(論考/米国と安倍政権は民族同士の対話に対する妨害策動をやめろ 2018年1月28日)
米国と安倍政権は民族同士の対話に対する妨害策動をやめろ(その1)
−北・南対話の前進を通して<韓米同盟>と<日米同盟>の崩壊を準備しよう
柴野貞夫時事問題研究会
● 1.9北・南高位級会談3点合意を出発点に、北南統一への対話を前進させなければならない。米国に対する抑止力を持った朝鮮との共助こそ、朝鮮半島の恒久平和の道。
● ムン・ジエインは、「北南対話」は、「北を非核化に向けた交渉のテーブルに着かせる事を目的とする」と、横槍を入れる米国の意向に振り回されてはならない。
● “核放棄を認めない北朝鮮と断交せよ”と、世界行脚する安倍と河野の悪行は、「北南対話」の破壊を狙う悪質極まる戦争行為だ。
● <朝鮮半島とその周辺の全ての核の放棄と検証>を、<北の核だけの放棄と検証>にすり替えて来た、日・米・韓と、資本主義言論媒体の欺瞞を糾弾する。
● 「北南対話」と、「五輪後の韓米合同軍事演習」の再開は、絶対に相いれない。
● <五輪休戦>の背後で展開される、日米の戦争準備と制裁・圧迫策動を糾弾する。
● <互いの思想と制度を尊重し、その基礎の上に、連邦制方式よって国の統一を指向して行く>とする6.15共同宣言と10.4宣言の意思に基づく、南北統一への対話は、朝鮮半島と東北アジアの核戦争を呼ぶ、<韓米同盟>と、<日米同盟>を解体する歴史的動力となる。
第72回国連総会における、相反する二つの演説−安倍晋三とキム・ヨナ氏
2017年9月19日、第72回国連総会で、“腐敗した、ならず者の独裁国家”“殺人政権”と、イランと朝鮮を名指しし、“やむを得ない場合は朝鮮を完全に破壊する”と述べたトランプは、日本とイスラエルを除くほぼすべての加盟国から、「国連を破壊するヘイトスピーチ(憎悪表現)」、「国連を、他国に対する脅迫の舞台に利用している」と非難された。
翌20日、この同じ場で、トランプの朝鮮に対する核戦争による破壊宣言を、<100%支持する>と言った安倍は、6か国協議と朝・米協議の歴史を歪曲捏造し、“朝米枠組み合意を破り、9.19合意を踏みにじり、軽水炉を盗み取ろうとした朝鮮との対話はあり得ず、更なる制裁と圧力を加えるべきだ”と演説した。
この安倍の、捏造した欺瞞を「根拠」に朝鮮を攻撃し、対話を否定、“制裁と圧力”しか選択技がないと言う主張は、朝鮮半島の核戦争に火を付け様としているトランプの背中を、しっかりと支えるものである。
黒を白とすり替えた欺瞞を<根拠>に宣戦布告を告げる安倍は、正真正銘の犯罪者だ。<朝米枠組み合意を破り、9.19合意を踏みにじった>のは、米国であり、<朝鮮の黒鉛炉を止めて、軽水炉を提供する約束をほごにした>のも、他ならぬ米国である。安倍とトランプは、世界規模の平和に向けて、諸国間の平和構築を理念とする国連の演壇を、一部列強とその追従者による、朝鮮国民に対する核による脅迫の舞台として利用したのである。
▲2017年9月20日、安倍は国連の演壇を、朝鮮国民に対する核による脅迫の舞台として利用した。対話を否定し、“制裁と圧力”しか選択技がないと言う安倍の国連演説は、米国の朝鮮半島における核戦争の導火線である。
一方、この第72回国連総会では、これ等、日・米のならず者達の<戦争同盟>による脅迫演説に先立つ13日(現地時間)、その一方で、五輪期間のあらゆる戦争行為の中止を求める決議と、それを支持するスピーチが行なわれていた。
国連は13日、平昌五輪開幕7日前(2月2日)からパラリンピック閉幕7日後(3月25日)まで停戦して、敵対行為を中断することを加盟国に求める決議が全会一致で採択された。
▲ 2017年9月13日、(安倍とトランプによる戦争挑発発言の1週間前、同じ第72回国連総会で、南朝鮮のメダリスト、キム・ヨナは、<ピョンチャン冬季五輪休戦決議案>を支持し、“それがピョンチャン冬季五輪後の国際政治の中にも息付いていく事を願います”と訴えた。(国連ウェブTVより)=13日、ニューヨーク(聯合ニュース)
