<The International Committee of the Fourth International (ICFI)2015年2月19日 > http://www.wsws.org/en/articles/2015/02/19/pers-f19.html
安倍は、自衛隊に憲法上の制限を踏み越えさせた
ピーター・スモンド(Peter Symonds)
● 日本の支配階級は、戦後体制(平和憲法)が、アジアにおける自らの帝国主義的野望を追求するのに障害と感じている
● 安倍は、日本を中国との戦争の方向へ向かわせ様とし、1930年代から1940年代にかけて行われた、アジアにおける日本軍の戦争犯罪を糊塗する組織的宣伝活動を行っている。
● 安倍は、“憲法の新解釈”に<法的説得力>を与えるための一連の法改正を地方選挙後に、強行しようとしている。
● 集団的自衛権の行使と日本軍国主義の再現は、労働者階級にとって大きな危険を内包している。安倍は、戦後憲法の中にある民主主義の“基本的権利(fundamental rights)”を撤廃しようと目論み、国旗と国歌に敬意を込めた愛国的“義務(duties,)”に、取って代え様としている。
● 経済的危機が増している最中に、そして世界の帝国主義者間の抗争が増えている最中に、あらゆる帝国主義国家は、戦争に備えている。
● 破産した資本主義体制と、その流行遅れの民族国家体制を根本原因とする戦争を廃止することが出来る展望は、国際的な労働者階級の戦いにある。
● 日本の支配階級は、戦後体制がアジアにおける自らの帝国主義的野望を追求するのに障害と感じている
アメリカ帝国主義が、ウクライナにおける外交政策の手段として、戦争に訴えていると言う状況の下で、中東とアジア太平洋で、その他のおもだった勢力は再軍備と、軍隊の使用制限からの脱却を探し求めている。
それは、日本の首相・安倍晋三の、日本の戦後憲法を根本から修正したいとする真の意味での誘惑である。先週、12月の総選挙以来最初の施政方針演説において、安倍は正式に憲法改定を彼の内閣の協議事項に挙げた。
彼は“日本国民”に“自信を持つように”熱心にすすめた。“今こそ、憲法改定について、深く議論する時ではないか?”また、“日本の未来の為に、終戦以来、議会における最大の改革運動を成し遂げるべきではないか?”と叫んでいる。
憲法改定は積年の野望であったが、それは安倍にとどまらない。日本の政治支配階級の党派は、特に憲法9条に反対であった。その憲法9条は、戦争を永久に放棄し、陸・海・空軍は決して保持しないと宣言した。憲法は、ダグラス・マッカーサー司令官の下、戦後アメリカ占領によって練り上げられたものであるが、しかし、1950年代から、アメリカは日本に、自らの実態的な“self-defence forces(自衛のための軍)”を設置する様に奨励し、その軍を冷戦においてアメリカの味方につけようと考えた。
● 安倍は、1930年代から1940年代にかけて行われた日本軍による戦争犯罪を糊塗する、組織的宣伝活動を行っている
日本の支配階級は1991年のソビエト連邦崩壊以来、戦後体制が、ますますアジアにおける自らの帝国主義的野望(own imperialist ambitions)を国際的に追求するのに障害になっていると、見るようになった。
地勢的な緊張の高まりの中で、安倍内閣は既に国防費を増大させ、防衛戦略を中国との戦争の方向へ向かわせ様とし、1930年代から1940年代にかけて行われた日本軍による戦争犯罪を糊塗する組織的宣伝活動を行っている。
● 安倍は、“集団的自衛権”が可能という“憲法の新解釈”に<法的説得力>を与えるための一連の法改正を地方選挙後に、強行しようとしている
昨年7月、安部は9条を侵食する更なる重大な段階に踏み込んだ。安倍はまた、所謂“集団的自衛権(collective
self-defence)”を考慮に入れた“憲法の新解釈(constitutional reinterpretation)”を公表した。“集団的自衛権”とは、言い換えれば、東京が軍事的にアメリカおよび他の潜在的同盟国を(軍事的に)援護すると言う事だ。譬え日本が、直接に脅かされたり攻撃されなくても、それらの国々を援護すると言う事である。
この“新解釈”に、法的説得力を与える為の一連の法律制定は、既に計画を繰り上げられて来た。そしてそし4月の地方選挙の後、強引に国会を通過させられるであろう。
● オバマ政権は、安倍政権に、対中国の軍事的援護を求め“集団的自衛権”行使の宣言を歓迎した
オバマ政権における“アジアへの旋回(pivot to Asia)”と言う方針の一員として、オバマ政権は日本が北京に対し、より攻撃的態度を取る様に仕向けて来た。また地域安全保障において、より重要な役割を演じるように、−即ち米軍のインド・太平洋地域での、対中国の軍事的高揚を援護するように日本に求めてきた。
ワシントンは、安倍政権の“集団的自衛権”行使の宣言を歓迎した。それは、米国と日本軍の緊密な統合に門戸を開くものとして、また約5万人もの人員を配置している米軍が存在する日本であると言う事も含めてである。
安倍は今、決定的な憲法改定という、はるかに広範な目的に向けて推し進めようとしている。また彼は、大きな障害に直面している事も良く知っている。如何なる憲法改正でも、賛成を求める国民投票に掛けられる前に、衆参両院それぞれで、3分の2の賛成票を必要としている。
更に根本的に政府は、如何なる日本軍国主義の復活の企てに対しても、憲法改定に対しても、特に労働者階級の根深く公然たる反対に直面している。
“深い討論(deep
debate)を”と叫びながら、長いイデオロギッシュな攻勢に出ている。彼は既に、イスラム国(the
