(民衆闘争報道/ 4・15総選挙の評価<その3> 韓国・チャジュシボ(自主時報) 2020年4月19日付)
http://www.jajusibo.com/50237
韓国・4.15総選挙の評価 <その3>
[時事研編集部 注]
南朝鮮の民衆言論「自主時報」が発表した「4.15総選挙の評価」は、日本の言論界に出回る、「韓国国民が、ムン・ジェインの新型コロナウイルス対策を評価した結果である」とする低次元の政治分析とは、大きな隔たりがある。この論考は若干長文の為、4回に分けて、その訳文を日本の読者に提供するものである。
▲(上写真)羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン )/黄教安(フアン・ギョアン) ― 親米・親日・積弊・極右・反北対決勢力である、「未来統合党」を主導して来た、院内代表のナ・ギョンウォンと、党代表のファン・ギョアン(黄教安
) は、民衆の審判を受け、そろって落選した。
▲(上写真)ソン・ヨンギル<共に民主党>議員は、2019年3月13日、連合インポネックスが主催した「北韓経済開放と南北経済協力の期待効果」と言うテーマの「第6回統一金融カンファレンス」の祝辞で、“韓国経済にこれ以上、ブルーオーシャンを探す事は難しく、南北経済協力が「北(北)ルーオーシャン」になることができるだろう」と主張した。[資料写真]宋永吉ブログ
(ロ)没落した家に現れた諸現象
この様な理由から、保守積弊勢力が万能薬の様に活用した二大柱である、親米・親日反北対決安保論、依存成長経済論は破産した。柱が消えれば、家は崩れるに決まっている。保守積弊勢力が今回の総選挙で見せた姿から、これを確認する事が出来る。
第一に、(彼らは)代案を提示する事が出来ず、ネガテイブにぶら下がった。
自身の主力政策が全て崩れた条件で、きちんとした政策や、代案が出る事はない。そうであれば、ひたすら、政府与党を攻撃するネガテイブ選挙にだけ、ぶら下がる事となる。ファン・ギョアン(黄教安)が、<民富論>と言う経済政策を出したが、過去の政策の二番煎じと言う批判だけ受けて、誰も眼中になかった。
コロナ19事態と関連して、減税政策などを話したが、これもやはり、以前から主張した新自由主義政策の延長に過ぎず、注目を受けなかった。だから、偽ニュースと強弁、歪曲、陰謀論等を動員した、政府与党攻撃にぶら下がった。
保守反北積弊勢力である<未来統合党>イ・ジュンソク最高委員は、17日、KBSラジオに出演して,政府与党を攻撃する選挙メッセイジが、戦略的に適切でなかったと言う指摘に対し、“汝矣島(ヨイド)研究院(訳者注―<未来統合党>傘下の政策研究集団である)から、ちゃんとしたものを握らせてくれなかったから、こんなものがでてきたのではないか”と嘆いた。党(未来統合党)が、しっかりとした政策代案を作成出来なかったと言うものである。勿論、本人も、そんなものは提示していなかった。<未来統合党>を含め、保守積弊勢力内では、誰も、まともな政策代案を出せなかった。
保守積弊勢力を代弁する<朝鮮日報>も、17日の分析記事を通じて、<未来統合党>が、代案政党として位置付けする事に失敗したと、指摘しながら、“党内でも‘今回の選挙過程で、脱原発・所得主導成長論(所主成論)の廃止を主張したが、具体的な代案提示には失敗した’と言う自省の声がでている”とした。(キム・ヒョンウオン、「“いまも、保守が多数だと錯覚、・・・強硬支持層に振り回され、中道層を失う”」朝鮮日報2020.4.17)
そうであれば、もし未来統合党が時代の変化を反映して、南北協力、平和安保経済主張したなら、どうなるだろうか。 恐らく、国民は、‘未来統合党が南北協力を主張、ふざけている。ペテンに罹っても騙されない’と言う反応を見せただろう。そして、‘南北協力、平和経済、こんな事は民主改革勢力が、もっと良くするだろう’と考えて、民主改革勢力をもっと支持する事となる。即ち、平和統一へフレイム(枠)を移しても、保守的積弊には依然として不利である。だから、未来統合党は、南北協力、平和安保経済を話すことは出来ない。無論、過去地方選挙で、カンウオンドウ(江原道)知事候補が南北経済協力を主張した様に、部分的に出てくることはあっても、中央党次元の政策代案としては提示することは出来ない。
