(韓国民衆言論 インターネットメディア <ミンプラス> 2017年5月16日付)
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朝鮮のミサイル試験と文在寅(ムン・ジェイン)政府の役割
●6.15宣言17周年の今年、政府行事を開催して南北の和解と協力の契機を作るべきだ。
●<火星12>の発射は、韓米合同軍事演習終了後も、<朝鮮を狙った、2回にわたるICBMの発射、カールビンソン空母団の東海展開、制裁現代化法の通過>など、朝鮮圧迫政策の継続に原因がある。
▲「火星12号」発射の瞬間 (写真出処:労働新聞)
この14日、朝鮮が発射した<火星12>中長距離弾道ミサイルが事実上大陸間弾道ミサイル(ICBM)に匹敵すると言う、国内外の評価を受けている。
国内外のマスコミが、政府と専門家の意見を借りて,このような評価をするのは初めて重要な意味を持つ。
米国が、朝鮮のICBM試験発射を一種の禁止線(red line)としているが、朝鮮はこれを越えようと近付いている為だ。 北米対決が重大な分岐点を迎えている。
しかし、CNNなど一部の米国メディアと国内の大部分のメディアは、朝鮮の今回の試験発射を、北米間の対決よりは中国、ロシアに対する圧迫用や文在寅(ムン・ジェイン)政府との関係に焦点を合わせて報道している。
CNNは、試験発射の時点が、中国が力を入れた<一対一で首脳フォーラム>の初日であり、中国の体面を台無しにし、ミサイルの落下地点がロシア近海である点を挙げて、朝鮮の核実験がロシアにも脅威となるので、“ロシアも、北朝鮮の核問題解決に乗り出さなければならない”という式に報道した。米国よりは、中国、ロシア関係に焦点を合わせたものだ。
ミサイルと核実験は、南北和解協力の障害とはならない
韓国の 国内メディアは、保守・進歩の大半が、朝鮮ミサイルが対話のムードに冷や水を浴びせ、“(朝鮮が)交渉前に事前に有利な高地を占領するためのもの”だとか、“対話を強調してきた文大統領を試験”する為のものだと主張した。
さらに、“実際には、自分達を狙う、極めて深刻な脅威”、“対話しようとし、ミサイル挑発した朝鮮は、政権の生存に助けにならない”とまで主張する。守旧保守言論がそう主張するのはわかるが、かりそめにも、進歩的というマスコミまで千篇一律的に朝鮮のミサイル試験を、韓国に対する挑発であり、就任4日しか経っていない文在寅(ムン・ジェイン)政府を試験するものと見る事は、極めて一面的だ。
南北和解協力を追求した金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時も、朝鮮はミサイルと核実験を行った。
それでも、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、南北間の対話を行い、その結果6.15、10.4宣言という平和統一に向けた重大な道標を残した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこの過程をよく知っている
これは、朝鮮の核・ミサイル試験が、南北関係を発展させるのに決定的障害となるわけではなかったことを意味する。 もちろん、朝鮮の一連の試験が、当時、韓国政府の行動を制約する要因となったが、南北間の和解協力意志はこれを上回ることが出来ることを見せてくれた。
これが南北関係の特性である。 1998年、金大中(キム・デジュン)政府が発足した初年度、北朝鮮の人工衛星―<光明星1号>の発射で、情勢が緊張されたが、この発射が契機となって北米の対話が行われ、南北間で初の首脳会談と6.15宣言が出た。
また、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代にも、2006年、朝鮮の最初の核実験と様々なミサイル試験などが背景になって、朝米間の対話と南北間の10.4宣言につながったのだ。 特に、当時米国のブッシュ大統領は、北朝鮮を「悪の枢軸」と規定して敵対政策を強力に実施したにもかかわらず、結局は終戦宣言を言及するなど、第2次南北首脳会談を開く条件を作った。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこの過程をよく知っているはずだ。
朝鮮圧迫政策の継続に原因
