ワールドソシャリストウェブサイト<The International Committee of the Fourth International− ICFI>
(2015年4月1日)
http://www.wsws.org/en/articles/2015/04/01/pers-a01.html
アメリカ帝国主義の決定的転換点
−中国主導のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の設立は、アメリカ帝国主義に加えられた重大な一撃である
● アメリカ資本主義は、もはや世界経済の産業発電所ではない。‘安息の指針’というアメリカは、以前の姿の萎びた風刺画にすぎない。
● アメリカ資本主義の経済的地位の弱体化の中で、延命を図るその外交政策は、巡航ミサイルとドローンによる侵略と嘘で固めた政体変革作戦に結びついている。アメリカは、軍事的挑発を増大させながら、世界を再び戦争の災禍に巻き込もうとしている。
● 世界中で、拷問、誘拐、暗殺という国家暴力遂行するアメリカは、その罪の責任を負わせる事が出来ない様な罪人どもに左右されている。
● アジア・インフラ投資銀行(AIIB)への加盟決定の歴史的重要性は、はっきりしている。確実に大災難に向かって走るアメリカの大型ローリーから、少しでも身を引く事にある。
昨日(2015年3月31日)は、中国が後押ししているアジア・インフラ投資銀行 − Asia Infrastructure Investment Bank (AIIB)の設立メンバーとして署名する締め切り日だった。それは、アメリカ帝国主義の世界的な外交政策と戦略上の目的にとって、重大な汚点を残すものとして記録されるだろう。
ワシントンの激しい妨害にも拘わらず、40カ国以上の国々は、今はAIIBの肩を持ちたいという兆しを示した。イギリス、フランス、ドイツを含むヨーロッパ主要国までも乗込んでいる。中国を主要貿易相手国と見ている殆どの東南アジアの国々は、署名を済ましている。インドもまた台湾とともに署名した。
アメリカにとって重大な一撃は、イギリスによって撃ち放たれた。アメリカの欧州における第一の同盟国によってである。そのイギリスは、加盟の決定を3月12日に公表した。その他の国々も続く様に水門が開かれた。アメリカの主要な同盟国の二ヶ国、太平洋アジアのオーストラリアと韓国を含めてである。日本も恐らく、6月には加盟しているだろうと報道されている。
アメリカの失策の意味深長なこと、その広範にわたる影響は、歴史的観点から考慮した時に最も明らかに立ち現われるであろう。オバマ政権の、新しい銀行に対する重要な反対理由の一つは、それが<IMF>や、<世界銀行>を衰退させる事であった。1944年のブレトン・ウッズ協定(the Bretton Woods Agreement)に加えて、それら(<IMF>や<世界銀行>)は、第二次世界大戦後の、アメリカによる世界的経済秩序の大黒柱を構成して来た。
そのアメリカは、1920年代から1930年代にかけての戦争と荒廃、そしてそれが生み出した革命的闘争のあとで、世界資本主義の再構築において主役を演じて来た。もちろん、戦争で疲弊した欧州の復元化の為のマーシャルプラン(the Marshall Plan)と共に、これらの機構も、アメリカ帝国主義の経済的、戦略的利益に影響を与えた。しかし一方、アメリカは戦後秩序から莫大な利益を引き出して来た。それは想像を絶するほどのものであった。主だった政界と経済界においても、もし、アメリカ資本主義が生き延びる可能性があるならば、アメリカ資本主義は、自由に処分出来る権限における莫大な財源を用いて、他の国々の資本主義勢力、とりわけ、アメリカ資本主義がちみどろの戦いをした相手の資本主義勢力の拡張と発展を保障する必要があるだろう―と云う認識があった。戦後の復興は、ドイツの発展を可能にし、そしてもう一度ドイツをヨーロッパの発電所に変えた。同時に、為替レート(対ドル360円固定)における日本への譲歩は、日本産業の輸出市場を広げた。
朝鮮戦争の時、日本でトラックやその他の米国軍装備を作るという決断は、日本の自動車工業の発展への道を開いた。それは、アメリカで確立され、開発された進んだ生産技術を取り入れながら行われたのである。アメリカの工業的、経済的能力は、朝鮮戦争の場合の様な反動的な形態を取った時でさえも、世界的な資本主義の伸展、即ち戦後ブームの新段階を促進させるのに役立った。
現今の事態と何と対照的か!アメリカ資本主義は、もはや全体的に、資本主義経済の発展を保障する世界的な産業発電所(工業大国)ではない。むしろ、世界的な寄生虫のドンとして、また貪欲な銀行として機能し、投資家やヘッジファンドは、世界中の有利なチャンスを探し回り、人々の関心を新しい富の提示に引き込もうとするばかりでなく、よそで生産された富の流用にも引き込もうとする。それはしばしば、法外な、またやや法外な取引を通して行われる。
