(世界の新聞/この本は朝鮮に対するあなたの全ての考えを覆す 「ミンプラス」 2021年1月28日付)
http://www.minplusnews.com/news/articleView.html?idxno=11362
この本は北韓(朝鮮)に対するあなたの全ての考えを覆す<その3(最終回)>
A.B. Abrams著『不動の目標・北韓、米国、70年間戦争中』(Immovable Object: North Korea’s 70
Years at War with American Power)が新刊された。以下は、米国の言論 「Information Clearing House」が、この本を紹介した文である。
ブラームス(A.B. Abrams)の新刊、‘不動の目標・北韓、米国と70年間戦争中’は、米国側の北韓に対する一般的考えが、大部分間違ったものである事を示してくれる。
(原文はこのサイト→ http://www.informationclearinghouse.info/56063.htm)
▲ピョンヤン地下鉄構内。大理石とシャンデリアが美しい。料金は、全区間1円。大理石は、朝鮮に無尽蔵にあり、すべて国産品だ。(写真出処―柴野貞夫時事研)
朝鮮戦争後、朝鮮は他のいかなる社会主義国家よりも堅実な経済的成果を示した
米国は、韓国戦の間に、初めて北韓に対する封鎖措置を取ったあと、1980年代まで、その措置を延長した。その目的は、北韓を世界経済から完全に孤立させようと言うものだった。それにも拘らず、冷戦の全時期を通して朝鮮は、社会主義陣営の他のいかなる国家よりも、堅実な経済的成果を見せた。これ等の成果は、農村地域まで含む全地域で、高い技術水準の教育を実施した御蔭で可能だった。
朝鮮は、驚くほどの巨大な水力発電ダムと、全世界で最大の深さの地下鉄を建設した。特に深い地下鉄建設は、韓国戦争の間に地下防御施設を建設していた経験があったからこそ可能だった。
朝鮮戦争後、南朝鮮は李承晩体制のもとで最も貧しい国家として存在していた
朝鮮が、戦後に速い速度で社会の基盤施設(インフラ)を再建した一方、南韓は1960年にイ・スンマン(李承晩)が、学生主導のデモで権力の座から追放されるまでに、全世界で最も貧しい国家として残っていた。イ・スンマンが、執権する間、南韓はGNPの25%を米軍兵士相手の売春に依存していた。58歳の売春経験のあるキム・エランさんは、2009年に “our government was one big pimp for the
U.S. military.”と述べた。(訳者注:原文を訳せば、「我々の政府(李承晩)は、米軍の一番大きなポン引き(pimp)だった」と言っている。)
▲1960年、李承晩の追放につながった学生の抗議運動。この闘いで、188名の学生が虐殺された。[出典:libcom.org]
朴正煕統治下、南朝鮮経済は日本資本の大規模投入とベトナム特需で成長した
南韓経済は、1970年代のパク・チョンヒ(朴正煕)統治下で、成長し始めた。パク・チョンヒ政権は、イ・スンマン(李承晩)政権より、経済の運営で有能とされ、日本資本の大規模な投入と言う利点を享受した。(訳者注1)
北朝鮮人民は、有る者と無い者との格差が小さいため、剥奪感はあまり感じていない
1977年、前韓国中央情報部長キム・ヒョンウクは米国議会で、“北韓(朝鮮)では、有るものと、無いものとの差が無い為、北韓国民が南韓国民より、朝鮮)では、有るものと、無いものとの差が無い為、剥奪感をあまり感じない様だ”と語った。
この様な北の経済生産が減少していた時期にも、キム・イルソン家門が政権を維持した理由を説明してくれる。
朝鮮は、米国の経済封鎖によって「苦難の行軍」の時期を迎えた
1990年代は、朝鮮に特別な苦難の時代だった。1994年に、金日成が死亡し、彼の息子のキム・ジョンイル(金正日)が後を継いだ。朝鮮は、社会主義陣営の崩壊によって重要な貿易相手国を失ってしまった。
弱り目に祟り目(雪上加霜)、朝鮮は相次ぐ自然災害に見舞われた。南西部を洪水が襲い、食料倉庫が消えた。この洪水により、150万トン規模の地下穀倉が破壊された。その他にも、電力生産能力の85%が消え、540万の人民の家が失われた。朝鮮では、この危機を「苦難の行軍」の時期と呼ぶ。通常の状況だったら、国際社会が、痛みを緩和させる為、介入しただろう。
しかし、クリントン行政府は、むしろ、経済封鎖措置を強化し、朝鮮に入って来た油類供給まで、遮断した。その意図は、不満を植え付け、政権交代を容易に仕様とする事にあった。
中国国境に駐屯していたCIAのエージェントは、絶望的な境遇の農民に、牛の尻尾を代価に、コメを提供し、この取引後には、朝鮮の農業経済を更に徹底的に崩壊させると言う計算が隠れていた。油や電気が無くて、トラクターを稼働させる事が出来ない状況では、牛が唯一の耕作手段として残る事になる。この時、牛を無くそうとすればその意図が、飢餓を誘導しようとしたものと見る他は無い。
