、何が起こっているのか <連載6>

                                                  柴野貞夫時事問題研究会

         我々が、まだまだ知らなかったウクライナ事態の真実


●ゼレンスキー政府だけが、ウクライナを代表する政府ではない
●ナチス残党が、米国の庇護の下で、ウクライナで勢力を育ててきた事実。
●ウクライナ現政権が‘ネオナチ’として指弾されると、‘自分はユダヤ人だからナチではない’と言う偽善者―ゼレンスキー
●ナチスドイツを追い込んだのは、英国でもなければ米国でもない。独ソ戦争で2500万人と言う膨大な犠牲を払ったロシア(ソビエト連邦)の兵士たちである

 

 

▲凶悪犯―アゾフ連隊の投降兵士(2500名以上にのぼる)ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からあぶり出された「アゾフ連隊」の兵士。同連隊は「ネオナチ組織。彼らは、ドンバス地域のロシア系ウクライナ住民の大量虐殺の嫌疑で、厳しく裁判にかけられるであろう。

ウクライナで復活したナチス戦犯
第二次世界大戦当時、ソ連とナチスドイツの最大接戦地がウクライナだったという事実はよく知られている。しかし、ナチス残党が、米国の庇護の下で、ウクライナで勢力を育ててきた事実を知っている者は多くはいない。米国が、また他の戦犯国日本の軍国主義復活を煽ってきたと言う点を考えれば、‘米国とナチスの関係’は、今更驚くべき事実と言うものでもない。
米国は、戦後一貫して、自国の利害の為ならば、自らが直接、非人倫的・非人道的犯罪行為に手を染め、また、虐殺と拷問を手段とする人種的・民族的排斥主義者集団と手を結び、更に、中国において、生物化学兵器の生体データを蓄積してきた日本の<石井部隊>の免罪を通して、国際法に違反する生化学兵器の開発を今日もなお、押し進めている。現在、バイデンが、ジェネレンスキー政権下で、大々的に生化学兵器の開発を進めて来た事は、ロシアが詳細な証拠とともに暴露している通りだ。アルカイダ、ISIS、そして今、ウクライナにおける‘ネオナチ’が、そうである。
1945年、エルベ川を越え、ベルリンにナチスドイツを追い詰め、ヒットラーを自殺に追い込んだのは、英国でもなければ米国でもない。独ソ戦争で2500万人と言う膨大な犠牲を払ったロシア(ソビエト連邦)の兵士たちである。ナチスの復活に、ロシア国民が、断固たる決意と敏感な反応を見せるのは、あまりにも当然な姿と言うべきである。現在、‘ウクライナのネオナチ’が、東部ウクライナのドンバスで、ロシア語とその文化の使用制限に抵抗するロシア系ウクライナ人に、集団虐殺を繰り返してきた事実が、ロシアが、ウクライナに介入した直接的な理由として作用した。
2014年、ユーロマイダン事態(ウクライナで引き起こされた、親米・親西方クーデター)以降に勃発したドンバス(ドネツク、ルガンスク、両州にまたがる、ロシア語系住民が多数を占める居住区)戦争で、14,000人余が殺戮されたが、その下手人がアゾフ連隊を中心するネオナチであった。
当時、武装した暴力デモで市民に襲いかかったのが、スボボダ祖国党、‘右派(Right Sector)’、など、極端な民族排外主義者達は、ロシア語を使うドンバス地域住民達を、未開のスラブ族だと蔑視した。彼らがまさに、‘ネオナチ’に分類される勢力であり、彼らが軍事的暴力を通して、クーデターによる政権奪取を謀り、現ジェレンスキー政権に繋がっている。
‘スボボダ’は、過去ドイツ・ナチと協力していた‘ウクライナ遊撃隊’にその起源を置いている。‘祖国党’のヤチェヌクは、クーデタ−以後、首相の座に坐った。彼は、世界の偏狭な覇権を狙う、欧州資本主義国家と合衆国帝国主義の軍事同盟―「NATO」の支持派であり、国際通貨基金(IMF)の代弁者だった。
‘右派(Right Sector)’は、<ソ連邦を構成するウクライナ>を侵略したナチスドイツに協力した、ファシスト極右派政党UNA-UNSOの後身だ。これらは全て、親ヒトラー、反ロシア勢力であるが、驚くべき事にユダヤ人が殆んどである。


▲ ウクライナ内務省傘下のナショナルガード(主防衛軍)が、主に「ネオナチ」に分類される軍隊だ。ウクライナ国旗と、ナチスのハーケンクロイツを組み合わせたネオナチの旗幟の一つ。