戦後直ぐの時期では、アメリカは自由貿易のチャンピヨンであるが、1930年代の(様に)相手国を束縛したり、或いは相手国から徹底的に収奪し尽くす政策は、大惨事を引き起こしてしまった。今日、TPPのような法案や、同じ様な協定を欧州に関して立案しながら、ワシントンはアメリカ株式会社の独占権を守るように意図された排他的協定を徐々に押し進めようと努めている。アメリカは、オバマが言った様に、21世紀における貿易と投資の為の世界的規範を書き上げねばならない。
戦後のアメリカの威光は、その直面した経済的地位に限られると云う事はなかった。すべてのアメリカの、あい矛盾する特色にも拘らず、アメリカ社会は全体として、世界に提供する何かを持っていた様に見える。その世界とは、経済的荒廃に加えて、長年の戦争やファシズム、そして形にはまった軍事規律に苦しめられた世界にである。
再び、その現実との対比で強くなる事は無いだろう。アメリカ民主主義は、かっては世界の安息の指針として、模範として世に示されたが、現在は以前の姿の萎びた風刺画の様になっている。金融、企業エリートの独裁権を秘密として隠しておく能力は最早なくなってしまった。
(アメリカ社会の)社会的状況は、収奪と国家暴力によって特色付けられている。特に、日々起こっている警察官による殺人事件で不名誉をもたらしてきた。アメリカは、世界の中でも、投獄、監禁の率が最も高く、かっては、アメリカ産業の経済的中心で、最も高い賃金を払っていたデトロイトにおいて断水が行われている。アメリカ政府は、拷問、誘拐、暗殺、そして自国民や世界中の他国民に対してまでも、大量のスパイ行為を遂行している。この国は、その罪の責任を負わせる事が出来ない様な罪人どもに左右されている。
1991年のソビエトの崩壊と、世界な競争相手の舞台からの除去をきっかけに、アメリカの支配階級はその経済的地位を著しく弱体化させた。1987年の株価暴落はその前触れだったが、それにも拘らずアメリカの覇権は、その軍事的手段によって維持する事が出来た。
フレデリック・エンゲルス(Frederick Engels)は、ずっと昔に、“力の論理(force theory)”の主唱者を論破しながら説明をした。“「力の論理」と言うのは、経済的発展―工業の進歩、銀行の貸付と貿易の進歩―それら諸々のものが、クルップ社の銃や、モーゼル社のライフルによって爆破することが出来ると言う妄想を生むことになる。”と。
過去25年(ソビエトの崩壊以降)のアメリカの外交政策は、巡航ミサイルやドローンに基礎を置いて、侵略と嘘で固めた政体変革作戦に結び付いて、政府の崩壊を次から次へ引き起こしてきた。さて、“ひとを呪えば穴二つ”(“the chickens
are coming home to roost,”他人を呪って殺せば、その報いで自分も殺されるから墓穴は二つ要る)の通り、自分に跳ね返ってくる。以前は資本主義勢力にいた者も、貴賎を問わず、確実に大災難に向かって走るアメリカの大型ローリーに、身を預けると言うような結末に陥り始めている。彼等の、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への加盟決定の歴史的重要性は明確である。
アメリカ帝国主義jは、如何なる返答をするのか?軍事的挑発を増大させながら、世界を再び戦争の災禍の中に投げ込む恐れがある。1920年代後半のアメリカ帝国主義の幕開けを描きながら、レオン・トロツキー(Leon Trotsky)は、「そのヘゲモニーは、発展期よりは危機の時代の方が、より公然と、また、より冷酷に作用するだろう」と言い、「それは必要ならば、戦争の手段に訴えてでも、競争相手国の犠牲の上に、(自身の)財政的困窮や社会的弊害から自らを解き放とうと試みるだろう」と言った。
(訳 柴野貞夫時事問題研究会翻訳グループ 2015年5月1日)
<参考サイト>
☆ 世界を見る−世界の新聞/安倍は、自衛隊に憲法上の制限を踏み越えさせた (ICFI−第4インターナショナル 2015年2月19日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/ワシントンは、ロシアと戦争をしたいのか(ICFI−第4インターナショナル 2014年4月24日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/サウジの新しい王様は、大のアルカイダ支持者だった」(オンライン ジヤーナル 2015年1月25日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/サウディアラビアが連座した9.11 そして米帝国主義の“テロとの戦い”の欺瞞(ICFI−第4インターナショナル 2015年2月6日付)
☆ 世界を見る−世界の新聞/イスラム国(ISIS)の死刑を上回る、帝国主義者の偽善 (ICFI−第4インターナショナル 2015年2月5日付)
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