([連続論考@] 朝・米首脳会談を通して、東北アジアの情勢を見る 2018年6月10日)
[論考@]
朝米首脳会談における米国の義務は、朝米関係正常化を実現する事だ
一方的な朝鮮の核放棄〈武装解除〉を前提とする敵対的朝米対話は破綻した
▲金英徹(キム・ヨンチョル)副委員長が'金正恩(キム・ジョンウン)親書'をトランプ大統領に伝えた [出処―ホワイトハウス・ソーシャルメディア局長、ツイッターキャプチャ]
「対話を請託したのは米国の側」と崔善姫(チェ・ソンヒ)次官が明言
朝鮮特使が米国大統領に会うのは、2000年10月、趙明禄(チョ・ミョンロク)副委員長以来18年ぶりである。5月9日、トランプは、3月5日に金正恩委員長と面会した青瓦台国家安保室室長を通して、キム・ジョンウン委員長との首脳会談開催の意思を即座に明らかにした。その理由は、朝鮮に対する侵略的核先制攻撃を実行する決定的なカードを失い、次第に危機意識が芽生えた米国民に対する対応を迫られたトランプが、朝鮮に救いを求めたからに他ならない。<無条件の対話>への動きは、北からではなく、先ず米国の側から始まった事実は、その後、朝・米間で取り交わされた遣り取りから明らかになった。
朝鮮の完成した自衛的核武力が米国の国家安全保障の上で脅威となり、トランプが朝鮮との<無条件での対話>に追い込まれた.。これが、朝米対話の真実である。
<対北敵視政策>は朝鮮国家の崩壊を前提とした‘欺瞞交渉’
1994年の朝米合意の破綻以降、朝米協議は、一方的な朝鮮に対する〈武装放棄―核放棄>を前提とする、<対北敵視政策>を基調として来た。この <対北敵視政策>は、朝鮮国家の崩壊を前提とした‘欺瞞交渉’と言う、本質的な性格に彩られていた。勿論、クリントン政権による対北正常化交渉が、趙明禄(チョ・ミョンロク)副委員長をホワイトハウスに招き、正常化の直前まで進んだにもかかわらず、次期政権(ブッシュ〉によって破綻したとの通説にも拘らず、実際には、クリントンもまた、対北崩壊政策を密かに準備していたと言う証拠が浮上している。
米帝国主義の歴代政権が引き継いで来た《対北敵視政策》は、現代戦の絶対武器である核兵器と、それと連動する弾道ミサイルの絶対有利な軍事的力関係を背景としているのはあきらかである。米国は、この力関係を背景に、主権国家に対する無法極まりない<核威嚇>を執拗に繰り返してきた。米国の、核威嚇を背景とする‘欺瞞交渉’、‘欺瞞外交の’典型が、その国家を丸ごと崩壊させたカダフィのリビアであり、フセインのイラクである。米国は、リビアの核資産を米国に移転させ、武装解除させた後、<国交正常化>を取り決めたものの、欧州帝国主義の軍事組織・NATOとともに、空爆と市民革命を装ったCIAの軍事組織を動員し、国家元首を街頭でなぶり殺した。<核放棄>したリビアは、米国との<正常化>も、国連の《庇護》も、何のあてにもならなかったのである。
戦略的力関係の変化を読めないトランプ政権の二人のネオコン
5月13日、安保補佐官ボルトンは、或る放送のインタビューで、“(朝米協議の先決条件として)北朝鮮のウラン濃縮とプルトニューム再処理能力が完全に除去されなければならない。全ての核兵器を解体し、テネシー州オークリッジ研究所に運び込む。朝鮮に対し、<永久的で検証可能な不可逆的非核化>
を負わせる”と意気丈高に主張した。同様に、副大統領のペンスも、21日、FOXニュースとのインタビューで、“北朝鮮がリビアの前轍を踏む事になる。朝鮮に対する軍事的選択案は排除された事がない。米国が要求するのは、<完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化>だと主張した。
先立つ5月8日、国務長官ポンペオは、金正恩委員長と2回目の会談を行い、「双方が満足のいく枠組み合意」を終えたばかりであり、それに水をぶちまける二人の行動だった。特に、ボルトンは、リビアに対する欺瞞外交に係った人物である。朝米交渉においても、米国の過去の戦略的核優位を振りかざす、敵対的政策に固執する人物である。
