(民衆闘争報道/ 4・15総選挙の評価<その5> 韓国・チャジュシボ(自主時報) 2020年4月19日付
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韓国・4.15総選挙の評価 <その5>
[時事研編集部 注]
南朝鮮の民衆言論「自主時報」が発表した「4.15総選挙の評価」は、日本の言論界に出回る、「韓国国民が、ムン・ジェインの新型コロナウイルス対策を評価した結果である」とする次元の政治分析とは、大きな隔たりがある。この論考は若干長文の為、5回に分けて、その訳文を日本の読者に提供するものである。
3、民衆党(訳注―前統合民主党)
(1)民衆党は、応分の成果を得られなかった
民衆党は21代総選挙で、比例得票率1.05%にとどまり、地域選挙区でも全て落選し、院内進出に失敗した。最も基本的な要因は、政策的方向を間違ったと言う点だ。
民衆党は、今回、多くの分野別政策を発表したが、最も代表的政策として近づいたのは、‘富と貧困の親譲りを終わりにしよう’と言うスローガンだ。これと関連した公約としては、●30億の相続・贈与の上限制で、不労所得の返還、●総合不動産税の強化、金融所得総合課税の強化●ペーパーカンパニーの規制強化―などがあげられる。
この様な代表政策は、韓国社会の当面する課題、民衆の切迫した要求に合わなかった。今回の総選挙で、民衆が最も強力に要求したものは、保守積弊の清算だった。これは選挙結果にも表れている。圧倒的多数の国民が、保守積弊清算に票を投じた。
4.19革命(訳注―1960年3月に行われた第4代大統領選挙における不正選挙に端を発した、学生、市民による民衆デモにより、第四代韓国大統領・李承晩が米国に逃亡した事件を指す。)直後を除外すれば、この様に圧倒的な選挙結果はなかった。そして、当然な話であるが、保守積弊清算に票を投じた国民の大多数は労働者民衆だ。
労働者民衆が別に居て、国民が別に居るのではない。民衆党が労働者民衆を代弁する党であれば、当然、国民が最も切迫して要求した保守積弊清算を前面に、第一政策として掲げなければならなかった。結果的に、民衆党は今回の総選挙で、労働者民衆の要求を代弁しなかった。これは総選挙の結果に関して、国民が勝利を語り、喜ぶとき、民衆党が共に喜ぶことが出来ない現実でも確認することが出来る。国民は、国民が喜ぶとき、共に喜ばない政党を、自分の党として、自分を代弁してくれる党として、考える事は出来ないであろう。特に、民衆党の一部で、保守積弊清算を掲げた自党候補を問題視する現象もあるが、これは極めて深刻な反民衆的態度として批判を受けるであろう。
(2)有意義な現象もあった
先ず第一に、今回の総選挙で、民衆党に関して、最も多くの国民に影響を与えたものは、イ・ジョンヒ全統合進歩党代表の動画だった。4月8日民衆党ユーチュウブに上がったこの映像は、4月19日基準再生数12万3160回を記録した。
900回以上の応当は、大部分肯定的な内容だった。また、進歩、保守を問わず、相当数の言論がこの映像を紹介した。民主改革陣営でもこの映像を注目しながら、イ・ジョンヒ前代表が提示した‘全国民雇用保険制(失業給付)’を、肯定的に眺める反応が出た。これを通して、韓国社会で進歩勢力の代表政治家は、即ちイ・ジョンヒ前代表である事が確認された。
二番目に、民衆公薦制を通して、党の大衆的基盤を拡大する事が出来た。民衆党比例代表候補選出の為に、党員と各界各層国民、16万名が、選挙人団に参与した。16万選挙人団は今後も、民衆党を支持する貴重な資産となるであろう。
三番目に、民主労総と連帯を続けて行った。民衆党中央、地域、候補達と、民主労総傘下の多くの労組が政策協約をむすんだのであり、また候補らが、民主労総候補として名前を連ねた。