「五輪の理想とスポーツを通した平和でより良い世界の建設」と言う名称の、<ピョンチャン冬季五輪休戦決議案>が提出された総会議場に、2010年バンクーバー冬季五輪の女子フィギュアスケートの金メダリスト、キム・ヨナ氏が、主催国・南朝鮮のピョンチャン五輪親善大使として登壇し、この決議案に賛成するスピーチを行った。
“選手時期には会えなかった、朝鮮の選手たちが、必ず参加する事を願います。ピョンチャン五輪は、平和と人類愛と言う五輪の精神を全世界の人々と共有する場となります。ピョンチャン五輪の代表団は、南北間の凍てついた国境を越え、平和な環境を作ろうと最善の努力をつくしてきました。凍てついた国境は、今ゆっくりと溶かされつつあります。人々を結び付け、平和を生み出す五輪の情熱が、少なくない役割を果たしたのは言うまでもありません。切に願います。世界が一つに繋がる大会となる事を。”
彼女はこれに付け加え、“それがピョンチャン冬季五輪後の国際政治の中にも息付いていく事を願います。”と言った。彼女の訴えは、南朝鮮民衆の共通した心情である。
キム・ヨナ氏はその後の記者会見で、 朝鮮がフィギュアスケートのペア種目で、キム・チュシクとリョム・デオク選手が、五輪出場枠を獲得したことを取り上げ、「北の選手にぜひ競技に参加してほしい」と訴えた。
ムン・ジェイン政権と米国は、「五輪休戦」を受けて、「韓米合同軍事演習」を五輪期間中の2月2日から3月25日までの間だけ中止するとしたが、<朝鮮半島と北東アジアの平和> は、朝鮮に対する核侵略戦争の実践配置である「韓米合同軍事演習」の永久的な中止を抜きにして語れない。
冬季オリンピックを迎え、常時的に朝鮮の崩壊を公言し、核による威嚇を繰り返す米国と、依然として「韓米同盟=戦争同盟」にしがみ付くムン・ジェイン政権の姿勢に対し、南朝鮮民衆の非難が沸きおっこっている。「韓米合同軍事演習」を、五輪後に再開する事を否定しない米国とムン・ジェインは、「(一時的休戦決議が)五輪後の国際政治の中に息づいてほしい」と言う、キム・ヨナ氏と南朝鮮民衆の意思を、真っ向から踏みにじろうとしている。
キム・ジョンウン労働党委員長の新年の辞
朝鮮民主主義人民共和国、キム・ジョンウン労働党委員長は、2018年1月1日、新年の辞の中で、キム・ヨナ氏の願いである、“南北間の凍てついた国境を越え、平和な環境を作ろう”と言う呼びかけに答えるかの様に、次の様に訴えた。
「今年は、朝鮮人民が共和国創建70周年を大慶事として記念し、南朝鮮では冬季オリンピック競技大会が開催されることにより、北と南にとってともに意義のある年です。凍結状態にある北南関係を改善し、意義深い今年を、民族史に特記すべき画期的な年として輝かせなければなりません。何よりもまず、北南間の先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的環境を作り出さなければなりません。」
「北と南はこれ以上情勢を激化させるようなことをしてはならず、軍事的緊張を緩和し、平和的環境を作り出すために共同で努力しなければなりません。
南朝鮮当局は、この地に火炎を上げ、神聖な国土を血に染める外部勢力との一切の核戦争演習を中止し、アメリカの核装備と侵略兵力を引き入れる一切の行為をやめるべきです。アメリカがいくら核を振りかざして戦争挑発策動に狂奔しても、今では、我々に強力な戦争抑止力がある為、どうしようもなく、北と南が決心すれば十分朝鮮半島で戦争を防止し、緊張を緩和していくことができます。」
「民族の和解と統一を志向する雰囲気を積極的に作り出すべきです。北南関係の改善は、当局だけでなく、誰もが願っている焦眉の関心事であり、全民族が力を合わせて解決すべき重大事です。北南関係を一日も早く改善するためには、北と南の当局がいつにもまして民族自主の旗印を高く掲げ、時代と民族に対する自分の責任と役割を果たさなければなりません。北南関係はあくまでもわが民族の内部問題であり、北と南が主人となって解決すべき問題です。したがって、北南間で提起される一切の問題は「わが民族同士」の原則に基づいて解決するという、確固たる立場と観点に立たなければなりません。」