今回の朝鮮の<火星12>弾道ミサイル試験発射の背景は、米国が韓米連合訓練が終わったにも朝鮮を狙ったICBMのミニットマン3試験発射を継続して、カールビンソン空母団を引き続き東海に残して韓国と共同訓練を実施するなど、対朝鮮軍事的圧迫を持続しているためだ。 また、下院は、朝鮮に対し、歴史上最も強力という‘対北朝鮮の遮断と制裁の現代化法’を通過させて<最大の圧迫>政策を裏付けた。 ロシア議会は、米国のこの法が北朝鮮との取引を調査するという名目で、自国のウラジオストク港を捜索できるよう根拠を置いた乱暴な主権侵害法であり、戦争宣言と同じだと強く抗議した。
北朝鮮も新設された外交委員会名義で、この法が、主権侵害と国際法蹂躙だという抗議書簡を、米下院に送った。(この様な)継続している北米間の対決が、試験発射の直接的な背景である。
朝米間の衝突を避ける道は、米国が自ら対話に向けた環境を作る事
そして、多くのマスコミが、朝鮮のミサイル試験が既に始まった北米間の対話に冷や水を浴びせるものと批判しているが、むしろその対話があまり成果なく終わったために試験発射が行われたとみることが合理的だろう。
去る8〜9日に、オスロで行われた米朝間の(民間チャンネル接触の)トラック2会談の結果、朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省米州局長が、“トランプ政府と条件が整えば、対話する”と発言したことは、まだ対話の環境が整っていないことを意味する。 北朝鮮はICBMに匹敵するミサイルを試験して、米国のレッドラインに接近、米国が環境を作る様に圧迫した。
(在日) 朝鮮新報は15日、“トランプ政府が先に、対話に向けた適切な状況を作るように決断”することが、“朝米間の衝突を避け局面を転換”する道だと報道した。
6.15共同宣言17周年を政府レベルの公式行事とすべきである
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代、既に経験したように、こんな状況の意味をよく知っているはずだ。文大統領は一日も早く、現在の対朝鮮敵対的外交安保ラインを交代しなければならない。
統一部も同じだ。 そして、もうすぐである6.15共同宣言17周年を、政府次元の公式行事として記念し、南北の和解と協力のきっかけを作らなければならない。
ミサイル試験は、米国より先に、南北対話を開く触媒になることができる。 連合ニュースは、米国側、韓半島専門家らの言葉を借りて、文在寅(ムン・ジェイン)政府の対北朝鮮特使派遣提案を報道した。 歴史は、米朝対話が南北和解につながっただけではなく、南北和解協力が、米朝間の対話を推動した事も示している。
韓半島は、既にその転換点に入った。
(訳 柴野貞夫 2017年5月17日)
<訳注>
この「社説」は、韓国民衆ネット言論 <ミンプラス>によるものである。 <ミンプラス>は、2014年12月、「憲法裁判所」によって、不当に解散させられた「統合進歩党」の流れを汲む、労働者・民衆のネット言論である。
2014年、パククネ政権は、国情院と政権の謀議を通して、「統合進歩党」の政党解散審判請求を閣議決定し、「憲法裁判所」に請求した。同党所属議員・李石基(イ・ソッキ)氏が、「内乱陰謀、内乱扇動及び国家保安法違反」を犯し、統合進歩党自体に責任があるとする、凡そ世界の資本主義国家において、例を見ない政党解散命令であった。・李石基(イ・ソッキ)氏の罪状は、「国家保安法」に照らしてさえ、立証することが出来なかったデッチアゲと捏造の所産であったが、同党が、パククネの国情院が、総選挙に介入した事実を追求した行動に危機感を募らせた国家とセヌリ党の反撃だった。
「統合進歩党」は、2012年4月の第19代総選挙では、全投票数の10.9%(219万8405票)を獲得、同党所属議員5名は、解散命令により全員議員資格を失った。もちろん現在、同党の影響力は、大衆的基盤である「民主労総」の中に見出すことが出来る。唯一国会に残る革新野党「正義党」の中には、一部同党の流れを汲むグループが存在する。
<関連サイト>
☆471 憲法裁判所による統合進歩党(強制)解散(韓国・チャムセサン 2014年12月19日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_471.html
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