しかし、彼は、「火星15号」型弾道ミサイル試験発射の成功によって、米帝国主義に対する自衛的軍事的均衡を確立した朝鮮に対し、もはや、侵略的核先制攻撃を実行する能力を失った米国の現実を理解していない<過去のネオコン>に過ぎない。水素爆弾を装着した朝鮮の《ICBM》が、米国全土に到達すると言う、戦略的力関係の変化に対応できず、対北交渉に対し、北の核放棄が前提だとする歴代米国政権の主張をくりかえしたのである。
一方的な核放棄だけを強要するのであれば、我々はそうした対話に興味を持たない
トランプ政権内の二人のネオコンに対し、直ちにキム・ケグァン(金桂寛)第一次官は、「トランプ行政府が、我々の核が未だ開発段階にある時に、以前の行政部達が利用した、かび臭い対朝鮮政策案を、そのままいじりまわしているのは、幼稚な喜劇に他ならない。一方的な核放棄だけを強要するのであれば、我々はそうした対話に興味を持たない」と一喝した。
チェ・ソンヒ(崔善姫)次官も、「政治的に愚鈍で間抜けなペンス副大統領」とこき下ろし、「肩書きが、「唯一超大国’大統領であるなら、世情も知り、対話の流れと情勢緩和の気流に対しても,或る程度感じてこそ正常と言うものである。たかだか、わずかの設備を設けて撫ぜ回していたリビアと、 核保有国である我が国家を比べる事だけを見ても、彼が、どんなに政治的に愚鈍な間抜けであるかを推測して余りある」と罵倒し、「私は朝米首脳会談を再考慮する問題を最高指導部に提起する」とまで、明らかにした。
チェ・ソンヒ(崔善姫)次官は、この談話の中で、今回の朝米対話が、米国側の要請であったことを明確にしている。「自分らが先に対話を請託したにもかかわらず、恰も我々が対座しようと頼んだかのように世論を惑わしている底意が何か、果たして米国がここから得られると打算したものが何かについて、知りたいだけである。我々は、米国に対話を哀願しないし、米国が我々と対座しないと言うなら、敢えて引き止めはしない。米国が、我々と会談場で会うか、でなければ、核対核の対決場で会うかどうかは、全的に、米国の決心と行動如何に掛かっている。」
トランプは、チェ・ソンヒ次官の剣幕に動転し、体面を取り繕って、一度は首脳会談の中止を申し出たものの、朝鮮の核武力の完成が、自らの国家安全保障上の脅威である以上、会談は開かざるを得なかった。
朝鮮は、戦争抑止力を保有し朝鮮半島の平和的環境を作る決定的力を持つことになった
ピョンチャン(平昌)冬季五輪開催を前にして、キム・ジョンウン委員長が内外同胞と世界の民衆に呼び掛けた《新年の辞》は、北・南民族同士の和解と、外勢の介入による北・南の軍事的緊張を緩和し、朝鮮半島に、平和的環境を作り出す決定的な契機となった。
《新年の辞》は述べる。「冬季オリンピック競技大会が開催されることにより、北と南にとって、ともに意義のある年です。我々は、民族的大事を盛大に執り行い、民族の尊厳と気概を内外に宣揚するためにも、凍結状態にある北南関係を改善し、意義深い今年を、民族史に特記すべき画期的な年として輝かせなければなりません。」
「この地に火炎を上げ、神聖な国土を血に染める外部勢力との一切の核戦争演習を中止し、アメリカの核装備と侵略兵力を引き入れる一切の行為をやめるべきです。アメリカがいくら核を振りかざして戦争挑発策動に狂奔しても、今では、我々に強力な戦争抑止力がある為、どうしようもなく、北と南が決心すれば十分朝鮮半島で戦争を防止し、緊張を緩和していくことができます。」
朝鮮半島の北では、不条理にも、70年に亘って国家と国土と国民が、米国による核攻撃の脅威にさらされて来た。戦争でもない、平和でもない朝鮮半島分断の悲劇を、帝国主義に対する正義の抑止力の完成を背景として、断固として終わらせようとする金正恩委員長のメッセイジは、南北のみならず、平和と正義を求める全世界の民衆の、圧倒的な支持で迎えられた。
