(ワールドソシャリストウェブサイト<The International
Committee of the Fourth International− ICFI>2015年4月1日付)
http://www.wsws.org/en/articles/2015/04/01/ukra-a01.html
ウクライナのファシスト民兵を訓練する米軍
By Patrick Martin(訳 柴野貞夫時事問題研究会)
ファシストとネオナチで構成されたウクライナ民兵大隊を訓練する米第173空挺旅団
ウクライナ政府の内務相アルセン・アバーコフ(Arsen Avakov)によって日曜日に発表された公示によると、米陸軍は4月20日にポーランド国境付近のウクライナ西部で、ウクライナ民兵大隊の訓練を開始し、“290人を数えるアメリカのゲリラ部隊が、4月20日にルビブ地区のヤボーリフ訓練場に来るだろう。”と、アバーコフはフェイスブックに書き込んだ。“ここでは、アメリカ陸軍の第173空挺旅団と民兵の戦闘部隊の、長期軍事訓練が執り行われるだろう。」と続けた。
ペンタゴンの女性報道官アイリーン・ライネスは、開始の正確な月日は公表しないまでも、今月初旬に部隊を展開する事を承認した。彼女は“この援助は、ウクライナの防衛と国内の安全保障を維持するのを手助けするという我々の継続的努力の一部分である”と言い、続けて、“特にその訓練は、ウクライナ政府が、国内防衛作戦を行うように展開するのを助けるだろう”と言った。
この準軍事的部隊(ウクライナ民兵大隊)は、そのほとんどが、億万長者の寡頭政治の独裁者達によって創設された。その独裁者達は、資金を融通し、ファシストとネオナチの志願兵の新兵を入れ、そして彼等は多分、ウクライナ政府統制下の地域に加えて、東部ウクライナでも、もし再び、ロシア支持派の分離主義者達との戦いが突発すれば、参加する事も含め、一般民衆の抗議行動を鎮圧することに熟練しているだろう。
ウクライナの“人権と民主主義の為”に、殺人兵器の供給と1600人の米兵を派遣する米国
第2次世界大戦中のユダヤ人大虐殺の手助けをしたり、ナチ占領軍に協力したり、かぎ十字に似せた勲章を弄んでいたウクライナの国粋主義者や、ファシストを公然と尊敬する様な準軍事的勢力の装備を整えさしたり、訓練をしたりしているアメリカの役割は、“アメリカは、ウクライナの民主主義と人権を擁護するべく運命ずけられているのだ”と言い張るという汚らしい嘘を振りまく事である。
訓練計画の中には、ウクライナの軍隊への、ワシントンからの重要な直接的で公然たる殺人兵器の供給が勘定に入っている。
ペンタゴンの高官は、軍人と機甲部隊の本体や、夜景透視装置や、戦術的無線電信機、すべて“致命的でない”と云う様に機密扱いされたものが供給されるだろうと言った。―しかし、アバーコフは本性を現して、“我がアメリカの相棒は、訓練の終局において、ウクライナ国防軍に特殊弾薬を進呈するだろう”と言った。2015年以前に、アメリカから供給された弾丸、手榴弾、また他の‘特殊弾薬’によって、親ロシア分離主義軍団、またはロシア兵を殺すことが出来た。この事は、東部ウクライナとクリミアの上で、核武装したロシアと,アメリカ―NATO勢力との間の、直接的軍事衝突をエスカレートさせるだろう。
総数1500人のアメリカ軍と、他のNATO諸国からの600人の兵士、そして2200人のウクライナ兵士は、一連の演習に参加するだろう。最初の演習は、‘フィアレス・ガーデイアン2015’と呼ばれ、4月から11月まで7ヶ月に及ぶ。第2の演習は、‘セイバーガーデイアン/ラピッド・トライデント2015’と呼ばれ、7月に始まり10月まで及ぶ。
ウクライナ政府の兵籍に組み入れられたネオナチの軍事組織
アメリカ軍は、南欧州の米軍の急先鋒であり、イタリアのヴイチェンツア(Vicenza)に本拠を置いた第173戦闘旅団(the 173rd Combat Brigade)からの選りすぐりの部隊と成るだろう。東部ウクライナへ,いかにもありそうなロシアの攻撃から防衛する為のウクライナ軍をペンタゴンが応援しているのは、分離の要求をあざ笑いながら、攻撃的な空爆作戦に、(ウクライナ軍を)専門化するためである。