新年記者会見で“北朝鮮との関係改善は、北の核問題の解決と一緒に行かざるを得ない”と主張したムン・ジェインは、「韓米戦争同盟」からまだ抜けきらない。
一方、南朝鮮のムン・ジェインは、1月10日の新年記者会見で、既に自分に対する呼びかけでもある金正恩委員長の新年の辞が発表された後にも拘らず、真逆の韓米戦争同盟を称賛する記者会見を行った。
ムンは、北朝鮮核問題と関連し「南北が共同で宣言する朝鮮半島非核化は決して譲歩できない基本立場だ」と述べ、平昌冬季五輪への朝鮮の参加を巡る南北の折衝においても、<北朝鮮の非核化という最終目標>を達成する意志を示した。
米国はムン・ジェインに対し、「南北関係の改善は、北の核プログラム問題の解決とは別に進展する事は出来ない」「韓国が南北対話をしても、米国の対北朝鮮政策に歩調を合わせなければならない」「対北朝鮮制裁を弱体化させてはならない」と、一貫して牽制して来たが、ムン・ジェインもそれに同意して、この会見で語っている。「北朝鮮との関係改善は、北の核問題の解決と一緒に行かざるを得ない」「ケソン工業団地、金剛山観光、5・24制裁措置問題など、全て国連制裁の枠組みの中で判断する」と主張した。全て南北関係の改善の速度も、米国に合わせると主張したのである。
▲ムン・ジェイン大統領が、2017年8月7日、 トランプ米大統領と電話通話をしている。“堅固な韓米連合防衛体制を基盤として、北韓の追加挑発を抑止し、対応する為の共助を持続していこうと提案した”と、<聯合通信>は伝えた。
(写真出処 青瓦台)
トランプが“もし、戦争が起こっても、そこ(韓半島)で起きるものであり、数千名が死んでも、そこで死ぬのであって、ここ(米本土)で死ぬのではない”と言い放った直後の、2017年8月7日、ムン・ジェインはトランプとの電話会談で、これについて如何なる抗議もしないどころか、“北韓に対する最大限の圧迫と、制裁を加えよう。堅固な韓米連合防衛体制を基盤として、北韓の追加挑発を抑止し、対応する為の共助を持続していこう”と提案した。さらに、“米国が堅固な対韓防衛公約を基礎として、多様な対北武力示威措置を取ってくれた点を評価する”と言ったのである。(聯合通信)
ムン・ジェインはこれまでも機会ある毎に、韓米同盟は血盟であり、リンチピン(linchpin:車輪が抜け落ちない様に車輪の中に差し込む核心軸)だと強調してきた。ムン・ジェインは、サードの配備においても、南朝鮮民衆に対する公約を、いとも簡単に破り捨てた。
ムンの基本姿勢は、度し難い対米共助であり、米国との戦争同盟の信奉者である。南朝鮮の殆どの民衆言論と民主団体は、ムンに対する抗議の意思を露わにしている。ムン・ジェインは、1月1日の金正恩委員長の新年の辞を、どんな思いで読んだのだろうか。
「南朝鮮当局は、この地に火炎を上げ、神聖な国土を血に染める外部勢力との一切の核戦争演習を中止し、アメリカの核装備と侵略兵力を引き入れる一切の行為をやめるべきです。アメリカがいくら核を振りかざして戦争挑発策動に狂奔しても、今では、我々に強力な戦争抑止力がある為、どうしようもなく、北と南が決心すれば十分朝鮮半島で戦争を防止し、緊張を緩和していくことができます。」
ムン・ジェインの米国追従「韓米戦争同盟」によっては、ピョンチャン五輪の一時的「平和」は限定的であり、半島の核戦争の惨禍を防ぐことは出来ない。
ムンは、「北南関係を一日も早く改善するためには、北と南の当局がいつにもまして民族自主の旗印を高く掲げ、時代と民族に対する自分の責任と役割を果たさなければなりません。北南関係は、あくまでも我が民族の内部問題であり、北と南が主人となって解決すべき問題です。」と指摘した金正恩委員長の言葉に誠心誠意耳を傾けなければならない。
