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(世界の新聞/ 韓国・ミンプラス 2018518日付)
http://www.minplus.or.kr/news/articleView.html?idxno=5127


        敵対行為を止めずに、対話と平和を言ってはならない


金桂冠 朝鮮外務省第一次官―談話が指摘する、北南・朝米関係の展望


 

    
▲米国の戦略爆撃機B-52Hが、去る116日(現地時間)、グアム・アンダーソン空軍基地に着陸している。[(写真出処:米空軍のホームページ)ニューシス 2018.1.17]  

朝米関係改善の真正性を疑わせる韓米連合空中訓練

良く発展していた韓半島情勢の流れに、急制動がかかり、重大な局面を迎えている。朝鮮は、韓米連合空中訓練である「マックスサンダー」(Max Thunder)訓練強行などを理由に、16日に日予定されていた南北高位級会談の「無期限延期」を宣言した。 続いて17日には、リ・ソングォン祖国平和統一委員長が、朝鮮中央通信社記者との問答で、“南北高位級会談を中止させた重大な事態が解決されない限り、南朝鮮の現政権と、再び向き合って座ることは容易に行われない”と述べた。
問題が深刻なのは、同時に北米サミットにも赤信号が灯ったという点である。 同日、キム・ケガン(金桂冠)外務省第1次官は、談話で“一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、近づく朝米首脳会談に応じるかどうかを再検討する他ないだろう”と強く警告した。“トランプ行政府が、朝米関係改善のための真正性を持って、朝米首脳会談に出る場合、私たちの応当な呼応を受ける事になるだろう”と会話の扉を開いて置いたが、しかし、会談をしない可能性があると言う立場を明らかにしたという点で‘重大で、根本的な問題提起’として見なければならならない。

長年の北・米(朝・米)敵対関係を清算して関係を正常化すること

巡航していた南北/米朝関係が、乱気流に包まれた原因は何であるか。この点を知るためには、金桂冠第1次官の談話に盛り込まれた、朝鮮のメッセージを理解する必要がある。
朝鮮の対米メッセージの一つ目は、北・米首脳会談の焦点は、長年の北・米(朝・米)敵対関係を清算して、関係を正常化することである。  6月12日、シンガポールでの開催として、北米サミットの日付と場所が確定されたのは、トランプ大統領が、<韓半島の非核化と対北朝鮮敵視政策を廃棄し、関係正常化をしようというキム・ジョンウン委員長の提案>に同意したからである。
ポンペイオ国務長官の、2次平壌訪問直後である、去る512日、朝鮮が、北部核試験場(プンゲリ核実験場)を、来る23?25日の間に、国際記者団が見守る中で廃棄すると発表したことや、抑留米国人を電撃釈放した事も、成功的な北・米首脳会談の為の、前向きの措置として考えられる。

朝米交渉は核保有国間の平和共存のための交渉

米国が見せた態度は、果たして首脳会談をする考えがあるのか疑う程の、挑発と妄言の連続だった。

ホワイトハウスと国務省の高位官吏達の間では、<先に核放棄、後に補償に従うリビア方式」、「CVID(完全かつ検証可能で後戻りできない非核化)ではないPVID(永久的検証可能で後戻りできない非核化)」 、「核とミサイルだけでなく、生物化学兵器の完全廃棄」、「ICBM完全廃棄」、更には「核放棄の際、経済的補償を提供」、「北の人権問題の議題化」まであふれ出ている。 金桂冠第1次官の表現を借りれば、「対話相手を深く刺激する妄言が、やたら飛び出しているよう」である。 いわゆる「リビア式解法」は、核問題の平和的解決策ではない。 トランプが認めたように、帝国主義の典型的な《不良政権除去》工作だ。

 核武力完成前にもこれを拒否した朝鮮が、核武力が完成された今日、これを受け容れるわけはない事は、聞かなくても判り切った事実だ。
朝鮮は、北・米の交渉を、核開発段階の国と核保有国との間の核放棄 - 補償交渉ではなく、核保有国間の平和共存のための交渉であることを明確にしている。 これが、金桂冠談話に盛られている朝鮮の対米メッセージの二番目だ。
「金桂冠談話」で、“米国が、我々が核を放棄すれば、経済的報酬と利益を与えると騒いでいるが”“前政権と別の道を歩くと主張しているトランプ政権が、我々の核がまだ開発段階にあるときに、以前の政権が利用した、かび臭い対朝鮮政策案をそのままいじりまわしているのは、幼稚な喜劇に違いない”と、核放棄の経済補償案を断固拒否したのも同じ脈絡だ。

米国の対北朝鮮敵対政策と核の脅威が終わらない限り、核を放棄しない

「金桂冠談話」に込められた3番目のメッセージは、“我々は、既に朝鮮半島の非核化のための用意を表明し、この為には、米国の対朝鮮敵視政策と核の脅威・恐喝を終える事が、その先決条件となる”と言う文章に含まれている。 「先決条件」で表現したのは、米国の対北朝鮮敵対政策と核の脅威が終わらない限り、核を放棄しないというものである。
事実、この言葉は、あえてメッセージと解釈する必要もなく、極めて常識的なものである。 厳しい国際社会で、相手(帝国主義者)が銃口をねらっているのに、予め、銃を下に置くバカはいない。したがって、朝鮮半島の非核化(北の核廃棄と米国の核の脅威の除去)と米国の対北朝鮮敵対政策の廃棄、北米関係正常化は、行動対行動の原則の下、同時的、段階的に移行されるしかないということも常識に近い。