米国は、制裁措置によってあらゆる人道的支援を阻止妨害した
朝鮮人民は、あらゆる残忍な手段(米国と同調国家からの)が動員されている致命的な地政学的ゲームで、永い間人質に取られていた。その類例を探して見ると、サダム・フセイン政権を崩壊させる事にその目的があった経済封鎖措置が、少なくとも、50万人の子供達を死に追いやったイラクの場合である。
朝鮮の場合、ユニセフと世界食糧機構が、子供達にビタミンAサプリメントを提供しようとしたが、米国が妨害し、その結果、少なくとも2,772人の子供たちが死んだ。2010年代後半の出産健康に関連する医療機器に対し、下された制裁措置は、その衝撃が妊娠女性72人と、新生児1200人の死亡として現れた。
米高官は、北の核武装を「生存の為の出口戦略」だと認めた
朝鮮が、経済制裁と政権交代企図に直面し、不可避的に核牽制力を開発する他に無かった事を、オバマ時代、国家情報院長を務めたJames Clapperの様な米国の高官達も認めた。Clapperは、朝鮮の核プログラムについて、“生存の為の出口戦略”と話した。
1994年6月、クリントン政権は、朝鮮の核プログラムの為に戦争の瀬戸際まで接近した。その危機は、金日成政権が、ヨンピョン核施設を調査すると言う国際原子力エネルギー監視機関(IAEA)の要請を拒絶する事から始まった。北側は、彼等だけが差別的な対象となり、調査チームに(米国の)情報要員が浸透することが出来ると言う理由で断った。
クリントン政権は、北の核プログラム凍結に応える、全ての約束を踏みにじった。米国側が、先制軍事攻撃で脅迫するや、ジミー・カター前大統領が平壌に運ばれ、キム・イルソン(金日成)に会った。そして彼の仲裁で、朝鮮は武器生産が不可能な新しい原子炉と、エネルギー需要を満たすために役立つ原油の供給と引き換えに、自身の核プログラムを凍結すると言う内容の合意を受け容れた。
国務省の官吏として、その交渉で重要な役割を演じたSelig S. Harrisonは、のちに、北側が交渉の目標に合致するように、ヨンピョン(寧辺)原子炉稼働を中断したが、クリントン政権は自らの約束を守らなかったと確認した。
特に、朝鮮が食料不足を始めとする経済問題を解決する為、経済制裁の解除が必ず必要であったが、クリントン政権は北側の要求を無視した。ここにとどまらず、米国側は、約束した原油供給と軽水炉の提供を実行に移すことはなかった。北側はこの時点で、米国への信頼を完全に失い、2002年の核協定(NPT)から撤収し、核兵器の独自開発に拍車を掛けた。
米国は、悪の枢軸からトランプまで、デマと捏造で朝鮮を「悪魔化」してきた
ブッシュ政権は、朝鮮を、イラク、イランなど、テロリズムの支援国だと推定される国々と共に、「悪の枢軸」と規定する事によって、火に油を注いだ。米議会調査局のアジア専門家であったLarry Nikstchは、“北での政権交代が、ブッシュ政権の主たる目標であった”と述べた。
この目標を達成する為に、経済封鎖,他にも北の航海路を遮断するなど、新たな経済的圧力が加えられ、こんな圧迫が失敗した場合に備え、国防長官Donald Rumsfeldは、“多数の目標に向けた、大々的な攻撃目標を幅広く”考慮していた。
ブッシュの在任期間の間に、暫くの雪解け期があったが、オバマ政権は北への経済圧迫を強化し、朝鮮の核基盤に対するサイバー攻撃を敢行するなど、強硬路線に沿ったアプローチを新たに実施した。オバマ政権が、自由主義的基調にも拘らず、保守主義者らと共に前述の政策を選択したのは、彼ら自身が、アジアの悪、共産主義政権の一つを相手に、善い対決を広げていると言う考えに閉じ込められていたからである。
数年の間、主流言論達は、朝鮮を悪魔化するのに熱中し、<金を引き換えに朝鮮に対する逆情報を売る脱北者>の話しを垂れ流した。(訳者注2)
2017年、キム・ジョンウンは、マレーシアのクワラルンプール空港で、彼の異母兄弟であるキム・ジョンナム(金正男)を暗殺したと非難された。しかし、マレーシア捜査当局は、キム・ジョンウンが連座したどんな証拠も探せない。北の公安局は、米国の学生、Otto Wambierを拷問して死に至らしめたと言う非難があったが、この非難もまた証拠が無かった。
朝鮮に対する偏見を持って見ていたが、これは間違いだった
国務長官 Madeleine Albrightは、2000年にピョンヤン(平壌)を訪問した時、自分が朝鮮に対し、逆宣伝と偏見によって何か大きく間違ったことを悟ったと語った。彼女は、キム・ジョンイル(金正日)が、どんなに奇異な人物なのか報告を受けたが、彼は会談を良く準備し、魅力的で、スマートで、軍事分野に関する技術的な問題までに良く知っており、豊富な情報を持っていると言う事実を知る事が出来たと述べた。
CIAのハリウッド映画は「人種主義的イメージと用語」で作られた