北・南高位級会談3点合意を出発点に北南統一への対話を前進させなければならない
▲ 合意締結を終えた、右・朝鮮リ・ソングォン団長と、左・南朝鮮のチョ・ミョンギュン首席代表 [写真-板門店(パンムンジョム)写真の共同取材団]
1月9日、パンムンチョム(板門店)で、北南高位級会談がもたれ、ピョンチャン(平昌)冬季五輪に関する3点の合意文書が発表された。
“南北“双方は、朝鮮側代表団のピョンチャン(平昌)冬季五輪競技大会と、冬季パラリンピック大会参加問題と全同胞の願いと期待に合うように、南北関係を改善して行く為の問題を真剣に協議した”とし、3つの項目を合意した。
@ 南北は、平昌冬季五輪を“民族の地位を高める契機となる様にする為、積極協力”し、朝鮮は高官級代表団と民族オリンピック委員会の代表団、選手団、応援団、芸術団、参観団、テコンドー示範(模範)団や記者団を派遣する。
南側は、これらの必要な便宜を保障することにしており、朝鮮側の事前の現場踏査のための先発隊の派遣問題と、朝鮮側の平昌五輪参加関連実務会談を開催することにした。
日程は今後文書交換方式で協議するという計画である。
A 南北は、軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的環境を用意しながら、民族的和解と団結を図るため、共同で努力することにした。そのための軍事当局会談を開催することに合意。また、南北は多様な分野で接触と往来、交流と協力を活性化し、民族的和解と団結を図ることにした。
B 南北は、“南北宣言”を尊重して、南北関係で提起されるすべての問題を私たち民族が韓半島問題の当事者として対話と交渉を通じて解決していくことにした。南北関係改善に向けた南北高官級会談とともに、各分野の会談も開催することにした。
即ち要約すれば、
@ 北は選手団を派遣し、主催国・南朝鮮にその運営で全面協力を約束
A 軍事当局会談を開催し、軍事的緊張緩和と平和的環境の用意
B “南北宣言”の尊重。韓半島の当事者同士として、南北全ての問題を、対話と交渉を通じて解決する―というものである。
当事者同士による南北諸問題の対話と交渉、南北共同宣言の尊重
この1月9日の会談の全体会議の基調発言で、南朝鮮のチョ・ミョンギュン首席代表が、“早期に、非核化など、平和定着に向けた対話再開が必要だ”などと発言した事に対し、朝鮮代表のリ・ソングオン団長が強く抗議したと伝えられる。
恐らく、半島の「非核」なるものを、朝鮮だけの「非核」とすり替えるムンジェインの主張は、平和定着に向けた対話の要件とならないのは明らかであり、「非核」に関して、当事者能力の無い南朝鮮が持ち出す問題では無いと言うのが、朝鮮側の立場であろう。
しかし、南朝鮮が、軍事的緊張緩和と平和的環境の確立に向かって共助すると表明し、南北全ての問題を、<当事者同士>で進めてゆき、南北共同宣言に言及した事は、大きな前進であると言える。
ムン・ジェイン政権の、対米共助と韓米戦争同盟を「基調」に置く対北政策は、基本的には、米国の「対北敵視政策」と何ら変わるものではないが、キム・ジョンウン委員長の「北と南の当局がいつにもまして、民族自主の旗印を高く掲げ、時代と民族に対する自分の責任と役割を果たさなければなりません。北南関係は、あくまでも我が民族の内部問題であり、北と南が主人となって解決すべき問題です。」と言う呼びかけを、否定するわけには行かなかったのである。
「南北宣言の尊重」の明記は、北南の結束によって、列強の妨害、制裁と圧力をはねのける事が出来る、朝鮮統一への道筋を明らかにしている。ピョンチャン五輪を巡る北南対話を通して、避けては通れない道筋が、<朝鮮半島の統一>である。<3点合意>で確認された、「南北宣言の尊重」の明記は、そのことを確認する極めて重要な項目である。