トランプ大統領は‘ボルトン’に代表される対北強硬勢力と一線を引け

「金桂冠談話」に込められた4番目のメッセージは、トランプは‘ボルトン’に代表される対北強行勢力と、断固、一線を引けと言うことだ。事実トランプが、代表的な「対北朝鮮強硬論者」として知られる‘ボルトン’を、対北朝鮮政策を総括する安保補佐官に座らせたのは、トランプが置かれている政治的危機と関連している。 弾劾の危機にまで追い込まれたトランプとして、北米交渉の結果を自己の対北圧迫の成果として包装する必要と、北米間妥協交渉の結果に応じた米国内の対北朝鮮強硬勢力の反発を制御する必要があったからである。
ところで、今進行される様相は、まかり間違えば、付き添いが結婚自体を台無しにする事もある深刻な状況だ。 「金桂冠談話」は、トランプに次のようにアドバイスしている。 “もし、トランプ大統領が前任者の前轍を踏襲すれば、以前の大統領が成し遂げていない最高の成果を挙げようとした初心とは裏腹に、歴代の大統領よりも無惨に失敗した大統領として残るだろう。”
今「世紀的談判」と呼ばれる612日、北米首脳会談開催の当否は、米国の態度にかかっている。 トランプ大統領も「リビア式解法」はないとして、急いで進化して出ているが、重要なのは、‘トランプ式’だとか、何とか言う命名が重要なのではなく、核の脅威と敵対政策廃棄の真正性を疑わせる敵対行為を実質的に中断する事だ。
その代表的なもの韓米合同軍事訓練である。 韓米両国は‘通常の防衛訓練’だと言うが、朝鮮指導部を狙ったF-22ステルス戦闘爆撃機まで大規模に参加する軍事訓練を、防衛訓練だと言うのなら、防衛訓練ではない訓練が、この世の仲のどこにあるのだろうか。 ムン・ジェイン政府の表現通り、立場を変えて考えて見れば、北の反発が十分に理解されるだろう。

ムン・ジェインを通じて朝・米首脳会談を提案した真意を理解していない南政権

ところで、南北首脳会談を控えて、キーリゾルブ訓練を了解するとしていた朝鮮が、マックスサンダー訓練強行には何故高位級会談を無期延期する措置まで取ったのか、その理由を深く察しなければならない。
よく知られる様に、朝鮮が、板門店会談を控えて開かれたキーリゾルブ韓米合同訓練を了承したのは、朝・米情勢が深く梗塞(こうそく)された状況で、南側政府がこれを停止することが出来ない状況にあるという点を考慮したものである。
キム・ジョンウン委員長が、朝・米の直接対話が十分に可能であったにも拘わらず、敢えて、平昌オリンピックを契機に、南北関係の改善を先行して、北米サミットもムン・ジェイン大統領を通じて提案したのも、韓半島の平和を達成する事で、南北が力を合わせて行こうと言う意味を込めているのだ。
その後、全民族的な支持と世界の関心の中、歴史的な板門店宣言があった。 板門店宣言に対する国民的支持は、まさに全幅的だ。朝・米間でも、永い敵対関係を終わらせ、関係正常化の為の‘世紀的な会談’を控えている広場だ。更に朝鮮は、核実験場閉鎖と抑留米国人釈放など、先行的措置まで取った。
それでも、ムン・ジェイン政府は、韓米合同軍事訓練を中断出来なかったのか。少なくとも、対話が進行される間では中断しようと、米国に要求できなかったのか。今の情勢が我が民族に、二度と来ることが出来ない機会だと言う事は、一言の必要さえ無い事だ。

文在寅政府は外勢の手を握って同族を圧迫する敵対行為を中断せよ

米国こそ、自分の利益に従い、或いはトランプ政権の政治的立場によって、交渉に乗り出したりもして、状況を破棄することもある。 しかし、南と北は、また来ることができないこの機会を、必ず助けて新たな平和と繁栄の時代を開く崇高な責務がある。 韓半島の情勢は、南と北がどうするかにかかっている。 これが南北首脳会談を米朝首脳会談の前に行われた理由であり、板門店(パンムンジョム)宣言に盛り込まれた精神である。
その第一歩は、外勢の手を握って同族を圧迫する敵対行為を中断することである。 これを実践しなければ、南北関係も、北米関係も、新しい時代へ進むことができない。 文在寅(ムン・ジェイン)政府は時代の流れを信じ、国民の力を信じて堂々と宣言せよ。 もう、同族に対して外国の軍隊と合同で軍事訓練することは永遠に中断すると。
                                             (訳 柴野貞夫 2018519

<参考サイト>

☆[金桂冠 朝鮮外務省第一次官―談話一方的な核放棄だけを強要するのであれば、我々はそうした対話に興味を持たない(ウリミンゾクキリ 2018年5月16日付)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_629.html

 

[論考A]朝・米首脳会談の目的は、米国に対して核脅威による「対北敵視政策」を放棄させる事にある(柴野貞夫時事問題研究会 2018年4月13日)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_63.html

 

☆ 論考/米国と安倍政権は民族同士の対話に対する妨害策動をやめろ(その1) (柴野貞夫時事問題研究会 2018年1月28日)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_61.html

 

☆論考/「安倍・国連演説の欺瞞を徹底批判する」 柴野貞夫時事問題研究会 2017年10月6日付)

http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_59.html