韓国・社会主義政治組織・タハムケ機関紙−「レフト(左翼)」(2013年8月24日)http://www.left21.com/article/13429
[書評] 『日本神話と天皇制イデオロギー』(キム・フリョン− チーム著)
−神話と歴史の間で 右傾化する日本支配階級が‘天皇’を奉る理由−
日本総理・安倍と内閣首脳達の放言(下品な言葉)が絶えることがない。総理出身の財務大臣麻生太郎は、最近、平和憲法に言及し、“ナチの改憲手法を見習わなければならない”とまで語った。
▲『日本神話と天皇制イデオロギー』キム・フリョン− チーム (本の世界社 価格23000ウォン)
(訳者注−著者のキム・フリョン氏は、韓国外大学院グローバル・コンテンツ学科兼任教授)
さる4月、安倍内閣は、日本右翼団体の民間行事だった<主権回復記念日>を、天皇まで招待した政府公式行事に格上げした。ここで、安倍を含んだ参席者達は、数十年の間、タブー視されて来た掛け声である“天皇陛下万歳”を叫んだ。
日本帝国時期に、‘天皇’は絶対的な存在だった。当時、日本支配階級は、天皇を‘神の子孫’だと宣言しては、国民に天皇を崇拝せよと強要した。天皇の名で<満州事変>、<日中戦争>、<太平洋戦争>など、帝国主義の侵略を恣行(しこう―勝手気まま)した。
日本が戦争で敗北した後、天皇は権力者から象徴に格下げされた。
しかし、今日、多くの日本人達は依然として、天皇制が伝統であると同時に、文化だと認識する。日本の主流言論と右派政治家達が、依然として天皇制の‘神聖なること’を再生産しているからだ。日本の神話と歴史を深く研究したキム・フリョン教授が著した≪日本神話と天皇制イデオロギー≫は、この様な天皇制イデオロギーの虚構性を一つ一つ暴く。
著者は、天皇制イデオロギーの土台が、≪古事記≫、≪日本書紀≫が書かれた7世紀から、日本の帝国主義侵略と今日の過去史否定に到るまでの歴史を見渡す。
この過程で著者は、日本の天皇制イデオロギーが、実際には、近代化と帝国主義を推進した日本支配階級が作り出した思想である事を証明する。即ち、“作られた伝統”に過ぎないと言うことだ。
日本の歴史で、天皇は数百年の間、権力の背後にあった。中央集権体制を維持しようとした天皇と、封建体制を要求した武士階級間の階級闘争で、天皇がたびたび敗北した為だ。武士階級の間で権力闘争が進められる中、天皇は忘れられた存在だった。
だが、武士階級は、近代化を要求したブルジョアジーとの階級闘争で敗北し、崩壊した。新しい支配階級は、日本を、資本主義体制で運営される西欧的国民国家へ変え様とした。
しかし、新政府が推進した徴兵制と租税制度は、平民達に憤怒を買った。たちまちに、各地で政府の政策に抵抗する騒擾が起こった。
新政府は、安定的な中央集権体制を立てようと、天皇の存在を意図的に浮き立たせた。新政府は、天皇が世上を統治すると書いて置いた千年前の神話を、歴史として、‘作り’ 天皇を神格化した。憲法を制定しながら日本は“天皇が統治する国家であり、天皇は神聖不可侵だ”と規定した。
数百年の間無かった皇室儀礼を再構成し、消えた皇陵(天皇の墓)を、任意に作り上げた。
天皇制イデオロギーに反対したり、天皇制に疑問を持った人々を、暴力で徹底して弾圧した。この様に僅か数十年で、国家の正体性が天皇に集中した。
この様に、天皇制は日本資本主義誕生と密接な関係がある。大恐慌の中で、日本の帝国主義侵略が本格化されながら、天皇制イデオロギーは更に拡大再生産された。侵略戦争と残酷な虐殺などは、すべて天皇の名と命令下に恣行(しこう―勝手きままに)された。
戦争に負けて、日本に米軍政が踏み込むや、天皇が戦争犯罪に対し責任を負わなければならないと言う世論が高くなって行った。
しかし米軍政を率いたマッカーサーは、天皇制を存置する事と決定した。“天皇制を廃止すれば、日本人達を統制する事が難しくなり、‘共産主義者’達の勢力が拡張されるだろうと考えた”為だ。
韓国戦争が勃発するや、米軍政は戦犯達を釈放し、戦犯達が公職に上がらない様にした措置も解除した。その結果、第2次世界大戦後、新しい日本政府と政界は、右派人士と戦犯で満たされた。
彼等は、戦争前の様に天皇を擁護したし、帝国主義戦争を美化した。良く知られた様に、現日本総理安倍晋三の外祖父(母方の祖父)も、A級戦犯である岸信介元総理だ。
今日も、米国は自身の帝国主義覇権を維持する為に、その戦犯の後裔達が日本を軍事大国化する事を積極支援している。
厖大な資料と事例を基礎にして、中味のない殻だけである日本の国粋主義を論駁するこの著作は、十分に読んで見る価値がある。天皇制イデオロギーが作られた当代の経済的条件を、深度深く理解したければ、アンドリュー・ゴードン(Andrew Gordon)が書いた≪現代日本の歴史≫を、一緒に読むことを推薦する。
(訳 柴野貞夫 2013年8月24日)
<訳者注>
近日、この、キム・フリョン教授の著作の訳出を計画しています。
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