(世界の新聞/ 「トランプ政府は終戦宣言の約束を履行せよ」 ミンプラス・社説 2018年7月27日付)
http://www.minplus.or.kr/news/articleView.html?idxno=5662
トランプ政府は終戦宣言の約束を履行せよ
「先制的平和措置」を、次々断行している朝鮮、「朝米共同声明の履行」を引き延ばしている米国
北の<先制的平和措置>による政治的恩恵だけを取り込むことは許されない
今日(7月27日)は、停戦協定が締結されてから65年になる日だ。 全同胞は、まさに今日、「朝鮮戦争は終わった。朝鮮半島で再び戦争がないこと」を宣言する終戦宣言が出る事を、ひとえに期待した。
終戦宣言が、朝鮮半島の平和体制の構築と新たな北米関係を向けた第一歩であり、4.27板門店宣言と6.12北米共同声明の履行を通じた平和と繁栄の新しい時代に進む世紀的な大転換の入口、出発点である理由だ。
朝鮮は7.27を迎え、米軍遺体の送還とともに、東倉里解体を断行するなど、朝米、通常の合意と約束を履行する措置を次々と取っている。朝鮮はトランプ政権に、「終戦宣言」の約束を守ることを強く促しながらも、「先制的平和措置」を断行している。 核試験場の先制的破壊措置のような脈絡だ。
半面、トランプ政府は、終戦宣言などに相応する措置については、知らぬ存ぜぬで一貫している。 最近トランプ政府と米国の動きを見ると、果たして、北米共同声明を履行する意志があるのか、疑うに十分だ。
去る5日、朝米共同声明履行実務交渉のために訪朝したポムペオ米国務長官は、朝鮮の表現を借りれば、“申告だ、検証だと言いながら、一方で、強盗的な非核化要求だけ持ちだしてきた。”また、“平和体制の構築問題に対しては一切言及せず、既に合意された終戦宣言問題まで、遠く後ろへ引き延ばしておこうとした。
ポンペオは、ひたすら<北の非核化>だけを主張した
良く知られるように、シンガポール、朝米首脳会談共同声明は、1)新しい朝米関係、2)永続的かつ安定的な朝鮮半島の平和体制、3)朝鮮半島の完全な非核化、4)米軍遺骸の送還、―4つの合意事項を盛り込んでいる。
したがって、その実施のための第一の実務協議は、これ等の4つの議題の履行(実行)問題を扱わなければならない。 しかしポムペオは、唯ひたすら、非核化、それも朝鮮半島全体の非核化ではなく、朝鮮だけの非核化に没頭した。
去る5日、ポムペオは、訪朝で、自分のTwitterに “キム・ジョンウン朝鮮国務委員長が、トランプ大統領と合意したFFVD(final、fully verified denuclearization−完全に検証された非核化)に向けた我々の努力を持続する事を期待する”と書いた。
CVID(Complete、Verifiable、Irreversible Dismantlement)、すなわち「完全かつ検証可能で後戻りできない非核化」が、朝米共同声明から抜ける事となるや、朝米首脳会談合意の中には、元々無かった、新しい用語を考案したのだ。
「先非核化(先に朝鮮の非核化だけを一方的に要求する意味)」の立場に寝返ったポンペオ
彼は終戦宣言と平和協定が、FFVDの対価(代償)であるかのように語った。朝米首脳会談前の、「先非核化(先に朝鮮の非核化だけを一方的に要求すると言う)」の立場に寝返ったのである。 更にポムペオは、去る25日、米上院外交委員会の聴聞会で、‘2021年1月以前CVID達成’という‘非核化時刻表’を提示しながら、‘朝鮮の大量破壊兵器(WMD)の除去が行われるまでは、制裁を緩和しない’と述べた。
朝米首脳会談前に、ジョン・ボルトン、ホワイトハウス国家安保補佐官が持ち出したものの、朝米首脳会談霧散の危機まで呼んだ、‘朝鮮の大量破壊兵器(WMD) +弾道ミサイル廃棄論’を、再び持ち出したのだ。
これに先立ち23日、米下院軍事委員会は、在韓米軍を撤収するか、または2万2000人未満(現在2万8500人)に削減する時には、必ず議会の承認を経るようにするための新しい国防授権法案を議決した。
トランプは「北朝鮮制裁」の取り締まりと強化に取り組んでいる