第二に、分裂と葛藤、対立が深刻だった。
良く、‘保守は腐敗で滅び、進歩は分裂で滅ぶ’と言うが、保守が分裂しない理由は、うまく行ったからだ。保守は、富貴榮華を占めようと団結した利己主義に基づく集団だ。その間には、富貴榮華が目の前にあるから、それを占める為に分裂をしないのである。
しかし今、宴会は終わった。富貴榮華は、これ以上保証されない。だから、団結する理由がない。今回の総選挙で、公認葛藤が深刻だった理由がここにある。未来統合党と未来韓国党の指導部は、互いに自分の人間を公認しようと、餅をひっくり返す様に、公認結果を覆し、情けない姿を見せた。
パク・ソンミン代表は、“2016年の公認が、最悪の公認であると思ったのに、2020年が、最悪の公認だ”と話した。分裂と葛藤、対立は、一時的なものではない。保守積弊勢力が没落する過程で、絶える事無く繰り返される事である。
第三に、人材が消え、ネット右翼の巣にたむろする人物が取って代わる。
滅びゆく家の中に、人材が集まる理由がない。未来統合党は、もう少し早めに、人材迎え入れ(リクルート)試み、ペク・ジョンウオン、イ・グックジョン、カン・ヒョンウク、パク・チャンホ、キム・ヨンアンなど、有名人達を野心的に挙げた。しかし、全て拒否した。守旧派の間抜けのイメージに加え、滅びゆくまでする政党に入って行く理由も無く、自分達自身が主導して、党を生かすことが出来る可能性も無いからだ。
結局、パク・チャンスの様な極右馬鹿だけが入って行った。今回、当選した人物達をみて見ても、テグ・キョンブク(慶尚北道大邱市)地域に、グアク・サンド、チュ・ホヨン、キム・ヨンフアン、キム・ソッキなど、ソウルのテクミン(太救民―訳注・「脱北した住民を救済する」と言う意味をふくんでいる)であるテ・ヨンホ(訳注・朝鮮在イギリス大使館公使から南朝鮮に「脱国」した)や、ペ・ヒョンジンなど、二番手と言われたら悔しい極右馬鹿どもで溢れている。保守側に、希望的な人物だと言える者はいない。
今後も、未来統合党の人的構成は、ますます極右、惨めな馬鹿化、イルベ化(訳注―韓国版ネット右翼の巣と呼ばれる電子掲示板サイトを指す。日本で言えば、ヤフーサイトに近い)していくのだ。オ・セフン、チョン・ビョングック、ユ・スンミン、パク・ヒョンジュンなど、中道のイメージ、保守の外縁を広げる人物達は影響力を失って委縮するだろう。
(ハ)運動場(政治的地形)が逆に傾いた
保守積弊勢力が、安保と経済を柱として来たとすれば、民主改革勢力は、民主、改革、福祉を伝統的に掲げて来た。ところが、今はこれに加えて、安保も経済も、自分の武器として活用する事になった。民主改革勢力は、安保の領域では南北関係の改善に基づく平和安保を、経済的領域では南北経済協力に基づいた平和経済を代案として提示しているが、かなりの国民的支持を得ている。安保と経済の領域でも、今、民主改革勢力が主導する形勢となった。
この様になったのは、運動場(政治的地形)が逆に傾いたからだ。これまでは、保守積弊勢力に有利に運動場が傾いていたので、民主改革勢力は何をしても飲み込まれた。しかし今は、運動場が反対に傾いた。保守積弊勢力は、何をしても飲み込まれる一方、民主改革勢力は極めて有利な条件を占める様になった。言い換えれば、韓国社会の政治地形が、完全に変わった。
昨年11月、不出馬を宣言したキム・セヨン未来統合党 公薦管理委員は、“党が、世上が変わった事が分からず、過去に安住”したと叱咤した。世の中が変わったと言う事だ。前の朝鮮日報の記事も、“我が社会の理念地形が変わり、今は、保守より進歩層が厚い時代を迎えた。”と分析した。パク・ソンミン代表は、“理念地形自体が、全て負けた事態で、保守が未だ主流であると錯覚するのが、最も深刻な問題だ”と指摘した。
韓国社会の政治地形の変化、これが今回の総選挙に基本的な影響を及ぼした。そして今後も継続的に影響を与えるものである。(続く)
(訳 柴野貞夫)
|