Islamic State of Iraq and Syria−ISIS)の、二人の日本人に対する野蛮な処刑をとらえて、救出作戦部隊を投入し、救出する事も出来る軍の能力に対する憲法上、法律上の制約を取り除こうと論じている。政府は、テロリストとか、戦争が起こるのではないのかと言う、一連の不安に付け込んで、世論(public opinion)を2016年中期の参議院選挙後の或る時に、憲法改定するのを支持する様に話を持って行こうとするだろう。
● 憲法改定と日本軍国主義の復活への動きは、世界的な資本主義の危機の反映であり、自らの帝国主義的利益の為の再武装である
日本軍国主義復活の原動力は、世界的な資本主義の深まる崩壊の危機が生み出したものだ。それは地政学的な対立と緊張を焚きつけている。その対立と緊張とは、アメリカと、そしてウクライナにおけるアメリカの同盟者の挑発的介入から、中東と、ワシントンの対中国枢軸における新しいアメリカ主導の世界的広がりを持ったものである。
ドイツと同じ様に、日本はその目標を、アメリカとの同盟体制の中に追及し続けているが、同時に、自らの帝国主義的利益の為に再武装をしている。日本の帝国主義的利益は、アメリカのそれと対立する可能性がある。
第2次世界大戦での屈辱的な敗北と看做すものを被った日本の支配層は、アメリカの占領に依って押し付けられた憲法を、ただしぶしぶ受け入れた。
安倍は、しばしば“戦後体制からの脱却(escaping the post-war regime)”と言うものに言及するが、彼はそれによって、日本の‘軍隊’に手枷足枷をかけている憲法を除去するのみならず、日本の戦後を支配するアメリカへの従属を終らせるつもりであるという事を云っているのだ。
2006年に出版された彼の本“美しい国:日本に対する、私の理想(Towards
a Beautif ul Country: My Vision for Japan,)”の中で安倍は、“憲法9条は独立国への必要な条件を備えることに失敗した”と表明した。つまりそれは、日本に対する米国の姿勢を反映している。安倍は続いて書く、“アメリカは、自身の国益と他の同盟国の国益を守るために、日本を再び欧米諸国の秩序に歯向かわせない為に憲法を起草した。”
安倍は、日本帝国主義の国際的な影響力を精力的に行使する能力に掛けられた制約を、取り除く事を決心した。かれが2012年12月に権力を握ってから、丁度2年経って、安倍は、5大陸50ヶ国以上を訪問し、東京と世界との提携を強めると言う広範囲の外交攻勢に打って出た。
● 破産した資本主義体制と、その流行遅れの民族国家体制を根本原因とする戦争を廃止することが出来る展望は、国際的な労働者階級の戦いにある
同時に自由民主党政権は、戦後憲法の中にある民主主義の基本的権利を修正し、撤廃しようと目論んでいる。また首相に対し、“非常事態対処権”(“emergency powers” )を付与することを提案している。さらに、天皇(the emperor)3に戦前の様な国家の頭(かしら)としての地位に復帰させるように提案しており、また市民の“基本的人権(fundamental rights)”を、国旗と国歌に敬意を込めた愛国的“義務(duties,)”に、とって代える様に提案している。とりわけ、これらの非民主的法案は、奢り高ぶった安倍政権が、生活条件を攻撃する条件の下では、労働者階級を粗末に扱うだろう。
日本軍国主義の再現は、日本に於いても、また国際的にも、労働者階級にとって大きな危険を保持している。経済的危機が増している最中に、そして帝国主義者間の抗争が増えている最中に、全ての主要国達(all the major powers)は、戦争に備えている。
アメリカと日本は、1941年から1945年まで、何百万という人命をかけて血生臭い戦争を戦った。それは何の為なのか?どちらの勢力が、中国やアジア太平洋を支配することが出きるのかを賭けての事だった。
現在の所、アメリカと日本は同盟国ではあるが、この前の戦争の決着がついていない問題が大きくなりつつあり、新しい緊張と衝突の恐れがある。ヨーロッパ、中東、そしてアジアにおいて、駆り立てられる様な戦争への衝動を抑えられる社会的勢力は、国際的労働者階級だけである。
第4インターナショナル国際委員会とその党派だけが、労働者と青年の世界的反戦運動建設を戦い取る事ができる。それは、社会主義者と国際主義者の展望に基づいたものである。その展望とは、破産した資本主義体制と、その流行遅れの民族国家体制を根本原因とする戦争を廃止することが出来る展望である。
(翻訳 柴野貞夫時事問題研究会)
<関連参考サイト>
[論考]/安倍政権下の日本の情勢@ 「秘密保護法案は、立憲的ファシズム体制を狙う治安立法である」(2013年11月2日)
☆名古屋高裁は「航空自衛隊による多国籍軍兵員輸送は、憲法9条1項に違反する戦争行為」と判決した(11) (2008年4月22日)
[論考]/韓国民衆、「日本の集団的自衛権と日韓米・三角軍事同盟は、日本軍の朝鮮再侵略に道を開くもの」と糾弾(2014年6月17日)
[論考]/「2邦人の死を利用して<有志連合>の侵略戦争に加担する意思と法整備を明らかにした安倍政権」(2015年2月6日)
☆世界を見る−世界の新聞/イスラム国(ISIS)の死刑を上回る、帝国主義者の偽善 (ICFI−第4インターナショナル 2015年2月5日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/NATOの東進政策がウクライナの危機を深化させている(韓国・チャムセサン 2014年3月15日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/NATOは平和ではなく戦争を挑発してきた(韓国・チャムセサン 2014年9月9日付)
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