(韓国民衆言論・統一ニュース/対決にとらわれた朴槿恵大統領(3) 2016年10月10日)
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対決にとらわれた朴槿恵大統領 (3)
政府の資格を喪失した統一部対話を拒否、対北制裁を全面化し、韓半島の平和増進でなく緊張を高め、人道的水害支援を拒否した統一部は、南北関係発展基本法を蹂躙している
グヮク・ドンキ(韓国社会研究所常任研究員)
2007年10月4日、祖国統一のビジョンと経路を提示した第2次南北首脳会談の感動がまだ深く残っています。
(訳者注―ここで言う‘第2次南北首脳会談’とは、廬武鉉大統領と金正日委員長との間で、2000年6月13日から15日にかけて平壌で行われた首脳会談を指す。ここで、<10.4共同宣言>即ち
“北と南は、思想と制度の相違を超越して北南関係を相互尊重と信頼の関係に確固と転換させていく”ことを合意した。今、朝鮮政府は、この合意―<10.4共同宣言>に基づく協議を呼びかけているが、パク・クネ政府はこれを拒否し、米帝国主義者とともに、朝鮮半島の核戦争危機を煽っている。)
しかし、それから9年が過ぎた今、現実は生易しいものではありません。特に今年、朴槿恵(パク・クネ)政府の対北政策は、南北関係を破局に駆り立てたと考えられています。
韓国社会研究所は10.4宣言9周年を迎え、'朴槿恵(パク・クネ)政府の対北政策の問題点'というタイトルで次のように三度にわたって連載したいと思います。
1. 対決にとらわれたパク・クネ大統領(前々回―当サイト参照)
2.朝鮮の崩壊だけを追った、外交・国防部(前回―当サイト参照)
3.政府の資格を喪失した統一部 (今回)
3.政府の資格を喪失した統一部南北対話と、南北関係を担当する<統一部>の役割を完全に否定したパク・クネ政権
今年に入って、南北関係が完全に破綻したのは、南北関係主務部署である統一部の責任が大きい。今、パク・クネ政府は南北関係、国家安保のすべての問題を、朝鮮の責任にしているが、これは南北関係の主導権を握っていないと言う事を自ら認める姿です。
大韓民国が、憲法に明示した'平和統一'原則は、朝鮮が核開発をしない時にのみ適用されて、朝鮮が核を開発すれば自動的に廃棄される'条件部の原則'ではありません。
韓国政府次元の平和統一原則は、1972年7.4南北共同声明に遡ります。この40年間、韓国政府は、朝鮮との平和統一原則に合意しており、今でも、韓国政府の公式統一政策である民族共同体統一案は、自主、平和、民主を統一の原則として提示しています。
歴代政府が、南北対話と南北関係を担当する主務部署として、<統一部>を構成した事も、南北関係の発展を中断なく推進しなければならないと言う、内外の厚い熱気を無視出来なかった為でした。
ところが、パク・クネ政府は、表向きには、朝鮮を対話の場に導いて南北関係の信頼を回復すると言ったのですが、実際には、朝鮮の核活動を口実として、対決を全面化しました。そしてその前面には、南北関係を担当するという統一部がありました。
● 青瓦台(パク・クネ)の一言で、ホン統一部長官はケソン(開城)工団を中断した
統一部のホン・ヨンピョ長官は、朝鮮が4次核実験を断行した1月であっても、“開城工団が、南北関係で占めている明確な位置があり、そんな事が、あまねく理解された為、この間の国連制裁にもかかわらず、開城工団が国際的な共感の中に運営がなされた”のだと言い、開城工業団地の特殊性を取り上げ、安定的運営に重点を置くと明らかにしました。
しかし、長官は、 パク・クネ大統領が2月10日、ケソン工業団地の全面的稼動中止を決定すると、自分の発言を覆して、大統領府にそのまま頭を下げました。
更に、ホン長官は2月14日、<KBS>に出演し、“ケソン工団に流入した金の70%が、党書記室に上納され、書記室や39号室(訳者注―南朝鮮や米帝国主義者が捏造した、朝鮮の‘外貨獲得機関’と称するものを指す)に入って行く金は、核やミサイル、治績事業(政治宣伝事業)、奢侈(しゃし)品購入などに
ホン・ヨンピョ長官は“懸念があるという点で申し上げたのであり、具体的な証拠資料はない”、根拠のない主張であることを認めながらも、開城工団稼動停止の立場を明確にしました。
