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(民衆闘争報道/第8回琉球民族遺骨返還請求公判闘争報告 2021年226日) 

 

      第8回琉球民族遺骨返還請求公判闘争報告

                                         琉球人遺骨返還を求める奈良県会議
                                                   共同代表 崎浜 盛喜


今にも雪が降りそうな「骨痛(ふにやん)」(骨の髄まで寒い)する気候にも拘わらず、今回も関東や愛知の仲間等約80人が参集したが、傍聴制限のため44名の傍聴となった。李弁護士が第11、第12準備書面要旨陳述を行った。以下の通り要点について報告する。

▲沖縄県立埋蔵文化センターには、台湾大学から返還された遺骨63体が保管されている。琉球遺骨返還訴訟のメンバーは、ここで慰霊祭をおこなった。(2020年10月3日)

「慣習」から導かれる百按司墓の「祭祀を主宰すべき者」の意義
百按司墓の「祭祀を主宰すべき者」については、琉球民族の死生観や先祖との関わり方から、連綿と続けられてきた先祖崇拝―慣習の観点から考えるべきである。琉球の信仰は基本的には先祖崇拝―「祖霊神」信仰である。「祖霊神」とは各村落が発生した時の最初の祖先から連綿と続いてきた祖先全体の神であり、村落共同体全体の神として崇拝する対象となっている。
人が死んだ後、肉体が骨から離れたのちに遺骨を海水や泡盛などで洗い―「洗骨」して納骨を行う。これを「骨神」(ふにしん)として拝み、感謝の念を伝えるとともに、現在生きている人々の幸せと健康をお守りしていただくように、と祈り続けてきた
李弁護士は「このような祖霊神信仰に基づく死生観を琉球の人々は持ち続けてきたので」百按司墓の場合には、自分自身の直接のルーツにつながらない人々でも「今帰仁上り(ナキジンヌブイ)」に旅立ち、百按司墓を「巡礼の聖地」として島々の各地域から拝みに来るのである。このような琉球の『信仰』や『慣習』から百按司墓の『祭祀を主宰すべき者』とは広く百按司墓に祀られている北山時代及び第1尚氏時代の貴族及び一族の末裔となるのである」。であるが故に、原告の亀谷正子さん、玉城毅さんらは「本件各遺骨に対して並々ならぬ追慕の念を持っていることは極めて明らかである」「だからこそ原告らは盗掘された遺骨のことを思い、琉球の人々の思いを踏みにじる被告に対して怒りを覚えるのである」と陳述した。


京大の杜撰な遺骨管理と京大総合博物館の現場検証について
京大構内ごみ集積所に於いて、遺骨保管箱の蓋と思われる「フタ」が発見されている。引き続いて李弁護士は被告京大の回答・「人骨を適切に管理している。原告の求める実見と説明には応じない」に対して如何に杜撰な管理だったのか証拠を示して痛烈な批判を行った。
2014H26)年11月頃京大構内ごみ集積所に於いて遺骨保管箱の蓋と思われる「フタ」が発見されている。このフタの写真には「清野蒐集」とあり、続いて番号まで墨書されている。これは清野や三宅らが収集遺骨を研究材料として発表した「古代人骨の研究に基づく日本人種論」の記載番号と完全に一致している。
*普門弁護士は怒りを抑えながらも、如何に京大がご遺骨を粗末に、モノのように扱い、杜撰な管理をしてきたか、「フタの現物」を法廷で公開した。(なお、この現物は奄美三島連絡協議会から借用して来たものである。)
この事実が証明しているにもかかわらず被告京大は、今まで「目録の存在を確認していない」などと無責任な対応をしてきた。具体的な理由も明らかにせず「人骨を適切に管理している。原告の求める実見には応じない」不誠実な対応に終始してきた。

更に京大は、奄美三島における遺骨返還を求める連絡会からの遺骨返還要求に対して「ご質問の人類学資料について2024年を目途として順次調査を進めており、人類学資料全体の正確な把握にはなお時間を要する状況である」と、調査には2024年までかかると回答している。
李弁護士は、「以上の事実経過からして被告京大は、人骨を『適切に管理』しているとは言えず、不誠実極まりなく、原告らを愚弄するものであり、事実関係を明らかにするためにも遺骨が保管されていると言われている京大総合博物館の現地調査―検証」を強く要求した。