北米サミット以降、トランプ政府は、むしろ「北朝鮮制裁取り締まりと強化」に取り組んでいる。 6.12北米サミット当日、中国外交部ゴンスァン、代弁人が、対朝鮮制裁の調整を公開主張した上に、6月19日、朝中首脳会談で、両国間の協力が友好的に議論されると、トランプ政府は制動をかけた。
6月22日、過去の政権が発動した米国の独自制裁6件の効力を、更に1年延長したのに続き、6月25日にトランプが直接出て、“中国が対北制裁を解けば、本当に良くないだろう”と警告する。
続いて6月27日、北京へ飛んだマティス米国防長官は、脅迫性発言まで躊躇せず、中国の対北制裁維持を圧迫した。
韓国政府に対する米国の対北制裁取り締まり強化圧力は、十分に全方位的だ。 ポムペオは6月18日と6月28日,相次いでカン・ギョンファ外交部長官に電話をかけて、強力な対北制裁を圧迫した。
過去25日には、ポムペオが異例的に、チョ・ミョンギュン統一部長官にまで電話をかけ、北制裁維持を注文したことが分かった。
この通話は、ポムペオが7月25日(現地時間)、米国上院外交委員会の公聴会で北制裁を継続するとした立場を明らかにする直前に行われた。
訪韓中のマーク・ランバート米国国務省東アジア太平洋次官補代行は、過去26日、
コレイルをはじめとする、対北経済協力企業関係者との非公開の出会いで“対北経済協力に,あまりに先に出てはいけない”と言う米国政府の警告性メッセージを伝達した事が分かった。
更に彼は、“対北制裁に抵触しないとすれば、民間企業が北朝鮮(朝鮮)と交流事業を推進する際には、必ず政府との事前協議をして、必要であれば、米国側にも直接問い合わせをせよ”と注文したという。
この席に参加した南北経済協力企業は、“非核化交渉が完全に仕上がり、すべての制裁が解除される前では、実質的に、出来る事は全くないだろうという感じを受けた”と語った。
注目すべき点は、米国のこのような対北朝鮮制裁の全方位的な取り締まりと圧迫が韓国政府が最近、国連安保理傘下の対北制裁委員会に、開城工業団地の南北共同連絡事務所の補修工事のための材料搬入のための包括的な対北朝鮮制裁猶予措置を申請した時点で、集中的に行われていると言う事だ。
南と北による韓半島平和のための努力が座礁の危機に瀕している
最近、国際オリンピック委員会(IOC)は、国連安保理の対北制裁委員会に、北が2020年の東京オリンピックに参加出来るように、スポーツ用品関連制裁対象からの除外を要請したが、米国の反対で却下された。
一歩もっと進んで、27日(現地時間)、米国の声(VOA)によると、米国では米上院の銀行委員会で発議された「対北朝鮮銀行業務制限法案(BRINK Act)」と、外交委員会で発議された「効果的な外交を促進するための影響力の法案(LEED Act)」などの新しい対北朝鮮制裁と関連する2つの法案を議決する動きまで見せている。
このような米国の態度に照らしたとき、アメリカが、韓国政府の対北朝鮮制裁猶予措置の要求に同意する可能性は懐疑的である。
南北体育会談(6.18)、南北赤十字会談(6.22)、南北鉄道協力分科会議(6.26)、南北に協力分科会議(6.28)、南北の海上緊急連絡網の稼働(6.1)、南北共同連絡事務所工事開始(6.2)など韓半島の平和のための南と北の努力が、米国の対北制裁の前で、座礁の危機に瀕しているのだ。
トランプは米中貿易戦争を中国の対北朝鮮制裁強化の梃子に使おうと考えている
トランプ政府が、平和を愛好する全世界の人々の前で明らかにした6.12共同声明のインクがまま乾かないうちに、これを覆して逆行しながら、南北間の平和のための努力を妨げる背景には、極めて政略的な計算が敷かれているものと思われる。
朝米サミット以降、米国内の保守言論をはじめとする反北勢力は、「得るものが無い。失敗した会談」と毀損しながら、“北が核兵器とミサイルを隠している "、“秘密濃縮ユラニウム施設がある "、“これまで知られていない新しいミサイル生産工場がある”と言うなど、根拠もない悪宣伝をしまくった。
