(韓国民衆言論 労働者連帯207号 2017年5月10日付)
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右派は、1987年以来 最低の得票、最大票差で敗北 した
数多く人々が、朴槿恵政府下で行われた、腐敗スキャンダル、1999年以降最高値を記録した青年失業率など経済不況の深刻化、労働条件の悪化、サードの配置など親米外交政策、朝鮮制裁強化など、強硬一辺倒の対北政策などに反対した。
保守派―<自由韓国党>と<正しい党>は敗北した
19代大統領選挙と共に、朴槿恵政府が完全に退陣し、忌まわしい右派の10年執権が幕を閉じた。民主党候補の文在寅(ムン・ジェイン)が1342万票(41.08%)を得票して当選した。自由韓国党候補〈旧セヌリ党〉の洪準杓(ホン・ジュンピョ)は785万票(24.03%)を得票した。右派は1987年の大統領直選制が初めて導入されて以来、最低得票、最大票差(557万票)で敗北した。
今回の大統領選挙の投票率は77.2%で、1997年の大統領選挙(80.7%)以来、20年ぶりに最も高かった。1997年は、36年ぶりに一党国家が崩壊、政権交代が行われた年だった。
数多く人々が、朴槿恵政府下で行われた、腐敗スキャンダル、1999年以降最高値を記録した青年失業率など経済不況の深刻化、労働条件の悪化、サードの配置など親米外交政策、北朝鮮制裁強化など強硬一辺倒の対北政策などに反対した。
洪準杓(ホン・ジュンピョ)は、大衆の変化の念願に、正面から逆らった。財閥の支援を強化し、労働組合を叩き潰し、力で平和を守ると言った。右派票を結集すると言う発想だった。
右翼の有権者たちは、洪準杓(ホン・ジュンピョ)の非倫理的発言に歓呼したが、この物差しは保守勢力からも完全に支持を得ることができなかった。柳承敏(ユ・スンミン)は、洪準杓(ホン・ジュンピョ)を“保守の恥辱”だとし、候補一本化を拒否した。<自由韓国党>に復帰した<正しい政党>の議員らは世論の非難を受けた。もちろん、柳承敏(ユ・スンミン)の‘改革的保守'は,洪準杓(ホン・ジュンピョ)の‘守旧保守'と大きく変わらない。柳承敏は確固とした新自由主義者で、朝鮮を‘主敵'強硬安保論者だ。
一方、今回の大統領選挙では‘理念論'(朝鮮を赤呼ばわりする伝統的な韓国保守派の手管)も力を発揮できなかった。サード配置論議、朝鮮を‘主敵'と考えるかどうかの攻防、宋旻淳(ソン・ミンスン)文書などは‘安保ブラックホール'として作用しなかった。
右派の策略に対する不信が強かったからだ。一部の進歩派たちが‘右派の従北派狩り’を過度に恐れたことが示されたくだりだ。すでに昨年の総選挙の際、蔚山(ウルサン)北区でも、右派候補の従北派狩りを労働者の有権者たちが軽く退けて進歩候補が当選した。
結局、‘国を売り渡しても35%の支持率は守る'とした汎右派・コンクリートの支持層は割れ、弱体化されて、右派は選挙で敗北した。洪準杓(ホン・ジュンピョ)と柳承敏(ユ・スンミン)の支持率は合わせてもおよそ30%だった。
右派の選挙の敗北は、早くから予見された。蝋燭運動の打撃を受けて、右派は萎縮し、自信が落ち、選挙で勝てないという敗北感が蔓延した。そこで、ここ数ヵ月間、右派候補らが明滅した。潘基文(パン・ギムン)は、右派の期待を受け、登板した一ヵ月も経たぬうちに、自ら降板した。黄教安(ファン・ギョアン)は、最後まで様子窺い作戦を広げ、出馬を放棄した。
文在寅(ムン・ジェイン)政府の、当選要因と直面する矛盾
文在寅(ムン・ジェイン)は、最初は、朴槿恵政権退陣を支持しなかった。文在寅(ムン・ジェイン)は、蝋燭運動が起こした弾劾台風のお陰で、大統領になった。昨年8月までは、ギャラップ調査で、文在寅(ムン・ジェイン)の支持率は16%だった。当時、1位は潘基文(パン・ギムン)だった(28%)。その後、朴槿恵(パク・クネ)-チェスンシルゲートが発生し、朴槿恵退陣運動が噴出し、状況が逆転した。潘基文(パン・ギムン)が、腐敗スキャンダル関与疑惑に包まれたうえ、政権交代を象徴する人物がいなかったからだ。新年の世論調査で、国民の80%が政権交代を支持した。
