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(韓国ネット言論 PRESSIAN 世界ニュース2013年8月6日付)http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=60130805174401&Section=05

 
       [再び、朝鮮学校]<4>  
        日本政府−大阪朝鮮学校裁判の争点

               日本の右傾化、・・・犠牲になる朝鮮学校

         

 

 

リ・スンヒョン弁護士

 

 

PRESSIAN編集者・前置き>

 

朝鮮学校は、解放後、日本に居住中だった同胞達が、“故国に帰るためには、子供達も朝鮮語と朝鮮文字を、話して読んで、書く事が出来なければならない”として作った学校です。日本政府は、1948年、朝鮮学校閉鎖令を下したが、同胞達が闘争を通して朝鮮学校を守り通しました。それから65年が流れ、日本政府が右傾化されながら朝鮮学校に対する弾圧が再び始まっています。朝鮮学校側はこれに対し、行政訴訟を進行中です。

連続企画4回目として、訴訟を進行中であるリ・スンヒョン弁護士が、法的争点を整理しました。リ・スンヒョン弁護士本人が、朝鮮学校出身の在日同胞です。

 

▲朝鮮学校授業場面(写真−PRESSIAN・キム・ハヨン)

 

 

<本文>

 

●無償化法で、朝鮮学校だけ排除

 

201041日、‘公立高等学校授業料の不徴収、また、高等学校など就学支援金の支給に関する法律’(以下、‘無償化法’)が公布施行されました。

しかし、中井洽(ひろし)、当時拉致問題担当大臣が、朝鮮学校に対しては無償化法を適用するのは駄目だと言う趣旨を、川端、当時文部科学省大臣に伝達し、同じ年、1123日、朝鮮半島でヨンピョン島砲撃事件が勃発しました。これを契機に、当時の菅直人首相は、文部科学省大臣に朝鮮学校に対する高校無償化法適用に関する審査手続きを中断するように指示しました。

審査が中断された状態が継続される中で、201212月に執り行われた衆議院総選挙で自民党が大勝し、自民党政権は2013220日、朝鮮学校の無償化法適用申請に対し、無償化法施行規則第1条第1項第2号の‘ハ’規定を根拠とした無償化対象指定に関する規定(以下、‘本件規定’)と、同法第13条に朝鮮学校が適合すると判断されないと言うなどの理由で、不指定処分を決定しました。この不指定処分を前後して、大阪朝鮮学園(学校法人・大阪府内に朝鮮学校を設置運営PRESSIAN注)2013124日、日本政府が朝鮮学校を無償化法施行規則第1条第1項第2号の‘ハ’規定にもとづいて、対象として指定する事を要求し、大阪地方裁判所に提訴しました。

●無償化法と施行規則の削除

無償化法は201041日に公布施行され、無償化法が適用されれば、公立と私立の高等学校などに在学する学生達は、日本政府から就学支援金を支給されます。そして就学支援金が支給される、いわゆる‘高等学校等’には、朝鮮学校が属した各種学校も対象に含まれています。元々各種学校に対しては、‘これ等のうち、高等学校課程と類似した課程を設置したものとして、文部科学省令(我が国の施行令に該当−PRESSIAN注)で、定めるものに限られる’と言う制限が付加されています。(無償化法第2条第1項第5号)

文部科学省令である無償化法の施行規則には,無償化法が適用される各種学校に関し、‘各種学校として、我が国に居住する外国人を唯一対象とするものの内、次に列挙するもの’で、‘(中略)文部科学省大臣が定めるところに従い、高等学校課程と類似した課程を設置したものと認定されるものとして、文部科学省大臣が指定するもの’と、規定されているのです(施行規則第1条第1項第2号‘ハ’)。

そして、文部科学省大臣が上記の指定をするための要件として、前に言及した本件規定、即ち、無償化法施行規則、第1条第1項第2号の‘ハ’規定に根拠した指定に関する規定があるのです。

●大阪朝鮮学園の主張

大阪朝鮮学園は、2013124日大阪地方裁判所に提訴したが、原告である大阪朝鮮学園の現在主張する内容は、@文部科学省大臣が下した不指定処分を取り消し、A文部科学省大臣は、原告に対し、施行規則第1条第1項第2号‘ハ’の規定に従い、指定をせよと言うものです。
このように、行政庁に対し、どんな行為を要求するかなどの訴訟形態を、行政訴訟と言うが、大阪朝鮮学園の弁護団は、国家賠償請求訴訟でない行政訴訟と言う訴訟形態を、解決方法として選択しました。ここには、大きく三つの理由があります。

2004年に、行政事件訴訟法が改定され、以後行政訴訟が従来に比べ増加し、活性化されていると言う点です。また大阪朝鮮学園弁護団が調査した過去判例によれば、大阪地裁の行政部にあっては義務履行訴訟などの行政訴訟にあって、原告の請求を認定した判断が数次例下されたと言う点です。そして無償化法適用の対象として指定を受けるのは、学生でなく学校なので、国家賠償請求訴訟と異なり、学生でなく大阪朝鮮学園が原告となるのであり、これによって学生達を裁判の最前線に立てず問題を解決する事が出来ると考えたからです。
次に、大阪朝鮮学園が主張した、上の A文部科学省大臣は、原告に対し、施行規則第1条第1項第2号‘ハ’の規定により、指定をせよと言う請求趣旨に対し、その理由を若干補充します。最初の理由は、大阪朝鮮学園は、朝鮮学校が本件規定に定められた各要件を充足している事が明らかであるから、指定措置の義務履行を要求したのです。