金正恩委員長の、オリンピックを民族の慶事として、南北が共に力を合わせ成功させる事を通して、朝鮮半島の戦争状態を解体しようと言う呼びかけは、半島の戦争状態を常態化して来た元凶―米帝国主義に対する<逆戻りさせることの出来ない強力で頼もしい戦争抑止力を保有した>と言う事実に裏付けられたものである。
《新年の辞》は、この<戦争抑止力>を具体的に次の様に指摘した。「我々は、各種の核運搬手段とともに、超強力熱核兵器の実験も断行する事によって、我々の総体的志向と戦略的目標を、成果的に、成功裏に達成したのであり、我が共和国は、遂に、如何なる力によっても何をもってしても、逆戻りさせることの出来ない強力で頼もしい戦争抑止力を保有しました。我が国家の核武力は、アメリカのいかなる核の威嚇も粉砕し、対応することが出来、アメリカが、無謀な火遊びを出来ない様に制圧する強力な抑止力となります。アメリカは、決して私とわが国家を相手にして戦争を仕掛ける事は出来ません。アメリカ本土全域が、我々の核打撃射程圏にあり、核ボタンが常に私の事務室の机の上に置かれているということ、これは決して威嚇ではなく、現実であることをはっきり知るべきです。」
「火星15号」型弾道ミサイル試験発射の成功は自衛的軍事的均衡を確立した
2017年11月29日、朝鮮民主主義人民共和国は、新型大陸間弾道ミサイル「火星15号」の試験発射に成功した。それに先立つ9月3日、第6回目の核実験を成功させたが、朝鮮核兵器研究所の声明で、それが「大陸間弾道ミサイル(ICBM)装着用の水素爆弾の実験」であると指摘していた。「火星15号」型弾道ミサイル試験発射の成功は、その(ICBM装着用の水素爆弾)運搬手段の成功であり、<米帝国主義に対する自衛的軍事的均衡>を確立した事を示している。017年8月1日、「北のミサイルは、米本土には届かないから、朝米核戦争が始まった場合、自分たちが死ぬわけでない。太平洋の彼方の日本人と南朝鮮人が我々の身代わりに死ぬだけだ」と言った、トランプの発言を紹介した米共和党のリンゼー・グラム上院議員の話を想起してもらいたい。
11月29日、米国全土をカバーする朝鮮のICBMの完成は、トランプを身震いさせる事となった。南朝鮮人と日本人を、米国の核先制攻撃の人身御供にすることが出来なくなった。米帝国主義とトランプは、もはや「制裁と軍事的圧迫、核の威嚇と国家テロ・斬首作戦」政策が破たんした事実を、内心認めざるを得なくなった。
トランプは、朝鮮の、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルが、米国本土において100%防ぐ事が出来なければ、米国は朝鮮を先制核攻撃出来ない事実を認識している。50%の確率もない,現在の米国のMD防衛体系では、朝鮮の自衛的核攻撃の前に無防備となる事を知っている。トランプは、朝鮮に対する侵略的核先制攻撃を実行する決定的なカードを失ったのだ。
朝鮮の、水素爆弾を装着した《ICBM》の完成と言う、新たな武器体系の確立は、今も大々的に展開される米・韓合同軍事演習の武器レヴェルを遥かに凌駕してしまった。トランプは、朝鮮の自衛的ICBMが、ワシントンに到達すると言う、自らが招いた災禍の予兆に身震いすることとなったのである。
朝鮮半島の出来事など、遥か太平洋の彼方の出来事と考えていた米国民に、次第に危機意識が芽生え、トランプはその対応を迫られる事となった。米国の建国史上、その国土が戦火に見舞われる事など想像した事もない連中である。
今日、ピョンチャン冬季オリンピックを契機として朝鮮半島に吹き始めた南北和解の薫風と、朝米対話の<無条件開催>への流れは、将に、キム・ジョンウン委員長の<新年の辞>に示された、朝鮮による“朝鮮半島の平和的環境を作る戦争抑止力の保有”が生み出したものに違いない。
