ワールドソシャリストウェブサイト<The International Committee of the Fourth International− ICFI>(2015年5月2日)
http://www.wsws.org/en/articles/2015/07/02/pers-j02.htm
世界制覇のためのアメリカの軍事戦略の目標は、ロシアと中国である
Patrick
Martin
米国国防総省の軍事戦略に関する公文書は中国やロシアに対するアメリカの戦争は、その結果が如何に破滅的であろうと、引き起こす可能性は増大していると言う宣言書である
アメリカ国防総省は、水曜日(7月1日)将来の軍事作戦に向けたペンタゴンの展望を概説した24ページ分の公文書、2015年・国家軍事戦略を公開した。公文書は、ぞっとする見解で固められている。
“未来の衝突は敏速にやって来て、長く続き、技術的で困難な戦場となる。それらは、祖国・米国への影響を強めることになる。”と、軍司令官であり統合参謀本部議長でもあるマーチン・デンプシーは、序文において明言している。
その報告書は、アメリカ軍の潜在的な攻撃対象として、ロシア、イラン、朝鮮、中国の4ヵ国を選び出している。4ヶ国の内3ヶ国は、核兵器を保有しており、ロシアと中国は核兵器保有量で2位、3位で、ひたすらアメリカを後から追っている。
核戦争は、ペンタゴンの筋書きの一部分をなしている。レポートの一節には、“攻撃の場合には、アメリカ軍は敵に戦争行為をやめさせるか、または更なる侵略を出来なくする様強制し、その程度に応じて、それなりの大きな損害を与えると言う事で応えるであろう。大いなる敵対者に対する戦争は、国力(国家権力)の全ての道具(手先達)の大動員を必要とするだろう”と書いてある。
最後のフレーズは、ロシアや中国との戦争を戦う為に必要な人員を、ドラグーンする案の復活を示唆している。
報告書は、世界の民族国家を2種類に分割する事から始まる。
“今日の殆どの国は、アメリカに率いられたその同盟国で、パートナーであり、常設の組織や献身的な手順を援護し、争いを引き止めて独立国を尊重し、人権を助成する国である。
それに対し、もう一方の国家は、国際秩序の重大な局面を変え様と企てている。また、我々の国家安全保障の利益を脅かす様な態度に出ている。”と報告している。
国家を(この様にアメリカの基準で)分類するなどと言う事は馬鹿げた事だ。権益を求めて、ワシントンはいつもの様に、国際的組織の権威者を鼻であしらい、ジュネーブ協定を含めて国際法を冒涜している。
“争いを引き止めて、独立国を尊重し、人権を助成する”の下りの如きは、アフガニスタン、イラク、シリア、イエーメン、リビア、そしてに東ウクライナで、(米国によって)苦しみに喘ぐ人々から、米国の侵略の結果を請い求められているかの様に欺瞞するものであり、(米国に)爆撃をしてもらい、ドローンによる攻撃を請い求められているかの様なものであり、CIAによる政権転覆と、代理戦争やワシントンに操られ扇動された市民戦争なるものを、請い求められているかの如く偽装するものである。
ペンタゴンは、世界を二つのキャンプ(収容施設)に引き裂いて、一方にはアメリカや支配的世界勢力にへつらう人々を収容し、他方には、ある方法とか、また別の方法で、アメリカの支配に大胆にも対抗する人々を、追いやると言う様な事をしている。
ロシアは、“隣国の主権を尊重せず、目標達成の為、力を使用しても構わないと考えている”といっている。イランは、“核とミサイルの到達距離伸長技術を追い求めている。”そして“テロ支援国家である”と。
北朝鮮は、“核兵器と弾道ミサイル技術の研究”を通して、隣国を脅かしていると。中国の行動は、“アジア・太平洋地域に緊張をもたらしている”と。
この米国の偽善は、ほとんど呆れ返るばかりだ!アメリカによって告発された4ヵ国の内、どの国も、他の如何なる国とも現実的な戦争を呼び起こした事はない。逆にアメリカは、現にアフガニスタンで、イラクで、シリアで戦争を行っている。そして6カ国に、ドローン・ミサイル攻撃を行っている。また世界の100カ国以上の国々に、軍隊を展開しているのである。
ペンタゴンの報告では、“これらの国々のどの国も、アメリカやその同盟国と、直接的な軍事的衝突を求めているとは信じ難い。”と認めている。しかし続けて言う。“それにも拘わらず、それらの国々は、(アメリカに対し)深刻な安全保障上の心配事があると言うポーズを取っている”と。
報告書は、これらの心配事の内容を遠回しに暗示している。それは、“アメリカは世界で最強の国であり、技術、エネルギー、同盟提携、そして人口統計学において、唯一優越性を持ち、それを満喫している。しかしこれらの優位性は、挑まれている。”と言明している。
ペンタゴンは、平和と民主主義と人権、その他諸々を基準化する。報告は、“ルールに基づいた国際的秩序は、アメリカの主導権によって進歩したと考える”と言う。これは、アメリカ帝国主義の支配権が、全地球にはびこったと言う事の遠回しの表現で、そこでは、ワシントンが法を作り、誰もがそれに従う事であり、さもないと酷い目に会うぞと言う意味である。