四番目に、一部候補らが保守積弊清算を前面に掲げて選挙闘争に乗り出した。‘未来統合党に投票するな’と言うプラカードを持った選挙運動員の写真などが、インターネット空間を巡りながら、民心の反響を引き起こした。釜山のイ・デジン候補は、唯一票でも、未来統合党候補を落としてやるのに使わなければならないと言う立場を発表し、投票用紙が印刷される前に辞退したが、インターネット空間でこの事由が回りながら、多くの共感を引っ張り出した。この候補達の活動は、韓国社会で真の進歩の道が何処にあるのか、民衆と共にある民衆党の姿がどうあるべきか、象徴的に見せてくれた。
▲ 江北区(ソウル特別市)民衆党・キム・ウンジン候補の代表公約 “未来統合党に投票するな”を掲げて運動する運動員たち
(3)課題
今回の総選挙を通して眺めまわすと、民衆党が今後、発展する為には、先ず民衆と疎通し民心を直ちに読む事が出来る指導力を構築しなければならない。そして民衆の要求を代弁する民族的で民主的な政策方向を確立しなければならない。
4.大進連(韓国大学生進歩連合)
▲上 写真 キム・ハンソン韓国大学生進歩連合(大進連)常任代表
キム・ハンソン代表は、2017年12月、統合進歩党の後身である民衆党に登録し、青年民衆党自主統一委員長として活動。2018年3月、大進連創立メンバーとして主導。米国が韓半島の平和統一を妨害している、不当な防衛負担金を要求していると、米大使館に乱入した。また、2019年4月、自由韓国党(現・未来統合党)ナ・ギョンウン議員の国会事務所を占拠した。
今回の総選挙は、民衆党対未来統合党の争いでありながら、また一つの軸として韓国大学生進歩連合(大進連)対、未来統合党の争いでもあった。大進連と未来統合党の争いは、全国的な影響力を与えた。
過去の選挙空間でも、多くの市民団体が政治活動をした。リングの内側で政党が争ったなら、リングの外側では市民社会団体が争った。これ等の活動は主として投票参加を督励する有権者運動、特定候補を落とす為の落選運動の形態だった。特に2000年16代総選挙を控えて、参与連帯、環境運動連帯などが主導して進めた落選運動は、市民社会団体の選挙参加活動で、大きな一角をなした。落選運動は、あらゆる政治家が緊張するぐらい、大きな影響力を及ぼした。
今回の総選挙も、リングの外で市民社会団体が多様な政治活動を行った。更には、保守積弊勢力も光化門集会を通して影響力を行使しようとしたが、何の影響も与える事は出来なかった。
安倍糾弾市民行動、4.16セウオル号惨事家族協議会と4月16日の約束国民連帯、蝋燭国会作成2020年総選市民ネットワーク、国会・国産化運動本部、光化門蝋燭連帯など多くの市民社会団体などは、?薦(推薦漏れ)・落選対象者リスト発表で、保守積弊候補達を落とす為の活動を有意義に展開した。地域次元でも、こんな活動が行われた。この中でも、大進連の活動が断然目立った。大進連は、落選対象者達を探し、積極的な声を出し、これをユーチューブやフェイスブック上にあげ、多くの国民の呼應受けた。大進連の活動は、言論でも良く登場し、市民は大進連会員らに食べ物を届けるなど支持を送った。
彼等の活動が、どれ程威力的だったのか、オ・セフン候補は、大進連を防いでくれない警察を糾弾する一人示威をしたし、ナ・ギョンウオン候補と未来統合党次元で、記者会見まで行った。キム・ジンテ候補は、大学生たちが現れたら遊説を中断し、派出署に逃げる醜態を見せた。チャ・ミョンジン候補は、フェイスブックに、自分も大進連の落選対象者だとし、“しかし、何故私の選挙運動は妨げないのか、私がそれだけ比重感が落ちると言うのか?”と、密かに残念がった。
多くの未来統合党候補らが、遊説中に大学生がちかずいてくると、お前は大進連か?と聞き、警戒したと言う。未来統合党選挙対策委員会の会議でも、大進連の活動が議題に上るほどだった。
▲大進連の落選運動は、未来統合党議員たちにとって、恐怖の対象だった
実際に、大進連が集中落選運動をした未来統合党の候補らの中で、オ・セフン、ナ・ギョンオン、ミン・ギョンウク、キム・ジンテ、ファン・ギョアンなど多くの候補が敗北した。この様に、大進連は、総選挙期間、リングの外で影響力のある活動を展開した。今回の選挙で新たに形成された注目すべき現象である。
(訳―柴野貞夫
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