沖縄県教委までが、ヤマトウ・日本国に「サッタルバスイ」(同化政策にやられたのか)
以上が第8回公判の報告だが、情勢は決して楽観できず京大に対しては怒りを通り越して暗澹たる気持ちになることがある。
台湾大学から琉球・沖縄に返還されてきた百按司墓のご遺骨が、未だに故郷の百按司墓に帰還することが許されずに、なんと沖縄県教委の「保護下」にあるという。すでにご遺族の了解も得ることなく「研究材料」として虐待されたとも伝え聞く。沖縄県教委までもが「学知の植民地主義」にサッタルバスイ(やられたのか)と憤怒に絶えない。さらには「琉球人遺骨保管住民監査請求」に対する県監査委員会による212日請求却下は明らかに違法であり強く抗議する。
1879年の琉球併合以来、我々琉球・沖縄人は日本国家と国民による厳しい差別と迫害によって人間としての尊厳を踏みにじられ、多くの生命さえも奪われてきた。日本の植民地(同化)主義者は日本人の「民族的優秀性」を証明することに躍起となり、アイヌ民族の墓を暴き、その毒牙は琉球・奄美人の遺骨にも襲いかかったのだ。
我々の遺骨返還要求に対して京大関係者は、今まで誰一人として裁判所に出廷することなく我々の切実な話を全く聞こうとしない。大学の仮面を被った卑劣、狡猾、厚顔無恥な「植民地主義の走狗」と成り果てている。社会人として非常識極まりない。これこそが差別であり、植民地主義そのものだということさえ理解できていない。未だにご遺骨との対面さえ拒否している。遺骨を今後も「研究材料」として使用することは明々白々だ。これ以上の侮辱、暴挙を許してはならない。一刻も早く百按司墓に帰還していただき安らかに眠っていただきたい。
この現実を沖縄県教委、今帰仁村教委の皆さんはどう考えているのか。琉球・沖縄の同胞の皆様方にもあえて問いたい。

生きている現世において差別・虐待され、なおかつニライカナイへ行くことも許されず侮辱・恥辱を受けなければならないのか。何故元のお墓に帰ることが許されないのか。これは単純明快な人間として尊ばれるべき当然の権利の問題である。人類共通の人間としての尊厳の問題である。

琉球・沖縄の未来のために―軍事植民地(同化)主義との全面対決を
琉球諸島全体を日米軍の軍事要塞基地とするために民意を無視して辺野古新基地建設土砂埋め立て工事が強行・続行されている。軟弱地盤や活断層が発見され、建設が不可能と科学者などからの指摘をも無視し、あろうことか沖縄戦で犠牲となった「遺骨」で埋め立てようとしている。悪逆無道、人道をも無視した無謀な策動は絶対に許してはならない。(執筆中、ガマフヤー代表の具志堅陵松さんが「政府がしようとしているのは、戦没者や遺族の気持ちを裏切る非人道的な行為だ。戦没者遺骨の尊厳を守りたい。遺骨を助けてくみそーれ(助けてください)」とハンガーストライキを決行したとのニユース。心から連帯の意を表したい。)
72年の「祖国復帰」=「沖縄返還」という最悪の選択を許した我々には重大な責任がある。「平和で豊かな沖縄」、何よりも人間が人間として尊重され、人間の尊厳が大切にされ、共に平和に生きる琉球・沖縄を建設する責務がある。
辺野古新基地建設阻止闘争と琉球民族遺骨返還裁判闘争は、我々の未来を獲得する重要な課題―日米の軍事植民地(同化)主義支配との全面的な闘いとなっている。お互いに絶対に負けられない。連帯を強め前進しよう。


  ○次回第9回公判は、5月21日(金)午後2時30分・京都地裁 1時30分集合


<関連サイト>

☆ 国連で「大学は沖縄の遺骨返還を」松島教授が声明 「琉球新報」2020年12月2日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_169.html

☆ 玉城県知事へ、全国から「意見書」を送って下さい(奈良−沖縄連帯委員会代表・崎浜盛喜 2020年9月17日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_168.html

☆ 辺野古基地反対闘争は、安部政権の事大買国的行為に対する憤怒と抵抗の表示である(朝鮮中央通信 2020年1月17日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_728.html

☆ 11・29琉球遺骨返還訴訟・第4回口頭弁論を終えて(琉球遺骨返還訴訟・奈良県民会議通信 2019年12月26日付)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_163.html

☆ 日本人類学会「要望書」について(<琉球人遺骨返還を求める奈良県会議>通信・第6号)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_161.html

☆ 軍事植民地と「琉球(沖縄)の自己決定権」との闘いが開始された (奈良−沖縄連帯委員会代表・崎浜盛喜)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_159.html

☆ 琉球遺骨返還請求訴訟・支援集会(主催:琉球遺骨返還訴訟・支援全国連絡会 2019年1月15日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_156.html

☆ 「琉球人遺骨返還を求める奈良県会議」を結成した(奈良−沖縄連帯委員会代表・崎浜盛喜 2018年10月26日)
http://vpack.shibano-jijiken.com/nihon_o_miru_jijitokusyu_154.html