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(民衆闘争報道/ 琉球遺骨返還請求訴訟・奈良県会議通信 20191012日)


            日本人類学会「要望書」について

                               <琉球人遺骨返還を求める奈良県会議>通信・第6号

●人類学会の「要望書」提出は、琉球民族全体に対する侮辱・差別行為である
  京都大学は、不当に持ち出された琉球人の遺骨を直ちに返還せよ。


722日、日本人類学会会長篠田謙一が、京都大学総長山極壽一宛てに、「要望書」を提出した。内容は、「現在、京都大学を被告として沖縄県今帰仁村に所在する古墓、百按司墓より収録された古人骨の返還を求める民事訴訟が進行中」であることから、「人類学という学問の継承と発展のために古人骨資料の管理」について、「理事会で議論し、以下の原則を取りまとめ」た内容を伝えるというものであった。
人類学会が言う原則とは、「学術的価値を持つ国民共有の文化財として、将来にわたり保存継承され研究に供与されるべきである。」「資料の由来地を代表する唯一の組織である地方公共団体との協議により、当該資料を適切に管理する方法を検討すべきである。」「地方公共団体へ移管される際は、研究資料としての保存継承と研究機会の継続的な提供を合意内容に含めるべきである。」というものであった。
これに対して、820日には原告の松島さん、21日には、亀谷さん、玉城さんらが「抗議文」を出されている。琉球の歴史や文化、祭祀継承者を軽視する人類学会の「要望書」提出は、琉球民族全体に対する侮辱・差別行為であり、謝罪を要求されている。また、各地の支援団体からも抗議文が出されている。<奈良県会議>も93日付で「抗議文」(別紙参照)を提出した。お読みいただき確認いただきたい。

第3回口頭弁論
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自動的に生成された説明



(原告弁護人)
 “第13条及び自由権規約第27条をはじめとする各国際人権法及び宣言に基づき、本件遺骨の返還(帰還)請求権を有する”
と陳述



2019830日(金)午後14時、京都地裁101号大法廷で、第3回口頭弁論が開かれた。今回は、天候の影響もあってか、傍聴抽選はなく13時には大法廷への入廷が許され、5分ほどで原告支援者が傍聴席を埋め尽くし開廷を待った。10人ほどの入廷できなかった原告支援者も法廷外で裁判を見守った。
14時。裁判官の入廷後、まずは、弁護団より「原告ら第2準備書面要旨陳述書」(別紙参照)の読み上げがあった。普門弁護士から、「憲法上の権利」「自由権規約B規約27条及び憲法13条に基づく文化享有権」等を述べ、原告らに本件各遺骨の返還請求が認められるとの主張がなされた。また、李弁護士から、「不法行為に基づく損害賠償請求権の構成について」述べられ、被告に対して、憲法第13条及び自由権規約第27条をはじめとする各国際人権法及び宣言に基づき、本件遺骨の返還(帰還)請求権を有するものと陳述された。
続いて、原告の金城實さんが、意見陳述された。10分間という短い時間の意見陳述では、四度も校正した文章を読み上げられ、琉球・琉球人における遺骨への思い、生死観、命への感謝、墓への思いなど精選された思いを語られた。裁判官がどこまで理解したのかは定かではないが、閉廷後の「裁判進行協議」での裁判官の発言を聞くと、何もわかっていないのではないかと思わざるを得ない。

口頭弁論及び「裁判進行協議」報告集会
3回口頭弁論終了後、弁護士会館地下会議室において報告集会が行われた。集会では、意見陳述された金城さんが、10分間で語れなかった「洗骨」や「骨神」への思いを語られた。

 
その後、裁判所から提案があった「裁判進行協議」に参加された、原告・弁護団から協議内容と今後の方針が述べられた。そもそも「裁判進行協議」とは、今後の裁判を見通し、裁判所・原告・被告3者の意見を協議するものだが、丹羽弁護士は、裁判所の枠に入らず原告側に立った進行計画を出すため、人類学会との闘いも含め、沖縄合宿(原告・弁護団・支援者等)を行う中で方向性を確認したいと述べられた。

また、各弁護士からの報告では、「研究資料として沖縄に返せないか」といったニュアンスであった(普門)。この裁判で問われていること、憲法13条のこと、琉球民族を認め、人権を認めることの大切さが裁判官に届いていない(定岡)。「なぜ、返還できないのか」「遺骨を持っていてどうするか」というぐらいの裁判官の認識か(李)。と話された。
被告はもちろん、この裁判を通して、何が問われているのかを伝えなければならないと思う次第である。