2000年6月15日 金大中大統領が金正日委員長との間で、「南と北は国の統一問題を、その主人である我が民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」と宣言したものが「6・15共同宣言」であり、2007年10月4日には、廬武鉉が、金正日委員長との間で、「6.15共同宣言」のロードマップである「10.4宣言」を締結した。この二つの宣言は、統一朝鮮への道筋を明らかにしている。
キム・デジュン(金大中)大統領在任中の2000年のシドニー五輪、2004年のアテネ五輪、ノ・ムヒョン(廬武鉉)大統領在任中の2006年のトリノ冬季五輪では、朝鮮と南朝鮮選手が一緒に、統一朝鮮を表す旗を掲げ、アリランを謳い、入場した。その背景には、キム・デジュンからノ・ムヒョン政権時期を通して、<北と南は、互いの思想と制度を尊重し、その基礎の上に、連邦制方式よって国の統一を指向して行く>と言う双方の意思が、6.15共同宣言と10.4宣言で確約され、五輪の場において象徴化されたのである。
それは、五輪と言うスポーツ競技における一時的行動でなく、民族同士の自主的力で、南北の統一と和解を宣言し、諸般の分野での協力と交流を促進する行動の一環として行われた。
2000年6月15日 金大中は、金正日委員長との間で、「南と北は国の統一問題を、その主人である我が民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」と確認し、「南と北は経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保険、環境など諸般の分野での協力と交流を活性化させ、互いの信頼を高めていく」など、5項目の合意を発表した。南北は、外勢(米国や列強)などの外部勢力に影響されることなく、民族同士の自主的力と協力で、統一を実現しようとする南北和解の宣言をおこなったのである。
2007年10月4日には、廬武鉉は、金正日委員長と、「6・15共同宣言の精神を再確認し、南北関係発展と朝鮮半島の平和、民族共同の繁栄と統一を実現するための諸般の問題を虚心坦懐に協議し」6・15共同宣言の具体的なロードマップで合意し、6.15共同宣言をより具体化した10.4宣言を確認した。10.4宣言に基づく南北和解事業は、ケソン(開城)工業団地、離散家族の面会、金剛山観光事業へと発展して行った。
南北和解に向かう自主的な政府間交渉は、1998年の長距離弾道ミサイルの発射(金大中執権時)や、2006年10月の地下核実験(廬武鉉執権時)も、南北対話と和解に向けての障害にはならなかった。当時米国のブッシュは、北朝鮮を'悪の枢軸'と規定して敵対政策を強力に実施したにもかかわらず、南北の<自主外交>は、それを乗り越えたのだ。
しかし、2008年2月、イー・ミョンパク(李明白)大統領の登場と、2013年2月のパク・クネ(朴槿恵)への政権移行は、これまでの南朝鮮政権の「自主外交」の放棄と、米国の核の傘の下での、対北敵視政策を強化することによって、朝鮮半島の核戦争危機をもっぱら煽る事に終始した。南北和解に向かう共通指針である6・15共同宣言と10・4宣言は、両大統領によって放置された。
朝鮮半島における米国の対北敵視政策は、自主外交を捨てた両大統領に支えられ、南北の和解ではなく、「北の体制崩壊」を狙った「韓米合同軍事演習」による、常時的な朝鮮に対する核威嚇によって、米国が仕掛ける、朝鮮半島における核戦争の危機は極限に達して行った。
米国が、対北外交交渉で一貫して抱いていた「北の体制崩壊」と言う幻想を《根拠》とした「対北敵視政策」に、イ・ミョンパクとパク・クネは完全に嵌まり込むこととなる。
イ・ミョンパクの「非核・開放・3000」(北が非核化と改革・開放を実現することにより、一人当たりの年間所得を3000米ドルにするための経済支援を行う政策)は、米国の核威嚇と自らの核の傘を不問にして、朝鮮の核放棄を迫る欺瞞政策であり、パク・クネは、韓国主導の「吸収統一」構想を、「韓半島の平和構想」だと偽った。
