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韓国民衆言論 労働者連帯 176号 2016615日付)
http://wspaper.org/article/17322
原文出処/英国反資本主義月刊誌 socialist review20166月号
http://socialistreview.org.uk/



6.23brexit(Britishexit)投票に対し
  なぜ、左派は英国の欧州連合EU脱退に賛成しなければならないのか


英国の欧州連合脱退の当否を問う23日の国民投票は、<脱退派>が多数を占めた。この論文は、それに先立って、英国の左派の立場からbrexitを呼びかけたものである。読者は、brexitの階級的分析の一助にして頂ければ幸いである。(時事研)

5月末、(右翼)脱退派は“トルコがEU連合に加入しようとしている”と言う表題で、英国の旅券写真を利用した人種差別的なポスターを張り始めた。これに対応して残留派は、英国がEU連合を脱退すれば経済が1年の間、沈滞するだろうと予測した英国財務部の資料を公開した。この資料は、世界的経済危機が迫った2008年に、英国経済が2.5〜3%成長するだろうと見通した事のある‘天才’達が作成したもので、誠に信頼し難い資料である。
一方、多くの人々、特に青年たちが、理解はできるが正しくない仮定、即ちEU連合と国際主義が関係があると言う仮定に基づき、残留に投票するようにしようと、多くの左派が残留を支持している。(訳者注)

写真 左派的立場からEU連合脱退を主張し、示威を繰り広げる、英国の社会主義者、労働者

EU連合を改革する事が出来るのか

英国のEU連合残留を支持する左派達の核心主張はこうである。
‘現在のEU連合が野蛮的だという事実(非欧州出身難民達を残酷に扱い、民主主義を無視し、新自由主義的緊縮に献身すること)は認めるが、改革することは出来る。’
去る数か月の間、筆者は全国を回りこの様な立場の左派達と論争を繰り広げた。しかし、その誰もがEU連合を改革する実質的な方途を提示することが出来なかった。
EU連合内では、選出されない官僚達がごろごろする執行委員会や、欧州中央銀行の様な諸機構が多い。この機構がおろす決定は、大概、諸国家の政府が、欧州理事会の様な機構で繰り広げる駆け引きを通して成し遂げられる。
EU連合内では、改革を強制することが出来る、信ずるに値する民主的な機構がない。EU議会は(欧州住民達の投票で選出される議員たちで構成されるが)法案を提案する権利さえ無い。こんな欧州議会がEU連合を改革することが出来ない事は火を見るより明らかだ。

EU連合は、改革ではなく、廃止しなければならない新自由主義的資本主義機構だ

EU連合内では、何かを改革しようとすれば、条約を変えねばならず、そうしようとすれば、28か国の会員国すべての同意が必要だ。28の会員国すべてで左派が勝利すれば、敢えてEU連合を改革する必要はないだろう。労働者の利益を重視させる、真に国際主義的な機構を作ることができるはずだからと言う話だ。
その上、EU連合に親和的な左派勢力の成長の波頭を通して、EU連合の機構を変化させ様という考えは、ギリシャで死亡宣告を受けた。最近合意された国際金融プログラムによって、ギリシャ・急進左翼進歩連合(シリザ)政権は、年金改悪を推進しており、EU連合はこれを激励している。
ギリシャ議会でシリザ政権と恋情パートナーである右派政党・ギリシャ独立党だけが支持し年金改悪案が通過される時、議会の直ぐ前にあるシンタクマ広場では、示威を鎮圧する警察が催涙ガスを使用し、示威隊を弾圧した。
その数週後、ギリシャ政府はマケドニアとの接境地、イドメニの無許可の難民村を撤去した。警察らがこの難民村を襲撃し、難民達を公式の難民村に追い立てる間、記者達の出入りは禁止された。
ギリシャ政府のこの処置は、EU連合とトルコが結んだ合意に従ったものであり、この合意はEU連合の移民統制強化の一環だった。この記事を書く現在まで、トルコの土地に閉じ込められたシリア難民270万人の中で、177人だけが(この合意によって)欧州に定着することが出来た。(0.007%未満で)果たしてシリザ政権がEU連合を変化させているのか。EU連合がシリザ政権を変化させているのか。
確実にいまは、EU連合を、国際通貨基金・IMFや、世界貿易機構(WTO)のように考えなければならない。改革するのではなく、廃止しなければならない新自由主義的資本主義機構として考えなければならないと言う意味だ。