<新年の辞>はまた、“朝鮮半島の平和的環境を作る戦争抑止力の保有”によって、朝鮮は、米国との、軍事均衡を根拠として、朝鮮半島の平和的環境を構築し、「人民生活を向上させ、人民経済の自立性と主体性の強化に総力を集中すべき」であるとして、人民の生活向上と経済活動に力点を置いているが、一方、[国防工業部門では、第8回軍需工業大会で党が示した戦略的方針に従って、並進路線を一貫して堅持し、ウリ式の威力ある戦略兵器と武力装備を開発、生産し、軍需工業の主体的な生産構造を完備し、先端科学技術に基づいて生産工程を近代化すべきです。核兵器研究部門とロケット工業部門では、すでにその威力と信頼性が確固と保証された核弾頭と弾道ロケットを量産して実戦配備することに拍車をかけるべきです。また、敵の核戦争策動に対処した即時の核反撃作戦態勢を常時維持しなければなりません]としている。
朝鮮労働党中央委員会は核実験と大陸間弾道ロケット試射の中止を宣言
朝鮮は、4月20日、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で<革命発展の新たな高い段階の要求に即して社会主義の建設をより力強く促すためのわが党の課題について>と言う第一議題の討議の後、以下の決定をした。
「@ 党の並進路線を貫徹するための闘争過程に臨界前核実験と地下核実験、核兵器の小型化、軽量化、超大型核兵器と運搬手段開発のための事業を順次的に行って核の兵器化を頼もしく実現したということを厳かに闡明(せんめい)する。
A 主体107(2018)年4月21日から、核実験と大陸間弾道ロケット試射を中止する。核実験の中止を透明性あるものに裏付けるために、朝鮮の北部核実験場を廃棄する。」と、即ち、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会決定では、核実験の中止と、ミサイル発射実験の中断を決定し、《新年の辞》では、<敵の核戦争策動に対処した即時の核反撃作戦態勢を常時維持する為《量産》し、《実戦配備》する>と明確にしている。
ここで明らかな事は、朝鮮は、新たな核開発とミサイル開発は、中断するが、<敵の核戦争策動に対処した即時の核反撃作戦態勢を常時維持する為>、既存の核とミサイルは維持し、実戦配備をすると、明確にしていることである。
≪朝鮮半島の非核化≫を巡って揺るがせない二つの視点
第一の視点は、≪朝鮮半島の非核化≫とは、≪朝鮮民主主義共和国だけの、一方的な非核化ではない≫と言う点である。何故なら、本来、《朝鮮半島の核問題》とは、朝鮮(北)が生み出したものではなく、1950年〜1953年の朝鮮戦争時期のみならず、その後70有余年に亘って、休戦協定に違反し、<北の崩壊>を狙って朝鮮半島に膨大な核兵器を持ちこみ、核を持たない主権国家・朝鮮を、核で威嚇・恐喝して来た米国によって生み出されたものであるからだ。《朝鮮半島の核問題》の主犯は米国であり、米国の核攻撃の脅しから、自衛的な核武装に追い込まれた朝鮮はその深刻な被害者に過ぎない。米国は、70有余年に亘って、朝鮮の崩壊を狙って、半島とその周辺地域に、<核による先制攻撃>体制を構築し、それを公言することを躊躇しなかった。更に甚だしくは、<首切り作戦>なる、主権国家の元首を暗殺する事を目的にした、不法極まる軍事演習を繰り返してきた。
《朝鮮半島の核問題》を、恰も、朝鮮が原因であり、主犯であるかの様に主張する<国際世論>や<資本主義言論>は、朝鮮核問題の主犯・米国の偽計の露払い人に他ならない。米国や、<資本主義媒体>が鸚鵡返しの様に叫ぶ“北の核放棄”は、主犯である<米国の核>に手を付けず、世界的に<核威嚇を政策化>して来た米国による、朝鮮半島と東北アジアの核戦争の危機を、更に呼び起こすだけである。朝鮮半島の《核挑発》の主体が、米国であるにも拘らず、《朝鮮半島の非核化》とは、断じて、≪朝鮮(北)の非核化》であってはならない理由がここにある。《核挑発》の主体である米国ではなく、《核先制攻撃》の被害者である朝鮮の<一方的な非核化>を主張する事は、朝鮮半島のみならず、東北アジアと世界の平和に対する深刻な脅威を積み重ねるだけである。