ムン・ジェインは、米国の欺瞞に同調するのは、いい加減に辞めたらどうか
「東北アジアの平和構築」を掲げた「六者協議」で、「文書における最大の成果」と言われるものが、2005年の第4回六者協議で取り交わされた《D項目合意》即ち、9・19合意とよばれるものである。朝鮮政府は、当時これを、「言葉による制約である合意」と呼び、米国によって繰り返されてきた「合意」の不履行を、警戒の態度で捉えた。ここでは、「朝鮮半島における核」に関する合意についてのみ、触れる事にする。
この9・19「合意」における「朝鮮半島の検証可能な非核化」とは、朝鮮に対し、「全ての核兵器と既存の核計画の放棄」「NPTへの復帰」を求める一方、米国に対しても、「朝鮮半島に核兵器を有さない」「朝鮮に対する通常兵器、核兵器による攻撃意図がない事の確認」を要求した。
しかし、米国は、この「合意」を歪曲し、朝鮮に対してのみ「完全且つ、検証可能で不可逆的な非核化」(Complete、Verifiable and Irreversible
Dismantlement)を要求する一方、朝鮮による米国の核に対する検証、即ち、南朝鮮の全ての米軍基地、南朝鮮に寄港し周辺に展開する核戦艦、軍用機等の検証を、全面的に拒否した。しかも、「朝鮮に対する通常兵器、核兵器による攻撃意図がない事の確認」は、朝鮮に対する「核ドクトリン」を放棄せず、朝鮮に対する先制核攻撃意図を隠さない「韓米合同軍事演習」の常時的展開と、黒鉛炉廃棄の代わりに約束された軽水炉建設の不履行によって破綻した。
米国は一貫して、核兵器の存在について認めも否定もしないと言う《NCND》政策を固執し、最初から、自分たちに対する「核検証」など、考えもしなかったのである。
南朝鮮と米国は、1・9合意を毀損する行為を止めなければならない
ピョンチャン五輪に向けての、1・9パンムンチョム合意の舌の根も乾かぬ内に、ムン・ジェイン政権は、1月26日、ハワイで、宋永武国防相とマテイス米国防長官を会談させ、朝鮮半島の<完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化(CVID)という共通目標を再確認し、南北対話は、この目標に沿って進むべきだ>と申し合わせた、また、朝鮮に対し、「強力で効果的、信頼できる軍事的態勢」を引き続き強化し、米韓合同演習の全面中止を要求している北朝鮮をけん制するとともに、米韓の足並みを再確認した」(ソウル時事)
ムン・ジェインは、朝鮮との1・19合意を、深化させるのでなく、<民族同士>の対話よりも<対米共助>を重視し、また、2005年の9.19合意の過程で破綻し、自ら取り下げた、古臭いスローガンである<完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化(CVID)>と言う、米国による「一方的な北の核放棄」を、一緒になって蒸し返した。2005年の9・19合意は、この米国が固執して来た、<CVID>を取り下げた事によって成立した事は、当時、廬武鉉大統領の秘書官であったムン・ジェインが知らないはずがない。
次回 (その2)
●ムン・ジェインの「ベルリン構想」なるものは、イ・ミョンパクの「吸収統一」と変らない。
●「北の核廃棄」と言う欺瞞。
●米国と日本の戦争準備は、「五輪休戦」を破壊する違反行為。
●南北関係改善に慄く、安部と河野の戦争行脚。朝鮮との国交断絶を呼びかける河野、国際的笑いものとなる。
●安倍政権の対朝鮮敵視政策は、歴史に類を見ない国家犯罪。
<参考サイト>
☆論考/「安倍・国連演説の欺瞞を徹底批判する」 (柴野貞夫時事問題研究会 2017年10月6日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_59.html
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