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(民衆闘争報道/ 琉球遺骨返還請求訴訟・奈良県会議通信 20191226日)


<琉球人遺骨返還を求める奈良県会議>通信・第7
        11.29琉球遺骨返還訴訟第4回口頭弁論を終えて


琉球人遺骨訴訟の第4回口頭弁論が開かれた
 20191129日午後2時より琉球人遺骨返還訴訟の第4回口頭弁論が京都地裁大法廷で開かれた。午後1時前には地裁前に多数の原告支援傍聴希望者が集まり、100人以上の傍聴席は満席で、抽選に漏れた人も外で弁論を見守った。
 法廷では、まず初めに原告側弁護士から、第3準備書面の概要が説明された。これは被告の京都大学が提出した準備書面()の問題点を明確に指摘するものだ。まず盗骨の中心的実行者 金関の行為は、京都大医学部内の2つの講座(清野・足立)による組織的取り組みとして行われたものであり、金関は、足立の講座に属し、引き継いだことが明らかになっている。またもう一つの講座を指導していた清野は、異常な収集癖を持ち、京都市内22寺社から1360点もの経典を無断で持ち出し(窃盗)、辞職するに至った。
 しかし辞職後も「優良」民族を「劣った」民族と混在させて反映させるという「大東亜共栄圏」構想を支持したり、捕虜数千名を人体実験で犠牲にした731部隊の医学顧問としても関与していた。まさに金関の盗掘行為は、人命を軽視し、遺骨を単なる研究対象としてしか見ないこれらの組織から生み出された組織的盗掘・犯罪と言える。
 また被告京都大学は、金関が収集し持ち帰った遺骨は、金関が台湾大学に移籍した際に台湾大学に移送しているが、どの程度移送したのかは不明とした。移送しなかった遺骨は総合博物館にあるが、金関だけが収集(=盗掘)したのではない等とし、「全容の把握には、なお時間を要する」としている。結局、人骨がどこにどれだけあるかは分からないということだ。しかも台湾大学から返還された遺骨は63体で、そのすべてが頭骨のみだったということだ。保管しているとしながら、その保管場所や全体像すら明確に示せないという体たらくぶりに怒りがわいた。

照屋寛徳さんの意見陳述“傲岸不遜、盗人猛々しい植民地時代の宗主国の態度”と批判
 続いて沖縄県選出で現衆議院議員の照屋寛徳さんの意見陳述が行われた。まず冒頭に「サリ ウートウトウ ウートウトウ」と琉球の言葉で盗骨にあった先祖に供養をささげられた。そしてこの裁判は琉球・沖縄人の全てが原告としての適格を持つことを強調された。
 次いで自らの生い立ちに触れて、19457月にサイパンの米軍捕虜収容所で生れたこと、同年に沖縄で生まれた者の中にはお墓の中で生れた者がたくさんいる。それは戦時中、防空壕やガマ(自然洞窟)に避難していた住民を日本軍は追い出し、自分たちの隠れ家にしたケースが多くあり、やむなくお墓に避難した人が多かったので、そこが新しい生命の誕生の場ともなったということだ。ウチナーンチュのお墓に対する思いはそんなところにも表れている。(右写真:集会で報告する照屋寛徳さん)

 さて、照屋さんは衆議院議員として20178月に国政調査権を発動して文科省を通して京都大学にこの遺骨問題についての照会をされた。その際、初めて金関が盗掘した琉球人遺骨が京都大学総合博物館に収蔵されている事、しかも遺骨はプラスチック製の容器に収納され、「人骨目録」も作成されていないことが判明した。さらに京大は、遺骨返還の意志も明確に示さなかった。その後の申し入れにも京大は不誠実極まりない態度に終始した。

照屋さんはこれを「傲岸不遜、盗人猛々しい植民地時代の宗主国の態度である」と批判した。
 最後に「ウチナーの未来はウチナーンチュが決める」という政治信念で、政治家、法律家、そして一人のウチナーンチュとして国策の犠牲の強要と闘ってきたこと、本訴の原告に加わったのは憲法13条、14条の精神をウチナーの今に具現化したいからだと力強く話され、裁判長に向かって、一日も早くウヤファーフジの神々(骨神)を百按司墓に再風葬し、供養できるようお願いすると訴えられて、陳述を終えられた。その後、弁護士会館で報告集会が行われ、熱心に話し合われた。


<報告集会>

照屋寛徳さん“この裁判を、原告団・支援の皆さんと最後まで闘っていきたい”との強い決意を表明
報告集会では、最初に、今回意見陳述をされた照屋寛徳さん(午前中「桜を見る会の追求問題」で忙しくされ、裁判所の方に駆けつけてこられた)からの報告があった。まず伝えたかった事として、この裁判の原告適格は、第1尚氏の末裔だけでなく、ひろく琉球・沖縄人全体が原告適格を有するのだということと、不誠実で傲岸不遜な態度を取り続けている被告京都大学の態度が許せないということ。復帰後47年間日米軍事植民地下のもとにおかれ、憲法の精神が全くウチナーに適応されなかった。「人間として、ウチナー琉球人としての誇りと尊厳にかけてこの裁判を、原告団、支援の皆さんと一緒に最後まで闘っていきたい」と強い決意を語られた
見陳述からは削除されたが、原稿にあるウチナーの手による首里城再建への思いも語られた。また、1月に沖縄県名護市で、「照屋寛徳が新しい桜を見る会をやりましょう!」参加資格は、毎月第一土曜日のキャンプシュワブゲート前座り込み闘争への参加が必須条件。「頑張りましょうね」と。支援者たちの大きな拍手と笑いが起こり、皆元気をいただいた。