さらに「ロシアスキャンダル」の追加暴露が続き、政治的危機に追い込まれたトランプは、北の完全な非核化に至るまでには、“考えているよりもはるかに時間がかかるだろう。
急いでない”と述べた。
一部では、トランプのこの発言を「包括的で電撃的な非核化」の立場で「段階的同時履行」の立場に旋回したものと解釈した。しかし、最近トランプ政府が行った一連の言動は、米国が取るべき終戦宣言と制裁緩和を急がずに「最高水準の制裁と圧迫」を継続するという立場に後退したのではないのかと言う疑心を持たざるを得ない。
11月の中間選挙を控えたトランプが、朝米首脳会談の成果と、核とミサイル試験発射の中断、核試験場廃棄、米軍遺骸送還、ミサイル(衛星)発射場解体など、北の先制措置による政治的恩恵だけを取り込み、終戦宣言と制裁緩和等による政治的負担は回避する考えではないのかというものである。
また、対中貿易戦争に没頭しているトランプが、中朝関係の密着を牽制しながら対北制裁を米中貿易戦争の輪に活用して、米中貿易戦争を、中国の対北朝鮮制裁強化の梃子に使おうと考えているのではないのかと疑わざるを得ない。
朝鮮半島に住む民族にとっては、その生存と運命がかかった問題だ
トランプ政府は、手遅れになる前に終戦宣言の約束をすぐに履行しなければならない。 終戦宣言はトランプには、政治的駆け引き水または政略素材かもしれないが、韓半島に住んでいる我が民族にとっては、生存と運命がかかった問題だ。
トランプ政府が、新たな朝米関係を宣言した朝米共同声明を政略的に利用する形態を続ければ、余裕がない事態を招くことになることを注意すべきである。
延べ何千万人が参加した蝋燭デモ、その強力な韓国民の抵抗と巨大なエネルギーが、トランプと米国に向かわないと言う法律はどこにもない。
ムン・ジェイン政府にも要求する。 今の現実は、アメリカの要求にだけ順応しては、南北は決して、平和と繁栄の道に進むことが出来ない。朝鮮半島の平和体制も不可能であることをはっきりと示している。 歴史的な板門店宣言の当事者としての責任感を持って、米国の終戦宣言と制裁の緩和を堂々と要求しなければならない。 「韓半島運転者論」は、自主的立場なき貧しい、言葉遊びに過ぎない。
板門店宣言の履行は、その履行を妨げる障害物を除去する闘争である
韓国の平和統一勢力は「板門店宣言の履行」のための挙族的運動に全面的に取り組まなければならない。 板門店宣言は、南北の首脳が署名したが、その実践と移行の主体は南と北、海外の全民族である。
平和と統一に向けた全同胞の力を一つに集めなければ、どんな合意も無為に戻るというのは、6.15時代がくれた厳密な教訓である。
終戦宣言であれ、平和協定であれ、どんなものも、闘いなくして達成された事はない。 情勢がどのように変化しようと、帝国主義の本性は変わらない。
板門店宣言と北米サミットの感動にだけ溺れていてもだめであり、その何かが、全て終わったかの様に錯覚してはならない。
日帝36年、その二倍にもなった停戦体制を終えて、平和を定着させ、自主統一の大通りを開くことが出来る、再び来ない絶体絶命の機会である今日、全力を板門店宣言の履行へつぎ込もう。板門店宣言の履行は、その履行を妨げる障害物を除去する闘争である。 今すぐ終戦宣言の履行、対北制裁解除運動に力強く立ち上がり、民の力でこれを勝ち取ろう。
そして、その力で平和協定の締結、駐韓米軍撤収、国家保安法撤廃など、根本的な問題解決のための闘争に堂々と前進しよう。
(訳 柴野貞夫 2018年8月2日)
<関連サイト>
☆米国の言論が流布する「北が核能力を強化している」と言う惑説は意図的な挑発行為だ(朝鮮・ウリミンジョクキリ 2018年7月15日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_642.html
☆朝鮮外務省スポークスマン、朝米高位級会談に言及(朝鮮中央通信 2018年7月7日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_641.html
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