ホン・ヨンピョ長官が、果たして統一部長官なのか、総合編成メディアに出演する放送関係者なのか、分からなくなる状況です。
一介の省庁の長官が、南北関係を完全に覆す事が出来る爆弾発言をしたのですが、その証拠資料を提示しませんでした。
“証拠をお話し申し上げる事は出来ない"と言うのではなく、"証拠資料はない"のであり、自分の主観的見解であることを認めたものです。これは結局、統一部長官が、南北関係を人質として、青瓦台(大統領府)の立場に盲従孟洞したものです。
開城工団を一方的に稼動中断した結果がどの様に、なったのでしょう?我が政府の開城工団の稼動停止に対して、朝鮮は、南北経済協力合意を全面的に無効化し、ケソン工業団地を閉鎖しました。統一部が3月10日に明らかにしたところによると、朝鮮側地域に残っている南側の資産の総規模は、1兆4287億ウォンと申します。朴槿恵(パク・ク)政府の開城(ケソン)工業団地の稼動中止の決定が、朝鮮に対抗するどころか、かえって韓国企業だけを懲らしめる格好となりました。
●対決の前面に乗り出したホン・ヨンピョ長官
ケソン工団中断の事例に見られるように、統一部の南北対決の攻勢の前面には、ホン・ヨンピョ統一部長官がいました。彼は、統一部の年頭業務報告の席で“今は、私達がすべての力を合わせて、朝鮮が非核化の道に入ってくるように、予め確実に圧迫をしなければならない時"として、朝鮮への圧迫に乗り出すことを明確にしました。
ホン・ヨンピョ長官は、4月21日の記者懇談会でも、5月6日に開かれた朝鮮労働党第7回大会について、“政権維持のため、無理に開催するもの"とし、“朝鮮が考える出口だと考えられるようですが、党大会が、朝鮮には薬ではなく、毒になることもあると思う。"と攻撃しました。過去、ケソン工団資金の発言と同様で、これも、何の根拠もない、長官個人の見方でした。
ホン・ヨンピョ長官は、この様に、南北対話の可能性を自ら遮断する発言を続けて、統一部長官としての職務遂行の可能性を、完全に霧散させました。
●一切の南北対話を無視
統一部は、自らが南北対話の可能性を作っていく努力は言うまでもなく、北の‘ 民族的大会合を向けた連席会議開催’の提案まで拒否した。
この6月27日、朝鮮政府が、8.15を前後し、南北と海外の政党や団体、主要人事らが参加する、民族的大会合を向けた連席会議を開催しようと提案しました。
参加者と議題に事前前提条件をつけ、政治攻勢をかけないで議題を開いておいて虚心坦懐に会って、対話で葛藤を解決しようという朝鮮政府の提案は,むしろ南北関係発展を担当する統一部が朝鮮に先立ち、まず提案しなければならない議題です。しかし、統一部は"朝鮮の合同会議の開催提案は,過去から繰り返してきた典型的な統一戦線攻勢"として、朝鮮の連席会議の提案を拒否しました。
朝鮮が8月15日、“統一の大通路を切り開いて行こう”と、南北対話を提案したときにも、統一部は再び、“危機の本質を度外視した統一戦線戦術による欺瞞戦術”として、朝鮮政府の南北対話の提案を一蹴しました。統一部は“政府は、朝鮮が核保有国という妄想から脱して、繰り返された核実験が自滅に行く、誤った選択ということを身に沁みて感じざるを得ないように、国際社会とともに、強力な制裁と圧迫を推進していく"と強調しました。こんな態度であれば、南北対話を主管する統一部なのか、軍事対決を主管する国防部なのか、分からなくなる状況です。
統一部は、9月9日、朝鮮の5次核実験を契機に、“国連安保理決議と独自制裁を徹底的に履行"して行くとしました。さらに、"(朝鮮が)民間団体を対象に、統一戦線を策動する場合、'非核化最優先'の立場を堅持しながら、断固として対応"すると強調しました。これは、朝鮮と対話を絶対にしないという意志を明らかにしたものです。
さらに、9月19日、北朝鮮で大規模な水害が発生した時も、統一部は"北朝鮮の要請があっても、現状況ではこれ(水害支援)が行われる可能性は、少し低いと見ている。"と、人道的レベルの水害支援さえ無視しました。過去の保守政権でも実行してきた事さえ、すべて無視したのです。
●余った予算
南北関係の正常化の為に、何もしなかった‘統一部’には、予算が必要でなかったから?