弾劾に賛成した政党候補者の、大統領選挙得票率の合計が、朴槿恵(パク・クネ)弾劾賛成率とほぼ一致する。弾劾賛成率は,着実に80%近くを維持した。弾劾に賛成した四つの政党―民主党・国民党・正義党・正しい党―候補の得票率を合わせれば、75.4パーセントだ。その中の国民党・安哲秀(アン・チョルス)と柳承敏(ユ・スンミン)は、労働者たちに、真情な政権交代候補とされなかった。
国民党・安哲秀(アン・チョルス)は、右往左往し、翼なく墜落した。(安哲秀が当初、<自由韓国党>と<民主党>の間に、支持基盤を置いて貰おうとしたこと自体が、政治的両極化の状況に対する無理解を反映している。)柳承敏(ユ・スンミン)は、朴槿恵(パク・クネ)弾劾に賛成しても、積弊勢力の一部だった。<正義党>のシム・サンソン候補は、まだ当選可能な候補と考えられなかった。(それでも、200百万人以上が、沈候補に投票したのは、大衆の変化への熱望が大きいと言うことを示している。正義党の成績は後に詳しく取り上げたい。)
それで、多くの労働者達は、政権交替を遂げることが実現可能な候補として、文在寅(ムン・ジェイン)に投票すること以外は、他の道理がないと感じた。
▲“弊害の清算”の門か、“統合”の門か(写真の出所korea.net)
蝋燭運動に対する文在寅の小心さが、“弊害の清算”の範囲と水準を規定する
文在寅(ムン・ジェイン)は、蝋燭運動の政治的恩恵者だったが、最初には、朴槿恵政権退陣を支持しなかった。代わりに朴槿恵(パク・グンヘ)2線後退と挙国中立内閣構成を要求した。11月12日、民主労総が主導して、100万人がソウル都心でデモを繰り広げた後の11月15日に、初めて、文在寅(ムン・ジェイン)は朴槿恵退陣に言及した。10月29日、最初の退陣運動が起こってからおよそ17日が過ぎた後だった。民主党が国会で朴槿惠(パク・グンヘ)を弾劾することにしたのは12月3日、実に230万人が、全国主要都市の街頭デモに乗り出した後の12月8日だった。しかも、鉄道スト終了を前提にした決定だった。この時まで、下からの退陣運動に主導権を奪われた民主党は、弾劾案可決という議会の手続きに移りながら、政治的主導権を握るようになった。
蝋燭運動に対する文在寅(ムン・ジェイン)の小心さが、文在寅(ムン・ジェイン)の“弊害の清算”の範囲と水準を規定する。彼の“弊害の清算”には、蝋燭運動の要求がほとんど反映されていない。事実多くの事案で、文在寅(ムン・ジェイン)は2012年の大統領選挙の時より後退した。文在寅(ムン・ジェイン)が保守票を得ようと安哲秀(アン・チョルス)と右傾化競争をしたため、さらにそうなった。だから、文在寅(ムン・ジェイン)政府は進歩政府ではない。
文在寅(ムン・ジェイン)はサード配備に賛成した大統領候補・安哲秀(アン・チョルス)の母体<国民党>に、“根は同じ政党だから、もっと特別な協力を望む”と言った。<朝鮮日報>が、文在寅(ムン・ジェイン)政府を“進歩政権”と呼ぶのは、見る目が可笑しい。何処を見て、文在寅(ムン・ジェイン)政府が、労働者と、無視された他の人たちの変化の願いを代弁する政府という話なのか。
文在寅(ムン・ジェイン)が政権獲得に成功したが、その政府の前には深刻な構造的矛盾が置かれている。まず、悪い経済状況が文在寅(ムン・ジェイン)政府の身動きの幅を制約するだろう。家計負債の急増、高い青年失業、実質賃金の下落などによる大衆の不満が大きい。
しかし、企業主たちは利益を守るために、労働階級を攻撃するように文在寅(ムン・ジェイン)政府を圧迫するだろう。それで親民主党改革言論である<ハンギョレ>は、‘統合政府は選択でも,協治は必須'だと注文する。
文在寅(ムン・ジェイン)も当選するや、国民党に手を差し出した。“根は同じ政党だから、もっと特別な協力を望む。”と。朴智元(パク・チウォン)も協調する意思を表明した。