我々は今、東北アジアのみならず、全世界において、朝鮮の《核と、核を運搬するICBM》の保有が、米帝国主義の核侵略戦争を抑止する正義の力を作り上げて来た現実を、日々目にしている筈である。絶対的反核主義者であっても、米帝や列強の核保有を放置したまま、「北の核放棄」を一方的に迫る不条理が、決して世界の核廃絶には繋がらない事を理解しなければならない。米国を中心とする核保有列強の核に手を付けないで、どうして、世界を「非核化」できるのであろうか。
朝鮮は、核保有国にも拘らず、5月24日、世界に公開的に核実験場を廃棄し、2017年7月7日(日本時間)、国連総会第一委員会(軍縮)において提起された、多国間の核武装撤廃交渉を開始する決議案“Taking forward multilateral nuclear disarmament negotiations”に合流する意思も明らかにしている。
朝鮮は、4月20日、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で、帝国主義に対する<自衛的軍事的均衡の完成>によって、4月21日から、《核実験と大陸間弾道ロケット試射を中止する。核実験の中止を透明性あるものに裏付けるために、朝鮮の北部核実験場を廃棄する。》と決定し、実際に、5月24日、プンゲリ(豊渓里)核実験場廃棄を、国際的に透明性ある方法で実行した。
世界において、核廃絶する意思を持って、核保有国が、朝鮮の様に、実際にその実験場を廃棄した事例があるだろうか。核保有列強5か国とともに、この決議に反対し、米国の<核の傘>にどっぷりつかり、世界の<核恫喝ならず者>米国の全ての政策に<100%の支持>を表明する日本が、朝鮮の「非核化の意思が不透明」などと批判する資格など、爪の垢ほどもないではないか。
一方、朝鮮に対し、「体制保障」してやるから「核放棄」せよとの主張もある。そもそも朝鮮が、米国に対し、「体制保障」なるものを「懇願」した事実は全く存在しない。資本主義言論と米国が垂れ流す見え透いた偽計である。朝鮮は、今まで一貫して、米国による体制崩壊を狙った70有余年に亘る核威嚇・恐喝が無ければ、核を保有する理由がないと主張して来た。「体制」は、自らの力で作り上げ、守るものである。だからこそ、必要としない「核を保有」し、自らを核の威嚇から守らざるを得なかったのだ。主権国家の崩壊を狙って核恐喝を続ける強盗国家が、「体制を保障」するから身ぐるみ脱いで出てこいと言う主張は、主権国家の崩壊を狙った、厚顔無知な強盗の論理である。
第二の視点は、《朝鮮半島の非核化》は、《朝鮮(北)の一方的非核化》は勿論、《南朝鮮とその周辺海域(米軍の核基地・核搭載艦船と軍用機)》だけの《非核化》のみならず、朝鮮半島に到達する核ミサイルを配備した、在日米軍の核資産も当然対象としなければならないと言う点である。また、朝鮮の<核の検証>を言うならば、同様に、<南朝鮮とその在韓米軍基地の検証>をしなければならない。いくら<半島の非核化>を取り上げても、在日米軍基地から、1時間強で到達する核搭載機や、日本海と黄海に待機する核艦船を、不問にすることは出来ない。
第4回6者協議による<9.19合意>は朝鮮半島の<検証可能な非核化>を、米国にも義務づけるものであった
第4回6者協議による<9.19合意>は、朝鮮半島の<検証可能な非核化>と共に、朝鮮の核放棄で合意し、次の5項目を取り決めた。
@ 朝鮮半島の「検証可能な非核化」を実現する。朝鮮は、全ての核兵器と既存の核兵器計画の放棄。NPTとIAEAの補償措置への復帰。米は、朝鮮半島に核兵器を持たぬ。核兵器による攻撃意図はない事の確認。
A 朝米は互いに、主権を尊重し、平和共存、国交正常化を目指す。(朝日は、平壌宣言に従い、関係正常化を図る。
B 6か国は、2国或いは多国間で、経済協力を行う。
C 北東アジア地域の恒久平和の協議。
D 「約束対約束」「行動対行動」の原則の合意を段階的に実行する。
しかし、朝鮮政府は、この‘言葉による誓約’(2005年9月20日付外務省代弁人声明)をどう具体化するかで米国との間で、深刻なやり取りがもたれた。朝鮮は、朝鮮の<核の検証と核廃棄>言うなら、同様に、南朝鮮の米軍基地とその周辺に存在する米国の核の査察と検証を要求した。米国は、9.19合意における、[完全且つ、不可逆的で検証可能な非核化のシステム]を、自らには一切、課す事を拒否し、恰も北だけの義務化の様に世界世論を欺いて来た。