朝鮮に対する一般大衆の典型化された見解は、2014年にソニー社が制作したハリウッド映画『The Interview』で良く現れている。或る観覧者によれば、この映画は、「人種主義的イメージと用語」を採択し、“北朝鮮の戯画化された指導者が血だらけで処刑される場面”を“楽しく”伝えようとするものである。
製作者兼俳優のSeth Rogenは、彼を始めとした制作陣が、政府で働く人物達に合って助言を受けたが、彼らがCIAに所属していると言う印象を強く受けたと述べた。その映画は、長く持続された宣伝活動の一部だった事が明らかだったのであり、制作陣の予想を越えて大きな成功を収めた。
北側はしっかりした思想的根拠のもとで、道徳的に優位に立っている
2018年と2019年の二度亘って、ドナルドトランプが朝鮮の指導者キム・ジョンウンに会った時、彼に向かって嘲笑が幅広く溢れた。Hillary
Clintonは、ピョンヤンとの交渉に向けた彼の動きを、“豚に口紅を塗った恰好だ”と語った。
外交的提案を刈り取る他ないとき、トランプは、中国に対する圧力を、北を調整する梃にし様とした。しかし、この様な試みは、失敗するしかない。北―中関係は、北京が平壌を支配する新帝国主義的関係ではなかった。
アメリカ人は、朝鮮の人民がクレイジーと思うが、朝鮮の人民はその逆が妥当だと信じる。北側の信仰が、遥かにしっかりとした根拠の上に立っている。米国が始め、米国が終えなければならない葛藤で、北側は道徳的に優位に立っている。
(終わり)
(訳―柴野貞夫)
【訳者注】
(注1)
日本は朴軍事体制に対し、日韓条約(1965年)によって有償・無償8億ドルを戦後賠償見合いとして支払い、日本帝国主義三十五年にわたる植民地支配による、朝鮮半島全域の民衆と国家への責任を、南朝鮮政権との単独賠償で処理しようとしたのである。朝鮮に対する賠償は、現在もなお、放置されたままである。
日本は、これによって朴軍事ファシズム政権の経済的後ろ楯となり、更に朴は、米国のベトナム戦争の最前線(米兵による掃討作戦の先頭には、常に韓国軍がいた)に、延べ30万の兵士を送り込み(ハンギョレ21・第273号)10億ドル以上の特需を手に入れた。現在までの検証でさえ、3千余件の韓国軍によるベトナム民衆虐殺事件が明らかになっている(同上)。朴時代に於ける韓国経済の“漢江(カンガン)の奇跡”と言われるものがこの二つの経済効果によるところが大きいことは、否定しがたい。
(注2)
シン・ドンヒョクの虚偽証言による著書『キャンプ14からの脱出』が、‘朝鮮人権問題’に関する国連調査委員会の調査基調となった。
<ニューヨークタイムス>と<ガーデイアン>も、多くの脱北者達の証言が、虚偽であることが判明されただけでなく、この 脱北者達も後に、国連調査委員会の調査の基調となった彼らの証言を撤回したとした。彼らは当初 最も扇情的で衝撃的な虚偽陳述に対し、時間当たり500米国ドル以上の、多くの報酬を受けたと報道した。
架空的な内容の『キャンプ14からの脱出』は2012年に出版され、27か国の言語で翻訳された。(邦題:『北朝鮮14号管理所からの脱出』として、日本でも出版されている。)
その著者、シン・ドンヒョク氏は、前国連人権担当責任者であるNavi Pillayに会っており、彼の虚偽陳述が国連調査委員会の調査基調となった。シン氏はその後に、彼の陳述の主要部分を撤回し、調査官たちに謝罪した。
<関連サイト>
☆532 国連による対北制裁は朝鮮の‘悪魔化’から始まった(プレシアン 2016年4月25日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_532.html
☆580 世界がまき散らしてきた朝鮮関連の4つの嘘を廃棄せよ(ミンプラス 2017年5月13日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_580.html
☆論考/国連安保理の役割と、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁
http://www.shibano-jijiken.com/SEKAI%20O%20MIRU%20SEKAI%20JOUSEI%2030.html
☆594 国連の対朝鮮《安保理制裁決議》の犯罪的真相を暴く(ウリミンゾクキリ 2017年3月16日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_594.html
☆ 論考/安倍・国連演説の欺瞞を徹底批判する (柴野貞夫時事問題研究会 2017年10月6日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_jousei_59.html
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