訳者注―10日、韓国<世界日報>紙は、ムン・ジェインが、国民党大統領候補・安哲秀(アン・チョルス)を出した・<国民党>代表の朴智元(パク・チウォン)を訪問し、“民主党と国民党は、別の道を歩いているが、根は同じ政党だからもっと特別な協力を期待してやまない”、“国民党の同志的姿勢と協力を求めたい”と呼びかけたと伝えている。)
さらに、朴映宣(パク・ヨンソン)統合政府推進委員長は、<正しい党>にも手を出している。“<正しい党>に所属した議員でも個別的に改革アジェンダに同意すれば、(内閣に)任命されことができる。”
このような“協治”は、そうでなくとも見苦しい“弊害の清算”を、もっと見苦しくしたのだ。結局、文在寅(ムン・ジェイン)は‘改革のない改革主義政府'、‘改革を再び奪う改革主義政府'になるだろう。この点は<労働者連帯>新聞がこれまで繰り返し警告してきた。
東アジアの緊張高潮状況も、文在寅(ムン・ジェイン)政府を圧迫するだろう。文在寅(ムン・ジェイン)は、朝鮮核プログラムに強硬な態度を見せているトランプを相手にしなければならず、サード配置問題で冷却していた中国との関係も解決しなければならない。決して容易ではない課題だ。かつて、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は“親米的な自主”という矛盾した話をし、米国と中国の間で綱渡りをするが、結局、韓国支配階級の伝統的外交政策である韓米同盟体制を支持した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)は、在韓米軍の'戦略的柔軟性'を認めて、韓米FTA交渉を開始した。
<正義党>シム・サンジョン候補が、進歩政党史上最多の得票(200万)を獲得
正義党(訳注―旧民主労働党→統合進歩党の流れ)のシム・サンジョン候補は、<辞表論理>にも拘らず、およそ二百万7千4百58票(6.17%)を得票した。進歩政党で最多の大統領選挙得票だ。2002年の大統領選挙で權永吉(クォン・ヨンギル)当時、民主労働党の候補が得た95万7048票(3.9%)より倍以上に増えたのだ。
選挙終盤に、沈(シム)候補の人気が沸きあがり、思ったよりずっと期待を高めた一部の正義党支持者たちは、失望感を示しているようだ。しかし、洪準杓(ホン・ジュンピョ)が文在寅(ムン・ジェイン)を、“親北朝鮮左派”(!)と非難するほど、韓国の公式の政治地形は右傾化されている。さらに、民主党は“正義党支持は次の選挙にしてもよい”、と<辞表論>を刺激した。それでも、2百万人が正義党に投票したのは、大衆の進歩念願の強力さを見せてくれる。
だから、“今回の選挙は、私たち正義党の新しい跳躍の契機になるだろう”という沈(シム)候補の言葉が、より現実に合致して見える。出口調査結果が10パーセントに満たないことが発表されるや否や、3時間30分間に、4千人が1億5千万ウォンを超える後援金を党に送った。
民主労総が評したように、沈(シム)候補の“躍進”は、“進歩政治の地盤を大きく拡張”した。蝋燭運動が非常に大きかった御蔭で、正義党が、民主党の左から選挙的突破口を出すことができた。過去の大統領選挙で進歩・左派候補は、悪意的に無視されたり、有力候補らの報道後に“一方、000候補は〜した”と言った様に扱われた。それで“一方”候補という自嘲の混じった冗談もあった。しかし、今度はマスコミらも、沈候補を無視することが出来なかった。
‘労働’を掲げた沈候補の選挙成績は、進歩・左派陣営内で流行する労働運動孤立論や、進歩政治(政党)'危機論'が杞憂であったり、錯覚であることを示している。<正義党>が今回の大統領選挙で突然浮上したわけではない。朴槿恵(パク・クネ)政府の下で、労働者たちが少しずつ抵抗を建設しながら、その政治的な表現で、<正義党>支持が増えた。そのため、昨年4月の総選挙で<正義党>が相当前進した。
▲“進歩政治の地盤を拡張”した、シム・サンジョン正義党候補(中央)(チョスンジン)
跳躍のきっかけ