ゼレンスキーはユダヤ人であることが、ナチスでないという証明にはならない
ウクライナ現政権が‘ネオナチ’として指弾されると、ゼレンスキーは、“自分はユダヤ人だ”と抗弁したが、しかし、アドルフ・ヒトラーもユダヤ人であることが明らかとなり、むしろ、必ずしも、ユダヤ人であることがナチスでないと言う証明にはならないと言う事実を実証したのだ。
ドンバス戦争が真っ最中だった20145月、ネオナチが創設したテロ集団アゾフ大隊は同年11月ウクライナ正規軍に編入される。以後20151月、ウクライナ国家防衛隊所属特殊部隊「アゾフ連隊」に昇格する。アゾフ連隊はナチスドイツを象徴する「ハーケンクロイツ」とそれを変形した「Z」文様の旗を持って、第二次世界大戦当時「ウクライナ革命民族主義者組織」(OUN-B)を創設し、ユダヤ人を虐殺した代表的なナチスト・ステファン・ヴァンデラを追従する。アゾフ連隊創始者のアンドレ・ヴィレツキーは、「ウクライナ国家の目標は、世界中の白人を率いて劣等なユダヤ人に対抗して最後の十字軍遠征を繰り広げることだ」と話し、自分たちがネオナチであるという事実を隠さなかった。さらに、アゾフ連隊はロシア語を使うドンバス地域住民たちを未開のスラブ族と蔑視し、虐殺蛮行をおこなった。
国際アムネスティの報告書によると、武装した右翼ウクライナ民族主義者グループ(アゾフ連隊)が2014年、ドンバス地域で「拉致、違法拘禁、虐待、盗難、喧嘩、処刑など広範な虐殺に関わっている」と伝えた。 「ニューヨーク・タイムズ」はウクライナ軍の攻撃で、20144月中旬から7月まで民間人799人が亡くなり、少なくとも2,155人が負傷したと報じた。 英BBCは国連管理の言葉を引用し、「ウクライナ東部(ドンバス地域)で葛藤が高まり、100万人を超える人々が家を出て、少なくとも81万4千人がロシアにいった」と報じた。80%以上の難民がロシアに行ったことは、誰がドンバス民間人を虐殺したかを示す最も確実な証拠といえる。 特に2016年、ドンバス地域民間人の建物に兵力を配置し、住民を略奪していたアゾフ連隊が収監者たちを強姦して拷問した事実が知られ、世界的な非難世論が起きた。当時、ウクライナの正規軍だったアゾフ連隊を米軍が直接訓練させた事実が知られ、「ネオナチ」を支援していると言う非難が噴出、2017年米議会はアゾフ連隊訓練予算を切ってしまったこともあった。このようにアゾフ連隊を「ネオナチ」と非難していた米国と西側メディアが20222月突然アゾフ連隊を‘正義の軍隊’だと言い始めた。
このような変化はFacebookの投稿検閲にも現れる。2016年フェイスブックはアゾフ連隊を危険組織に指定し、2019年には米国白人優越主義団体KKKのように、彼らに対する賞賛や支持を禁止してしまったので、2022年には突然「ウクライナ正規軍の一部としてアゾフ連隊を支持できる」と禁止令を解いた。アゾフ連隊がウクライナ正規軍に編入された時点が20145月だったという事実をFacebookは、分かっていいなかった。


ウクライナ「ネオナチ」の歴史
ウクライナのナチスの出現は、1929年にドイツのナチス党の後援で結成されたOUN(創設者:ステファン・ヴァンデラ)に根を置く。第二次世界大戦当時、OUN組織員はナチス侵攻軍の一員であり、ナチスがウクライナ西部を占領したとき、OUNは民兵隊を組織してユダヤ人を虐殺した。当時、これらに犠牲になったユダヤ人だけが15万人に達する。さらに、第二次大戦期間のナチスドイツの銃で死んだソ連人は2400万人だ。
OUNの戦闘師団「ガリシア」はナチスドイツ最後の日までヒトラーとナチスのために戦った。彼らがまさにソ連ウクライナ共和国に生息していたナチ残党、「ネオナチ」たちだ。2004年にウクライナで発生した親米勢力による体制転覆(オレンジ革命=市民革命を装った外勢―米国と結託したクーデター)以後、OUNの直系末裔であることを自称する通称自由党(Svoboda)が登場する。自由党はナチスの象徴物を変形させた爪十字を党マークとして使用し、敷設機関としてヒトラーの宣伝長官の名を冠した「ヨジェフ・ゲッペルス政治研究所」を運営した。
ウクライナのもう一つのネオナチ集団としては「フラビ・セクトール」がある。彼らは西部ウクライナの反ユダヤ、反ロシア性向の極右民族主義者たちで私設武装部隊を運用して暴力使用も躊躇しなかった。(アゾフ連隊も当初、ウクライナ資本家階級の私設暴力装置だった。)それ以外にも、第二次大戦でドイツが降伏した5.9勝戦記念日にヒトラーとナチスドイツを賛美する集会を開いた祖国党など、ウクライナのあちこちにネオナチが存在する。彼らが、まさに平和的な反政府デモで始まった2014年ユーロマイダンを過激なデモで流血事態を起こしたクーデターの主役だ。