アメリカの支配階級は、強烈にその権力が、敵対権力−特に中国に比較して衰えつつある事に気付いている。そしてアメリカの軍事的優位性は、世界経済に於けるアメリカ資本主義の地位の衰退という事によって脅かされているという事、そして海外での軍事介入を維持する事を極めて困難にしている国内社会での敵対心の増大(階級対立)―それにも脅かされている事に気付いている。
報告書は、“我々は中国の発展を支持している。そしてそれが、より大きな国際的安全保障のパートナーとなる様に励ましている”と、言明している。中国を取り囲むアメリカの経済的、軍事的戦略を引き立たせる為の表現だ。
“我々は、アジア・太平洋地域に均衡を取り戻させる為に推し進める。我々の最も進んだ潜在能力や、その極めて重要な劇場における、より大きな能力を配置させながら推し進める。それは、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの同盟を強化させるだろう。我々はまた、インドとの安全保障上の関係を深めるだろう。また、ニュージーランド、シンガポール、インドネシア、マレイシア、ヴェトナム、そしてバングラデシュとの友好関係を打ち立てるだろう”と言明している。
過去10年のアメリカ軍の作戦は、報告書が“過激主義者のネットワーク”
(“violent extremist networks,”) と呼ぶもの、或いはVEOsに焦点を当てて来た。ISIS,アルカイダ、アフガニスタンのタリバン、そして中東や北アフリカにおける様々な他のイスラム勢力に対するペンタゴンの新用語が、VEOである。
“しかし、今日、予見出来る未来へ”報告書は続ける、
“国家主体によって引き起こされる難題により多くの注意を払わなければならない”続けて、“将来の国家間の紛争は、予測不可能なコストがかかり、且つ制御が困難なものになるかも知れない”
報告書は、かいつまんで言う。“今日、大国との国家間戦争で、米国の関与の可能性は低いが、成長しつつあると評価できる。しかし発生した場合、その結果は計り知れない巨大なものになるだろう”
これは、中国やロシアに対するアメリカの戦争は、その結果が如何に破滅的であろうと、深い関係にある国々にとっても全人類にとっても、核による絶滅に直面するとしても、(アメリカが、中国やロシアに対する戦争を引き起こす可能性は)増大していると言う宣言書である。
ペンタゴンの公文書によって描かれた視点は、分別を欠いたものである。核武装をした列強間の、世界戦争をもたらす事を予想させるものである。しかし、この無分別さは極めて現実的で客観的な条件に基づいている。
それは資本主義体系の世界的危機の結果である。この危機の最も有毒な表現は、アメリカ資本主義を、軍事的手段によって世界支配の地位を維持させようとする大運動である事だ。しかし同様の危機は、国際的労働者階級の状態を、人類史の運命の依って立つ所に、解決を押付ける状況を引き起こすことになる。その解決とは、社会主義世界革命である。
(訳 柴野貞夫時事問題研究会)
[訳者解題]
安倍犯罪者集団が企む「戦争法制(案)」(1件の関連新法案と10件の関連改定案)は、日本が、米国が引き起こす戦争に、場所と条件に拘わらず、日常的に参戦する義務を課す違憲立法である。日米新軍事ガイドラインが取り決められた2ヶ月後(7月1日)に発表された米国防総省の公文書は、軍事的手段によって世界支配の地位を維持しようとする米国の「核兵器の使用を明確に想定する」破滅的な核戦争に、日本が参戦する事を予見させる、十分な根拠を示すものである。
●米国の軍事戦略を示すこの公文書は、アメリカ軍の潜在的な攻撃対象とし て、ロシア、イラン、朝鮮、中国の4ヵ国を選び出している。
●(この公文書が)「アメリカが、中国やロシアに対する戦争を引き起こす 可能性は、その結果が如何に破滅的であろうと、核による絶滅に直面する としても、増大していると言う宣言書である。」と、筆者は警告している。
●(この公文書は)米国の侵略戦争を合理化する為に、「敵対する国々への ぞっとする欺瞞と、国際世論を欺く見解で溢れている」と指摘する。「米国に告発された4ヵ国の内、どの国も、他の如何なる国とも戦争を呼 び起こしたことは無い。しかし米国は、世界の100カ国以上に軍隊を展開 し、現にアフガン、二イラク、シリアで戦争を繰り返し、また6カ国に、 ドローンミサイル攻撃を行っている」と。
●また米国が、“争いを引き止めて、独立国を尊重し、人権を助成する” と言うこの公文書のくだりは、米国の政策によって苦しめられてきた人々を愚弄するものと指摘する。
<関連サイト>
☆世界を見る−世界の新聞/ワシントンは、ロシアと戦争をしたいのか(ICFI−第4インターナショナル 2014年4月24日付)
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