米国は、それには一切応じなかっただけでなく、9・19合意以降も、《北を悪の枢軸>とする、<敵対政策>を継続した。〇マカオのメコンデルタ・アジア銀行の朝鮮口座を凍結させ、テロ支援国家リストの無期限保留、軽水炉建設の意図的遅延など、朝鮮圧迫政策を継続した。マカオのメコンデルタ・アジア銀行の朝鮮口座を凍結させた米国の主張の根拠について付け加えるならば、米国は、銀行が北朝鮮の資金洗浄に協力していたと主張したことによる。また、米国は、北朝鮮が毎年1500万米ドルものスーパーノート[16]を製造していると主張した。朝鮮が偽札作りをしているという主張は1989年からあり、米国がこのタイミングで主張したことには疑いの余地があると専門家は指摘している。一部の専門家は朝鮮が本当にそのような偽札を作る能力があるのか疑問視しており、米国財務省はマカオの銀行の記録を調査したが公式な変化はまだない。2007年、アーンスト・アンド・ヤング社が監査を行ったが、銀行が北朝鮮の資金洗浄に協力していたという証拠は見つからなかったと報道された
今日も、米国とその追従国家が持ち出す、《北の一方的核放棄》の象徴的文言である、[完全且つ、不可逆的で検証可能な非核化のシステム]なるものは、この<9・19合意>で、互いが実行すべき行動として提起されたものであって、《北だけの義務》ではなかったのは言うまでもない。
米国と資本主義言論が、今も、鸚鵡返しの様に、[完全且つ、不可逆的で検証可能な非核化のシステム]が、「9・19合意で決まった北の義務」かの様に宣伝しているが、飛んでもない捏造である。9・19合意に対し、米国は自らの「検証の義務」を、最後まで拒否し、合意は反古となったしまった。米国は、はじめから、「9・19合意」を実行する意思を持っていなかったのだ。
2009年1月13日、朝鮮外務省声明は、朝鮮の「核放棄」も同時に取り決めた「9・19合意」に同意した理由を、次の様にいっている。“我々が9・19共同声明に同意したのは、非核化を通した関係改善でなく、関係正常化を通した非核化と言う、原則的立場から出発したからである。”
今回の朝米首脳会談は、将に、これまでの<敵対する相手の武装解除を前提とした>‘対話’から、決別せざるを得なかった米国の立場を鮮明化させた。関係の正常化なしに、どちらか一方の武装を解除させる為の「対話」が、果たして存在するだろうか?考えてみれば赤子でもわかることである。(続く)
<次回>
「日本政府は、過去の罪悪を謝罪し、平壌宣言とストックホルム合意を直ちに履行する義務がある」
<参考サイト>
☆605 「新年の辞」朝鮮労働党委員長・金正恩 (朝鮮中央通信 2018年1月1日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_605.html
☆621 金正恩委員長の指導の下に、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が行われる (朝鮮中央通信 2018年4月21日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_621.html
☆629 一方的な核放棄だけを強要するのであれば、我々はそうした対話に興味を持たない(ウリミンゾクキリ 2018年5月16日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_629.html
☆631 米副大統領ペンスは、その言葉が招く恐ろしい結果について熟考すべきだ
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_631.html
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