ウクライナに存在する二つの共和国ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国
ウクライナ東部のドンバス地域には、既に2つの独立した共和国がある。まさにドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国だ。
ユーロマイダン・クーデター直後の20142月、クリミア半島は住民97%の賛成でウクライナからの独立とロシアへの合併を決意する。続いて同年4月、ドンバス地域ドネツク州とルガンスク州が行った投票結果それぞれ89%と96%の賛成でウクライナから分離・独立する。この投票結果について、両共和国は公式声明を通じて「ドンバス地域住民たちは、米国の管理者の支援で、ウクライナに反ロシア前衛基地を作り、ロシア語と伝統文化を禁止し、ナチス犯罪者たちを賛美し、ネオナチズムを国家イデオロギーとして奨励という新しいファシスト政権の政策路線に妥協しようとしなかった」と伝えた。
1つの明らかな事実は、ウクライナに公式に3つの共和国が存在するという事実である。この事実を見落とすと、ウクライナの事態をウクライナとロシアの間の戦争と誤認することになる。特にドンバス地域の両共和国は、兄弟国であるロシアに、ずっと軍事的支援を要請したが、ウクライナのNATOの駐屯が現実化していない条件でロシアが大いに動くことができなかった。結局、去る3NATOの支援のもと、ウクライナ軍隊がドンバス地域に対する無差別虐殺を加えると、ロシアの「赤い軍隊」がやむを得ず動くようになった。
要するに、ウクライナの事態は、ゼレンスキー政府を支援する米国と、ウクライナ内の2つの共和国の分離・独立決定を擁護するロシア間の紛争と見なさなければ正確でない。ゼレンスキー政府が、ウクライナを代表する政府ではないという事実が、私たちが知らなかったウクライナ事態の第2の真実である。


▲ 2014年ネオナチクーデターで、ウクライナ・ネオナチ政権によって撤去されたレーニン像が、2022年、再び8年ぶりに設置され、解放された地方人民政府庁舎屋上では、赤旗と三色旗が並んで掲揚されている。赤い旗はソ連の国旗で、三色旗はロシヤの国旗だ(出処 2022418日付ウォール・ストリート・ジャーナル」から)

新たな世界経済秩序構築に乗り出したロシアと中国
米国はこの戦争に武器を売って莫大な利益を握っており、戦争前の支持率23%に過ぎなかったゼレンスキー大統領は、米国とNATOにょって、世界的な英雄に仕立て上げられた。彼らは戦争が終わることを望まない。米国の目標はロシアを孤立させ、ヨーロッパと衛星国に行使した覇権を維持することにある。米国の経済制裁により、ロシアが被った被害も大きいが、ドイツをはじめヨーロッパの被害も侮れない。
ウクライナの事態が長期化する場合、誰が先に手を挙げるのか分からない。しかしロシアは中国と手を取り、新たな経済秩序構築に乗り出した。米国の包囲に入った中国では資源が豊富なロシアの同盟提案は歓迎すべきことである。二者同盟を強化した中・露は、エネルギー分野の緊密な経済統合を推進している。13億人口のインドもこれに参加するだろう。もし計画通り原油・ガスが人民元とルーブル化で流通すればドル基軸通貨は深刻な打撃を受けることになる。
すでにドイツは経済制裁からこっそりと、足を抜き始めた。ロシアとドイツを結ぶ天然ガス・パイプライン「ノルトストリーム2」(昨年9月完工)の稼働中断が長期化する場合、ドイツ経済は必然的に危機に陥るためだ。今はアメリカに気がねして制裁に参加するふりをしているが、ドイツは戦争の長期化を耐える能力がない。
(続く)