EU連合脱退は、英国労働者階級に害悪的であるのか

英国のEU連合残留を支持する左派達の二つ目の主張はこうである。
‘英国がEU連合を脱退すれば、英国人達はボリス・ジョンソン政府の慈悲に期待しなければならない。’ボリス・ジョンソンは、保守党政治家として2008年〜2016年5月、ロンドン市長を歴任した。この主張は、英国のEU連合脱退が、保守党に、その中でも脱退を強く主張するボリス・ジョンソンに、有利となるものだと言う意味だ。デービッド・キャメロン(保守党所属の現首相)や、ジョージ・オズボーン(保守党所属、現財務長官)に比べ、どうしてボリス・ジョンソンが特別にさらに悪徳だというのか、全く理解し難い。
英国の急進左派が小さな勢力であるのは事実であるが、そうであるからと言って、我々が保守党内の派閥争いで、どちらか一方の肩を持つほど、我々の期待水準を下げてはならない。それは、悲観論を新たな境地に引き上げるだけである。
英国の左派は、国内外で資本主義機構を弱化させ、国内では保守党の危機を深化させ、保守党内で増加する葛藤を利用しなければならない。


‘レクシト(Lexito−‘左派的'と‘脱退’の合成語)は労働組合に影響を与えた

こんな点で、左派的EU連合脱退を主張する連帯体‘レクシト(Lexito−‘左派的'と‘脱退’の合成語)が出帆し、国際主義の視角からEU連合に反対する勢力を糾合している事は、誠に幸いなことだ。
無論、‘Lexito’は、国民投票関連の論争で、主導的な勢力ではない。しかし、‘Lexito’の活動は労働組合と左派達の間で、論争を引き起こすのに一役買っている。
去る5月、鉄道・海運・交通労組(RMT)、鉄道機関士労組(ASLEF)、製菓食物労組(BFAWU)が共同発表した、極めて見事な声明書を見てみよう。その声明書は、左派的立場から、EU連合脱退に投票しようと訴える一方、こんな主張をした。
“英国独立党(UKIP)と異なり、我々は英国が孤立した島にならなければならないとは考えていない。英国は言うまでもなく多くの国の移民者の国だ。
我々はすべての者が賃金を平等に受け、職場で平等な権利を享受する事を願う。我々は英国の要塞化を支持せず、したがって欧州の要塞化も支持しない。
我々は、貧困と迫害と戦争を避け、故郷を離れた家族と子供たちの欧州入国が許されなかった現実に、悲痛さを感じるのだ。”
この言葉を、英国労総(TUC)の前委員長プレンド・バーバが、首相キャメロンと一緒に演壇に上がり、英国のEU連合残留を主張した事と比較してみよう。
(この演壇で)ブレンド・バーバーは、“英国がEU連合から脱退すれば英国労働者の賃金が削減されるだろう”と述べ、自分の組合員の賃金を攻撃している者と手を結んだ。これは、最悪の階級協調路線だ。
623日、国民投票の結果がどの様にでるか、‘Lexito’は、独立的で、国際主義的観点で、EU連合反対の主張を広げた事に自負心を持ってもよい。

(注)レーニン・トロツキーが、ヨーロッパ革命の展望の中で、‘労働者階級の権力に基づくヨーロッパ合衆国’を提起したが、EUを、それに置き換えるどんな可能性もない。