アバーコフは、軍事訓練をすることの合意は、米国副大統領ジョセフ・バイデンが、最近キエフを訪問している間に、ウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコとバイデンとの間の話し合いで達せられた。彼は、“彼等の力なくしては、訓練の重要で複雑な準備は不可能であっただろう”と言いながら、米欧亜局補佐官ビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)と、キエフの米大使館職員達の果たした役割に、特別の賛辞を送った。
3月17日に、ウクライナ議会は、今年のウクライナにおける多国籍軍の訓練に参加するべく外国から来た軍隊に、入国許可を出したポロシェンコによって提出された議案を承認した。ウクライナの軍事行動は、近くのNATO構成国―ルーマニア、ブルガリア、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアを含むNATO構成国で遂行された同類の演習とかち合った。
合計1200人のウクライナ正規軍と、アメリカの州軍からの1000人もの兵士が訓練に参加し、州軍を含む50大隊もの兵士が派遣される。アバーコフ内相は、キエフ、ハリコフ、ザポリージャ、オデッサ、リボフ、イバノ−フランキフシク、ビンニツイアから抜き出された軍勢のもならず、アゾフ大隊、ジャガー大隊、オメガ大隊(訳注―これ等は、ウクライナのネオファシスト・極右民族団体等の軍事組織である。ウクライナの現政権の主要ポストは彼らによって占められている)をも政府の兵籍に組み入れた。
ヒトラー親衛隊の鉤(かぎ)十字の記章を模したアゾフ大隊
アゾフ大隊(the Azov battalion)の編入は、最も不吉な意味を持っている。この大隊は、ネオナチのアンドレー・ビレッキー(neo-Nazi Andriy Biletsky)によって率いられ、設立された1000人以上の軍勢である。その大隊は、第2次世界大戦のドイツのヒトラー親衛隊(German SS units).から直接引用した、鉤(かぎ)十字の記章(swastika insignia)を少し修正したものを身に付け、それを旗印に掲げている。
この大隊は、ドネツク地方における第2の都市であり、ウクライナ政府がもっとも執着し堅持しているマリウーポリ(Mariupol).における戦いで、主導的な役割を演じて来た。マリウーポリは製鋼業の中心地であり、アゾフ海の主要な港であり、黒海から派生した海に位置している。
ビレッキーは、ウクライナ、ロシア,EU、そして親ロシア分離主義者によって合意した2月15日の休戦を公然と非難した。 またビレッキーは、キエフに進撃するぞと脅し、好戦的政権を任命した。彼の大隊は、重火器のみならず、ミサイル発射台や戦車も装備している。
先週のロイターの報道によれば、タイム誌に公表された通り、”アゾフ大隊は、(ビレッキーの)ウクライナ愛国者と呼ばれる準軍事的国家社会主義グループが創設された。そしてそのグループは、白人優越性や人種純血性のスローガンや、独裁主義権力の必要性を宣伝し、国家経済の中央集権化を宣伝した。ウクライナの愛国者は、国際的な何々圏に加盟するとか、報道の自由を含めて、政治的民主主義や自由経済に後退させる事を声高に要求するとかによって、ウクライナの統治権を放棄する事には反対した。<アメリカの今日>(USA
Today)の中にあった3月22日の記事に、マリウーポリ(Mariupol.)におけるアゾフ大隊を視察した記者の訪問記を描写、表題は、“キエフの州軍の中にナチスあり”と報道している。その記事は、公然とナチスのイデオロギーを賞賛する様な訓練軍曹との会見を報道し、一方では大隊の広報官は、“これは、彼の個人的な見解であって、アゾフ大隊の公式見解とは一切関係が無い”と言ったと伝えている。
広報官− アンドレイ・チアチェンコ(Andrey Dyachenko)が、“アゾフ大隊の10%〜20%はナチスだ”と言い、少なくとも100人から200人のナチスが、米国の部隊から集中的な軍事訓練を受ける事が出来るかも知れない事をほのめかしている。
その同じ記事は、キエフのウクライナ軍の参謀の一人、オレックツイ・ノッドラショフ(Oleksy Nozdrachov)大佐を引き合いに出して、“彼は愛国者としてのアゾフの戦闘員を支持している”と報じている。
‘イスラム国風’(“ISIS-style”)の戦争犯罪―に手を染めるウクライナ民兵