統一部は、言葉の攻撃だけ熱心だっただけで、実際に実行した仕事はありません。民主党キム・ギョンヒョプ議員は9月23日、定期国会報道資料を通じて、統一部が南北関係正常化など、3つの大課題、離散家族などの人道的問題解決など、12の細部課題を、大統領の公約と国政課題事業として推進してきたが、ほとんど事業の執行率が半分以下だったと批判しました。
金議員室の分析によると、統一部は、政府発足初年度の2013年から関連予算を毎年920億ウォン、3,300億ウォン、5,200億ウォンに増額編成したが、各470億ウォン(51%)、1,700億ウォン(50%)、2,200億ウォン(42%)だけを執行したものと集計されたということです。大統領の公約と国政課題事業さえ、きちんと執行しなかったのであり、‘ぶらぶら怠けた’と言う事なのです。
● <実定法>に違反した統一部長官は解任すべきだ
対話を拒否し、対北制裁を全面化し、韓半島の平和増進でなく緊張を高め、人道的水害支援を拒否した統一部は、 南北関係発展基本法を蹂躙した。
これは、平和統一を明示した大韓民国の憲法と、その下位法案である南北関係発展基本法に違反したものです。南北関係発展法には、南北関係発展に向けた政府の責務に、韓半島の平和増進、南北経済共同体の具現、民族同質性の回復、人道的問題の解決、対北朝鮮支援を提示しています。
ところが、パク・クネ政府の統一部は、対話を拒否し、対北制裁を全面化し、韓半島の平和を増進したのではなく、緊張を高めました。
開城工団を一方的に稼動中断して、南北経済共同体を具現したのではなく破壊しました。北朝鮮水害支援さえ無視して人道的問題や対北朝鮮支援も背を向けました。結果的に統一部、そしてホン・ヨンピョ長官は、南北関係発展基本法を深刻に違反したものです。
キム・ジョンス<共に民主党>統一専門委員は、政府組織法によると、統一部長官は、“統一及び南北対話・交流・協力に関する政策の樹立、統一教育、その他に、統一に関する事務を管掌”するように規定しているが、ホン・ヨンピョ統一部長官は、南北交流協力を遮断して‘反統一'の先頭に立っていると評価しました。彼はホン・ヨンピョ長官が解決しなければ、自ら長官職から退かなければならないと主張しました。
すべての部署は、自らの職能があります。統一部は、南北関係を担当する部署として、民族の念願事業である統一の環境を造成し、作っていく役割を果たす部署です。
しかし、朴槿恵政府において統一部は、統一の環境を整えるどころか、先頭に立って破壊する行動で一貫しました。統一部が反統一に乗り出せば、乗り出すだけ、民族の念願事業である平和統一は、それだけ遠くなります。
統一部の対決政策の全面に立っていたホン・ヨンピョ長官は、解任されて当たり前だ。根拠のない主張で、南北関係を根こそぎ揺るがしており、南北経済協力に参加した企業に莫大な損害を与えました。彼が<南北関係発展基本法>という我が国の<実情法>までも破って、対北対決に乗り出した結果、今の南北関係は軍事的衝突が懸念される超緊張局面に入りました。統一部が反統一に乗り出すと言う逆説は、今や、直ちに中止されなければなりません。
(訳 柴野貞夫 2016年10月15日)
<関連サイト>
☆世界を見る−世界の新聞/対決にとらわれられた朴槿恵大統領(2) (韓国・統一ニュース 2016年10月5日付)
☆世界を見る−世界の新聞/対決にとらわれた朴槿恵大統領(1)(韓国・統一ニュース 2016年10月1日付)
☆北部朝鮮・豆満江沿岸で莫大な自然災害を受けた朝鮮に対する人道支援を (柴野貞夫時事問題研究会)
☆8・22に開始された米韓合同軍事演習は、主権国家への最も侵略的で挑発的な北侵略核戦争演習だ(朝鮮民主主義人民共和国・ウリミンジョクキリ2016年8月24日付)
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