 さらに、亀谷さん、玉城さん、松島さんら原告3人から、裁判への思いとさらなる支援のお願いがあった。そして、日本人類学会に対する闘いの支援も述べられた。
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自動的に生成された説明次に、沖縄、北海道、東京等、各地から参集された支援者からも発言が続いた。その中で、928日(土)に、<琉球人遺骨返還請求訴訟を支える会・関東>が結成の集いを開催するという報告があった。ぜひ多くの方が結集されることを願い、奈良からもエールを送りたいと思う。
最後に、<奈良県会議>の崎浜代表から、奈良県での取り組みや20年に及ぶ沖縄連帯の積み重ねが紹介され、本裁判では裁判官が、現地の百按司墓を訪れ、琉球の葬祭慣習と信仰の実態を真に理解してもらいたいと述べられました。

4回公判は、1129日(金)14時〜:京都地裁101号大法廷
照屋寛徳氏の意見陳述が予定されています。友人・知人に呼びかけて、傍聴席を埋め尽くす、最大限の結集を呼びかけます。
傍聴抽選のため、13時には集合してください。


資料
日本人類学会の要望書

先月、日本人類学会が京大に対して添付の要望書を提出しました。
2019722
京都大学総長 山極壽一 殿
日本人類学会会長 篠田謙一

要望書
貴職におかれましては、ますますご清祥のことと存じます。
現在、京都大学を被告として沖縄県今帰仁村に所在する古墓、百按司墓より収録された古人骨の返還を求める民事訴訟が進行中であると報道されています。国内の遺跡、古墓等から収集され保管されている古人骨は、その地域の先人の姿、生活の様子を明らかにする学術的価値を含んでいることから、日本人類学会は、将来の人類学研究に影響する問題として、この訴訟に大きな関心を持ち、人類学という学問の継承と発展のために古人骨資料の管理はどうあるべきかを理事会で議論し、以下の原則をとりまとめましたので、ご連絡いたします。京都大学におかれましては、長年にわたり研究資料の管理を行っていただきました事を感謝すると共に、今後も以下の原則に沿った対応をとることを要望するものであります。
日本人類学会は、古人骨の管理と継承について以下の三つの原則が欠かせないと考えています。なお、ここで述べる古人骨は、政府による特別な施策の対象となっているアイヌの人たちの骨、ならびに民法において定義されている祭祀承継者が存在する人骨を含むものではありません。

○ 国内の遺跡、古墓等から収集され保管されている古人骨は、その地域の先人の姿、生活の様子を明らかにするための学術的価値を持つ国民共有の文化財として、将来にわたり保存継承され研究に供与されるべきである。
○ 古人骨資料を保管する機関は、必要に応じて、資料の由来地を代表する唯一の組織である地方公共団体との協議により、当該資料をより適切に管理する方法を検討すべきである。
○ 由来地に係わる地方公共団体との合意に基づき古人骨資料が当該地方公共団体へ移管される際は、研究資料としての保存継承と研究機会の継続的な提供を合意内容に含めるべきである。

京都大学を対象としては、沖縄県以外の地域の古墓から収集された人骨に対しでも個人から返還要求があったと報道されております。上記の原則が守られない場合、将来、国内古人骨を扱った研究が著しく阻害され、国内の各地において過去にどのような身体特徴・生活様式の変遷があり、地域多様性が形成されてきたかを明らかにすることができなくなることを憂慮します。また、上記の原則から外れ、当該地域を代表しない特定の団体などに人骨が移管された場合、人骨の所有権をめぐる問題の複雑化や、さらには文化財全体の所有権に係わる問題へと波及する可能性がある点にも憂慮しています。古人骨資料の管理につきましては、今後、様々な運動が発生するかもしれませんが、100年、200年先、あるいはさらに遠い将来を見据えながら、国民共有の文化財という認識に基づいて対応をとっていただきたいと考えます。
よろしくおねがいします。
以上


<関連サイト>

軍事植民地と「琉球(沖縄)の自己決定権」との闘いが開始された (奈良-沖縄連帯委員会・崎浜盛喜)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_691.html

琉球遺骨返還請求訴訟・支援集会の御案内 2019年1月15日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_157.html

☆ 琉球遺骨返還請求訴訟・支援集会の御案内(主催:琉球遺骨返還訴訟・支援全国連絡会 2019年1月15日) 
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_156.html