国連の人権高等弁務官のひと月単位の報告書は、2014年11月、ウクライナの軍検察官のオフィスは、例えばアイダール、アゾフ、スロボザンシュチーナ、そしてシャクハタルスク(Aidar, Azov,Slobozhanshchina and Shakhtarsk)などの特定自主大隊(certain voluntary battalions )のメンバーによる、略奪や恣意的拘束、虐待などの人権疑惑のかなりの数について、何も調査していない事を明かにしている。
アムネステイーインターナショナルの初期の記事は、“アイダール大隊の隊員が、‘イスラム国風’(“ISIS-style”)の戦争犯罪―例えば、数人の親ロシア派分離主義者を打ち首にしたり、その内の少なくとも一人の犠牲者の首を、その母親へ郵送するなどの戦争犯罪に没頭している”と報じた。
ウクライナの国家主義者の戦闘員らは、“誘拐を含む不法な拘束や虐待、窃盗や強奪など、あらん限りの破壊行為を含め、広範囲に亘る悪弊に関係している。”と一団の人々は言った。
しかし、最近のニューヨーク訪問の間、ウクライナ議会第一補佐官であるアンドレー・パルビーは“国家警備大隊(the National Guard battalions)は、個人写真がつくられ、本も書かれ、“統制のとれたウクライナの兵士たちから成り立っている”と言った。
これ等のレポートは、アメリカ―NATOによるウクライナへの内政干渉と言う反動的な評判を強調し、(それが)東部のまた全国至る所のウクライナの人々に向けられた、残忍で反民主主義的で極右の支配的勢力をけしかけている。
<訳者解題>
6月6日の各新聞の国際欄に、小さく、ウクライナに関する時事通信の配信記事が載っている。ウクライナ東部の中心都市・ドネツク郊外で、ウクライナ政府軍と親露派の衝突が、2月の停戦協定下にも拘らず起こっていると言うものである。
米国は、ウクライナにおいて、選挙で選ばれた合法政権を転覆させるために、過去10年間で50億ドルを使って、親米非政府組織とネオナチ・親米極右政治家を養成して来た。2014年2月、キエフの広場に飛び出した彼等は、CIAの傭兵とともに‘市民革命’を装った暴力で、親露派と左派市民の抵抗を粉砕し、クーデターに成功した。
米国は、旧東欧と中東において、冷戦終結後の米国主導の世界秩序に従わない国々―イラク、シリア、イランを標的とし、その政権崩壊の為に手段を選ばなかった。ウクライナは、ロシアを圧迫する上で最も中心的目標であり、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ、米国務長官ジェイムス・ベイカーと、ドイツのヘルムート・コールの間に取り決めた1990年2月協約に違反してでも、NATOに組み込む事を執拗に追求し、仏・独・英も同調した。ウクライナ戦争は、米国が主導し、欧州帝国主義諸国との共通の利害の下ではじめられた。帝国主義世界の言論は、プーチンの悪魔化に手を貸し、被害者が、恰も加害者のごとく装う事にある程度成功している。
米国はいま、アジアにおいても、アジア・リバランス政策で、中国に対する公然たる敵対的行動に色気付いている。殆ど、実体経済の無い米国は、世界最大のドル保有国(債権国)である中国が、米国にその保有ドルを再投資せざるを得ない事を良いことに、軍事的暴走に走ろうとしている。実体のない経済活動の中で、唯一軍事産業に依存する米国は、死の苦悶に喘ぎながら、アジアにおいても新たな戦争の機会を生み出そうと企んでいる。
米国のこの暴走を支え様としているのが、集団的自衛権行使をオバマに約束して来た安倍政権だ。6月4日、衆議院憲法審査会に呼ばれた全ての憲法学者が、「集団的自衛権と安保法制」が、“憲法に違反している”と断定した。安倍自民と公明党は、確信的な犯罪者集団だ。彼らに属する全ての国会議員を即刻拘束し、刑務所に収監して日本国憲法の裁きを受けさせなければならない。
ウクライナ事態は、決して他所の世界の出来事ではない。日本の帝国主義者が、これから引き起こすであろう、我が国民に対する暴力を予感させる身近な問題である。(訳者)
<参考サイト>
☆世界を見る−世界の新聞/ワシントンは、ロシアと戦争をしたいのか(ICFI−第4インターナショナル 2014年4月24日付)
☆ 458 NATOの東進政策がウクライナの危機を深化させている(韓国・チャムセサン 2014年3月15日付)
☆457 NATOは平和ではなく戦争を挑発してきた(韓国・チャムセサン 2014年9月9日付)
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