京都大学の組織的関与
 続いて弁護団から今回の原告ら第3準備書面の補足説明があった。京都大学は、金関が遺骨を持ち帰ったことと、「清野コレクション」という資料に依拠して原告側が骨を特定した百按司墓の人骨を現在京都大学の総合博物館に所蔵しているという2点については認めている。ただし、金関の手記「琉球の旅」をもとにした調査から、百按司墓の人骨の全部をまたは一部を金関じゃない人間が盗った可能性があると言ってきている。

 それに対し、同じ金関の手記「琉球の旅」を読み解くと、金関が、被告京都大学の医学部「解剖学第二講座」足立文太郎教授の命を受け、国費補助を用い、先発的に、琉球人骨収集に赴き、沖縄の、特に、遺骨に対して手厚く弔う葬送習慣・文化を認識したうえで、いかに首尾よく収集できるかについて苦心し、琉球併合以降、県の中枢職員が日本本土出身者によって占められていたことを利用し、関係部署上層部に渡りをつけ、盗掘の際のトラブルに備え、巡査らを監視役として立ち会わせ、百按司墓を含む沖縄本島のゆく先々で琉球民族の遺骨を盗み取っていた。
 また、関係部署上層部に渡りをつける以前に墓から遺骨を持ち出してもいる。さらに、金関が盗掘した琉球人骨は、古人骨に限らず、ご遺骨、中には、ご遺体といって過言でない状態のものや、遺された夫・父親が葬送していた妻子と思しき遺骨までその墓を暴いて盗んでいる。京都大学の組織的関与に加え、本当におぞましい、許しがたい行為である。
 また、清野事件(清野謙次の異常な収集癖から京都市内の寺院から経典類を盗んでいる)、や「731部隊」顧問としての関与については、学知の暴走、学知の植民地主義の例として、若い学生の方々にも是非知っておいて広げてほしいと、弁護士の方から伝えられた。最後に、京都大学は「目録はない」と言っているが、目録はあり、清野コレクション「人骨標本番号」目録の開示を求め、さらに京都大学を追求していきたい、との弁護団の今後の方向性が述べられた。
 進行協議を終えた丹羽弁護士の方からも補足と進行協議の内容説明がなされた。協議の中、裁判長の方から、京都大学は裁判所に目録を事前に提出しているということが明らかにされ、早急に原告に提出するかどうか検討するよう(京都大学が目録を出す義務はない)京都大学側に伝えられた。照屋さんの意見陳述が裁判官に伝わったようである。皆が、大きい流れになってきていると感じることができた

新たに弁護団に加わった、在日コリアンのク・ヤンオク弁護士
 また、新たに弁護団に加わった、在日コリアンのク・ヤンオク弁護士が、丹羽弁護士に紹介された。京都朝鮮学園のヘイトスピーチ問題にも関わったク弁護士は、昨年までの2年間、アメリカ、イギリスで差別禁止法について学び、国際人権法の観点から日本の差別問題について考え、分断されたマイノリティが一緒に、国際人権を普遍的なルールとして日本に浸透させていくための闘いと考え頑張っていきたいと熱く語った。頼もしい弁護士が加わった。
 さらに、玉城さん、亀谷さん、松島さんから裁判への思いと支援へのお願い、それに続き、各地域の支援者団体からの活動報告があった。まず琉球の「ニライカナイぬ会」から、歴史の中でウチナーンチュを差別してきたことへの怒りと連帯の力強いアピールがあり、滋賀の会、奈良、大阪と続いた。奈良県会議からは崎浜さんが、この間の奈良での取り組み(11月の憲法つどい、サンウリムでの展示など第4日曜の辺野古街宣等)を報告し、「最後まで闘いぬきましょう!」と連帯のアピールを行った。地元京都の京都大学学生から「京大11月祭」での取り組みの報告があった。何の反省もしないまま、今、125周年を祝う準備を進めている京大の態度、帝国主義、植民地主義を背景に研究を優先してきた京大の態度を改めさせていけるようできることをやっていきたいとの学生たちの決意に対し、支援者たちからも「頑張れよ」のエールが送られた。
 最後に、遺骨の研究に詳しい板垣さんから、この間の報告があった。奄美からの京都大学申し入れに対する許せない態度。なかなか進まない京大の調査。11月に記者会見もないまま白老のウポポイに返還されたアイヌの遺骨、どれも京大の不誠実さ、許されない態度と怒りを感じた。裁判は大詰めに来ている。
 次回、第5回口頭弁論は2月27日13:00傍聴抽選、14:00。京都地裁大法廷に結集しようとの原告、弁護団、支援者たちの強い決意で報告集会を終えた。

 第5回口頭弁論のお知らせ
  ・2月27日 13:00傍聴抽選、14:00〜
  ・京都地裁大法廷


<沖縄県のHPより>

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<関連サイト>

☆ 民衆闘争報道/日本人類学会「要望書」について(<琉球人遺骨返還を求める奈良県会議>通信・第6号)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_161.html

☆ 軍事植民地と「琉球(沖縄)の自己決定権」との闘いが開始された (奈良−沖縄連帯委員会・崎浜盛喜)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_159.html

☆ 琉球遺骨返還請求訴訟・支援集会(主催:琉球遺骨返還訴訟・支援全国連絡会 2019年1月15日) 
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_156.html

☆ 「琉球人遺骨返還を求める奈良県会議」を結成した(奈良−沖縄連帯委員会代表・崎浜盛喜 2018年10月26日)

http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_154.html