退陣運動過程でも、<正義党>が進歩・左派の中で最も大きな得をみた。その弾力で、シム・サンジョン候補が“労働”を強調し、大統領選挙に出馬した。
シム・サンジョン候補は、洪準杓(ホン・ジュンピョ)[<自由韓国党>の柳承敏(ユ・スンミン)と同じ、セヌリ由来の<正しい党>]の、親市場労働組合の敵対政策を強く批判した。それと同時に、民主党の中途半端、小心な中道政治の問題点を掘り下げた。文在寅(ムン・ジェイン)の増税のない福祉を暴露した。同性愛嫌悪感を示した文在寅(ムン・ジェイン)を鋭く批判した。
まさに、このような諸点が、沈(シム)候補の人気を上乗せした。世論調査によると、シム候補は労働-20代-女性の間で特に人気があった。沈(シム))候補の最後の遊説のテーマも、青年と労働だった。“青年たちが、再びよみがえる、労働が,堂々とした大韓民国をために,憚りなく駆けつけ様。'
<正義党>は民主党政権に参加してはならない
<正義党左派>は、党指導部の共同政府参加に命がけで反対し、党の外で行われる労働者たちと、無視された他の人たちの闘争に参加しなければならない。
魯会燦(ノ・フェチャン)<正義党>議員は、<正義党>本部を訪問した文在寅(ムン・ジェイン)に、“協力を惜しまない”と約束した。<正義党>指導部は、協力の媒介の輪で、おそらくドイツ式政党名簿比例代表制と決選投票制の導入を念頭に置いているようだ。
これは労働者階級の政治勢力化に向かう法である。既成政党は、進歩政党の院内進出を防ぐため、この法の導入に消極的だ。しかし、これが民主党との協力を正当化できるほどの重大な問題なのか。
これと似たような状況が2004年にあった。当時、<民主労働党>は総選挙で10議席を獲得した。民主労働党議員団は、‘4大改革立法'現実化の為に、国会内で、ヨルリン・ウリ党(民主党の前身)と同盟した。この過程で、民主労働党議員団は、ヨルリン・ウリ党の改革回避の試みに沈黙したり、“ヨルリン・ウリ党より、ちょうど、指一寸出ていただけ”(<毎日労働ニュース>2007年1月23日分)だった。
そのため、“ヨルリン・ウリ党に対する膺懲(ようちょう-こらしめ)の次元"から、民主労働党を支持した人たちに、投票の動機を付与しなかった。その結果、ヨルリン・ウリ党、ハンナラ党の両党の政治体制をむしろ強化させる結果を生んだ。
一方、<正義党>シム・サンジョン候補が, 文在寅の民主党政府と共同政権構成の意思を明らかにしたことは心配される。<正義党>が、共同政府に参加するなら、民主党の下位パートナーとして参加することだ。
民主党政府は、遠からず、改革の約束を裏切って労働者を攻撃するだろう。この時、<正義党>が共同政府に参加しているなら、裏切りの責任を一緒に負うことになるのだ。
昨年11月、<正義党>指導部は、野党勢力の協力に自らを緊迫し、<民主党>、<国民の党>とともに、鉄道スト終了を勧めたことがある。<正義党>の共同政府参加は、労働者階級の手足を文在寅(ムン・ジェイン)政府に縛っておいて、労働者たちが自分たちの真の力を発揮することを防ぐ役割を果たす事となるだろう。
“弊害の清算”と、改革立法を勝ち取るための唯一効果的な方法は、文在寅(ムン・ジェイン)政府に幻想を持たず、彼に徹底的に立ち向かって戦う事にある。この様な、一貫した闘争を通じて、労働者の意識が進歩化すれば、<正義党>が成長する可能性も大きくなる。逆に、闘争が低迷し、大多数の労働者たちが士気を低下され、方向感覚を失うことになれば、<正義党>の成長にとっても否定的だろう。
<正義党左派>は、党指導部の共同政府参加に命がけで反対し、党の外で行われる労働者たちと、無視された他の人たちの闘争に参加しなければならない。
<関連サイト>
☆531 総選挙結果が見せてくれたもの(韓国・労働者連帯 2016年4月15日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_531.html
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