二番目の理由は、大阪朝鮮学園が、上の規定に定められた各要件を充足するにも拘わらず、国家が外交上の事情を考慮して指定措置を出さないのは、裁量権の範囲を超えるか、裁量権の乱用だと認定されるので、指定措置の義務履行を要求したのです。

前者の理由は、行政庁に、処置に関する裁量が認められない場合、後者の理由は行政庁に裁量が認められる場合だが、二つの(種類の)理由を全て、併記しました。そして後者の場合、行政府は考慮しなければならない事実を考慮しないか、反対に、考慮してはならない事実を考慮して、処置を下す事が出来ないのだが、これを他者考慮禁止の原則と言います。大阪朝鮮学園の主張は、日本政府が外交上の理由と言う、考慮してはならない事実を考慮し、不指定処分を下す事は出来ないと言うものです。

●日本政府の反論と大阪朝鮮学園の再反論

大阪朝鮮学園が提訴した後、2013220日、文部科学省は、大阪朝鮮学園が無償化法で‘高等学校など’に含まれて、指定される事が出来る根拠規定である施行規則を削除する為に、施行規則の一部を故意に(わざわざ)‘改定’しました。そして同じ日、文部科学省大臣は、大阪朝鮮学園に対し、上記施行規則の‘ハ’規定が削除されたと言う事と、従って、本件規定第13条に適合すると認める事は出来ないと言うことを理由に、不指定処分を通報しました。

続いて、日本政府は、2013520日にあった口頭弁論で、朝鮮高級学校に対する、朝鮮民主主義人民共和国や、朝鮮総連の影響力は否定する事は出来ないし、このような関係性が、教育基本法第161項で禁止する‘不当な支配’に該当し、適正な学校運営が成り立っていると言う事に対し十分な確証を得る事が出来ないので、就学支援金を支給するとしても、授業料として充当されない事が懸念されるので、不指定処分をしたと主張しました。

その上、日本政府は、本件規定がどのように改定されたのかに関する問題に対しては、文部科学省大臣に、専門的、技術的観点から、裁量権が認められると言う主張を広げました。

これに対し、大阪朝鮮学園は先月729日口頭弁論で、不指定処分の本質的な問題点は、日本政府が主張する就学支援金の充当など、高校無償化法の要件に符合するのかの当否ではない。高校無償化法が全く予期しなかった拉致問題の解決など、外交的、政治的理由に依って、不指定処分を下した事だと反駁しました。

また大阪朝鮮学園側は、高校無償化法は、支援金流用の懸念を否定する事が出来ないと言う程度で、就学支援金を支給しない事を許容するのでなく、むしろ、教育の機会均等と言う、法の目的達成の見地から支給を実施した後、支援金流用など具体的な憂慮が発生する場合には支給を停止するなど、事後的措置として対応しなければならないものだと主張しました。そして日本政府による施行規則の改正は、高校無償化法の趣旨や目的などから始まる、高校無償化法第2条第15号が定める委任の範囲を、逸脱する改定であり、不指定処分とその間の日本政府の行為は、行政手続法第5条、第6条、第7条、また第8条に違反するものである事を披歴しました。
そして、朝鮮学校に対してだけ、差別的に思想調査を実施し、その結果、就学支援金支給の対象学校に指定しない不指定処分を、他の外国人学校に比べ、朝鮮学校だけを合理的理由なく差別するものとして、憲法第14条違反であり、従って無効だと主張しました。

●裁判闘争に、海外同胞達の関心と注目を

紙面の関係上、説明出来なかった部分も多くあったが、現時点で双方の主張は以上の様です。今後、日本政府が大阪朝鮮学園の教育内容に関して、直接的な主張を展開しながら、総連などの‘不当な支配’が、朝鮮学校に及んでいると主張してくる可能性も十分に予想される為に、決して展望を予断する事はできない状況です。

このような動きに対抗して、今後、裁判闘争を有利に展開する為にも、裁判所に対し、本件裁判が日本政府に、居住する在日朝鮮人同胞だけでなく、海外に暮らす同胞達も大きい関心を持って見守っている裁判だと言う事実を、浮き立たせる必要があります。弁護団の一人として、より多い海外同胞達が、今回の無償化裁判に注目して下さるのを願ってやみません。

(訳 柴野貞夫 2013818)

 

 

<参考サイト>

 

世界を見る−世界の新聞から/朝鮮学校問題は・・・日本が作った、日本が解決する問題(元 百合子・大阪女子学院大学教員) (韓国・PRESSIAN 2013年7月31日付)

 

☆世界を見る−世界の新聞から/朝鮮学校は依然として日帝時代、同化と差別の歴史(藤永壮大阪産業大学教授) (韓国・PRESSIAN 2013年7月23日付)

 

●藤永 壮教授の論考・記事 

 

★393 ジュネーブに飛んだオモニたちの鶴(韓国・PRESSIAN 2013年5月17日付)

 

★373 在日朝鮮人の人権を無視した安倍新政権(韓国・PRESSIAN 2013年1月9日付)


369 朝鮮学校差別は国際社会の笑い草(韓国・統一ニュース 2012年12月30日付)

 

★365 ホン・ギルドン、大阪府・大阪市を訴える(韓国PRESSIAN 2012年12月2日付)

 

●時事研記事


論考/安倍政権の朝鮮学校無償化の根拠法令削除に抗議する(2013年1月23日)